同日
現在、テレビの中の世界
洸夜は総司達が最初にいる広場でクマと会話をしていた。
手にはいつもの刀を持っていたが鞘の部分を紐で結んでおり、抜けない様にしている。
まずは、刀を抜かせる事から始める様子。
すると、霧の中から総司達が現れた。
「よっ、来たか……」
「兄さん……」
「あ、センセイ!」
総司達の姿を確認したクマが、総司の下へひょこひょこと走って行く。
「クマ、もう大丈夫なんだな?」
「もちろん! コレからはクマも一緒に戦うクマよ! そしてクマ無双の幕開けクマッ!!」
「即、討ち死にじゃねえよな……?」
テンションの高いクマの様子を見た陽介が苦笑いしている中、総司がクマにコレからの説明をする。
「クマ、実は……」
「大丈夫クマ、大センセイから大体聞いたから問題ないクマ!」
「そうか……」
総司の言葉に頷くクマだが、クマの話はまだ終わって居なかった。
「それで、もしセンセイ達が勝ったら大センセイとある約束をしているクマ!」
「約束……? 一体何を……?」
「いつまでやってんだ……それより、やるんだろ?」
クマの言葉を遮る様にそう言って、刀を肩に置く洸夜。
その言葉によって互いの姿を確認した瞬間、その場の雰囲気が変わる中雪子が前に出て口を開く。
「あの洸夜さん、私達は……!」
雪子が何かを喋ろうとしたが洸夜は無言で手を前に出し、静止させる。
「さっきも言ったろ……口では幾らでも言えるとな……行動で示せ!」
「皆、構えろッ!」
そう言い放ち、刀と召喚器を構える洸夜。
その様子を見て武器を構える総司達。
そんな総司達の姿を見て、洸夜は少し驚いてもいた。
「(なんだ……? 河原で見た様な表現をしていない。むしろ、先程まで感じなかった覚悟を感じる……一体、この短時間で何があった?)」
総司達から河原の時の様な、いじけた様な雰囲気は既に感じられない。
その事が気になり、洸夜は総司達に声を掛けそうになったが、先程の自分の言葉を思いだし、つい微笑んでしまった。
何が有ったかは、この戦いで見定めれば良い。
そう思った洸夜は、一歩前に出た。
「今回は、この刀は鞘に納める……それが悔しかったら、抜かせて見せろ」
洸夜の言葉に総司達はムッとし、洸夜と総司は構えた
そして、互いに声を上げる。
「ペルソナ!」
「「「「「「「ペルソナ!」」」」」」」
お互いにペルソナを召喚し、総司達はまず様子見の為距離を取る。
しかし、それを見た洸夜は、そんな事は無意味と言わんばかりに行動に移した。
「行くぞ……オシリス!」
『マハジオ!』
「っ! 皆避けろ!」
「ぐわっ!」
スピードが高い下級の全体技を、総司達に放つオシリス。
それに対し、総司の咄嗟の指示でオシリスの先制攻撃を何とか直撃は避けたが、風属性のペルソナを使う陽介はカスってしまい、ダメージが大きかった。
しかし、その様子を見た総司達は疑問に感じた。
「大丈夫かよ花村先輩!? つか、何でただのマハジオがあんな威力何だ!?」
「確か、マハジオの威力ってそんなに高く無いよね!?」
洸夜のオシリスが放った『マハジオ』の威力が高い事に動揺する総司達。
その様子を見た洸夜は、やれやれと言った様子で説明に入る。
「ペルソナやシャドウの中には持っているだけで効果が発動する『自動効果スキル』と言うのがある。主な例は苦手属性を無くす耐性・無効・反射等があげられる……ちなみにさっき、マハジオの威力を上げたのは『ブースタ』と言うスキル。お前達も何人かは習得しているんじゃないか?」
その言葉を聞いた総司達は一瞬だけ驚いたが、すぐに表情を戻し、気を引き締めた。
戦いの最中教えてもらうのは嬉しいが、それは、まだ洸夜に余裕がある証拠。
そんな中、陽介が立ち直り攻勢にでる。
「確かに、俺のスサノオにそのスキルが在るぜ……行け、スサノオ!」
『疾風ブースタ+ガルーラ!』
「マハジオが使えるって事はそのペルソナは電気属性だろ!、だったら弱点は風だぁ!!」
陽介のペルソナのスサノオから放たれた疾風が、洸夜とオシリス目掛けて突っ込む。
だがが、洸夜はそのまま動かずにモロに疾風を喰らった。
「うお!避けなかった!?」
「弱点属性を何でクマ……?」
陽介とクマが不思議がる中で総司が声を上げた!
