ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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日常
黄昏の七夕


7月3日(火)の影の書

 

 

総司が誘拐された“久慈川りせ”の救出の為にマヨナカテレビに向かい、そこで久慈川りせの抑圧された内面がシャドウとなり出現

総司達はこれと交戦した模様。

ここまでは花村陽介達と同じで今まで通りのパターンだ。

また、久慈川りせのシャドウは広範囲の攻撃や相手の耐性を消す技を持っていたと総司から証言を貰った。

そして、総司達はコレの撃退に成功し久慈川りせは己と向かい合いペルソナ能力に覚醒。

そのペルソナは完全なサポート型で敵の情報やダンジョンの探索に特化されている、これ程までの力は俺のワイトを除けば山岸風花のペルソナ『ユノ』しか現在は確認されてはいない。

このまま成長すれば風花の様にペルソナが転生して更に力が上がるだろう。

そして、久慈川りせの救出に成功した総司達は帰還しようとしたがここで問題が発生した。

テレビの世界での協力者であるクマっぽい生き物からシャドウが出現し、総司達はりせのサポートの援護でコレを向かい討ったが総司は返り討ちにあった。

恐らくはりせのシャドウとの戦闘での疲れや、状態異常の知識が欠けていた為。

そして、仲間が増えた事による油断と無意識の内の仲間任せにより戦いの反応が遅れたのが原因だろう。

流石に危険と判断し、自分もこの戦いに参加。

そして、シャドウの撃退に成功した。

このシャドウは体は大きく素の力も強く、技も多才だったが、隙が大きく見切れないモノではない。

何よりも、色々危険も有ったがタナトスの活躍が一番大きかった。

それから、りせと同様にクマもペルソナ能力に覚醒した。

クマのペルソナ『キントキドウジ』はりせと違い戦いに向いているペルソナの様だ。

だが、コレで総司達にばれてしまったから色々聞かれるだろう、今はりせの身体の具合を理由に見逃して貰っているから説明は後回しにしているが、いつまで持つやら……だが、二年前について言う気はない。

そして、最後にこの事件の犯人に付いてだが、未だにテレビの中では犯人らしき人物又はその気配が確認していない。

恐らく犯人はテレビの中については知っているが、自分は中に入らず被害者だけを入れているのだろう。

そうなると、犯人はペルソナ能力を持っていない可能性もある……。

まあいい、犯人や事件についての詳しい事は『真実の書』の方に記しているから何かあればそっちを見ればいい。

さてさて、総司達への言い訳を考えないとな……。

 

 

 

 

7月7日(土)晴れ

 

りせ救出から数日が経ち、テレビから脱出した総司達は案の定、洸夜に詰め寄ったが洸夜は……。

 

「りせの体調が良くなってからだ。それまでは待て。我慢くらい出来るだろう?思春期の子供じゃ有るまいし」

 

そう言って洸夜はその場を乗り切ったのである。

その言葉に総司達は何とか納得するものや、顔を真っ赤にするもの等様々な反応を見せてくれた。

そして現在、洸夜は……。

 

 

今日は7月7日、つまり菜々子と七夕の準備をしていた。

 

「笹と短冊の準備完了だな」

 

「わあぁ!それどうしたのお兄ちゃん!」

 

洸夜が準備した笹を見て目をキラキラさせる菜々子。

 

「良く釣りする川にいる爺ちゃんに貰ったんだよ……紅金を八匹で」

 

「え?」

 

「何でもないよ、それより叔父さんと総司達遅いな……夕飯が冷める」

 

テーブルの上に洸夜が作った、ちらし寿司を始めとする料理を見ながら、もう少しで仕事から帰ってくる堂島と陽介達と一緒にいるで有ろう総司を七夕の準備と菜々子の頭を撫でながら洸夜は呟いた。

 

「もう少しで着くとおもうよ、それよりお兄ちゃん!“あれ”作ってくれた!」

 

洸夜の足にくっつきながら菜々子は洸夜に聞くと、洸夜は「当たり前だ!」と言わんばかりに笑った。

 

「ふっ、兄に抜かりはないぞ七菜子!」

 

その言葉に菜々子の輝いていた目の輝きが更に輝く。

 

「ほんと!ありがとうお兄ちゃん!菜々子ね、ほんとに楽しみにしてたの!」

 

「ははは……(和む……総司はもう昔の様に甘えてはくれないから、今の俺のオアシスは菜々子だけだよ)」

 

洸夜がそんな事を思っていると玄関の方から声が聞こえてくる。

そして、玄関の扉が開くと堂島が疲れた表情で帰宅を果す。

 

