ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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本当に嫌いな人ほど、構う気すら起こらない。


犯人確保?

7月2日(土)雲

 

現在、豆腐屋

 

「(足立さんはともかく、アイツ等は何をしているんだ?)」

 

現在、洸夜はバイトをしながらりせの周りを注意していた。

しかし、事情を聞く為に店を来た足立は別に構わないのだが……。

 

「「「「「……」」」」」

 

何故か総司・花村・完二は先程からあんパンと牛乳を持ちながら豆腐屋の周りを何往復も行ったり来たりしている。

そして雪子と千枝も同じく、あんパンと牛乳を持ちながら店の前で会話をする振りをしながらりせの事をチラチラと確認している。

 

「(今までよりはマシと思う自分が悲しい……)」

 

本来ならば、コレはコレで営業妨害なのだが、洸夜は最早口を出すのもバカバカしく感じてしまったが、これはこれで犯人を牽制出来ると思い敢えて相手にしない事にした。

そんな時……。

 

「……やあ、洸夜君。バイト頑張ってるかい?」

 

「足立さん……仕事中じゃあないんですか?」

 

バイトをしている洸夜の下に来た足立。

どうやら、りせから大抵の話は聞いた様だ。

 

「いやぁ、彼女からは話をほとんど聞いたし、ちょっと暇になっちゃって」

 

「は、はぁ……(それで良いのか、今の警察は……)それで、何か様ですか?」

 

「いやさ、君もそろそろ退屈しているかなって思ってさ、実は話が有るんだよ」

 

「そ、そうですか……(俺はそんなに暇そうに見えるのか?)」

 

能天気に笑いながら言っている足立に苦笑いする洸夜だが、足立は話を止める気が無いらしく勝手に喋りだす。

 

「実はさ……堂島さんから言われてる事が有るんだけど……なんかさ、総司君達の事を見張ってろって言われてるんだ」

 

「!……何故、総司達を?(叔父さん……個人で総司達が怪しいと判断したのか。マズイ、コレ以上総司達が軽率な行動を続ければ、とんでもない事に成るかも知れない……何か手を打たなければ)」

 

「良く分かん無いけど、何か居なくなった子を見付けた時に違和感を感じたり、ジュネスの電化製品売り場に良く行ってたり、今回も久慈川りせが誘拐される事を知っていたのが原因らしいよ」

 

そう言って長々と怠そうに喋る足立。

どうやら、足立自身は堂島の考え過ぎ程度にしか思っていない様だ。

 

「そうですか……でも、あくまでも推測ですよね。叔父さんは本気で総司達を疑っている訳じゃあ……」

 

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。堂島さん……何かこのところピリピリしていてね。多分そのせいだよ」

 

過剰に反応する洸夜に、足立は笑いながらそう言った。

洸夜も自分が過剰に反応してしまった事に気付き、直ぐに冷静に成る。

するとそんな時。

 

「あっ! あれ……!」

 

店の外から聞こえた雪子の声を聞き、洸夜と足立は急いで外に出ると雪子達が見上げている電柱の上を見てみると……。

 

「誰だ……?」

 

電柱の上には、眼鏡をかけてカメラを持ったおかしな男が電柱にへばり付いていたのだ。

そして男はこちらに気が付くと、驚いて電柱から落っこちてしまい、そのまま向こうへ走り出した。

 

「あっ!逃げたっ!」

 

「追え!」

 

「こ、洸夜君……君も行って貰えるかい?」

 

「はぁッ!?」

 

足立の言葉に訳が分からないと言った感じの洸夜。

当たり前だ、一般の人に不審者を追ってくれと頼む刑事が何処にいる。

少なくとも、洸夜の目の前に一人いるが……。

 

「いや、実はさっきの男が落ちた時に驚いて足をくじいちゃって……はは」

 

「全く……!(叔父さんがこの人を怒鳴る理由が良く分かる……!)」

 

苦笑いしている足立をほっといて洸夜は、先程の男と総司達の追う。

今から走れば直ぐに追い付く。

 

「洸夜さん!」

 

「りせ! 君は店に居ろ! 良いな、絶対に店から出るなよ!」

 

洸夜達を心配して店から出て来たりせに、洸夜はそれだけ言って途中、向かい側から走ってくる何台かの車やトラックに注意しながら走り出した。

 

========================

 

洸夜が追った先で見たものは、先程のカメラを持った男が道路側で何やら叫んでおり、総司達が何故か男に近付けない状況だった。

 

「どんな状況だ?」

 

「兄さん……」

 

「近付いたら道路に飛び込むとか言ってるんですよ。だから、どうするって事に…!」

 

「来るなッ!来たら飛び込むぞッ!」

 

「あんな事を言ってるんだよ……」

 

「へッ! そんなの無視して一気に突っ込めば良いんスよ!」

 

完二がそこまで言った時だった。

 

「だ、駄目だよ! もし大怪我したら、警察の責任問われて……!」

 

「足立さん……! 足はどうしたんですか!?」

 

「いや~実は大した事無かったんだよ……はは」

 

「……怒って良いよな?」

 

「に、兄さん落ち着いて!」

 

「こ、洸夜さん! まずはアイツっスよ!?」

 

足立に向かって拳を握りしめる洸夜を、総司と完二の二人係で止める。それに対して、先程の男は足立の言葉を聞いてチャンスだと思ったらしく、ニヤニヤしながら道路の方へと近付く。

 

「ほ、ほら飛び込むぞ! 嫌なら早くあっち行けよ!」

 

