例
ペルソナ3・4
キングダムハーツⅠ・Ⅱ
ドラクエⅧ
FFⅩ
鋼の錬金術師 飛べない天使 赤きエリクシルの悪魔 神を継ぐ少女
テイルズシリーズ
アナザーセンチュリーズエピソード
スパロボ
グラモンバトル
夢双シリーズ
ぼくの夏休み
ぼくは小さい
等々
同日
現在、ホテル(屋上)
「シャドウワーカー……?」
アイギスから放たれた聞きなれない単語。
名前からして、シャドウ対策の部隊なのは間違い無いだろう。
しかし、アイギスは自分達が参加していると言った。
つまり、美鶴達もこの部隊に参加していると言う事は、少なからず桐条が関係している可能性が高い。
洸夜は色々考えながらも、顔を上げた。
「何なんだそれは……桐条グループが組織した対シャドウの私設部隊か?」
嘗て、桐条が招いた惨劇。
もう二度とあんな事が無いように、何か起こっても直ぐに対応出来る様に桐条が独自で組織した部隊。
少なくとも、名前だけ聞いた洸夜はそうイメージしてしまう。
しかし、洸夜のそんな考えとは裏腹にアイギスは否定する意味を込めて首を横に振る。
「いえ、この部隊に桐条グループ……美鶴さん達が関わってはいますが、実際にはシャドウによる被害を阻止すべく戦い、そして 警察組織と合同で設立した物……非公式ですが、政府公認の部隊です」
「っ!? 政府……公認……?」
自分は童話か何かでも聞いているのだろうか?
アイギスは今なんと言った? 政府公認?
洸夜はアイギスの言葉を直ぐには受け止められ無かった。
ましてや、鵜呑みには出来ない。
例え、アイギスの言葉を信じるとしても、それは政府・警察組織が全員かどうかは分からないが認めたと言う事になる。
この非現実的事を……。
「……認めたのか、警察が……政府が……この非現実側の世界を……! と言うよりも、教えたのか? 桐条の闇を……?」
「……それが美鶴さんの覚悟です。それと、皆が全て信じている訳では有りませんが……少なくとも、シャドウワーカーに所属している方々はシャドウや影時間を理解してくれています」
「……」
言葉が出なかった。
あの事件に関わった中で、自分だけが取り残されている。
美鶴達処か、警察等もシャドウの存在・危険性を理解し始めている。
進んでいるのだ。
周りの者達は確実に前へと……。
それに引き換え自分は、前に進む処かその場で立ち止まっている。
最悪、後ろに逃げているかも知れない。
アイギスとの短い会話。
それだけでも、洸夜にとってはかなりの衝撃を与える物と成っていた。
「アイギス……S.E.E.Sメンバーで参加しているのは、お前達以外には誰々なんだ……」
まるで何かに怯える子供。
それ程までに怯えた様な表情で、恐る恐ると言った様な感じでアイギスに問い掛ける。
そんな洸夜に対し、アイギスも察してくれているのか、何処か寂しそうな表情で洸夜を見たが直ぐには表情を戻し、洸夜の問いに答え様とする。
他者に対し、どんな事が有ろうと見下す事になる為、可哀想とは思わない。
そう言う考えを洸夜が持っている事を知っているアイギス成りの優しさで合った。
「……私達以外は正式に所属はしておりません。ですが、皆さん……美鶴さんが協力要請してくれれば積極的に協力してくれています」
「……そうか。(つまり、事実上……あのメンバーの中で参加していないのは俺だけか)」
決定的だった。
他のメンバーはペルソナで誰かを助けている。
それに引き換え、自分は何をしている?
過去に囚われて迷ってばかり……。
休養の目的で向かった稲羽の町でも、事件解決と弟である総司を助ける事に目的を変更したにも関わらず、結果は二人も犠牲者を出し、犯人についての手掛かりを掴む処か総司達の成長の為とは言え、天城雪子を見捨てる様な形をとってしまった。
総司達が間に合わなければ自分が救出していた……今に成っては言い訳でしかないが。
仕方ない……そんな言葉で片付けては成らない。
だが、そのかいあって総司達が成長したのも事実。
間違っても無ければ正しくも無い。
まるで、光等と言った道標も無い迷いの中をさ迷っている様だ。
「俺は……。(俺は……一体、どうすれば……いや、何を迷っている。俺は既に覚悟を決めた筈だろ……例え間違っていたとしても、その事から目を背けない……責任は背負う……そう決めた筈だ……)」
自分の行動や力。
一つ疑問に思えば段々とその疑問が強大に成り、最終的には自分の全てが信じられなくなる。
自分は本当に総司達を守れるのか?