「陽介、クマ!構えろ! 兄さんがあれで終わる訳がない!」
「正解だ、総司……」
「うお! 本当だ……」
そこには弱点属性の疾風を喰らった筈なのに、たいしてダメージを喰らっていない洸夜とオシリスがいた。
いや、正確には、オシリスで防いだ洸夜の姿だった。
弱体化しているとは言え、オシリスの風耐性のスキルは健在。
陽介の攻撃は、蚊の攻撃に等しかった。
しかし、そんな事は分かっていない総司達は直ぐに行動を起こす。
「な、何でクマ!?」
「りせ! ペルソナで兄さんの情報をッ!」
「うん、分かった!」
そう言ってりせは、洸夜の情報を探る為にヒミコの力を使うが。
「悪いが……みすみす情報を渡す気は無い」
「えっ!? なんで!」
「りせちゃん! どうしたの一体!?」
ヒミコに目の辺りを隠して貰いながら騒ぐりせに、千枝が駆け寄った。
「そ、それが……洸夜さんの情報が見えないの!」
「ええッ! なんで!?」
りせがヒミコの力を使って見ているビジョンには、洸夜や洸夜のペルソナ達の周りに砂嵐、黒い靄なモノが邪魔をして情報が全く見えないのだ。
その様子にあたふたするりせだったが……。
『カシャシャ!』
「きゃあっ!」
「ヒッ! ちょ、なにコイツッ!?」
りせと千枝の目の前に現れたのは骸の顔をしたペルソナ『ワイト』。
ワイトは、りせと千枝の前で錆びた鎌を振り回しながら二人をおちょくるかの様に周りを飛び回る。
そんな様子を見ていた洸夜は、ワイトを自分の隣に呼び寄せた。
「驚かしてすまないな、コイツはワイト。探知タイプであり、ジャミング能力も携えているペルソナだ」
「ジャミング!?」
「だから洸夜さんの情報が分からないんだ…!」
「つーか、そんなのありかよ! きたねー!」
「汚くない、能力を活かしていると言ってくれ……クー・フーリン! タムリン!」
陽介の言葉を返した洸夜は話終わると同時に、クー・フーリンとタムリンを召喚して総司達に攻撃させる。
『デスバウンド』
『ジオンガ』
クー・フーリンは槍に力を入れ、総司達に衝撃波を放つ。
そして、タムリンも槍から巨大な雷を前方にいた雪子に放った。
全体攻撃で相手を崩し、単体攻撃を合わせて放って的確に相手を倒す、洸夜がタムリンとクー・フーリンの二体を同時に召喚した時に、良く用いる戦術の一つ。
「ッ!? やらせるかよ! タケミカヅチ!」
だが、完二がいち早くタムリンの攻撃に反応し、雪子への攻撃をタケミカヅチが受け止めた。
しかし、いくらタケミカヅチが雷属性に強いとは言え、タムリンの技の威力はそれなりのものだった。
「グッ……!」
「完二くん!?」
完二がタムリンの雷を受け止めた事で隙が生じ、クー・フーリンが先程放ったデスバウンドが完二と雪子に迫る。
しかし、総司達が間一髪のところで二人の間に割り込んだ。
「下がれ二人共! オニ!」
「雪子! スズカゴンゲン!」
「先輩!」
「千枝!」
二人が割り込んだ事により直撃を避ける事が出来た完二と雪子。
だが、物理耐性とカウンタ持ちとは言え総司と千枝にダメージが入り、陽介が二人に駆け寄る。
「相棒! 里中!」
「問題ない! それより、兄さんから目を離すなッ!」
「右に同じく、こっちも伊達に肉は食って無いんだから!」
「二人は下がってて、今度は私達が! 行くよ完二君!」
「うっス!」
そう言って陽介の言葉に大丈夫だと言う合図の代わりに、武器を構え直す二人。
そして、雪子と完二が洸夜に接近すが、洸夜にはその行動は既に予測済み。
「突っ込むだけでは勝てないぞ! クー・フーリン、タムリン」
雪子と完二を迎撃する為に洸夜はクー・フーリン達を前に出す。
