同日
現在、お見合い会場(とある料亭)
あの後、ホテルでスーツに着替えた洸夜達はお見合い会場であるとある料亭に来ていた。
見た感じはそれなりであり、ホテルとは真逆で完全に和風な雰囲気を漂わせていた。
・・・のだが。
「……。(ホテルといい、料亭といい、なんか全部が中途半端な気がする……)」
先程のホテルもそうだったが、文字通り良いとは言えるが別に凄く良いとは言え無い場所ばかりで、洸夜は自分の感覚が狂って来たのを感じた。
ただでさえ乗り気では無いお見合いなのに場所すら中途半端ばかりでは、はっきり言って気分も最悪に成っても可笑しくない。
洸夜はそんな事を思いながらスーツの襟を直していると。
「うわー! すごいすごい!」
洸夜が中途半端と思っていても、基本的に稲羽の町から出た事の無い菜々子の好奇心を刺激するには十分な様だ。
菜々子は入口に飾られている鎧の前で目を輝かせながらはしゃいでいる。
「こら、菜々子……あまり騒いだら駄目だろ」
「……は~い」
堂島に注意されて少し頬を膨らます菜々子。
こう言う所も菜々子の数少ない子供らしい一面の一つ。
そんな光景を総司と二人で見ていると、料亭の着物を着た女性従業員らしき人が堂島と菜々子に近付いた。
「ふふふ、騒がしく成っても大丈夫ですよ。今日はこの料亭全体がお見合いのため貸し切りですので」
「「「はっ!?」」」
「……?」
従業員の言葉に洸夜達は絶句してしまい、今一意味を理解していない菜々子は首を傾げていた。
ほとんどお客が見られないと口には出していないが、そう思っていた洸夜達。
貸切状態ではなく、本当に貸し切り。
その言葉を聞きはするが、実際に体験する機会は滅多にないだろう。
洸夜は気分が悪くなり、表情が悪くなって行く。
「おいおい、中途半端な料亭とは言え貸し切りとか、相手側は何を考えているんだ……」
「それだけ相手側は本気なんじゃあ……? なんか、周りの従業員の人達もそわそわしているし」
「勘弁してくれ……それにまあ、少なくとも料亭一件を貸し切りに出来る程の財を持つ相手だ、迂闊に変な断り方が出来なく成ってしまった……」
総司の言葉に思わず頭を抑える洸夜。
周りの店員の落ち着かない様子。
貸し切りと言う徹底ぶり。
しかも、相手側の情報が何一つ聞かされていない中、料亭一つを貸し切れる力を持つと言う情報だけでは頭が追い付かず、ただただ洸夜は不安に成るだけだった。
「一体、母さんは何処とお見合いを?」
「分からないが、多分相手側は何処か一般的な考えが無い相手だ……」
「兄さん、良く分かるね」
「俺にも良く分からないが……何故か俺の勘がそう言っている。(それに、なんか胸がざわつくな……)」
互いにそんな会話をして緊張感を和らげようとする洸夜達。
しかし、虫の知らせと言うべきなのだろうか。
洸夜はざわざわとする自分の胸を落ち着かせる為に掴んだ。
そんな中、堂島が洸夜達を呼び寄せる。
「洸夜! 総司! そろそろ移動するぞ」
堂島の言葉に、思わず洸夜は膝を付いた。
まだ、お見合いは始まってもいないのに、雰囲気は何処か今にも燃え尽きそうだ。
「クッ!…… ついに来たか、死刑宣告が」
「馬鹿言ってないでそろそろ……ってあれ?、兄さん髪型が?」
「?……髪型?……ああ、何本か飛んでいるな……」
さっきまで車で寝ていたからか、朝にはちゃんとセットした洸夜の髪の一部がはねていた。
四方八方に自己主張する洸夜の髪。
流石にこのままお見合いをする訳にも行かず、洸夜は面倒だと思いながらも髪型を直す事にした。
「仕方ない……総司、すまないがワックス持ってるか?」
「一応持って来て正解だったよ……」
洸夜の言葉に総司はスーツの内ポケットからワックスを洸夜へと手渡す。
「すまない! あと先に行っててくれ、髪型を直したら直ぐに行くから」
そう言って洸夜は通路の角にあるお手洗いへと走って行ってしまった。
そんな様子の洸夜に、堂島は思わず溜め息を吐いた。
「全く……仕方ないから俺達だけでも先に行くか……」
「そうだね……」
「では、こちらに成ります」
そう言って総司達も案内されるまま、お見合いに使う部屋へと案内された。
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現在、とある一室(お見合い場所)
総司達が案内されると相手はまだ来ておらず。
また和風な一室で、部屋な真ん中にはテーブルに座布団、周りには和風な置物が置いてあった。
そして、お見合いをしそうな和風の部屋を考えて下さいと言われたら、十人中八人ぐらいが同じイメージをしそうな部屋。
そんな事を思いながら、総司達は座布団に腰を下ろす。
「そろそろだよね……」
「ああ……この調子なら洸夜は遅刻決定だな。言い訳を考えとくか……」