洸夜は段々と膨れ上がる不安に脳内が軽くパニックに成りかけた時だった。
"……"弱さ"から目を反らすな"
「っ!? (今の声は……夢の……!)」
突如、洸夜の頭に響く謎の声。
それは、先程洸夜が見た悪夢に出てきた洸夜?の声そのものだった。
まるで脳に直接言葉を送られている様に、言葉が発せられると頭痛がしてしまう。
洸夜はまとわり付く様な声を払う様に顔を左右へと振るが、声は消えなかった。
"……色を棄てるな。逃げるな……弱さは消えない"
一々勘に触れる言葉。
一体、自分に何を伝えたいのか?
お前は一体何者なのか?
洸夜は心の中でそう呟くが、その言葉を無視でもしたかの様に言葉は更に頭に響いてくる。
五月蝿い。
聞きたくは無い。
「 くっ……! うるせぇッ! もう黙りやがれッ!!」
脳内に響く一方的な言葉に洸夜は、とうとう限界に達し思わずそう叫んでしまった。
そして、そんな洸夜の行動に驚くのはその隣で話していたアイギスだ。
「っ!? どうかしたんですか?」
驚いた表情をしながら洸夜を見るアイギス。
自分が何か気にさわる事でも言ったのかと言った表情だ。
また、その様子を見る限り先程の声は当然の如く自分にしか聞こえていなかった事を意味した。
「…….。(アイギスには聞こえて無いのか。……落ち着け、今は昔のメンバーの話をしたからだ。只、精神的に参っている……今日は色々あったからな……)」
アイギスの冷静な様子によって段々と冷静さを取り戻す洸夜は、自分にそう言い聞かせながら額の
汗を拭った。
汗を拭った手を見れば、手の甲に先程の汗が大きな水滴の様に成っていた事に洸夜は驚く。
自分は何をこんなに冷や汗をかく程に不安に成っているのか。
今日は色々とトラウマに近い感情を唐突に刺激されただけ。
こんな事では稲羽の事件を解決するなど無理な事だ。
洸夜はそう心の中で呟きながら精神を安定させた。
そして、今の空気を変える為に洸夜はポカンとしながらも、現状を見守っているアイギスに話し掛ける。
「すまん、何でもない……ところで、さっきの話だが……どういう意図だ? 俺に、そのシャドウワーカーに参加して……美鶴の奴を……ふう、支えて欲しいって言うのは……」
自分で言うには今一抵抗のある言葉に、溜め息混じりで話す洸夜。
そして、洸夜の言葉にアイギスは少し困惑してしまうが、こちらの話も重要である為、何かを考える様な感じで屋上からの夜景に目を向ける。
「……洸夜さん。美鶴さんが桐条の当主で、グループをトップなのはご存知ですよね」
「ああ、前にニュースでやってたからな……"若すぎる"トップとか言われて代々的にな……それで、其と俺が何の関係がある?」
「……そこまでニュースで知っているなら分かっている筈です。そのあとに桐条が荒れた事を……」
「……」
アイギスが言っている桐条が荒れたと言う言葉。
それは、美鶴が桐条グループのトップに就任してから間もなく起こった数人の幹部による汚職騒ぎの事を意味する。
当時、桐条の話題と言う事も有り、メディアが異常に騒いでいた事が印象に残っている。
洸夜もニュースで軽く見た程度なので其ほど詳しくは無いが、色々な分野で世界進出までしている桐条グループ。
当時のニュースの大半がその話題だった事も有り、その時の美鶴の苦悩や辛さは計り知れない。
しかし、いつの間にかその話題は消えており、今では殆ど聞く話題では無い。
そして、その桐条の問題と自分への今回の話が一体何の関係が有るのかを知る為、洸夜はアイギスの言葉に少し間を空けた後に言葉を発した。
「アイギス……話を誤魔化すな。俺は今回の話に対して、俺に何の関係が有るかを聞いたんだ……桐条の問題は俺の知る事じゃない」
桐条の問題に関しては我関せず……と言うよりも自分には全く関係ない。
そんな感情が口調から伝わる洸夜の言葉。
確かに、二年前の戦いに関する事なら洸夜にも関係する事だろう。
だが、その戦いが終わった後に起こった桐条のゴタゴタに洸夜が関係していないの事実。
その事を知っているからこそ、アイギスは洸夜の言葉に返事が直ぐに出来なかった。
そして、それと同時に信じられ無いと言った驚きの表情もしていた。