「へっ! 俺達を忘れんなよ! 行くぞクマッ!」
「よっしゃ! クマもやっちゃうもんね!」
「ッ!? いつの間に居たんだ……?」
雪子達の後ろに隠れていた陽介が、上手く雪子達をサポートし、スサノオとキントキドウジがクー・フーリン達を迎え打った。
スサノオはクー・フーリンに目掛けて拳を放ち、クー・フーリンはその拳を槍で受け止めて戦闘を繰り広げる。
そして、キントキドウジはミサイルをタムリンに片っ端から投げまくり、タムリンはそれを避け続ける。
「今よ! アマテラス!」
「おらぁっ! タケミカヅチ!」
陽介達が作り出した隙をついて、アマテラスとタケミカヅチが洸夜に迫る。
だが、洸夜に焦りの色は全く無かった。
それどころか、総司達の攻撃を見ながら、何かを探している様な素振りを見せていた。
「危ない危ない……スザク! ベンケイ!」
「ッ!? 新しいペルソナ……! でも負けられない! アマテラス!」
「力なら負けねえぜ! タケミカヅチ!」
「……俺のスザクとベンケイを嘗めるな」
『『アギダイン!』』
スザクとアマテラスのアギダインが互いにぶつかり合い、二匹の周辺に存在する火の粉が桜の花びらの様に辺りに降り注ぐ。
「良い火力だ……(だが、コロマルのケルベロスの火力を知っているからか、それ程では無いな)」
「む……! アマテラスの力はこんなものじゃありません! アマテラス!」
洸夜の小馬鹿にする様な言葉に、頬を膨らませる雪子はアマテラスに指示を出す。
雪子の掛け声と同時に、アマテラスは舞を踊るかの様に周りに炎を発生させながら空中へ移動する。
「火炎ブースタに空中戦か……迎え撃つ! スザク!」
『火炎ガードキル』
洸夜の掛け声と同時にスザクは、アマテラス同様に空中に飛翔しながらアマテラスに赤い光を放つ。
そして、それを受けたアマテラスのステータスから炎無効が消えた。
「しまった!」
「追撃しろ、スザク!」
火炎ガードキルのせいで、守るものが無くなったアマテラスにスザクが迫り、アマテラスも武器である白銀の剣で迎え射とうとするが、スザクはアマテラスの頭を掴んで床に叩き付けた。
「アマテラスッ!?」
「雪子! 私が援護する!」
コノハナサクヤの時よりも力を増した筈にも関わらず、ペルソナの扱いが一枚も二枚も上手の洸夜に、雪子は驚くしかなかった。
また、雪子が劣勢に成った事により、千枝が雪子の援護の為にスズカゴンゲンで空中戦に入る。
陽介もクマも、タムリン達に苦戦している様で援護は出来ない。
「迎え打つぞ……セイテンタイセイ!」
スザクへ向かうスズカゴンゲンに、雲に乗った孫悟空を連想させる様なペルソナが迫る。
スズカゴンゲンの両刃剣と、セイテンタイセイの如意棒がぶつかり合い、空中を飛ぶスザクに再びアマテラスが迫る。
そんな時……。
「はあぁぁぁッ!!」
「ッ!(そうきたか……!)」
ペルソナが空中で激戦を繰り広げる中、千枝が洸夜目掛けて飛び蹴りを仕掛ける。
それに対し、洸夜は少しは驚きが有ったものの、軽く横に飛んでかわす。
「ペルソナはペルソナに任せ、ペルソナ使いを直接狙う。ペルソナ任せにしない、その方法は評価出来るが、突っ込むだけなら子供にも出きる」
洸夜は、避けると同時に千枝にそう言うが、千枝は、そんな事は分かってると言った表情で洸夜を見た。
いや、洸夜の"後ろ"を見ていた。
「今だよ、完二君ッ!」
「ッ!?」
千枝の声に、洸夜はすぐに後ろを振り向く。
そこには、自分の武器である、盾を振り上げていた完二の姿だった。
本来は身を守る物なのだが、完二は盾を両手で掴んで完全に鈍器にし、洸夜に降り下ろした。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