「テメェ……!」

 

「ひ、ひぃ……!!」

 

完二が男の言葉に逆上した光景を見た瞬間、男が怯んだのに洸夜は見逃さなかった。

男が怯んだ隙を付き、一瞬で相手の懐に入りそのまま足払いをする。

 

「……飛び込む気も無いくせに、交通事故に遭った人達に失礼だ!」

 

「ぐほッ……! き、君達! 善良な市民に向かって何て事を……!」

 

洸夜に足払いをされた男は多少は痛い思いをした様だが、その場に座り込むと悪態を付く。

そして、洸夜のとっさの行動に驚いてポカンとする総司達も男の言葉で我に帰った。

目の前の男はりせを観察していた怪しい男。

そんな男に完二が近付いた。

 

「ふざけんなッ! 人様ぶっ殺しといてテメェはそれか!? あぁ!!」

 

自分を善良な市民発言をする男を見て完二が怒鳴り、怒鳴られた男は余りの迫力に先程までの態度では無くなっていた。

 

「ひょー!? タ、タンマぶっ殺しって何の事!?」

 

「と、とぼけたってムダだから!」

 

「そ、そうだぜ! 」

 

完二に続けとばかりに千枝と陽介が男に向かって抗議する……洸夜の背中から。

 

「君たち、そう言う事は前に出て言ってくれ……」

 

「え、まあ……その……」

 

「は、ははは……そうですよね」

 

洸夜の言葉に苦笑いする千枝と陽介。

その二人の様子にやれやれと微笑む洸夜。

やはり、いくらシャドウと戦っているとはいえ、殺人犯かも知れない相手を前に怖いと感じてしまったのだろう。

そんな時、洸夜達の話を聞いていた男が目のいろ変えて鞄をあさり出した。

 

「ちょ、ちょっと待って下さいよ! 僕ぁ、ただりせちーが好きで部屋とかちょっと見てみたくて……ほら! 荷物コレ全部カメラだよ」

 

男は自分の身の潔白を証明しようと荷物を見せるが、足立によって手錠を掛けられる。

 

「はいはい犯人ってのは皆言うんだって、そういうことを……」

 

「そ、そんな! 僕が何をしたって言うんですか!?」

 

「とりあえず、話は署で聞こうか……くー! この台詞言ってみたかった!」

 

犯人を逮捕して一人テンションを上げている足立が、男を連れて行きながらコチラに手を振った。

 

「君らもお疲れ様! 犯人逮捕にご協力感謝します!」

 

「……あ、はい」

 

そう言うと足立は男を連れて言ってしまい、残された総司達は顔を見合わせる。

余りにも呆気無い感じに、総司達も今一理解が遅れる。

 

「え? これで事件解決?」

 

「予想通り、犯人は少し気持ち悪かったね……」

 

「まあ、後は警察の仕事っスね」

 

「って事は……全部解決?やっ たぁ!」

 

そう言って事件解決ムードの総司達だが、洸夜は先程の男をジッと見ていた。

先程の男は明らかに怪しかったが、どう見ても人殺しが出来る様には見えなかった。

 

「(今のが犯人……? いや、違う。夢の中に出て来た霧を扱う奴とは雰囲気が全く違った。それに、ここまで証拠一つ掴ませ無かった奴があんな馬鹿な真似をするか?……いや待てよ、もし今のが犯人じゃないとすると、真犯人は……マズイッ!)」

 

「うわッ! 兄さん?」

 

「え、洸夜さん!?」

 

洸夜がいきなり走り出した事に驚く総司達だったが、洸夜は今は総司達の相手をする隙も無い。

先程の男が犯人では無かったのならば、今はほとんど人がいない店のりせが一番危険な事に気付いた洸夜。

そして、店に着いた洸夜は店内を見渡すがりせの姿は無かった。

 

「りせ……? お、おばあさん、りせは?」

 

「あらあら、洸夜さん大丈夫? 顔色が悪いわよ?。それで、りせがいないのかい? 前にもに有ったんですよ。私にも言わずに何処かにフラッと出掛ける事が。まあ、あの子も疲れていたし今はそっとしといて上げましょう……」

 

そう言ってお婆さんは仕事に戻る。

その心配無い感じで話す様子から、どうやらりせが勝手に何処かに行くのは珍しい事では無い様だ。

 

「あれほど言ったのに店から出たのか……なら、一体何処へ…………ん?」

 

りせがいない事に疑問を持つ洸夜は、ふと豆腐屋の入口に光っている何かを見付けた。

光が反射して目障りだった為、洸夜はそれに近付き拾い上げると……。

 

「……間違いない。りせに渡した鈴だ

 

洸夜が拾ったのは前にりせに渡した鈴だった。

しかし、それを見た洸夜はりせが居なく成った理由を理解し、店から出ると近くの電柱に拳をたたき付けた。

そして、拳をたたき付けた生々しい音が聞こえたが、近くには誰も居なかった為、誰も気づかなかった。

 

「くそ……!(完全に俺のミスだ……! 近くにいたにも関わらず、みすみす犯人にしてやられた……!)」

 

雪子や完二の時とは違い、日頃から自分の近くに居たにも関わらずにりせを誘拐された事で、自分に怒る洸夜

りせを守る為に作った鈴も、今は自分の所にあり、りせを守って上げられない。

そして洸夜の考えは当たり、その日から久慈川りせは姿を消した。

また、その日からマヨナカテレビにある人物が映り出したのは言うまでも無い。

 

『皆、どうも!りせちーだよ!』

End


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