例え自分に関係なくとも、その人が助けを求めれば笑顔で手を差しのべる。
其がアイギスの知る瀬多洸夜と言う人間だった。
其なのに、今自分の目の前にいる洸夜はそんな他人事に構う気はない。
関係無い者は助ける気は無い。
そんな風に見えて成らなかった。
アイギスは見てきた。
二年前の事件に挑み、他者との絆を気付き上げて自分を含み、周りの者に色々な影響を与えて、その絆を力にした二人のペルソナ使いの背中を……。
そして、知った。
二人が築いた絆と言う力の大きさを……。
なのに……その絆と言う繋がりが今は消え去りそうに成っている。
アイギスは、そんな洸夜の絆を消したく無いと思い、自分の目を強くしっかりとして洸夜へと向けた。
「桐条グループのトップは美鶴さんです……。そして、シャドウワーカーの責任者も美鶴さんなんです……」
「…………だから、なんなんだ」
「……美鶴さんは例え辛くても辛いとは言いません。美鶴さんは桐条の罪を一人で背負おうとしているんです! 桐条グループ……シャドウワーカー……美鶴さんを誰かが支えなくては駄目なんです!」
「だから和解して俺に美鶴を支えてくれってか!? ふざけるなッ! アイギス! コロマルから話を聞いたなら分かる筈だろ……俺はあいつを支える気も無ければ、もう桐条に関する事に関わる気は無い……!」
「ですが……!」
「くどい! 誰かが支えなければ成らないならお前達で勝手に支えろ! それに、組織である以上はその組織を支えているのは美鶴だけでは無い筈だろ!」
洸夜の言葉にアイギスは思わず怯む様に口を閉じてしまう。
洸夜も自身も、本来ならばこんな事を二年前のゴタゴタに関係ないアイギスに言いたくは無かった。
しかし、もうこれ以上自分のいない所で勝手に題材にされ、話が進むのは我慢成らなかった。
次は何を背負わされる?
次は何を押し付けられる?
不安に不安が重なり、洸夜は美鶴が信じられなく成っていたのだ。
また、その影響は他のメンバーへ対しても多少の影響を及ぼしていた。
美鶴達を程では無いが、他のメンバーに対しても信じられなく成っている。
「でも、このままでは美鶴さんは……」
「美鶴が自分の口からそう望んだのか?」
「! ……いえ、それは……」
アイギスは洸夜の言葉に再び怯んでしまう。
確かに、現在の状況で洸夜が美鶴をペルソナ能力を含めた点で支えれば、彼女からしても大きなプラスになるだろう。
しかし、だからと言ってその事を美鶴自身が自分の口からそう望んだのかと言えば答えは否。
元々今回のお見合いに関しても、前に美鶴の父である先代の当主が決めた事を今に成り、美鶴の現在の様子を見た部下達が勝手に準備したもの。
ましてや、相手が洸夜と知ったのが今日の美鶴がそんな事を言える訳が無い。
「もう、分かったろ……他人がどれだけその人物の事を思おうが、その人物の気持ち等が全て分かる訳が無い……! (俺がどんな思いでこの二年間を生きたか……アイギスを含めて誰にも分かる訳が無い……) 話がこれで終わりなら俺はもう行くぞ……」
洸夜は自分が過ごした精神的な面での地獄の二年間が脳内に浮かびながらも、それだけ言うとアイギスに背を向けて入り口へと歩き出した。
「洸夜さん……!」
自分の背中から聞こえるアイギスの呼び止める声。
洸夜はアイギスの声に振り向かず、そのままの状態で口を開く。
「……アイギス。もう、良いだろう……これは俺と美鶴達との問題だ。お前が無理をする必要はない。もう、下手に俺に拘るな……」
「それで済めば簡単です! ですが、美鶴さん達は後悔しています! この二年間ずっと……! 自業自得……と言えばそうなりますが……洸夜さんも本当は何かを後悔しているんじゃ無いんですか? あの戦いでの何かを……だから美鶴さん達の言葉を深く受け止めーーー」
「アイギスッ!」
「!」
洸夜の強い口調に己の言葉を遮られるたアイギス。
いつの間にかに洸夜も、アイギスの方を振り向いていた。
しかし、その表情は口調とは裏腹に怒り等の色は全く無かった。
「そろそろ学べ……。生きてる中で出会いがあれば、それと同じ数だけの別れが有ると言う事が……今がその時だ。人はいつまでも一緒にいられない……『あいつ』と一緒にいたお前なら分かるだろ」
