6月6日(月)晴れ
現在、ジュネス
現在、総司達はシャドウとの戦闘にも戦い馴れた完二から事件について聞く為に、ジュネスにある“捜査本部”と言う名の休憩所へと来ていた。
そして、完二から犯人の手掛かりを聞くのだが、完二自身は気付いたらテレビの中に居た為、犯人の顔は見ていないとの事。
その言葉に、また手掛かりが掴めなかった事で肩を落とす総司達。
しかし、それを見て謎の罪悪感に襲われた完二は、何かを思い出した様にポケットから紙切れを取り出し、総司達に見せた。
見た目はただの紙切れなのだが、その紙切れにはつい最近有った番組の名前が掛かれていて、完二に詳しく聞くと、何やら自分の周りをコソコソと嗅ぎ回っていた刑事を脅したら、勝手に落として何処かに行ってしまったとの事。
「お前、その歳で現役の刑事を脅すなよ……」
「いやいや、脅して無いっスよ……ただ、軽く近寄って何してんだ?って聞いたら勝手にそれ落として逃げたんスよ」
陽介と完二がそうやって会話をしていると、総司は紙切れに番組名以外にも書かれている事に気付く。
「……山野真由美、4月11日。小西早紀、4月12日?」
「何なのその日付? 二人の誕生日?」
「連日でか? それは無いだろう」
紙切れに書かれている謎の日付に気が付いた総司と千枝。
最初は何の日付か良く分からなかったが、その隣に書かれているモノが有った。
「……“テレビ報道番組表”?」
そう書かれているのを見た瞬間、総司はある事に気付いた。
「……(確か、その書かれている日付のニュース内容は……山野真由美の不倫報道と山野真由美の殺人に関するインタビュー。まてよ、確か雪子と完二も……)まさか……」
「どうしたんスか、先輩?」
「何か気付いた?」
総司の言葉に全員が身を乗り出して来る。
それに対して総司は、冷静に自分の思った事を口にする。
「これに書かれている二人の日付は、その時のニュース内容が二人に関するモノの時だ……そして、誘拐された雪子と完二にもこの二人と同じ共通点が有る」
「……共通点?」
「……もしかして、テレビ?」
「そう、全員が居なくなる前にテレビで報道されている……」
「「「「!!!」」」」
総司の言葉に全員が驚愕した表情に成る。
今まで、山野真由美の事件に関係している女性が犯人のターゲットだとばかり考えていた総司達。
しかし、完二が誘拐された事により事態は大きく変わった。
今まで居なくなった者達に今度こそ、ちゃんと共通する事。
それが、テレビに報道されたと言う事なのだ。
「じゃあ、何? 犯人が標的にしているのって“テレビに報道された人”……?」
「今思えば犯人は雪子の一件が失敗しているのにも関わらず、標的を完二に変えた理由もそれなら頷ける」
「事件のニュースにばかり集中していたから、気が付かなかった……」
「じゃあ、何か! 犯人はテレビに映ったら殺すって事なのか!?」
自分達の推理とは全く違った事等によって驚きを隠せないでいる陽介達。
しかし、そんな様子の中で総司は口を開く。
「だけど、マヨナカテレビ以外に犯人が狙う人物が分かるなら俺達の行動もかなり動き易くなる筈だ……今後からはニュース報道に出て来る人物に注意しよう」
総司の言葉に全員が力強く頷く。
自分達の今までの推理が違っていたとは言え、今回の発見は大きいのだから。
そんな時、今日はいつもより日差しが強いからか雪子が額の汗を拭く為にポケットから黒いハンカチを取り出したのに千枝が気が付く。
「あれ、雪子そんな黒いハンカチ何か持ってたっけ?」
「ん? 本当だ。天城にしては珍しい気がするな」
基本的に雪子が黒色のハンカチ等を持って無い事を知っている千枝が雪子に聞いてみて、陽介も同様にそう呟く。
「え? ああ、このハンカチは少し特別……実はこれ、洸夜さんから貰った物なの」
「……兄さんから?」
総司の言葉に頷く雪子たが、総司は雪子と洸夜の接点が分からなかった。
二人が会った時と言ったって最初の山野アナの事件現場ぐらいしか思い付かない。
「つーか、何で天城先輩が洸夜さんからハンカチを貰ったんスか?」
完二の最もな質問に頷く一同に、雪子は苦笑いしながらも話始めた。
「ほら、千枝には話したよね? 私が雨の日の時に悩みを聞いてくれたって……」
「あ、あっ~~! その話ね、うん、確かに聞いた聞いた」
「何だよ、その話って……?」
雪子の言葉に千枝は思い出した様に頷く。
だが、陽介は意味が全然理解出来ないらしく雪子に言葉の意味を尋ねる。
「あれは確か……私が誘拐されるちょっとだけ前何だけど、河原の近くの休憩所で私が自分について悩んでたんだ……」
「雪子のシャドウが言っていた事だよね? 確か、自分の決められた将来についての事だった筈」
「うん……今でもたまに思うけど、洸夜さんのお陰でお母さんともちゃんと話し合えてるし千枝にも聞いて貰えてるから……」
そう言って雪子は笑顔で千枝を見る。
その表情を見て千枝は、少し照れ臭そうに顔をかく。
