同日
現在、堂島の車
現在、洸夜達は堂島の車に乗り、窓から景色を見ていた。
すると、洸夜は何かを思い出し、堂島に口を開く。
「そうだ叔父さん。俺のバイクは既に届いてる?」
「バイク? ああ、あの黒いバイクなら既に届いてるぞ。それにしても、まさか最初に届いた荷物がバイクとはな……」
洸夜と堂島の言う黒いバイクとは、洸夜が美鶴の影響されて買った大型バイクの事である。
こちらでも使う事が有ると思い、引っ越す少し前に堂島宅に送っていたのだ。
ちなみに改造はしていない
「ゴメンゴメン。でも、やっぱり移動とかに使うからさ」
「なあに、別に責めている訳じゃないから安心しろ。そう言えば...…確か、総司が入学する学校は“八十神高等学校”だったか?」
「あ、うん...…確か、そんな名前だった筈」
「まあ、複雑な道じゃあないから道に迷う事は無いと思うが……何とかなるだろう」
「「(何とかなるのか……?)」」
堂島の言葉に苦笑いする洸夜と総司。
そんな時、助手席に座っていた菜々子がモジモジと足を動かし始めた。
「(トイレだな……)」
菜々子の様子にトイレだと思った洸夜だが、小さいとは言え女の子。
トイレに行きたいの?何て言える訳がない。
「お父さん……」
「何だ、トイレか……?」
「!」
「イテッ!」
堂島の言葉に、今度は横腹を殴る菜々子。
そして、殴られたのに平然と笑っている堂島。
ある意味、堂島は凄い……。
そんな風に思いながら、車はガソリンスタンドに到着する。
「いらっしゃいませ!!!」
「ガソリンを満タンで頼む……」
ガソリンスタンドに到着すると、やけに肌が白い店員が接客して来た。
しかし、堂島は馴れているのか余り気にせずにしている。
人を見た目で判断するのは失礼だと思い、店員の肌の白さにジロジロと見ていた事に悪いと思い反省する洸夜。
「降りるか……」
「そうだね……座り過ぎて尻が痛いし」
そして、電車や車の中でずっと座っていた二人も気分転換の為に車から降りる事にした。
「ほら、トイレに行ってくるんだろ?」
「うん……」
「トイレは此処から左に行った所だよ。左って分かるかな? お箸持たない方ね」
「むー! 菜々子、子供じゃないよ!」
店員は親切心で言ったのだろうが、菜々子は子供扱いされたのが気に入ら無かったらしく、怒りながらトイレへと向かって行ってしまった。
洸夜も流石にあれは子供扱いし過ぎだと思った。
悪気は無いと思うのだが。そう思いながら洸夜は苦笑して店員を見るが、店員は気にして無いらしく堂島と世間話をしている。
仕事しろよ! と洸夜と総司が思っているのは言うまでもない。
「何処かにお出かけで?」
「いや、今日都会から来たコイツ等を迎えに行ってたんだ。さて、俺も一服して来るか……」
「へー 都会からね……」
店員が何か一人でブツブツ喋っているが、堂島は気にせずにタバコを吸いに行ってしまう。
そして、店員は今度は自分達に近付いてくる。
田舎町の店員はこんなにも積極的に接客するのか?