「ただいま、今帰ったぞ。ほらお前等も早く上がれ」

 

「「「「「お邪魔します!」」」」」

 

帰って来た堂島の後ろから総司を始め、紙皿や紙コップを持った陽介と料理らしき物を持った雪子達がいたそして、菜々子はりせを見付けると声を上げた。

 

「りせちゃんだ!なんでなんで!」

 

「ふふふ、こんばんは菜々子ちゃん、今日は皆で先輩の家で七夕パーティーやるって誘われたから来ちゃった」

 

「でも本当によかったの叔父さん?」

 

「ああ、たまにはこんな風に騒がしい七夕もいいだろ……菜々子も喜んでくれてるしな」

 

そう言って堂島は、はしゃいでいる菜々子を見ながら呟いた。そして洸夜はテレビの中から出た後に念のため病院に入院していたが体に異常が無かった為すぐに退院したりせを見て安心していた。

 

「(あのお守りは何とか成功した様だな、だが犯行はまた防げなかったな一体、犯人はどうやって……)」

 

そんな中、菜々子の様子に笑っていた陽介達だが、洸夜の姿を姿が視界に入ると、どんな表情をすれば良いか分からないと言った風に落ち着かないそぶりを見せる。

それに対し、洸夜は陽介達に然り気無く近付き、そっと耳打ちをする。

 

「今日は菜々子が楽しみにしている。悪いが、"その類いの話"は今は無しにしてくれ」

 

洸夜の言葉に、表情には現さないが陽介達は少し驚いた感じになる。

しかし、洸夜の言う通り、笑顔で七夕の準備をしている菜々子の姿を見たらつい納得してしまった。

そして、総司と雪子が洸夜に近づく。

 

「洸夜さん、コレ家の母や板前さん達からです」

 

そう言って、雪子から箱を受け取り蓋を開くと中には如何にもプロが作りましたと言わんばかりの料理が入っていた。

 

「おいおい、良いのかい?こんないいものを頂いて?」

 

「はい、前に相談に乗って貰った時のお礼と思って下さい」

 

「お礼って……なら、その好意は受け取らせてもらおう。あと、お返しとは言わないが夕飯に俺が作った料理を雪子ちゃんと皆も食べてくれ。量なら有る」

 

「えっ!この料理って洸夜さんが作ったんですか?」

 

雪子の言葉を聞き堂島がテーブルを見て驚く。

そこに並べられていたのは、天の川をイメージした様に飾りつけされたちらし寿司を始めとした料理の数々。

最早、趣味の領域を超えていると言っても過言では無かった。

 

「一度スイッチが入ると止まらないものだよな……因みにデザートも準備してある」

 

「コイツは豪勢だな……七夕じゃなく、何かの記念日じゃないのか?」

 

「す、すげぇ……本当に食っていいんスか?」

 

「もちろんだ、だがその前に皿とコップと、そっちのテーブルも綺麗にしないとな……総司!手伝ってくれ」

 

「分かった」

 

「じゃあ私達は料理を並べたりしようか?」

 

「そうしよう」

 

「菜々子も手伝う!」

 

「ふふふ、一緒に頑張ろうね菜々子ちゃん」

 

流石に人数が多いと判断した洸夜は台所のテーブルも使う事にしたが、少し散らかっていたので総司を呼んで片付けを手伝わせる。

それを見た菜々子・千枝・雪子・りせの四人は料理をテーブルの上に置いたりコップの準備をしていた。

 

「なら、俺はこの笹を庭に出すか……」

 

そう言って堂島は笹を折らない様に庭にだす。

 

「ところで洸夜、この笹は一体どうしたんだ?」

 

窓を開けて中庭に笹を出しながら堂島が聞いてきた。

 

「菜々子にも聞かれたよ。川で知り合った爺ちゃんに貰ったんだよ……紅金を八匹で」

 

「朱金って、よく川に沢山いるあの紅い魚か?」

 

洸夜の話を聞いて可笑しそうに笑いながら、堂島は笹を立てる。

 

「俺達は何すればいいんだよ?」

 

 

「花村先輩・・・少なくともこのままタダ飯食らったら男が廃ります!洸夜さん!俺も手伝います!」

 

そう叫びながら完二は洸夜の方に走って行き、一人残された陽介は辺りを見て何処か寂しそうになり……。

 

「菜々子ちゃん!俺にも何かさせて!」

 

 

数分後……

 

現在、食事中

 

 

「「「「「「「うまっ!」」」」」」」」

 

 

