ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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ドラえもんが、本当に教育型ロボットなのか疑う今日この頃。


ヒーローごっこ

同日

 

現在、河原

 

「お前等は、いつまで“ヒーローごっこ”をするつもりだ?」

 

「……えっ?」

 

最初、総司達は洸夜の言葉の意味が理解出来ず、理解するのに数秒掛かった。

洸夜のその言葉に、陽介が前に出て洸夜を睨む。

 

「今、なんつった……!」

 

そう言うと陽介は、その目に怒りを宿して洸夜の側に行く。

 

「ちょ! ちょっと花村!?」

 

「花村先輩!、落ち着いて下さいよ!」

 

陽介を落ち着かせ様と、千枝と完二が立ち上がるが陽介は聞かない。

 

「いつまで“ヒーローごっこ”をやるつもりだと言ったが……何だ?」

 

「俺達の何処がヒーローごっこ何だよっ!!!」

 

「全てだが?」

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

当然だと言わんばかりに、洸夜から言い放たれた言葉で総司達は少なからずショックを受ける。

しかし、そんな様子の総司達を無視し更に言葉を重ねる。

 

「……お前等はペルソナを何だと思っている?。自分達だけに与えられた力とでも思ったのか?。まさか本当に、自分達だけが特別だと思ったのか?」

 

「……」

 

洸夜の言葉を総司達は黙って聞いていた……いや、黙って聞く事しか出来ないのだ。

彼等はまだ、ペルソナ能力を便利な力としか思っていないのだから……。

 

「俺はずっと陰ながら、お前等を見守って来た。最初は誰でも特殊な力を手に入れたらそう思うだろうと思い、多めに見たが……総司と、ついこの間覚醒したばかりのりせとクマを除くメンバーからは、覚悟と力の自覚が全く感じられない」

 

「覚悟……」

 

「自覚……」

 

洸夜の言葉をまるで、自分自身に聞かせる様に呟く陽介達。

この様な言葉は、総司ですらハッキリとは頭の中に入って居なかったであろう。

総司も、洸夜の言葉を同じ様に呟いている。

 

「お前等は前に、そこにいる天城雪子を助ける為に誰にも連絡しないで助けに行って、周りに心配掛けた事があったな」

 

いつもとは違う雰囲気の洸夜に、総司達は戸惑いを見せるが言っている事は当たっているので頷く。

 

「……あの時の軽率な行動は誉められらたものでは無かったが、天城雪子を助けたのも事実。友の為に危険を冒してまで助けに行った良い友人……」

 

洸夜の少しは認めると言った言葉に、陽介達は安心した。

だが、洸夜の話はまだ終わっていなかった。

 

「……しかし、その行いも、その者達のその時に持っていた覚悟によって変わる」

 

「また覚悟……」

 

「どう言う意味……?」

 

「……その前に聞いとかないとな……お前等は心のどこかで、この事件を楽しんでるんじゃあないのか? テレビの世界、ペルソナ、シャドウ、非現実的なこの状況を心のどこかでお前等は楽しい、面白い、ワクワクするとか思っているんじゃあないのか? 」

 

洸夜の話ながら此方を見る目に陽介達は思わず目を背け、総司はここで目を逸らしてはいけないと思い、ただそれに耐えた。

 

「もし、お前らが天城雪子を助けた時にほんの少しでも、楽しい、ワクワクする等と言った感情が無かったならば……俺はお前等に謝罪しよう。あそこまで叱ってすまなかったな……と」

 

「えっ? さっきから何のことを言ってんッスか?」

 

雪子の時の一件を知らない完二やりせは今一理解出来無かったが、総司を始めとした雪子救出に参加していたメンバーは洸夜の言っている事が分かっていた。

 

「……だが、もしもお前等がその時に何の覚悟もなく、楽しい、ペルソナ能力は自分達だけが持っている力、シャドウと戦うのはヒーローみたいで面白い……なんて浅はかな考えを少しでも持って助けに行ったのなら話は変わる……お前等は、自分達の好奇心の為に天城雪子の命を利用して、高々学校をサボる理由に使った」

 

「なッ! なんだよそれはッ!」

 

「私は……私達は雪子の為に言ったんですッ!」

 

洸夜の言葉に陽介と千枝が反発するが、洸夜は怯まず、それどころか鼻で笑った。

 