洸夜がそんな事を考えている内に、店員は総司と会話をしていた。
「君達、都会から来たんだ……それに、君は高校生だよね? 此処、都会と違って何にも無いっしょ? 高校生だったら友達と遊んだり、バイトとかしか無いでしょ? うちのスタンドバイト募集してんだ。良かったら考えてみてよ」
そう言って握手を交わす総司と店員。
そして洸夜は、自分もこの町で早くバイトを探そうと考えている。
はっきり言って洸夜は頭も良く、行動力もある為その気になれば大学や、就職する事も可能。
だが、洸夜は色々な職業や世界を見たいと思っている為バイトをしている。
良く言えば、好奇心旺盛な若者。
悪く言えば、才能を無駄にしているフリーター。
ちなみに洸夜自身もこの生き方は良くないと自覚している為、後一年経っても自分に有った職を見付けられ無かったら、両親のコネで何処かに就職する事を両親と約束している。
だが、それはあくまで表、第三者視点での事であり、実際は違う理由。
「(別に自分一人だけ生きて行くなら、このままでも良いんだが。世の中甘く無いしな……)」
等と洸夜が心の中で愚痴っていると……。
「お兄さんもよろしく」
気付くと先程の店員は総司との会話を終わらせ、自分の目の前に来て、手を差し出していた。
別に拒む理由は無いと判断した洸夜はそれに答える。
「ああ、よろしく」
そう思いながら、洸夜は店員から差し出された手を握る。
「よろしく……ッ!? 君……!」
「どうした、何か有ったのか?」
突然、店員の様子がおかしくなり、洸夜は心配して尋ねるが。
「……いや、何でもないよ! ごめんね、何か心配かけちゃったね」
「い、いや……何でも無いならそれで良いんだ」
店員が笑いながら何でもないと言って、洸夜は安心する。
流石に来て直ぐに問題に巻き込まれたくはない。
とは言っても、事件を解決する為に来たのだから、巻き込まれるのは決まったも同然なのだが。
そして、洸夜が店員と話している内に菜々子がトイレから戻って来たのを見て、店員は慌てだす。
「ヤバッ! 僕も早く仕事しないと……!」
「ハハ、中々騒がしい店員だな……」
そう言って洸夜は、店員が走ってガソリンを入れるのを笑いながら見ていた時だった。
「うっ!」
総司が突然、頭を抑えて膝を着いた。
「おい、総司!?」
「具合悪いの……?」
洸夜と菜々子の言葉に、総司は最初は頭を抑えていたが直ぐに離して立ち上がった。
「いや、大丈夫……少し立ちくらみがしただけだから」
大丈夫とは言うが、総司の顔色は余り良くない。
「(長旅で疲れたか?)顔色が余り良くないな……余り無理はするな」
「大丈夫だって……兄さんは少し、俺に過保護だよ」
「どうした?」
総司が洸夜と会話をしていると、タバコを吸い終わった堂島が戻って来た。
「具合が悪い見たい」
そして、堂島の言葉に菜々子が総司を心配して、詳しく話した。
「(まだ、本当は家族が増える事に困惑している筈なのに……強い子だな)」
洸夜が菜々子に付いてそう思っていると、菜々子から聞いた堂島は総司の顔を見る。
「顔色が悪いな.....長旅で疲れたんだろう。今日は飯食って早く寝た方が良いな」
「……すいません」
総司が申し訳なさそうに頭を下げるが、堂島は笑っている。
「ハハハ、余りそんな他人行儀になるな。一年だけだが、俺達は家族なんだ。甘える時は甘えてくれ」
「叔父さんの言う通りだ総司。お前は少し遠慮し過ぎる時があるからな」
「えっとね……菜々子も少しは頼って良いんだよ?」
洸夜や堂島、そして菜々子の言葉に総司は最初は少し困惑した顔になるが、その表情は笑顔に変わった。
「叔父さんも菜々子もありがとう。兄さんもね」
そして、洸夜達は再び車に乗り込むと堂島宅へと向かった。
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現在、堂島宅
堂島宅に着いた洸夜達だったが、堂島宅の前に一人の男と、トラックが停まっていた。
見た感じではどうやら宅配便の様だ。
「何だ? 宅配便が来るなんて聞いてないが……? おい! 家に何か用か?」
堂島が車から降り、宅配の業者に声を掛けた。
そして、声を掛けられた業者の方も堂島に気付くと安心した顔になる。
「ああ、良かった。留守かと思いましたよ……宅配便です。ハンコかサインを貰えますか?」
業者がそう言って堂島は家の前に置いてある、大きな二つのダンボール箱を見て驚いている。
「おいおい、何だこの荷物は……!? まあ、いいか……すまんな、サインでも良いか?」
「構いませんよ」
そう言って叔父さんは書類にサインする。
そんな時、洸夜は宅配業者の顔が何処か引っ掛かった
「あの業者、何処かで見た様な」
何処立ったか良く覚えてはいないが、つい最近の様な気がする。
洸夜がそんな風に考えていると。
「おーい洸夜!スマンが、この荷物を入れるのを手伝ってくれ!」