等と、総司は堂島とたわいもない話をしていると、座布団に座って周りを見ていた菜々子が堂島と総司に話かける。
「ねーねー、おみあいが終わったら洸夜お兄ちゃんは結婚するの?」
「結婚……するかしないかはまだ分からないが、恐らくしないだろう」
「兄さんの性格から考えて、それが妥当だね」
「……菜々子わかんない」
何故、洸夜の性格だと結婚しないのか理解出来なかった菜々子。
その様子に総司と堂島が苦笑いしていると……何やら廊下から段々近付いてくる足音と話し声が聞こえて来た。
どうやら、相手側の人達が来た様だ。
「……全く、明彦のおかげで危うく遅刻する所だったな」
「こんな所にレイピア何か持ち運べる訳が無いだろ」
「その事じゃない。時間ギリギリまで部屋から出てこなかった事だ。何かあったのか?」
「ふッ……もう一度、力について考えていたんだ。子供に恐がれない力について……」
「?」
「どちらにしろ、相手の方々を待たせる訳には参りません。ですから早く中に入る事をオススメ致します」
「……」
外から聞こえてくる声から察するに相手側は三人。
しかし、総司は話の内容からしてまともでは無い気がした。
「……。(兄さんの予感が当たった……)」
そんな事を冷や汗をかきながら思っている総司。
そして、襖が開かれた……。
スーーー
「……! (また綺麗な人だ……)」
襖が開く音と共に中に入って来たのは赤く綺麗な和服に身を包み、髪は和服以上に綺麗な紅色で容姿共に完璧な女性だった。
先程出会ったアイギスもそうだったが、総司は今日だけで二人も並以上の美人に出会った事に成る。
陽介辺りに言ったら……。
『お前! なに学校サボってそんなうらやましい事をしてんだよっ!!』
……等と言われそうだが今回は仕方ない。
総司が陽介で勝手な想像していると、和服の女性が向かい側に腰を下ろして頭を下げた。
「この度はどうぞ宜しくお願い致します……」
「いえ、こちらこそ宜しくお願い致します」
和服の女性と堂島が互いに挨拶を交わし、それに吊られて総司も頭を下げた。
「……。(それにしても、凄く威厳を感じる……)」
総司が相手の女性に感じたのは綺麗だと言うだけでは無く、彼女から伝わるとてつもないリーダーシップと雰囲気。
だからこそ、堂島もそれ相応の対応をしているのだろう。
また、見ただけで伝わるその感じに総司が頭を上げる時にかなり上げずらく感じていると……。
「あっ! アイギスお姉ちゃん!」
「っ!?」
隣にいた菜々子の声を聞いて頭を上げると、先程出会ったアイギスと明彦の姿が会った。
「菜々子ちゃんに、総司さん……?」
「まさか、本当にまた会うとは……世界は本当に狭いな。(俺の事は……?)」
驚いているのはどうやら総司だけではなく、アイギスと明彦も驚いている様だ。
アイギスは思わず瞬きを繰り返し、明彦も似たように見えるが、奈々子に呼ばれたのがアイギスだけだったからか、何処か複雑な表情をしている。
また、驚いているのは総司達だけではなく、初対面の堂島と女性もキョトンとしている。
「なんだ? 菜々子と総司の知り合いか?」
「アイギスと明彦も……初対面では無いようだが?」
「実はさっき、菜々子がアイギスさんにぶつかちゃって……」
「いえ、それは私の不注意で……」
説明中……。
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「そうか、それは申し訳無い事を」
「いえいえ、こちらこそ娘がご迷惑を………」
「もう良いよ……それにさっきアイギスお姉ちゃんと一緒に気をつけるって約束したもん!」
「ふふ、そうですね」
すっかりアイギスの事が気に入った様子の菜々子。
基本的に堂島家は男成分が強いため、菜々子にとってアイギスとの会話は良い息抜きに成っている。
また、アイギスにとってもこの位の小さな子と接する機会も少ない為、良い経験に成っていた。
そして、その二人の様子に女性は、何処か嬉しそうに微笑んだ。
「アイギスがお姉ちゃんか……それに、既にお互いが知っている様だな。……なら、後は私だけか」
そう言って女性は姿勢を正し、静かにお辞儀をした。
「……改めまして、私は桐条美鶴と言います。呼び方も美鶴で構いません」
「桐条……!?」
女性『美鶴』の言葉に真っ先に反応したのは意外にも堂島だった。
また、桐条と言う名を聞いた瞬間、堂島が雰囲気が刑事としての雰囲気に成ったのを総司は感じた。
「どうかしましたか……?」
「なにか、気に障る事でも……」
美鶴の後に言葉を発したのは、これ以上菜々子に怖がられまいと黙っていた明彦だった。
しかし、堂島の雰囲気が変わった事を察したらしく、明彦からも鋭い雰囲気を感じた。
しかし、その雰囲気を感じて堂島は我に帰ったらしく、頭を抑えてやってしまったと言わんばかりにため息を漏らす。