全員が料理を口に運んだ瞬間に、皆が一斉に口を開いた。

その皆の言葉に洸夜も満足げな表情をしている。

 

「お前また腕を上げたな!本当に姉さんの子供か?」

 

「母さんの料理の下手さは筋金入りだからね……雪子ちゃん家から頂いた料理も美味しいよ」

 

「え!あ、ありがとうございます。お兄さんの料理も美味しいですよ、特にこのちらし寿司は私は好きな味です」

 

いきなり話を変え、真面目な口調になった洸夜に驚き雪子は一瞬焦る。

 

「兄さんのちらし寿司は久しぶりだな……」

 

「確か……一億と二千年ぶりだったか?」

 

「兄さん、突っ込まないよ」

 

総司に華麗に流された洸夜は、近くでパクパク食べてる菜々子に泣き付く。

 

「菜々子……この所の総司が冷たい気がする。布団の下に自分専用の禁断の本隠してる癖に……」

 

「きんだんの本?」

 

洸夜の頭を撫でながら菜々子は首を傾げて、皆の視線は総司に向かい、そして総司はむせる。

 

「ブホッ!!!!今言う事じゃないでしょ!?」

 

総司の言葉に堂島は何かを察した様な顔で見守り、雪子は菜々子同様に意味を理解しておらず首を傾げて千枝とりせは顔を赤くし、陽介と完二は思う事があるのか目を逸らしている。

そして洸夜は……

 

「全く……食事中に何て下品な話をしているんだ」

 

「兄さんがでしょ!」

 

「さてと……そろそろ菜々子との約束を果す時が来たな……」

 

「無視した……」

 

総司の突っ込みに洸夜は華麗に流し、台所の方へと向かうと何か大きな円上のものを持ってくる。

 

「はい、お待ちどう」

 

ドスンとテーブルに置いた大きな円上のものに、総司達はなんだなんだと思いながら覗き込み、それが何か知っている菜々子は目を輝かせながら覗きこんだ。

そこにあったのは……。

 

「ケーキ?」

 

洸夜が持ってきたのはケーキだった。

しかも、そんじゃそこらの下手なケーキで売っている様な代物ではなく、チョコレートやトッピング用のお菓子と金粉を使い天の川がイメージされており、更に左右にはストロベリーチョコで彩られた織女と、ホワイトチョコで彩られた牽牛も飾られていた。

その異常な完成度に総司を含め、菜々子を覗いたメンバー全員が絶句していた。

 

「これ……どうしたんだ?」

 

メンバーの中でいち早く現実に戻ってきた堂島が口を開いた。

 

「作ったんだよ、菜々子と約束したからね。気に入ってくれたか、菜々子」

 

「うん! 洸夜お兄ちゃん凄い!凄い!」

 

まだ輝くのかと言いたくなる程目を輝かす菜々子に、堂島は苦笑いしながら口を開く。

 

「いや……何でこれを作る事に成ったんだ?」

 

「菜々子と買い物に行った時、ジュネスで七夕風にデザインされたケーキが売っていたんだけど、それを菜々子が気に入っちゃってさ……だけど、よく見たらその販売されていたケーキよりも良いものを作れると思ってさ、現在に至る」

 

「な、菜々子ちゃんの為とはいえ……そこまでやるとは」

 

「恐ろしき、シスコンパワー……」

 

周りが絶句しながらも、そんな感じで夕飯は過ぎていく。

 

そして更に数分後……

 

「短冊に願い事を書くなんて何年ぶりかな」

 

「昔は千枝と一緒によく書いてたよね」

 

「里中の事だから、どうせ腹いっぱい肉が食いたいとかだろ」

 

「何か納得できる……」

 

「いいじゃん!肉美味しいし!」

 

「否定はしないんですね……」

 

現在は食事を終えて、皆で短冊を書いていた。

ちなみに菜々子は堂島の膝の上で書いている。

 

「お父さんも書こうよ!」

 

菜々子の言葉に堂島は苦笑いしながら頭をかく。

 

「まさか、この歳で短冊を書くとはな……」

 

「別に個人の自由なんだから、書きなよ」

 

軽く笑いながら洸夜は、堂島を見ながら呟いた。

そして、やれやれと良いながらも悪いきはしないと言った感じで書く堂島。

 

「俺、書き終わったんで先に飾っていいスか?」

 

「菜々子も出来た!お父さん早く飾って!」

 

「ははは、分かった分かった!」

 

完二が終わって菜々子も書き終わり、菜々子に急かされて堂島も笑いながら庭に出る。

そんな時、りせが洸夜の側によって来て口を開いた。

 

