ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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今回は少し短いです。


夏祭り

8月20日 (土)

 

現在、稲羽市 (町内)

 

時計は六時過ぎ、空も暗くなり始めた頃に浴衣姿で町内を行き行く人々。

家族連れ、友達、恋人。

色々な人達の笑い声と共に聞こえる笛太鼓や、甘い綿飴やソースの匂いが町内全体を包み込む。

今日は稲羽の町の夏祭り。

そんな屋台が並ぶ道を洸夜は黒い浴衣を身に付けて一人で歩き、メインである神社へと向かっていた。

その姿は中々に渋く、落ち着いた格好良さを醸し出して黒い浴衣を完全に着こなしていた。

 

「……ふぅ。(戸締まりをしていたら遅れてしまったな……総司達や叔父さんも奈々子も既に楽しんでいるだろう)」

 

そう一息入れながらも神社へ着いた洸夜だったが、神社はメインなだけあって人の数も多かった。

この人混みで他のメンバーを探すのは骨が折れるかも知れない。

そう思った洸夜だが、意外にも総司達はすぐに見付かった。

 

「……。(なんで社の前で体育座りしてんだアイツ等……)」

 

洸夜の前に写ったのは社の前で落ち込む様に体育座りをする総司、陽介、完二の姿。

余程ショックな事があったのか、その落ち込み様は祭りの明るい雰囲気をも凌駕しており、誰もその周辺に近付かない聖域が完成していた。

そんな中、これでは他の人が迷惑してしまうと思った洸夜は総司達に接触した。

 

「……何をしているんだお前等?」

 

================

 

総司達から事情を聞くとどうやら、クマにまんまと嵌められて女子メンバー全員を持っていかれたのが原因だったらしい。

洸夜は総司達と神社を歩きながら苦笑いしていた。

 

「それは災難だったな」

 

「笑い事じゃないですよ洸夜さん……クマの野郎、今度の日給……楽しみにしてやがれ……!」

 

「アイツの中に綿詰め込んでやる……」

 

余程、嵌められたのが悔しかったのかドス黒い雰囲気を醸し出す陽介と完二。

このままでは本当に何かを仕出かす様な二人に、総司が声をかけた。

 

「これからどうする? 皆で祭り見ていくか?」

 

「いいや俺は……そんな気分じゃねえし。なんか適当に買って帰る……」

「俺も……そうします」

 

そう言ってフラフラしながら人混みの中に消えて言った陽介と完二。

二人がいなくなった後、残されたのは洸夜と総司の二人だけだった。

 

「……久しぶりに二人で祭りでも回るか?」

 

「そうだね。兄さんと一緒に祭りなんて何年ぶりだろう……」

 

総司の言う通りだった。

洸夜が高校入学するまでは良く一緒に祭りに行っていたが、それ以来は共に行く機会が訪れず今日に至る。

 

「……だが、その前に」

 

「うん。その前に……」

 

屋台に行く前に洸夜と総司は互いに顔を見合わせると……ニヤリと笑みを浮かべてある店へと向かった。

 

===========

 

現在、型抜き屋

 

カカカカカカカカカカカ!

 

「「………」」

 

謎の音をたてながら洸夜と総司は無言でひたすら型抜きに没頭していた。

二人が挑戦しているのは、一回千円という値段だが貰える賞金が高額な細かい部分が多く明らかに不可能に近い型だった。

しかも、この型抜き屋は古くから営業していると同時に稲羽でも完成させた者が殆どいなくて有名で、毎年その悔しさをバネにするリピーター達が収入源と成っている。

完成させるのが難しいければ難しい程に高額に成る賞金に騙され、幾つものリピーターが苦汁を飲んできた。

当初、型抜きの店主は洸夜と総司も今までのリピーター達と同じでどうせ出来ないだろうと踏んでいた。

だが……。

 

「あ、あぁ……」

 

「「……」」

 