「やるな……! だが、文字通り隙だらけだッ!(鈍器の類いなら、扱いは真次郎の方が上だな)」
下手に隙が生まれない様に、最低限の動きで鈍器を扱っていた真次郎とは違い、無駄に大きく振り上げていた為に、その他の部分が隙だらけの完二。
その隙を、洸夜が見逃す訳が無く、未だ抜いてない刀で完二の横腹に突きを入れる。
美鶴や明彦と言った、嘗ての友と、生身でもシャドウとやりあえる様に訓練していた洸夜とは違い、他のメンバーよりは戦う力が強いとは言え、基本的に力押しの千枝と完二では洸夜を止めるにはまだまだだった。
「ぐおっ!?」
「完二君ッ!? 強い……!けど!」
完二が洸夜の反撃に合い、膝を着くのを見た千枝は、ここで諦めてたまるかと言った表情で洸夜に接近戦を仕掛ける。
洸夜の腹や、顔面等に蹴りを連続で放つ千枝。
しかし、明彦の拳を知っている洸夜にとっては交わせないものでは無かった。
「(まだまだ、荒削りだが、狙いは良い……しかし)俺ばっかりを狙うのは良いが、今度はペルソナが疎かに成って要るぞ?」
「スズカゴンゲンッ!?」
空中戦に関して、機動力は完全にセイテンタイセイの方が上であり、スズカゴンゲンはセイテンタイセイの隙の無い連続攻撃に、己の武器で防いで致命傷だけは避けているが、押されて要るのが現状だった。
ペルソナを独立に近い形で指示を出すのは、かなり難易度の高い技術。
ペルソナ使いとしての、経験等が自分達よりも高い洸夜には、まだまだ通用する様な策ではなかった。
その様子に千枝は、直ぐ様スズカゴンゲンに指示を出した。
そして、主である千枝の指示を得た事により、スズカゴンゲンは動きが変わり、セイテンタイセイの動きについて行く。
『疾風斬ッ!』
動きに滑車が掛かったスズカゴンゲンとセイテンタイセイは再び空中戦を繰り広げ、スズカゴンゲンは両刃剣を振り回しながら突っ込み、セイテンタイセイも迎え撃つと言わんばかりに突っ込む。
互いのペルソナは、真正面からぶつかり合うのかと思わせるかの様な速度で空を走り、セイテンタイセイが目の前に迫った瞬間、スズカゴンゲンは武器を振った。
しかし……。
「えっ!」
千枝は、信じられないモノを見たかの様に、目を開いた。
スズカゴンゲンが武器を降り下ろした瞬間、セイテンタイセイが姿を消し、スズカゴンゲンは何もない空中を斬ったのだ。
「後ろが、がら空きだ……」
洸夜の言葉と同時に、消えていたセイテンタイセイがスズカゴンゲンの後ろから出現し、そのままスズカゴンゲンを後ろから地面目掛けて叩き落とした。
洸夜がしたのは、スズカゴンゲンと激突する寸前でセイテンタイセイを戻し、また直ぐに今度は、攻撃をミスして隙が出来たスズカゴンゲンの真後ろに再召喚すると言う荒業をやってのけたのだ。
だが、その突然の出来事に、千枝は何が起こったのか分からず絶句し、それを戦いながら見ていた陽介達も驚きを隠せないでいた。
「今、何が起こったんだ……」
「千枝ッ!?」
「だ、大丈夫……」
あれだけ攻撃したにも関わらず、全く通用してない事に対する精神力と体力面の疲れが今に成って出て、膝をついた。
その様子に洸夜は、千枝はもう限界だと判断し、セイテンタイセイを戻そうとした時だった。
「スズカゴンゲンッ!」
倒れそうだった千枝が、気合いをいれたかの様に力強く立ち上がりスズカゴンゲンの名を叫び、千枝の言葉に答えるかの様にスズカゴンゲンは、槍投げの様な体勢で両刃剣を空に全力で投げ、その投げた両刃剣がアマテラスと空中戦を繰り広げていたスザクに突き刺さった。
「しまーーッ!」
「完二君ッ!雪子ッ!」