「いや~でもあの時は驚いちゃったよ。雪子に肩を貸しながら旅館に入ると、雪子のお母さんや旅館の人達が駆け寄って来てくれたんだけどさ……いきなり雪子「私、今はまだ女将に成りたくない……」何て言うから叔母さんも旅館の人も、私だって驚いちゃったよ……はは」
そう言って、苦笑いする千枝を見ながら雪子も苦笑いする。
だが、総司達にはリアル過ぎて笑う余裕は無かった。
「いや、笑える話じゃ無いっスよ……」
「と言うよりも、その事と兄さんと一体どんな関係が……?」
今一、自分の兄である洸夜と雪子の繋がりが分からない総司。
何だかんだで、やっぱり洸夜が雪子等の自分の友人達と接する絵が思い描けない。
「さっき、洸夜さんに話を聞いて貰ったって言ったでしょう? その時に、洸夜さんに話を聞いて貰ったから私はお母さんとちゃんと話が出来たの」
「もしかして、ゴールデンウイークの時に話していたクッキーを貰った時の事か?」
「うん、それに洸夜さんって何か不思議だった……まるで、私の悩みを最初から知っていた見たいに話を聞いてくれたの。あと、ハンカチもその時にね。ベタだけど、返さなくて良いからって言われちゃって……そのまま貰っちゃったの」
そう言って、頬を赤くして恥ずかしげに言う雪子の言葉を聞き陽介と完二は肩を落とす。
「ベタな台詞と行動なのに、何でそんなに格好良く終わるんだよ……普通だったら、そんなハンカチ要らねえとかだろ……」
「やっぱ、男は顔も良くないと駄目なんスか? フランケンやゴリラ見たいな顔の人は駄目なんスか!」
「いや、リアルでそんな奴いたら俺でも逃げるって……それより、クソッ! 男が中身で勝負する時代は終わったのかッ!」
「あんた等の場合は、その中身にも問題が有りそうだけどね……」
「「(確かに……)」」
千枝の言葉に内心でそう思った総司と雪子だが、陽介達のリアクションが面白いので、もう少し眺める事にした。
だが、そうやって皆が馬鹿やっている時、総司は前々から思っていた事を口に出した。
「……皆に聞きたい事が有る」
「何だよ? いきなり改まって……?」
「何か訳有り?」
「……前々から思ってたんだけど、皆は兄さんに何か違和感を感じない?」
総司の今度に、陽介達は互いに顔を見合わせた。
「今一意味が分からないんだけど……?」
「違和感って何スか?」
総司の言葉の意味が分からないと言った感じのメンバーに、総司は自分の思っている事を口にする。
「俺にも良く分からない……だけど、兄さんから何か違和感を感じるんだ」
「自分の兄なのに違和感有るってのもどうかと思うっスけど……具体的に分かんないんスか?」
「分かってたら既に言ってるだろ? まあ、違和感ってのには俺も賛成だ。相棒には悪ぃけど、俺はあの人が苦手だ……シャドウや事件の事を何も知らないで、言いたいほうだい言ってるしよ」
「花村……それは、あんた個人の気持ちでしょ。それに、何度も言うけどあの時は私達の方が悪かったんだから」
そう言って互いに睨み合う陽介と千枝。
やはり、花村は洸夜へは良い感情を持っていない様子だ。
「つーか、何で花村先輩は洸夜さんの事を敵視してんスか? あの人、良い人っスよ……俺の事も認めてくれたし」
「私の事件の時にちょっと有ってね……」
その時の事を思い出したのか、雪子は少し表情を暗くする。
「まあ、違和感はともかく……あの後、上手く学校に伝えていてくれて助かったじゃん」
「うっ……確かにそうだけどよ」
千枝達が言っているのは雪子の事件の後、総司と陽介、そして雪子を送っていた為に学校に着くのが遅れた千枝が学校に着いた時の事。
総司達が教室の中に入った時に待ち構えていたのは、総司達の担任であり生徒から嫌み嫌われている事で有名な諸岡、通称モロキン。
総司達に気づいた諸岡は総司達を睨み付け、睨まれた総司達も嫌みの一つや二つ覚悟したのだが……。
『チッ! お前の兄から連絡をもらったから今回は見逃すが……次は無いぞ』
そう言って顎を使って早く座れと指示を出す諸岡。
その時は総司達は訳が分から無かった。
しかしその日、総司が家に帰った時に堂島から言われた言葉で全て理解した。
『総司、洸夜から連絡貰ったぞ。お前ら、登校中に居なく成っていた天城雪子を見付けて学校に遅れたんだってな……まあ、今回は仕方ねえがもし次に似たような事が有った時はすぐに俺か洸夜に連絡しろよ。お前らにもしもの事が有ったら、俺は預かっている身として姉さん達に顔向けできねからな……』
そう言いながら、何処か寂しそうな堂島の表情は今でも総司は覚えている。
「まあ、最低限の事はしろって言うわりにあの時学校に連絡してもらったのは助かったけどよ……」
「そう思うと、家に帰った後に親に少し怒られた程度ですんで良かったよ」
「兄さん本人に聞いた時も、これっきりだからなって言われたしね」
等と総司達は話ているが結局、その日総司は自分が洸夜に感じている違和感は分からなかった……。