ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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この政治家は駄目だなと言う人は多いが、だからと言って自分がこの政治家に変わって国を支えようと言う人は少ない。


本当の自分

同日

 

現在、特出し劇場丸久座

 

「まいったな……」

 

洸夜は現在、先ほどりせの影にまんまと仕手やられ、閉じ込められているフロアの中で壁に手を当ててそう呟いた。

 

「(構造上では別に壊しても大丈夫だと思うが……)この壁、中からの攻撃に強くしているな」

 

洸夜の言う通り、りせの影が細工したものかどうかは分からないが、このフロアは中からの攻撃に強くされている。

しかし、だからと言ってもベンケイ程のペルソナを使えば、直ぐにでも脱出出来るのだが……今はもう1つだけ問題があった。

 

「ッ!」

 

壁の前で佇んででいた洸夜だが、突然、上のフロアからの衝撃が原因で辺りが大きく揺れだした為に、壁に手をついた。

そして、揺れが治まると洸夜は、揺れの原因である上のフロアを見るかの様に天井へと視線を向けた。

 

「……やはりシャドウ化したか。(総司達の奴、相手が分析タイプだからって油断してなきゃ良いが……)」

 

この揺れの原因が今現在、上のフロアで行われている総司達とりせの影との戦闘のものであった。

恐らく、りせの影は総司達で倒せる相手とは思うが、解析タイプと言う特殊な能力を持つ相手に総司達が無傷でいられるとは、洸夜は思っていなかった。

かつて、満月の大型シャドウにも似た力を持つモノがいたが、あれとは似て非なる力。

 

「(大丈夫とは思うが……総司はともかく、他のメンバーからは未だにペルソナと言う力を持つ者としての自覚がなければ覚悟も感じられない。それどころか、微かに楽しんでいる様にも感じる……こればっかりは本人達に気付いて貰いたい)」

 

ペルソナはシャドウを倒せる力。

だが、その気にも成れば他者をも傷付ける事も出来る。

そして、洸夜は知っていた、テレビの世界で陽介達が笑いながら戦っていた事を。

まるで、自分達がペルソナを使える事が当たり前であるかの様に……自分と向き合った、だから自分達はペルソナを使い、シャドウと戦っている。

自分達にしか出来ない、自分達は特別。

無意識かどうかは分からないが、少なくとも洸夜はそう感じ取った。

 

「(自分と向き合ったからって、生半可な覚悟……そして、ペルソナとシャドウの全てを理解した気でいたら、いつか取り返しのつかない事に成る)……お前なら、アイツ等になんて言うんだろうな……真次郎」

 

洸夜はかつて、ペルソナが暴走してしまい、取り返しのつかない過去を背負い、自分にペルソナと言う力の重さや責任、そして、危険性を教えてくれた今は亡き親友の名前を口にした。

彼ならば、自分とは違うやり方で今の総司達にペルソナ能力について教えてくれただろうと、洸夜は思ったが、直ぐにその考えを否定し、逆に……。

 

『んな事、俺は関係ねえだろ……お前の弟とそのダチなら、お前が何とかしろ』

 

等と言われそうだと、洸夜は思わず苦笑してしまう。

また、それと同時に洸夜は、もうその親友と話す事は出来ないと言う気持ちが溢れだし、目に涙が溜まるのを感じたが直ぐに拭いた。

 

「こんな姿なんか見せたら……真次郎の奴に怒られてしまうな」

 

そう思い、洸夜は自分の気合いを入れ直した時だった。

 

ピシッ!

 

突如、まるで卵の殻が割れたかの様に軽い感じで壁に亀裂が入った。

 

「なんだ……? 一体何が……」

 

何故いきなり壁に亀裂が入ったのか気に成ったのと同時に、何故か身体の奥底から湧き出る謎の恐怖感に悩みながらも洸夜は壁に近付いた瞬間。

 

「グオッ! キングフロスト!」

 

壁が突然爆発し、それに巻き込まれて洸夜もふっとんだが、何とかギリギリのところでキングフロストを召喚して受け止めて貰う。

 

『ヒホ~』

 

「ハハハ……ありがとうな。それにしても……いてえ~何なんだ一体……!」

 

呑気に微笑むキングフロストに礼を言い、洸夜は腰を押さえながら立ち上がって入口の方を見た。

すると、破壊された壁の砂煙から人影が出てきた。

 

「村騒ぎがしたので来て見れば、案の定で御座いましてね」

 

「……やっぱりお前か、エリザベス。あと、村騒ぎじゃなくて胸騒ぎだ」

 