「うおっしゃあぁぁぁぁぁぁッ!!」
その突然の行動に、今度は洸夜が驚愕し、両刃剣が突き刺さったスザクはもがいていた。
そして、千枝の言葉に完二と雪子が動き、完二はベンケイの足止めをさせていたタケミカヅチを近くに呼び、タケミカヅチから雷が流れる。
その様子を見た洸夜は、千枝達がやろうとしている事に気付く。
「ッ!(避雷針の原理ッ! 弱体化の影響で、スザクの雷無効は消えている……)ベンケーーッ!」
「はあっ!」
「ッ!?」
千枝達の策を防ごうとする洸夜は、ベンケイに指示を出そうとしたが、洸夜の目の前に、自分と同じ様に刀を鞘にしまったままで振り上げる総司の姿があった。
その総司の攻撃に洸夜も反射的に刀で迎え撃つ。
「ペルソナだけでは無く、自分自身で来たか……(このタイミング……攻撃のチャンスを待っていたのか!)」
「ペルソナだけに頼っていちゃいけないと思ったからさ……完二!」
「うッス! タケミカヅチッ!」
『ジオンガッ!』
タケミカヅチのジオンガは、スザクに刺さった両刃剣に直撃し、スザクを中心に雷が放電し、そのスザクにアマテラスが接近する。
「アマテラスッ!」
そして、アマテラスはそのまま持っていた剣でスザクを切りつけ、スザクは消滅し、洸夜のペルソナ白書に戻る。
その様子に洸夜は、総司達の成長に驚きを隠せ無かったが、ベンケイをそのまま千枝達にぶつける。
「(固有スキルの影響で、そろそろステータスが危ないが、まだベンケイはやれる)ベンケイッ!」
洸夜の指示にベンケイは、ヒビが入り始めた刀を両腕に取り、構え出す。
『木っ端微塵斬り』
ベンケイから放たれる多数の斬撃が、千枝達に迫り、それを防ぐかの様にタケミカヅチが前に出た。
「ぐッ!?」
「「完二君ッ!」」
「完二!」
「よそ見とは余裕だな」
洸夜の言葉に、総司は洸夜の方を向きなおして刀を持つ手に力を入れる。
そして、陽介達が辺りで皆がペルソナと戦っている中、洸夜と総司は互いの目と目が合った瞬間、行動を起こす。
「コウモクテン!」
「フウキ!」
洸夜は右手に小さな小刀の様な武器を持ち和風の鎧を纏い、赤く険しい顔をしたペルソナ『コウモクテン』を。
総司は青き身体に、右手に巨大な刃を持つペルソナ『フウキ』を召喚した。
『『キルラッシュ!/ミリオンシュート!』』
コウモクテンは武器を鮮やかに振り回し、フウキは巨大な刃で連続で突きを繰り出し、互いにぶつかり合った。
お互いの攻撃は、互いの体力を削り合い、周辺の床等を傷付ける。
だが、お互いにこのペルソナでは決着が付かないと判断したのか洸夜はペルソナ白書を開き、総司は内ポケットから新たなペルソナカードを取り出す。
そして、互いにそのペルソナの名を叫んだ。
「オーディン!」
「キンキ!」
洸夜が召喚したのは頭には金色の冠を身体にはマントを纏い、右手に巨大な槍を持ち、『皇帝』のアルカナを持つ中でも上位のペルソナ『オーディン』。
総司が召喚したのは全身がその名の通り金色であり、全体的にステータスが高く物理無効を持つペルソナ『キンキ』。
だが、洸夜はオーディンを召喚すると、微かに苦痛な表情をする。
「……クッ(オーディン、コイツが消えてなくて良かった……だが、流石は『皇帝』の上位ペルソナだ、かなり堪える……!)」
弱体化の影響も有るのか、消えていない上位のペルソナを召喚する時の身体の負担がいつもよりも多く感じる洸夜。
ただでさえ、先程までオーディンを除いて、四体もペルソナを同時に召喚していた。
その為、洸夜が普段感じるペルソナ召喚による負担は普通のペルソナ使いよりも大きい。
「ッ!……オーディン!」
「ッ!?……キンキ!」