「あの、洸夜さんは何て書いたんですか?」

 

「ん?なに、大した願い事じゃないよ……ほら」

 

そうやって洸夜は自分の短冊を見せると、総司達が覗き込む。

そこには……。

 

“家内安全”

 

「「「「((((初詣かよッ!?))))」」」」

 

洸夜の願いに総司を覗いたメンバーが心の中でツッコミをいれる。

だが、その短冊を見て総司達は自分の短冊を見て肩を落とす

 

「何か、俺の“原チャリ購入”って願い事をした自分が情けなくなって来たぜ……」

 

「私も“腹いっぱい肉を食べられます様に”って願い事を……」

 

「「「「(やはりか)」」」」

 

千枝の願い事を聞いて洸夜を除く、その場にいたメンバーの気持ちが一つになった。

 

「ところで総司達は何て書いたんだ?」

 

洸夜の質問に総司は自分の短冊を見せる。

 

「俺はこれ、“いい一年になります様に”」

 

「「「「「(だから、初詣かよ!?)」」」」」

 

頭は悪くないのだが、何処かネジの外れた感じの瀬多兄弟の回答にメンバーは苦笑いしか出ない。

心の中で皆がそう思った

 

「雪子先輩は?」

 

「私はコレかな“旅館がペット可能になります様に” これいいでしょ!」

 

「(何故にペット?)」

 

目をキラキラさせている雪子の願い事を聞き、何か本人に思う事があるのかと苦笑いしながら思う洸夜だった。

 

「りせちゃんは?」

 

「私は……“初恋が叶います様に”だよ!」

 

 

「初恋って!りせちゃん好きな人がいるの!?」

 

りせの願い事に陽介がいち早く反応した。

 

「え!誰々!」

 

千枝の言葉に顔を赤くしながらりせは洸夜と総司を見る。

 

「「……?」」

 

意味が分からない洸夜と総司が首を傾げると、りせは……。

 

「あ、駄目!私を巡って洸夜さんと先輩が争うなんて……りせはどうすればいいの!」

 

何故か自分の世界に飛んでしまった。

 

「流石はアイドルだな、かなりの演技力だぞあれは」

 

「兄さん、そこは問題じゃないよ」

 

りせを見た洸夜の反応に総司がツッコミを入れてると堂島が窓を開けて出て来た。

 

「おーい、お前等は飾らねえのか?天の川が綺麗だぞ」

 

「やべ!早く飾ろうぜ!」

 

「りせちゃん!早く戻って来て!」

 

「駄目だよ!二人一辺になんて!」

 

「個性的な友人を持ったな総司……」

 

「……おかげさまで」

 

苦笑いしながら、時間は過ぎていく。

 

「わあ……お空がきれい」

 

「本当だな」

 

菜々子は堂島に肩車して貰いながら天の川を見てる。

 

「よし!全員飾り終わったスね」

 

「うん!こうやって見ると久しぶりに七夕って感じたよ」

 

「本当……何か新鮮だね」

 

雪子達は短冊で飾り付けられた笹を見て口を開いた。

 

「どうだ総司?綺麗なもんだろう……」

 

堂島が天の川を口を開けながら星空を見ている総司に話かけて、総司はそのままの状態で口を開く。

 

「本当に綺麗だ、都会じゃこんなにも綺麗に見れないよ」

 

「そうか、ところで洸夜はどうした?」

 

「あれ、お兄ちゃんさっきまでそこにいたよ?」

 

「何処にいったんだろう……」

 

皆が辺りを見てると窓を開けて、家の中から出て来た

 

「俺はここだよ」

 

出て来た洸夜の手には先程飾った短冊とは違う短冊を持っていた、そして洸夜はその短冊を笹に飾り始めた。

 

「あれ?洸夜さん、短冊はさっき飾ってたスよね?」

 

「ああ!お兄ちゃん二つも願い事するのズルイ!」

 

不思議に思った完二と菜々子の言葉に、洸夜は笑いながら飾る。

 

「ははは、違う違うこれは願い事じゃなく手紙みたいなもんだよ」

 

「手紙?だれにだ?と言うか何で七夕に手紙?」

 

堂島が洸夜に聞くと、洸夜はゆっくりと夜空を見ながら口を開く。

 

「何と無くだよ、願い事が夜空に届くなら手紙も届くかなって思ってさ……今はもう会えない親友に届く思ったんだよ」

 

「兄さん……?」

 

夜空を見ながら何処か寂しそうにしている洸夜を見て皆が黙ると……。

 