洸夜の訂正に、エリザベスはハンカチで口元を抑え、静かに洸夜に空いている方の手を差し伸べた。

 

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その頃……

 

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現在、特出し劇場丸久座(最上階)

 

『キャハハハハハッ! どうしたの? しっかり攻撃しなさいよ……ねッ! マハジオンガッ!』

 

そう言ってカラフルな身体をポールを上手く使いながら攻撃を食らわす『りせの影』。

そして、りせの影や放った雷が総司達の真上に降り注がれる。

 

「あぶねぇ先輩! タケミカヅチ!」

 

雷が降り注がれる間一髪の所で、完二がペルソナを召喚して総司達を庇う。

そして、皆を守った事により雷が完二とタケミカヅチを襲う。

 

「ぐわぁぁッ!」

 

「完二っ!」

 

「完二くん!」

 

「大丈夫ッスよ先輩……タケミカヅチは電気に強いんスよ」

 

そう言って総司達に手を振り、大丈夫な事を知らせた完二は、タケミカヅチを召喚したままの状態でシャドウを睨む。

 

『あ~ら、結構しぶといわね……しつこい男は嫌われるわよ? キャハハハハハッ!』

 

「もう止めてよ! どうしてこんな事するの……!」

 

自分のシャドウを睨み付け、りせは涙目に成りながらもシャドウに言葉を投げるがシャドウはそんなりせの言葉を鼻で笑う。

 

『何訳分かんない事言ってんのよ! りせちーなんて下らない存在のせいで自分を見てもらえないって思ってたのはあんたでしょっ! だからワタシがあんたの代わりにホントのワタシを見てもらってんじゃない!』

 

「そ、そんな……」

 

シャドウの言葉に思わず膝を着くりせ。

それを見て、総司達がりせに駆け寄ろうとするが……。

 

『キャハハハハハッ! それ、マハブフーラッ!』

 

シャドウが、りせに駆け寄る総司達に向かって広範囲に氷攻撃を放った。

 

「クッ! 千枝頼む!」

 

「了解!」

 

「ユニコーン!/スズカゴンゲン!」

 

総司は一角獣の馬型のペルソナを、千枝は総司との絆で新たに得た力『スズカゴンゲン』でシャドウのマハブフーラに対抗する。

ユニコーンもスズカゴンゲンも、どちらも氷無効を持つペルソナ。

二体のペルソナは広範囲に降り注がれる氷を上手く周りに払いのけた。

 

「やるじゃんかよ相棒! 里中!」

 

「でも、攻撃は防げたけどシャドウにはダメージが与えられてない……!」

 

雪子の言う通り、りせの影と互角以上の戦いを見せる総司達だったが、何故かシャドウに攻撃が届かないのだ。

そんな総司達の微かな焦りの様子を見て、シャドウの顔であるアンテナ部分が光りだす。

 

『マハアナライズ!』

 

そう唱えた瞬間、謎の光りが突然総司達をスキャンする。

 

「な、なんだコレは!?」

 

「うわ!やだやだ! 何か気持ち悪い!」

 

「何なんスかコレ!!」

 

謎の攻撃に更に焦る総司達に、先程からシャドウを観察していたクマがシャドウの攻撃の意味に気付く。

 

「分かったクマ! センセイ! あのシャドウは分析タイプクマ! あのアンテナでセンセイ達の事を調べ上げてたクマよ!」

 

「何だって……!」

 

『キャハハハハハッ! 今更気付いても、もう遅いわよ! アンタ達の事は全部調べたわ』

 

「ふざけた事言ってんじゃねえっ! そんな脅しに屈する巽完二じゃねえぞ! タケミカヅチ!」

 

「私も続く……! アマテラス!」

 

完二のサポートをする為、雪子は転生した新たなるペルソナ『アマテラス』を召喚した。

炎無効を持つ上級クラスのペルソナでもある。

 

『デッドエンド!』

 

『マハラギオン!』

 

シャドウに向かって突っ込む完二と、後方から完二を援護する為にマハラギオンを放つ雪子。

タケミカヅチが武器で殴り掛かり、炎がシャドウを包むかの様に襲う。

だが、シャドウは突っ込んで来たタケミカヅチをポールを上手く使って攻撃を交わし、その反動を利用してタケミカヅチを蹴り飛ばした。

そして雪子が放ったマハラギオンも、シャドウに触れる瞬間に消滅する。

 

『あ~ら、口ほどにも無いってのはこの事ね……やっぱり"アッチ"の方を先に封じといて正解だったわ』

 