洸夜が気付くと既に業者はおらず、堂島が荷物を入れる為洸夜を呼んでいた。
「今、行くよ」
そう言って寝ている総司と菜々子を起こさない様に車から降りた洸夜は二つの荷物に目をやると、二つともテレビの様だ。
しかも、今流行りの大型テレビ。
「大型テレビが二台? 一体誰から?」
「少し待て、手紙が付いていたな……え~と、名前は……姉さん達からだ」
「母さんから?」
何故、堂島の姉であり、自分と総司の母親からテレビが二台も送ってくるのか洸夜も堂島も分からない。
そして、堂島は手紙の封を切って中身を見る。
「え~と、何々……拝啓、我が実弟の遼太郎へ私の最愛の息子達は着いたかな? 一年だけとは言え息子二人も頼んでごめんね(笑)。でも、電話でも話した通り、二人共いい子で手間は掛からないからお前の助けになる筈よ。後、お礼と言う訳では無いけどテレビを二台贈ります。高かったんだから大事に使いなさいよ。それじゃあ菜々子ちゃんに宜しくね。
P.S、洸夜か総司を菜々子ちゃんのお婿にどう? 姉より」
「「……」」
母親の手紙を聞いて、堂島も洸夜もどんな反応をすれば良いか分からなかった。と言うよりも、母親の手紙からも伝わる勢いに圧されてしまって、何も言え無かったのである。
そして、二人が出した結果は……。
「まずは、このテレビを中に入れ様か……」
「あ、ああ……そうだな」
まずはテレビを家の中に入れると言う結論だった。
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現在、堂島宅内
堂島と起きた総司達と話し合った結果、一台は居間に置く事に為り。
もう一台は、洸夜の部屋に置く事になった。
そして現在、洸夜は自分の部屋でテレビをセッティングしている最中。
「後は……チャンネルを設定すれば良い筈だから(母さんも相変わらず突然だな…全く、それでも憎めない両親だけどな)」
そう思いながらリモコンで設定しようとしている時だった。
「兄さーん! 夕飯どうするの?」
下の階から総司に呼ばれて時計を見ると、いつの間にか時間は12時に成ろうとしていた。
自分はこんな時間に成るまで気づかなかったのかと、人間の集中力に驚く洸夜。
「叔父さんと菜々子は?」
「叔父さんは仕事で出掛けた。菜々子はもう眠っちゃったよ。俺もそろそろ寝るけど…?」
「分かった! 後は自分でやるからお前はもう寝ろ!」
洸夜はそう言うと扉を閉めて窓を覗いて見た。
すると、外は霧で覆われており、町の姿も霧によって全く見えない。
昔、来た時はこんなにも霧が濃く出る町では無かった筈。
環境が変わってしまったのだろうか?。
そう思いながら洸夜は、チャンネルの設定はまた明日やれば良いと思い、テレビの電源を消した。
堂島が用意してくれた部屋の机に召喚器とペルソナ白書を置き、刀は袋に入れたまま近くに立てかけた。
そして、洸夜は部屋の隅に置いてあった布団を引き、眠ろうと思った時。
ピーー!ザ、ザザー!!!
突然、電源を消した筈のテレビが付き、砂嵐が流れ出る。
そして、砂嵐が晴れると壁全体に何かのポスターを貼った様な部屋の映像が流れ出した。
「何だこれは?。何で勝手にテレビが着くんだ?。第一チャンネルは設定して無いぞ……と言うより電源も……」
突然点いたテレビを不審に思いながら、洸夜は右手で刀を掴み、何が起こっても対応出来る様にする。
すると、テレビ内で動きがあった。
突然、テレビに女性が現れたのだ。
顔を砂嵐や画面が乱れて良く見えないが、何処か見覚えがある姿をしていた。
「一体何が起こっている? この女性は誰だ……!」
イゴールが言っていた事件の事もある為、洸夜はこのテレビが何か関係が有ると確信し、映っている人物を必死で思い出そうとする。そんな中、テレビに映っている女性に異変が起こる。その女性は近くの椅子の上に登るて、何か布らしきモノを結んで輪を作り、天井に吊し始めた。
その様子を見て、洸夜はこの女性が何をしようとしているのかを理解した。
「首吊る気かよッ!? まさか、事件ってこの事なのか!」
そう言って洸夜の手が画面に触れた時。
ズズ……。
「グッ! 何だ…これは……!」
突如、洸夜の手が画面に飲み込まれ、まるで何かに引っ張られている様な感じでテレビの中に引きずり込まれそうになる。
「イゴールの野郎……! 何が行けば分かるだ。異変は起きたが、良く分かんねえよッ!」
行けば分かると言ったイゴールの言葉に苛立ちながらも洸夜は、力付くでテレビから腕を引っこ抜き、テレビは普通のテレビに戻っていた。
「何だったんだ今のは……影時間とも違う、この不快感は一体……!」
どう考えても、今の現象は非現実的なモノだった。
イゴールが自分に頼んだ事も頷ける。
非現実的には非現実的を……再び、ペルソナ達の力を借りる事になりそうだと洸夜は確信した。
「今日はもう寝よう、これ以上は考えても仕方ない」
そう言って洸夜は眠りに入った。
END