オーディンを長くは使えないと判断した洸夜は直ぐに攻勢に出る。
それを見た総司もタッチの差でキンキに指示を出す。
そして、オーディンの槍がキンキの薙刀が互いにぶつかり合い、洸夜と総司も互いにぶつかり合った。
オーディンの槍は雷を纏いながらキンキを貫こうと、キンキはオーディンを切り捨てようと振り回す。
また、洸夜は、趣味が剣術だけあって上手く総司の刀を掬う様に攻撃してバランス等を崩させ、そこに刀を降り下ろす等の攻撃を仕掛ける。
それに対し総司も、なんとかくらい付き、洸夜をヒヤヒヤさせる様な攻撃をして反撃する。
そんな総司の姿に、洸夜は思わず笑みを溢した。
「クマのシャドウとの戦いから、数日しか経っていないのに……強く成ったな総司」
「俺は兄さんの弟で、皆はその俺が選んだ友達だから……それに」
「ん……?」
総司の話の続きに聞き返す洸夜。
そして、総司も洸夜の目をしっかりと見ながら口を開いた。
「ペルソナは心の力……俺達のペルソナと言う力を持つ覚悟が、兄さんに認められたいと想いが俺達やペルソナに力をくれる!」
「ッ!……そうか」
総司の言葉に洸夜は弟達の成長が嬉しく感じ、胸の奥が暖かくなるのを感じた。
まさか、自分の言葉にここまで強く成るとは思っていなかった洸夜。
だが、そこまでして自分に挑むと言う覚悟に、洸夜は弱体化しているにも関わらず無理に力を使う。
「(確かに強く成った……だが、まだ甘い!)オーディン!」
『マハジオダイン』
「くっ……!」
総司達を認めたいと感じる洸夜だったが、まだ認めるには危険過ぎると判断して総司にマハジオダインを放つ。
そして、総司は攻撃をよける為に後方に飛んだ……だが。
「なっ! 相棒!?」
「「「「えっ!?/きゃっ!/うおっ!?/クマ~!?/」」」」
総司が後方に飛ぶと、何故かそこにいた陽介達と背中合わせでぶつかった。
その様子に総司達全員が困惑した表情をする。
「陽介達、なんで此処に……!?」
「いや、俺とクマはただ、相手の攻撃をよける為に後ろに飛んで……」
「私達もそんな感じで……」
「つーか! おい、りせ! なんで知らせねんだ!」
皆が状況を説明する中、完二が状況を一番良く見える筈のりせに文句を言う為に、後ろを向くと……。
「うるさい! 馬鹿完二! こっちだって大変……ああ、もう! 邪魔しないでよ~!!」
『カシャシャ!』
そこには、辺りをクルクルと自分の回りを飛ぶワイトに妨害されて半泣きのりせの姿があった。
また、妨害しているワイトは余裕だと言わんばかり更に飛び回る所を見ると、完全にりせの事を小ばかにしている様にも見える。
「ん?」
そんな時、総司が有る事に気付く。
「どうした、相棒?」
「さっきまで居たペルソナ達がいない!」
総司の言葉を聞き、陽介達も辺りを見ると、先程まで戦っていた洸夜のペルソナがいない事に気付いた。
「総司……お前等にはまだ足りない事が有る。まず、お前等は基本的に目の前の敵にしか集中しない事、だからいざという時に周りの状況が分からなかったり、味方に対するサポートが出来なくなる。まあ、さっきスザクを倒した時のは良かったが……」
「……」
洸夜の言葉に総司達は黙って聞く。
今思えば、洸夜の言う通りだった事が有ったからだ。
「だが、シャドウの中には知力が高いものも存在する……故に、そんな行き当たりばったりや、その場凌ぎの状況判断や連係、又はサポートがいつまでも続くと思うな……だから、こう言う事にもなる、ムラサキシキブ!」
『コンセントレイト』
ムラサキシキブの羽衣と本から青白い光が現れる。
「……最後の最後で油断したな」
「ッ!? 皆別れーー!」
『メギドラ』
キュイイイイン!!