「アッチだ……? 何言ってやがる!」

 

「挑発に乗るな完二」

 

りせの影の言葉に、総司達は一瞬疑問に思うが直ぐにりせの影を睨む。

また、雪子はコノハナサクヤよりも強化された炎を無効化され、かなり驚愕する。

 

「アマテラスのマハラギオンが……!?」

 

「なあ、相棒……コレってもしかしてピンチか……?」

 

「もしかし無くてもピンチだ……!」

 

流石に今回ばかりは焦りの色を隠せない総司。

その様子を見て、後方でサポートしていたクマにも焦りが出て来た。

 

「ク、クマは……クマはどうすれば……」

 

自分にはどうする事も出来ない。

そう思いながらも総司達を守りたいと思ったクマだが、シャドウの身体が突如光りだした。

 

『さ~て、そろそろクライマックスよ! 大きいの行くわよっ!』

 

「マズイっ!」

 

「此処までなの……」

 

総司達の顔色が絶望に染まりかけたその時……。

 

「嫌クマーッ! ダメクマッ! もう一人はイヤクマよッ!」

 

そう叫びながらクマが総司達の前に出て来たのだ。

その様子に総司達も驚きの表情を見せる。

 

「なっ!? クマ、何をする気だ!」

 

「馬鹿な事はやめろ!」

 

「クマさん!」

 

「み、みんな! クマの勇姿を目に刻み込むクマッ!!!ドリャアアアアアアッ!」

 

『な、何よコイツ!?(分からない……ジャミングでも無い。なのに、こいつの情報が解析出来ないッ!?』

 

そうクマは叫び、身体から光りを放ちながら混乱するシャドウへと突っ込む。

それに気付いたシャドウも攻撃を放とうとするが、タッチの差でクマの方が早かった。

 

『キャアアアアアアアッ!!』

 

「うわあぁぁッ!」

 

「クマッ!/クマさんっ!」

 

シャドウを中心に大きな爆発が起き、辺り一面に煙りが立ち込める。

その様子を見て、最悪のパターンを予想してしまった総司達。

だが、煙りが晴れた場所にいたのはりせ?の姿に戻ったシャドウと、ペチャンコになってボロボロに成ったクマの姿だった。

 

「クマッ!」

 

「セ、センセイ……クマは役にたった……クマか?」

 

「何言ってんだ、役にたったレベルじゃねえよ! 命の恩人だ!」

 

「もう、心配かけて……!」

 

「って言うか……無事なのか?」

 

涙目に成りながら言う千枝と雪子の後に言った陽介の一言に、クマは自分の姿を確認する。

すると……。

 

「な、なんじゃこれゃあッ!? クマの素晴らしい毛並みがぁぁぁッ!? クマの毛並みいいいいいいいいい!」

 

ペチャンコの状態で上手く立ち上がり、そう叫ぶクマの様子を見て大丈夫と判断した総司達は微笑みながらクマを見つめていた。

そしてふと、総司が後ろを見て見ると、りせがの自分のシャドウと話していたのだ。

 

「りせちーも、もう一人の私なんだね。ゴメンね、アナタだけに辛い思いをさせて……私の中には色々な私がいる、洸夜さんが言っていた意味が今なら分かる。私は一色じゃない……こう言う意味だったんだね。私の中には沢山の私がいる……その中で“本当の自分”なんて最初から居なかったんだね」

 

「!……本当の自分はいない?」

 

りせの言葉に、その場に立ち尽くすクマから何か不穏な空気を感じだすが、りせの方に集中している為気付いていない。

 

「……だから、今は胸を張って言える。アナタは私だって」

 

りせの言葉にりせ?は、ゆっくりと頷き、光り輝いて白い服と顔がアンテナの様に成っているペルソナ『ヒミコ』へと転生した。

シャドウがペルソナに転生し、りせが総司達の方を振り向くが、りせは驚愕の表情をする。

それに対して総司達も何事かと思い、振り向いてみるとそこには立ち尽くすクマの姿が有った。

しかし、雰囲気が少し異常な事は誰が見ても明かだった。

 

「本当の自分はいない……?」

 

「クマ……?」

 

「お、おいクマ、 どうした? 何処か頭でも打ったか? まあ、中身は無いけどな」

 

そう言って冗談混じりに陽介がクマに近付こうとした瞬間。

 

「近付いちゃ駄目! その子の中から何か来る!」

 

「へっ? 何かって……」

 

りせの言葉に陽介が聞き返そうとした時。

 