「菜々子も書く!」

 

「? 誰に書くんだ?」

 

菜々子の声に堂島が聞くと菜々子は迷いなく口を開いた。

 

「お母さん!菜々子ね、お母さんに菜々子は元気ですって手紙書く!」

 

「!?……そうか、なら書くか?俺も書きたくなったよ」

 

菜々子の言葉を聞いて堂島は嬉しそうに笑うと菜々子を下ろした。

 

「叔父さん、短冊はまだ余ってるよ」

 

「悪いな洸夜」

 

そう言って菜々子と堂島は家に入り、その場には洸夜と総司達が残された。

 

「……今、この場には俺達しかいない、聞きたい事があるんじゃないのか?総司?いや“自称特別捜査隊”の諸君か?」

 

「!? そこまで知ってたんですか!」

 

洸夜の言葉に陽介が驚くが洸夜がその名を知ってた訳を話す。

 

「いや、お前等……ジュネスであんなにデカイ声で喋ってたら誰でも気付くぞ、近所のおばさん達がお前等を可愛そうな人を見る様な目で見てたからな」

 

「「「「「……」」」」」

 

「え?特別捜査隊って何?」

 

「総司達に聞けば分かる」

 

今頃恥ずかしくなって顔を抑える総司達と、意味が分からないりせは首を傾げる。

 

「その事はいいですって!それよりお兄さんには聞きたい事があります!」

 

「千枝の言う通りだよ、兄さん聞かせて貰えるよね?」

 

総司達に迫られても洸夜はたいして焦った様子もないが、何処か困った様子で口を開いた。

 

「すまんな、今日は気分が乗らないんだ。また、明日にして貰えないか?」

 

「兄さん!」

 

「洸夜さん!流石がにそれはないっスよ!」

 

洸夜の返答に総司達が抗議するが……。

 

「すまないな……」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

洸夜の真剣な表情に何も言えなくなってしまった。

すると家の中から堂島が顔を出す。

 

「おいお前等、もう遅いからそろそろ家にかえれよ」

 

堂島の言葉に雪子が慌てた様に時計を見る。

 

「えっ!?もう10時過ぎ!私そろそろ帰らないと」

 

「私も、おばあちゃんが心配するから」

 

その言葉に陽介達も流石に帰らないとまずいと思ったのか帰る準備を始めた。

 

「今日は仕方ないな……洸夜……さん。明日は絶対に教えて下さいよ」

 

「分かった分かった」

 

陽介達にそれだけ言うと洸夜は笹の近くに寄り、自分が書いた手紙を見る。

 

「兄さん……」

 

「ん?どうした?」

 

陽介達がいなくなった庭で総司と洸夜だけがいる形になり、総司が洸夜に声をかける。

 

「これだけは聞きたかったから、兄さんは今回の事件の犯人を知ってるの?」

 

総司の質問した理由は至って簡単で、総司から見て洸夜は頼りになる兄であり、またその兄が自分達よりもペルソナ等に詳しいかったから、もしかして犯人についても既に手掛かりを掴んでいると思ったのである。

 

「いや、近づいてはいると思うがまだまだ遠い」

 

「……そう、兄さんでも分からないのか」

 

「だが総司、全く手掛かりがないとは限らないぞ」

 

洸夜の言葉に総司は視線を洸夜に移した。

 

「どういう事だよ、さっき兄さんは近づいているだけだって……」

 

「それと手掛かりがないとは話は別だ、だがコレはまた後で話せばいいか……それより俺が言いたいのはもう少し隠密に行動しろ。叔父さんとかに何か言われても助けられないぞ」

 

 

「うっ……頭では理解してるんだけど……」

 

洸夜の言う通り、自分達の行動は隠密とは掛け離れた行動の為に総司は言い返せなかった。

 

「まあ、この件も明日話すから今日はもう家に入れ」

 

そう言って洸夜は笹に視線を戻して、コレ以上は今聞いても無駄だと思った総司は家に入った。

……そして誰もいないのを確認すると洸夜は口を開く。

 

「やっぱり、お前とは違って何か棘のある言い方しか出来ねえよ……お前を含め誰も救えなかった俺が、またペルソナを使ってシャドウと戦っているって知ったらお前は何て言うだろうな……なあ、『■■■』」

 

それだけ言うと洸夜は家に戻り、洸夜が戻った後に風が吹き短冊が揺れる。そして洸夜が書いた手紙の内容が月に照らせれながら見える。内容は短くただこう書かれていた。

 

“大切な友、そして仲間へ感謝と謝罪”

 

 

END


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