「フッ……なら、否定すれば良いだけなんじゃないのか? 自分達は友達の為に行った、学校も有ったが友達の命が掛かっているんだから仕方なかった……とな。だが、この言葉を使うのが許されるのは、本当に友の為だけに行った奴だ。たった少しでも先程の様な感情が有った奴は、決して使う事が許されない言葉だぞ」

 

「そんなの……!」

 

陽介達は否定しようとする。

だが、言葉が途中で止まってしまう。

まるで、自分達自身が何かを否定するかの様に。

この際、嘘だろうがなんだろうが何か否定的な言葉を言えばそれで済む。

しかし、それでも陽介達は言葉が出なかったのだ。

 

「千枝……?」

 

黙り込む親友に雪子は心配して近づくが、千枝は雪子に申し訳ない様な表情を見せる。

 

「どうした? 俺の言っている事が違うのならば、そう言えば良いだけだぞ?」

 

洸夜は何か言ってみろと言った感じで、雪子に目を背ける陽介達に問いかけるが陽介達は言葉を発する事をしない。

陽介達は気付いているのだ。

ほんの少しでも、あの時の自分達に洸夜の言う感情が有った事を。

そんな陽介達の様子に、洸夜はやれやれと言った表情で溜め息を吐いた。

 

「お前等は、本当に分かっていないんだな……この力は誰かを助ける事に使えれば、その逆も同じだ。場合によっては誰かを傷付ける力になり、最悪死に至らせる事も出来るんだぞ」

 

洸夜の言葉に、総司を含む全員が再びショックを受けていた。

心のどこかで自分達はペルソナは自分達だけに与えられた力と思ったり、命令すれば攻撃したりしてゲーム見たいに敵を倒す特別な力だと思っていた。

そして、ましてはこの力が誰かを傷付けたり、命を奪う力になったり等は陽介達は多少考えていたかも知れないが、実際にそう感じた事は無い筈だ。

 

「ッ……!」

 

洸夜から放たれた言葉は的確に自分達の少なからず思っていた事を指摘され、総司達は何かを喋りたくても口が開けなかった。

 

「いいか……? お前等がこれからも事件を追うのは勝手だが、お前等がこれからも変わらずにヒーローごっこ気分で事件を掻き乱したり、ペルソナと言う力の責任が自覚出来ないなら、俺がお前等を叩き潰してでも事件から手を引かせる」

 

「っ! うるせえよ……!」

 

「おい、陽介!」

 

あれから場所を移動していなかった陽介が、拳を握り締めて再度洸夜に近く。

 

「さっきから言わせておけば、好き放題言いやがってッ! あんたに何が分かるんだよ!、何も知らない癖に好き勝手言うな!!」

 

「……知ってるよ」

 

「ッ!?」

 

洸夜の言葉に陽介は怯む。洸夜は今回の事件を言う程知らないと思って言った言葉が、逆に洸夜に言う機会を与える事となった。

 

「メディアに映る人がマヨナカテレビに映る事も、そして、映った人が狙われている事も……全部知っている。現に、俺は二人目の被害者がテレビに居た時、俺も後を追ってテレビに入ったからな」

 

「なっ! 二人目って……まさか、小西先輩? あんた、居たのかよ……! 小西先輩が死んだ時、あんたはテレビの中に居たのかッ!!」

 

「……確かにいた」

 

「ッ!? クッ!」

 

……二人目の時、つまり陽介にとって特別な人物である小西早紀が亡くなった時の事。

それなのに、洸夜の何気ない感じで話す態度に陽介の怒りは頂点に達し洸夜の首筋を掴んだ。

 

「花村ッ!?」

 

「おいおい……!」

 

陽介の行動に驚く千枝達だが、総司と陽介に掴まれている洸夜の二人だけは冷静な表情をしていた。

 

「なんでだよ……! あんたは俺達が死にかけた、あのクマのシャドウを圧倒する程強かったじゃねえかよッ! なのに……なのになんで先輩を守ってくれなかったんだッ!!」

 

「その事に関しては……すまなかった。今と成ってはただの言い訳だが、気付くのが遅かった……そう言い様が無い」

 

そう言って本当にすまないと言った表情の洸夜。

只の言い訳にしか成らないが、マヨナカテレビの噂もしらず、ましてはテレビに入れる事も分からなかった為に出遅れて手遅れに成った。

だが、それを見て花村は拳を握り締めた。

 