「……洸夜さんはそれで良いんですか?」
アイギスの鋭い視線が洸夜を捉える。
そして、アイギスからの視線に洸夜は思わず何かを言ってしまいそうになり、直ぐに背を向けた。
この二年でアイギスは更に人らしく成った様に見える。
何より、アイギスの目を見ると不思議と自分の胸の内を教えてしまいそうに成ってしまう。
アイギスの持つ優しさがそうさせてしまうのだろうが、洸夜にとっては今はその優しさが恐ろしく感じてしまう。
「……こうなる事は二年前のあの時から決まってたんだ。じゃあな、アイギス……何だかんだ言って、お前と話せて良かった」
そう言ってアイギスに背を向けたまま今度こそ入り口へ向かい、屋上を後にしようとする洸夜。
だが……。
「逃げないで下さいッ!」
「!」
アイギスの言葉に足を止める洸夜。
その言葉が的確に洸夜の心に突き刺さったのだ。
ダーツの矢が綺麗に真ん中の的に当たった様な感じな程に的確に……。
しかし、だからと言ってそれが気持ち良いものとは言い切れない。
現に、先程のアイギスの言葉に洸夜は思考が止まってしまった。
「……逃げる? (逃げる? 俺が? 一体何から……?)」
自分に問い掛ける洸夜。
しかし、答えも無ければ返事も無い。
代わりに声を発したのはアイギスだった。
「洸夜さん……洸夜さんは心の何処かで、美鶴さん達との事を理由にして二年前の戦いで生まれた後悔か何かから逃げているんじゃ無いんですか?」
「何……?」
アイギスの言葉を理解出来ない洸夜。
しかし、聞けば聞く程に洸夜は胸にもやが出来ているかの様にざわざわとしていた。
「美鶴さんのお父様、荒垣さん、そして『あの人』の事……二年前に起きた事に洸夜さんは後悔や責任を感じているんじゃ無いんですか? でも、自分でそう思う反面、それを受け止めきれない、背負いきれない……だから、美鶴さん達との事を理由に二年前の事件に関わる事から目を背けようとしているんでは無いんですか!」
「俺は……」
「美鶴さん達との事が引き金に成ったのは事実だと思います。なにより、二年前の戦いに責任が有るのだとしたら、それは私達全員が背負わなければ成らない事……洸夜さんが一人で背負う必要は有りません……ですが、現実からは目を背けないで下さい。あの戦いは終わりました……『あの人』が終わらせた……その事が、あの戦いを生きた私達の現実です」
「……。(終わった? 全て終わった……? いや、それは俺達がそうであって欲しいと思っているだけなんじゃ…… )」
アイギスの言葉が洸夜の心に響く。
しかし、その全てが届いた訳では無い。
あの戦いが終わった。
『彼』が終わらせた。
その言葉が何度も洸夜の中でリピートされる。
自分達で自己完結しているだけなのでは?
そう思って成らない。
あの事件は其ほどまでに洸夜の心に傷跡を残していた。
その為、そう簡単にその心の傷跡が消える筈も無く、何を言われ様と今一納得出来ないのだ。
洸夜が内心で深く悩んでいたその時……。
"……ソムけるナ"
「ぐあぁぁッ……!! ぁぁ……! (また……あいつの声……か……!? だが、なんだ……この感じは……今日一番……力が……!)」
洸夜の頭に響くのは洸夜?の声。
しかし、洸夜に与える影響は今日起きた中で断トツに強い物だった。
洸夜?の声が発せられると、まるで脳にボリュームをMAXにしたメガホンか何かで直接聞かせれているかの様に声が酷く響き、そして反響をしているかの様に脳内を揺らす。
「ぐッ……! (脳が……目の奥が……痛え……! 世界が揺れる……!?)」
揺れる世界。
そして、思わず膝をついてしまう洸夜。
余りの体調に立つ事が困難と、そう言わざる得なかった。
「洸夜さん!? どうかしたんですか? 本当はまだ体調が……!」
「ハア……ハア……! (なんだ? アイギスは……なんて言っているんだ……!)」
余りの事にアイギスの言っている事すら上手く聞こえない洸夜。
空気が通っているかの様な音がずっと聞こえ、アイギスの言葉を遮断しているのだ。
また、その額からは異常に汗が出ており、その辛さから目も片目をうっすらと開けている。
"……認メロ。拒むな……オレハお前ダ……!"