『ハハハ……実に愚かだ』

 

「なっ!?」

 

「アイツは……!」

 

「クマ君のシャドウ?」

 

クマの後ろから出て来たのはクマよりも、一回り身体が大きいクマ?の姿。

しかし、雰囲気は全くの別物であり、その今まで感じた事の無い様な圧倒的な存在感に総司達は息を呑む。

 

「? 皆どうしたクマ?……って、おわぁッ!? ダ、ダレクマか!?」

 

総司達の様子に、今更自分の後ろにいるシャドウに気付いたクマ。

その様子にクマ?は、総司達とクマに視線を交互に動かし、黄色に輝き他者を恐怖させる様な目で見ながら口を開いた。

 

『オマエもキサマ等も本当に愚かだ。こんなに広く、迷いの霧に包まれた世界でどんな真実を求む? そんなのは愚かとしか言えない』

 

「んだとぉっ!」

 

「まて完二!」

 

シャドウの言葉に逆上する完二を総司が手で静止させる。

それに対してクマ?は、更に話を続ける。

 

『元々、真実を手に入れるの不可能だ。どれだけ苦労して手に入れた真実も、それが本当に真実だと確かめる術は無い。だったら己と全てを騙した方が、ずっと楽で賢いじゃないか? 』

 

「どういう意味だ?」

 

クマのシャドウに総司は聞き返した。

 

『……貴様らにも分かる様に言ってやろう。例えばだ、貴様らの目の前で誰かが死んだとしよう……そんな時、貴様らは何を考える? 何故死んだ? 誰かに襲われた? そんな事を考える意味はない。お前がその事をただ死んだと思えば、それはもう真実なのだ』

 

「……なに言ってんだコイツ」

 

「イカれてる……!」

 

クマの影の言葉に総司達は理解出来ないと、表情を青ざめるがクマの影は小馬鹿にした様に笑い飛ばし、クマの方に目を向けた。

 

「……オマエもだ。最初からカラッポなのに何を求める?』

 

「カ、カラッポ……? 失礼しちゃうクマ! クマはコレでも一生懸命考えてるんだクマ! それなのに勝手な事言うなクマ!」

 

『それが無駄なのさ……カラッポのオマエは何かに成りたい為に、何かに成ろうとする。記憶も無い、何もない……それ自身がオマエだ』

 

「うるさいクマ! もう止めるクマッ!」

 

クマがクマ?に突っ込もうとした瞬間、クマ?から謎の力が放たれてクマは吹っ飛び壁にぶつかる。

 

「 ク、クマ~」

 

「クマッ! お前…!」

 

『キサマ等にも真実を与えてやろう……『死』と言う真実を……『死』と言う名の定めを!』

 

そう言った瞬間、クマのシャドウから大量の闇が放たれて自身を包み込む。

そして、その場に現れたのは床を突き破り、顔面の部分から闇を溢れ出しているシャドウ『クマの影』が出現する。

 

『我は影、真なる我……『死』の真実、『死』の定め……キサマ等に与えよう』

 

シャドウに成った事によって存在感が更に増えたクマの影。

その様子に気を圧される総司達。

 

「……なんて奴だ。こんな奴がクマの中にいたのか!」

 

「なんて力……!」

 

「こんな奴とどうやって戦えばいんだよ!?」

 

陽介がシャドウの姿に恐怖仕掛けたその時……。

 

「大丈夫。皆、構えて。今度は私が守るから……ヒミコ!」

 

パリィィィィンッ!

 

カードが砕けると同時にヒミコが出現し、手をリング状にしてりせに載せる。

 

「ペルソナ!? 大丈夫なのその体で!?」

 

雪子がりせを心配するが、りせは笑顔だ。

 

「大丈夫!(私にはお守りの鈴があるから……ッ!? えっ!そんな、ウソ……お守りがない……!?)」

 

りせはポケットに入れていた洸夜から貰った鈴がないことに気付いた。

稲羽の町に来て、初めて自分を見てくれた人から貰った大切な物なのだが。

恐らく、テレビに入れられた拍子に何処かに落としてしまったのだろう。

りせのポケットに、洸夜から貰った鈴は何処にも無かった。

 

「りせちゃん大丈夫?。やっぱり無理なんじゃあ?」

 

「!……大丈夫! 皆構え!? 後ろに飛んでえ!!」

 

無くしたお守りに意識を取られてたりせは、千枝から話かけられ我に戻り、皆に指示を出そうとした瞬間。クマの影が腕を使い総司達に遅い掛かった。

 

End


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