「あ~、お見合いの場で言う事じゃないが……俺は刑事をやっていてな」
「刑事を……なら、仕方ありませんね」
あの様な雰囲気を出されて怒るかと思った総司だったが、美鶴は怒る所か納得した様子で頷いている。
「(なんで、刑事だと関係有るんだ?) 叔父さん、一体何の話を……?」
「……ここで言うような事じゃない」
堂島に一蹴されてはこれ以上聞く事は出来ないと総司は感じ、静かに黙るしか無かった。
するとそんな時、アイギスが静かに手を挙げた。
「あの、宜しいでしょうか?」
「え? はい、どうぞ……」
まさか、此処でアイギスが口を開くとは思って無かった堂島は呆気な感じで返答してしまった。
だがアイギスは気にした様子もなく、目線を総司に向けると静かに口を開いた。
「貴方様は菜々子ちゃんと総司さんの叔父さんなのですか?」
「はい……?」
「え……? (アイギスさんはなにを言っているんだ? そう言えばさっき菜々子が自己紹介した時にアイギスさんは考え事をしていたし、菜々子も苗字を言って無かった様な……?)」
いきなりのアイギスの質問に、堂島と総司は困惑するが堂島は何かを察したらしく、落ち着いて返答する事にした。
「もしかして、そちらも見合い相手の情報を知らなかったんですか?」
「恥ずかしながら……知る時間が無かったモノで」
本当は有ったのだが、ここまで来たのだから相手の事を知らずにぶっつけ本番でお見合いをしようと思っていた美鶴にとって、結局知る事は無かった。
そして、美鶴の反応に堂島も軽く頭を下げた。
「あ、いえこちらも似たようなモノですから……それで先程の質問だが……私は堂島遼太郎と言いまして、この子は堂島菜々子で私の娘ですが、こっちは甥っ子の瀬多総司です」
「「っ!!」」
「瀬多……?」
堂島の言葉に驚愕するアイギスと明彦。
そして、聞き覚えのある苗字に美鶴は無意識に総司の方を目を開き、口を開いた。
「すみませんが、私のお見合い相手は誰なんでしょうか、彼ですか?」
無意識かどうかは分からない。
だが、ある考えが脳裏を過った美鶴の心拍数は徐々に早くなっていく。
そう感じながらも、美鶴はこの場で一番見合い相手らしい総司が自分の相手かどうか気になった。
また、そう言って総司を見る美鶴だが、堂島は普通に首を横へと振る。
「いえ、こいつは私達と同じ付き添いで、貴女のお見合い相手はこいつの兄貴です。まあ、今は髪を直して遅れていますが……」
「そう言えば兄さん遅いな……」
そう言って総司が美鶴達の方を向いた瞬間驚愕した。
先程と違って美鶴達三人全員が信じられないと言った表情をしていたのだ。
「兄さん……!? (あの女の子と、この少年が兄妹じゃないなら……この少年の兄はまさか……!)」
「……。(もしかしたら、私はとんでもない勘違いをしていたのでしょうか……?)」
アイギスについては大丈夫なのだが。
段々と、ある考えが強くなって行く美鶴と明彦の表情は青白くなっていた。
それに気付いた菜々子も心配して声をかける。
「……具合わるいの?」
「い、いや大丈夫だ、心配してくれてありがとう」
美鶴は菜々子を心配させまいと笑顔でそう答えるが、無理をしているのは明らかだった。
そして美鶴は何かを呟く様に総司を見た。
「瀬多……そしてあの容姿……すいません、その者の名は!」
「?……総司の兄の名前は瀬多ーーー」
堂島がそこまで言った時だった。
トントン……!
堂島達の後ろの引き戸が叩かれ、それと同時に声が発せられる。
「すいません、遅れてしまいました……」
総司達の後ろの方から声が聞こえ、総司達は一段落した気分に成った。
その声の主を総司達は知っているのだから。
「兄さん……やっと来た見たいだね」
「たく……髪直すのに時間をかけすぎだ。……じゃあ、あとは本人から自己紹介させた方が言いと思いますので……ほら、早く入って来い」
「“洸夜”お兄ちゃん遅刻だよ!」
「「「……っ!!?」」」
菜々子の言葉で美鶴達は思わず息を呑む。
そして、襖の戸は開かれ始める。
だが、その開かれている間の時間は美鶴達にとってはとても長く感じた。
明彦も珍しく呼吸が乱れ落ち着きがない。
美鶴自身も不安と言う名の重苦しい感情によって、胸が苦しく成るのを感じていた。
そして、襖は開かれた。
「悪かったって、今からちゃんと………っ!? お前等……!」
襖を開けた洸夜は美鶴達が視界入った瞬間、まるで此処にいる訳が無いモノでも見たかの様に頭がフリーズしかけ、そして驚愕した表情のまま視線を外せないでいた。
「洸夜……!」
「洸夜さん?」
「洸夜」…
また互いにそう言って、洸夜と美鶴、アイギス、明彦の四人は互いに無意識に目を限界まで開いた状態のままお互いを見続けていた。
只、今言える事は……現在において、もしこの再会を仕組んだのが神だとしたら、洸夜はその神に祈る事は無いだろう。
END