耳鳴りの様な音が鳴ったと思った瞬間、青白い光と巨大な爆発が総司達を包み込んだ。
メギドラは万能属性を持つ、防ぐ事が出来ない技
だが、メギドラを放った洸夜の額には汗が流れていた。
「ハア……ハア……(総司達の思いに答えるとは言え、コンセントレイトは無理し過ぎたな……)」
コンセントレイトは、技の威力を上げてくれるが、それを使うのに掛かる負担も大きい。
しかも、只でさえペルソナ能力が弱体化している洸夜は、コンセントレイトの負担を上乗せした感じでのメギドラの発動は、洸夜には大きな負担と成っていた。
「先輩ッ!?」
「大丈夫だ……ちゃんと、手加減はしてある」
りせが皆を心配する中、洸夜はメギドラによって発生した砂煙りを眺めながら話す。
そして、総司のワイルドの成長にも驚いていた。
「(……この短い期間でここまでワイルドの力を使い熟してるとはな。俺でさえワイルドを使い熟すのに一年ぐらい掛かった……だが、総司も『アイツ』と同じで、成長が早い)」
洸夜はかつて、自分と同じ様にワイルドの力を持った『少年』の事を思い出し、総司の姿をその少年と被って見えた。
そして、そんな事を思いながら洸夜は、晴れて来た砂煙りに静かに近付く。
「さてと、どうやってあっちの世界へ運ぶか……何回かに分けーーー」
気絶しているで有ろう、総司達をどうやって運ぶか考えながら、総司達の下へと近付き、洸夜がそこまで言った時。
「イザナギッ!!」
「ッ!? オシリスッ!」
突如、煙りの中から総司と大剣を構えたイザナギが飛び出して来た。
それを洸夜はギリギリの所で迎え撃ち、洸夜と総司の刀、オシリスとイザナギの大剣がぶつかる。
「総司、お前……あのメギドラを耐えたのか……!?」
「俺一人の力じゃない……皆の力だよ」
「なに……?」
総司の言葉を聞き、洸夜は先程メギドラを放った場所に視線を移すとそこにはボロボロに成り、横に成っている陽介達の姿が有った。
「ま、間に……合った……な」
「ハァ……ハァ……本当にギリギリだった」
「瀬多君……」
「後は頼みます……」
「……(返事が無い、只のクマの様だ)」
「まさか、アイツら……」
息を切らしながら喋る陽介達の姿に洸夜は、総司へと視線を戻し、それを見た総司は静かに頷いた。
「……皆が守ってくれたんだ」
「やはりか……」
陽介達の姿を見て察するに彼等は、あのメギドラが放たれた瞬間に総司だけでもと思い、全員で総司を庇ったのだ。
その咄嗟の状況判断に洸夜は驚きを隠せないでいた。今までの戦いでは、その様な行動を見せなかったから無理はない。
「(何故だ……今までそんな判断能力は無かった。なのに、たった少し言っただけで……!)」
陽介達の異常な成長速度に、驚きを隠せない洸夜。
自分が言ったのは、ついさっきの事。
それにも関わらず、陽介達は総司を捨て身で庇う荒業をやってのけたのだ。
そんな中、総司が口を開いた。
「兄さんの御蔭だよ」
「なに……?」
「兄さんだから、俺達は全力でぶつかれた。だから俺達はこの戦いで大きく成長出来たんだ。それに、兄さんは戦ってる時に色々スキルについて説明したり、それぞれの短所を気付かせる様に戦っていたよね」
「気付いてたのか……」
総司の言う通り、洸夜が陽介達にそれぞれペルソナをぶつけた理由は短所を気付かせるため。
まず陽介達にブースタや耐性等のスキルの事を教え、その後は雑魚シャドウならともかく、強敵との戦いの時に個人だけで戦う時の効率の悪さを何気なく気付かせた。
また、仲間との連携についても気付かせる。
だが、ここまで成長するとは洸夜にも予想出来なかった。
そう思っていた洸夜だが、そんな時、総司は一度距離をとって刀を抜いた。
「兄さん……刀を抜いてくれ。そして、俺達の覚悟を確かめて欲しい」
「……成る程(……馬鹿野郎、もう、お前等からの覚悟は見させてもらった)」
総司の言葉に洸夜は、後ろの方で倒れている陽介達に目を向けた。
何の覚悟も無い者が、メギドラクラスの技を身を持って仲間の盾に成る様な事はしない。
まだまだ足りないものも有るが、今はそれだけで十分だった。
しかし、洸夜は敢えてその事を言わず、ゆっくりと刀を抜刀する。
「……本気でやるなら、そうだよな…………来い、総司ッ!」
その言葉と同時にぶつかる洸夜と総司。
そして、同じくぶつかり合う二体の仮面。
ペルソナ使いとしては、もう十分に判断した。
今からは、只純粋に一人の兄として、弟の成長を知る為の戦いになる。
END