「! (や、やめろ……! もう、喋るな……!)」
洸夜?の言葉の影響に耐えきれず、洸夜は頭を両手で抑えながら踞る。
その様子に危険を感じたアイギスは直ぐに洸夜へと駆け寄る。
「洸夜さん!? 直ぐに部屋に運びます……! そして、直ぐにお医者様に……ッ!? (この反応は……!) 」
洸夜に肩を貸し、部屋へと運ぼうとするアイギス。
だがしかし、運ぼうとするアイギスの中のシステムがアイギスに危険を知らせる。
自分が倒すべき相手の事を知らせるもの。
そして、それと同時に両手で頭を抑え、アイギスから離れる洸夜。
「ぁぁ……! (い、意識が遠のく……! まずい……!) ぐッ……! 『■■■■■■■■■■■ッ!!?』」
「! (シャドウ反応!?)」
人とは思えない咆哮を上げる洸夜。
アイギスがそう認識したと同時に彼女に降り下ろされる黒い何か。
だが、アイギスは咄嗟にそれをバックステップで交わして後ろへと移動して難を逃れた。
降り下ろされた所を見ると、地面が割れていた。
当たってれば、流石のアイギスと言えど只ではすまなかったであろう。
そして、自分を攻撃したモノを見る為に相手を見上げるアイギス。
「! まさか……オシリス……!?」
『……』
アイギスを襲ったのは洸夜のペルソナであるオシリスであった。
しかし、本来の色である朱色は一切無く、殆どが黒で染め上げられた姿であった。
オシリスは、地面に埋もれた己の大剣を引き抜くと、そのまま肩で担ぎながらアイギスを見下ろす。
そんな中、ゆっくりと立ち上がってアイギスの方を振り向く洸夜。
「ッ!? 洸夜……さん?」
『……』
アイギスは思わず絶句した。
振り向いた洸夜の姿……それは、目がシャドウ独特のまがまがしい金色の瞳に、身体から溢れる闇。
アイギスに組込めれているセンサーやシステムが彼女に教える。
今、目の前にいる洸夜からシャドウ反応がある事を……。
そして、目の前のシャドウを倒さなければ成らないと。
だが、アイギスは首を横に振って己を冷静にする。
目の前にいるのは洸夜だ。
ずっと『彼』と共に自分に色々と教えてくれた大切な仲間であり親友でもあり……自分の事を家族と言ってくれたあの洸夜だ。
「洸夜さん!」
銃口を向ける前に言葉を放つアイギス。
だが……。
『……裏切り』
「え……?」
アイギスの言葉に対し、洸夜?が小さく発したのはアイギスに何の事を言っているのか分からない物だった。
『……裏切り……弱者……無念……無力……』
「これは一体……」
一体、洸夜の身に何が起こったのか分からないアイギス。
しかし、洸夜?から放たれているのは敵意であり、絶対的の殺意が感じられる事だけは確か。
一触即発の雰囲気の中で、アイギスは静かに身体に内蔵してある武装の安全装置を解除する。
洸夜の身に何が起こったのかは分からないが、今の状態を放っておけば取り返しのつかない事態を招く恐れもある。
アイギスは武装の安全装置が解除したのを確認し、いつでも攻撃に対応出来る状態へと成った。
そんな時だ……。
「「アイギスッ!」」
「美鶴さん! 明彦さん!」
『……』
屋上の入り口から走ってアイギスの下に駆け寄る美鶴と明彦。
その二人の姿に洸夜?は瞬き一つ動かさないが、殺気と敵意は先程よりも強くなり、屋上全体がピリピリとした雰囲気が包み込む。
「洸夜……アイギス、一体これは……?」
「分かりません……いきなり洸夜さんが苦しみ出したと思った矢先に、あんな姿に……」
駆け付けた美鶴に現状を説明するアイギス。
その隣では、明彦が目を大きく開けながら洸夜を見て、ただ立っていた。
『……』
「あれが……本当に洸夜なのか?」
二年ぶりの友人との再会。
だが、その姿は自分が知る者ではなかった。
敵意丸出しの金色の目。
いつ襲い掛かって来てもおかしくない闘争本能。
「お二人とも、気を付けて下さい……洸夜さんからシャドウ反応が出ています」
「! まさかとは思ったが……」
「洸夜……一体、お前の身に何がーーー」
『■■■■■■■■■■■ッ!』
明彦がそこまで言った瞬間、洸夜?の咆哮と同時にオシリスが三人目掛けて大剣を降り下ろす。
だが、その大剣が三人に届く事はなかった。