「クッ……! クソ……クソォォォォッ!!」

 

そう叫びながら、陽介は握り締めた拳を洸夜へ向かって放った……が。

 

「……」

 

「うわっ!?」

 

洸夜は自分を掴んでいる陽介の腕を掴み、そのまま陽介を放り投げた。

そして、陽介はそのまま身体を一回転して地面に叩き付けられ、洸夜は地面に仰向けに成った陽介に視線を送った。

だが、その視線は決して陽介を責める様な目ではなかった。

また、視線を送られた陽介はそのまま洸夜を睨み付けた。

 

「グッ!?……クソ!」

 

「確かに小西早紀の事は俺にも責任がある……しかし、だからといってお前に殴られる気は無い。だが、お前が小西早紀の一件の事を誰かのせいにしたいなら、俺が“この町にいる間”は俺のせいにしろ」

 

「なっ……!」

 

洸夜の言葉に、目を開く陽介。

しかし、洸夜の話はまだ終わって居なかった。

 

「だがな、俺がこの町からでたら、お前はどうするんだ?……俺がこの町にいる間は俺のせいにして良いが、俺が居なく成った後はお前はどうする?」

 

「クッ……! 俺は……俺は……!」

 

洸夜の言葉に陽介は地面に倒れたまま呟き、その陽介に完二が近付いた。

 

「少し落ち着いて下さいよ花村先輩……洸夜さんの言うのも最もだ、オレ等はペルソナや、この事件の事を何処か軽く見ていた……」

 

「……私も、心の何処かで事件を楽しんでいたのかも知れない」

 

完二と雪子が自分の思っていた事を、下を向きながら答える。

今のこの場所では、誰も他人事とは思っていなのだから。

 

「でもよ……」

 

二人の言葉を聞いても、それでも納得出来ないと言った様子の陽介を見て洸夜が口を開いた。

 

「……お前達の為でもあるから、今度はハッキリと言う。“ペルソナを、お前等のヒーローごっこに使うな”」

 

「っ!?」

 

その言葉に陽介は黙ってしまった。

そして、時計を見ながら洸夜は口を開いた。

 

「ペルソナやシャドウを甘く考えると、いつか必ず後悔する事に成る……さて、悪いがもう帰るぞ……コレ以上はもう釣れないしな」

 

そう言うと席を立ち、釣り道具を片付けてその場から去る洸夜……。

そんな洸夜を誰も止める事等出来る訳も無く、洸夜が河原を出ようとする。

すると……。

 

「待ってくれ兄さん」

 

「……何だ?」

 

総司が洸夜を呼び止め、呼び止められた洸夜は釣り道具を置かずにそのままの状態で総司の話を待つ。

 

「確かに、兄さんの言う通り俺達はこの事件やペルソナを軽く見ていたんだと思う……力を持つ責任や、誰かを傷付けてしまうかも知れないと言う覚悟が俺達には足りなかった……でも、誰かを守りたい、この事件を終わらせたいと言う気持ちにウソはない」

 

「総司、口なら幾らでも言えるぞ?」

 

兄である洸夜の鋭い視線に危うく目を逸らしそうに成る総司だが、ギリギリの所で踏み止まる。

ここで目を逸らせば、自分達の戦いは本当にここで終わりの様に思えたからと、総司は思った。

 

「……でも、この気持ちはウソじゃない」

 

「それを俺が信じず、お前等を事件から手を引かせると言ったら?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

雰囲気が変わる洸夜を見て驚く陽介達だが、総司は視線を洸夜から話さずにこう言い放つ。

 

「兄さんにも納得してもらう絶対に……! その為に兄さん、俺達と闘ってくれ!」

 

「「「「「「ええっ!」」」」」」

 

まさか、事態がそんな風になるとは思っていなかった陽介達は驚きの余りに声をあげた。

しかも、洸夜は自分達が死にかけたクマのシャドウを圧倒した人物なので驚くのも無理は無い。

また、洸夜自身も総司の言葉に頷いた。

 

「成る程な、百聞は一見に如かずか……なら、場所は今から一時間後の、テレビの中のいつもの広場でいいか?」

 

その言葉に総司は頷く。

 

「問題無い」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

その場で、勝手に闘う約束している瀬多兄弟とその様子を見て混乱している陽介達。

だがしかし、止める者はいない……これがいつか、通らなくては行けない道だと皆が分かっているから。

 

END


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