美鶴達の前でオシリスの大剣を遮る仮面。
美鶴の『アルテミシア』が鞭で。
アイギスの『アテナ』が盾で。
明彦の『カエサル』の剣で。
それぞれの主を守ったのだ。
だが、美鶴達はオシリスの攻撃よりも、オシリスのその姿に驚いていた。
黒の要素が強いその姿。
その姿はまるで……。
「美鶴……オシリスのあの姿は」
「……ああ、ニュクスの時に見せた姿に良く似ている」
美鶴の言う言葉。
それは、洸夜がニュクス相手に食って掛かった時にオシリスの姿が黒く染め上がり、ニュクスに傷を付けた時の姿そのものであった。
あの時のオシリスはいつもと違う強さを発揮していた。
今までとはレベルが違う。
其ほどまでに、あの時のオシリスは強かった。
そして、自分達の目の前にいるオシリスからも、悪い意味で強い力を感じさせていた。
しかし、アイギスにはもう一つだけ気になる事があった。
それは、美鶴達がここに来るまでの速さ。
例え異変に気付いて駆け付けたとしても、余りにも速すぎる。
と、なると……答えは一つしか無かった。
「美鶴さん……もしかして先程の洸夜さんと私の話をーーー」
「アイギス」
アイギスの言葉を己の言葉で遮る美鶴。
オシリスを抑えている為、アイギスの方を向かないがその言葉づかいが全てを物語っていた。
「……その話は後でだ」
「美鶴さん……。(聞いていたのですね……)」
美鶴が自分達の話を聞いていた。
その事実が分かった……その時。
『■■■■■■■■■■■ッ!』
「「「ッ!?」」」
洸夜?が新たにペルソナを二体召喚した。
しかし、その二体が中々に曲者であった。
「! タムリン……! トールまで……!」
洸夜?が召喚した二体のペルソナは両者共に物理に強いペルソナ。
しかし、この二体には美鶴達の知らない問題があった。
それは、この二体は洸夜の下から消滅した二体である事。
その事を知らない美鶴達は、この二体が目の前にいると言う重大さが分からない。
だが、相手が洸夜と言えど、そこはシャドウワーカーの三人。
ここが屋上とは言え、これ以上何か問題を広げる訳には行かない。
美鶴がオシリスを抑え、タムリンを明彦が、トールにはアイギスが迎え討つ為に二人はそのペルソナの下へ駆ける。
「洸夜……。(すまん……俺は再び傷付ける……だが!) お前を"シンジ"と一緒の道には行かせんッ! 絶対にだッ!! カエサルッ!!」
明彦は、嘗て自分が何もしてやれなかったもう一人の親友の姿を思い浮かべる。
今は亡き親友……荒垣真次郎。
その親友と同じ様にペルソナを一般人を傷付ける事には使わせない。
明彦はカエサルに指示を出すと、カエサルは右手にミニチュアの地球を翳した。
すると、その地球から光が溢れ出すと、タムリンがズルズルと引きずられるかの様にカエサルの方へと引き寄せられていく。
槍を地面に刺し、堪えるタムリン。
だが、逆に其が仇になり、タムリンはバランスを崩す結果と成ってしまった。
タムリンは己で刺した槍を軸にする様に倒れこんでしまった。
そんなタムリンの大きな隙を明彦が逃す筈は無かった。
「…….。(もらった……!)」
明彦はバランスを崩すタムリンにステップを踏みながら接近すると、そのまま全力でタムリンの顔面を右ストレートを繰り出す。
物理耐性を持つタムリンを殴る事は明彦の拳にもダメージが及ぶが、明彦はそんな事は百も承知と覚悟していたらしく、そのまま拳に体重を乗せた。
そして、明彦の拳を全力で浴びたタムリンはそのまま地面に叩き付けられてしまう。
しかし、叩き付けられたとは言え相手はペルソナ。
タムリンは直ぐに明彦に反撃する為に槍を掴もうとする……が、それは叶わなかった。
カエサルが起き上がろうとするタムリンを背中から剣で刺して動きを封じたのだ。
その隙に明彦は、その身体能力を生かして洸夜?へと接近する。
「くッ! (すまん……洸夜!)」
傷付けた親友を再び傷付ける事はしたくない。
だが、このままでは洸夜は嘗ての真次郎と同じ過ちをしてしまう。
それだけは防がねば成らない。
もう、二度と……親友に罪を背負って欲しくはない。
そう覚悟を決めていた明彦は、洸夜?の間合いへと入る。
『……』
明彦の接近にペルソナも出さない洸夜?
その反応に明彦はチャンスを逃さない為、一気に拳を握り締める。
気絶させるだけ……そう力の調整をしながら明彦は洸夜?目掛けて右拳を放とうとしたその時だ。
『弱者の見る夢』
「なッ!!? (こ、これは……!?)」
明彦が洸夜?に攻撃を仕掛けようとした時、二人の瞳が重なった。
そして、洸夜?の瞳を見た瞬間、明彦の目の前から洸夜?処か屋上事態が消え、代わりに別の場所が写し出された。
「ば、馬鹿な……ここは……なんだ……一体、何がどうなっている!?」
明彦が見ている光景。
それは、火事の孤児院。
その光景を明彦が知らない訳が無い。
この光景こそが、今の明彦の原点であり、分岐点でもあったのだから。
そんな火事の孤児院に明彦はいつの間にか立っていると、そんな明彦を見る一人の少女。
『……お兄ちゃん』
「!!……み、美紀……なのか?」
明彦を見ていたのは、彼が忘れられる筈もない妹の美紀。
そう、ここは明彦が死別した妹が火事で亡くなった孤児院だった。
そんな場所で、死んだ筈の妹が今目の前にいる。
そんな光景に明彦は、我を取り戻すかの様に頭を振って正気を取り戻そうとする。
妹は死んだ。
それは明彦が一番良く知っており、そして受け止めている。
これは幻覚か何かに決まっている。
自分の亡くなった妹をこんな事に利用し、明彦は怒りが抑えきれ無さそうにすらなる。
だが……どれだけ頭が理解してようと、どれだけその事実を受け止めてい様とも、明彦は自分の中から生まれて来る恐怖や絶望を抑えきる事が出来ないでいた。
「お兄ちゃん……待って……美紀を置いて行かないで……助けて……」
「お、俺は……俺は……!」
明彦は分からなくなって来ていた。
自分が見ているのは現実なのか幻なのか。
そう悩んでいる内にも孤児院が炎に包まれていき、美紀も段々と飲み込まれて行く。
そんな現状が更に明彦を焦らせ、冷静な判断を狂わせる。
明彦が自分の考えが出来なり始めていた……その時。
「「明彦!/明彦さん!」」
「なッ!? ……くッ!」
美紀とアイギスが自分を呼ぶ声が聞こえた。
そう感じた瞬間に明彦の目の前にいたのは、自分に拳を放とうとしている洸夜?の姿。
明彦は反射的に腕をクロスにして洸夜?の攻撃を防御した。
その洸夜?からの拳はまるで、鉛か何かで殴られた様に重かった。
しかし、明彦はそんな痛みに疑問を感じる前に洸夜?から距離をとる。
そして、辺りを見回した。
「ここは……ホテルの屋上? (さっきのは一体……)」
先程と同じホテルの屋上。
側では美鶴とアイギスが戦い、カエサルがタムリンの動きを止めていた。
やはり先程の光景は幻だったのだ。
明彦はそう思うと、不思議と気が楽に成るのを感じた。
そして、明彦は自分に何が起きたかを知らせる為に美鶴達の方を向いた。
「美鶴! アイギス! 気を付けろ、ヤツにはまだ何か有るぞ!」
「……やはりか。(先程、明彦が不自然に動きを止めた理由は……ヤツの何らかの力か) アルテミシア!」
明彦の言葉を聞き、その意味を理解する美鶴とアイギス。
また、騒ぎを聞き付けてホテルの従業員が来たり等したらややこしい事にも成り、何よりも相手の力が未知数である状態では、長期戦は不利と判断した美鶴はアルテミシアに指示を出し、一気に勝負を決めようとする。
だが、オシリスはアルテミシアの鞭を大剣で弾きながら防戦し、徹底的に抵抗を見せる。
「くッ! (……ここでは火力が大きい武器は使えない)」
場所が場所である為、武器の制限を余儀なくされ本来の戦いが出来ないアイギス。
しかも、相手は物理無効を持つトール。
衝撃までは無効に出来ない為、相手を大きく飛ばす事は出来るがダメージは与えられない。
そこでアイギスは賭けに出る事にした。
「……オルフェウス!」
『!?』
アテナを戻し、アイギスが召喚したのは巨大なハープを持つ吟遊詩人『オルフェウス』。
本来であれば、このペルソナの主はアイギスではなく『彼』なのだが、今はアイギスが従えている。
そんな吟遊詩人の登場に洸夜?は、初めて表情を曇らせた。
『オ……オルフェ……ウス……! ……ぐッ! ■■■■■■■■■■■ッ!!!?』
「!? なんだ? 一体、どうしたんだ……?」
「洸夜……!?」
明彦と美鶴が突如苦しみ出した洸夜?の様子に困惑する中、アイギスは静かにその状況を見ていた。
「……。(オルフェウスであの反応。やはり、あれは洸夜さんなんですね)」
アイギスは先程から、どうしてもあの洸夜?が洸夜と何処か似ている様に見えて成らなかった。
姿が同じで似ていると言うのも変な話だが、心が洸夜そのもの。
自分達の知らない洸夜の心。
そうアイギスは感じてしまった。
『うッ!? マタ……オ前か……!』
そんな中、頭を突如抑える洸夜?がそう呟くと、洸夜?の真上から黒い球体の様な何かが出現する。
そして、その球体はやがて人の様な姿になって行き、その姿に美鶴は驚きと同時に身構える。
「このペルソナは、確か……」
「ああ……『アイツ』が使っていたペルソナ」
「……タナトス」
三人がタナトスの存在に疑問を持つが、其よりも先にタナトスが咆哮を上げる。
『ヴオォォォォォォォォォォォォォォッ!!』
咆哮と同時に駆けるタナトス。
一瞬で動きを封じられているタムリンに近付くと、そのままタムリンの頭に刀を下ろし消滅させる。
「なッ! (何て速さだ……!)」
一瞬の事に近くにいた明彦ですら反応が遅れたが、明彦がそう認識する間にタナトスはトールへと駆け抜ける。
だが、トールもすぐさま反応して己の武器である斧を持ち、その場で構えた。
しかし……。
『ヴオォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』
「「「なッ!」」」
トールへと近付いたタナトスは、そのままの勢いでトールの斧を空いている方の左手で掴み、そのまま握り砕いてしまった。
そして、更にそのままトールを押し倒すと顔をトールへと近付ける。
『デビルスマイル+亡者の嘆き』
トールは消滅。
正に神速の早業。
一分も経たない内に二体の上級ペルソナを捩じ伏せたタナトス。
そして、そのままタナトスはオシリスへと顔を向ける。
その瞬間、タナトスはオシリスに顔を掴まれて地面に叩き付けられた。
『『ヴオォォォォォォォォォォォォォォッ!!』』
二体のペルソナの咆哮。
最早、ペルソナと言うよりも只の化物にしか見えない。
美鶴も、一瞬の内に起こった事への認識だけで精一杯だ。
そんな中でもタナトスは、オシリスの腹を蹴飛ばして起き上がり、そのまま刀を振り下ろした。
しかし、オシリスも負けじと空中で体勢を整えて大剣でタナトスの刀とぶつかり合い、火花が散った。
そんな二体を、洸夜?が見ていた。
『不純物が……まタ、邪魔ヲ……! うッ……■■■■■■■■■■■■!』
「! 洸夜ッ!!」
突然倒れる洸夜と、洸夜へと駆け寄る美鶴。
それと同時に、透ける様に消えていくオシリスとタナトス。
そして、その場に残ったのはボロボロに成ったホテルの屋上と、そこに立つアイギスと明彦だけだった。
End