既に洸夜と総司は型の八割を完成させていた。

子供の吐息一つ程の衝撃で壊れそうな部分も完成させている。

その光景に店主は恐怖すると同時にある悪夢を思い出した。

それは、数十年前に起こったある事件……いつもの様にリピーターを鴨にし、経営的に黒字に成っていた時だった。

今の総司と同じ位の年齢の少女が店に来たの始まりだった。

新たに鴨が来たと思って今、洸夜と総司がやっている同じ型抜きをやらせたが、見事に完成させたのだ……しかも五回。

黒字から赤字に急展開の悪夢だった。

その悪夢が繰り返され様としている……。

 

「良し、完成」

 

「こっちも完成」

 

「なっ!?」

 

悪夢は繰り返された……。

見た感じは文句の言いようが無い程に完璧だった。

だが、伊達に店主は数十年も型抜き屋台をやっていない。

万が一、完成させた客が出た場合に難癖つける技はある。

 

「あー! これはダーーー!?」

 

店主の難癖は最後まで言えなかった。

洸夜と総司の眼力がそれを許さなかった。

そして、洸夜と総司は店主の目から一切背けずにゆっくりと口を開いた。

 

「「おじさん……」」

 

「な、なんだ……! (こ、この光景は……!)」

 

洸夜と総司の睨みに店主は再び悪夢が甦った。

それは、嘗て完成させた少女にも同じ様に難癖をつけようとした時も今の洸夜と総司と同じ様に睨んだのだ。

そして……。

 

『「「まさか……完成させたら適当に難癖つけて賞金を渡さないつもりじゃあ無いですよね?」」』

 

「あ……あが……!」

 

同じ事を言ってのけたのだ。

良く見れば目があの少女に似てなくも無い。

目が本気だった。

ここで難癖をつけても洸夜と総司はその場から動かず、また同じ型を完成させて此方の心を折るだろう。

店主は悪夢を思い出し……気付いた時には賞金を渡していた。

 

===========

 

「やっぱり、祭りに来たら型抜きで補充だよな?」

 

「そうだね。引っ越しも多かったから出入り禁止に成っても問題無かったし」

 

そう言いながら洸夜と総司は重く成った財布を片手に祭りの中へと消えて行ったが、それを見ていた人物がいた。

堂島と奈々子だ。

洸夜達は気付かなかったが堂島と奈々子は先程の洸夜達はの型抜きの様子をずっと見ていたのだ。

 

「お父さん。お兄ちゃん達凄かったね!」

 

驚きながらも笑顔でそう言って父である堂島を見上げる奈々子に、堂島は懐かしそうに頷いた。

 

「そうだな……。(義兄さんが洸夜と総司は姉さん似って言っていた意味が分かった気がしたな……)」

 

そう言って堂島は奈々子の手を引っ張りながら再び祭りの中へと消えていった。

 

==========

 

現在、帰宅路

 

夏祭りを楽しんだ洸夜と総司は帰宅する為に道を歩いていた。

両手に色々とお祭りで買った物が入った袋を持ちながら、自分達同様に帰宅する人の流れに乗って堂島宅へと進んで行く。

だが暫く歩いている内に周りに人がいなくなり、暗く虫の声が聞こえる道で洸夜と総司だけが存在している。

そんな中、洸夜が静かに総司へ話し掛けた。

 

「……久し振りの祭りも悪くなかったな」

 

「そうだね。最後に一緒に行ったのが数年前だから尚更そう思うよ……」

 

微笑みながらそう言う総司だったが、不意にその足を止めた。

また、その様子に洸夜も足を止めて総司の方を向いた。

 

「どうした……?」

 

洸夜は総司の行動が気になり話し掛けた。

それに対して総司は、少し下を向くがすぐに顔を上げて洸夜からの問いに答えた。

 

「兄さん……」

 

だが、総司はそう言って再び顔を下へと向けた。

その表情はなにか言いたそうだが、洸夜は総司が何を言いたかったのかが分かり、軽く溜め息を吐くとゆっくりと歩き出しながら口を開いた。

 

「総司……お前が気にする事じゃない。美鶴達との事は俺の問題であり……俺自身がどうにかしなければ成らない事だ」

 

洸夜は分かっていた。

総司がこの所、こう言ったリアクションをする時は大抵自分の事に関する事だと言うことに。

 

「……。(恐らく、美鶴と一緒にいた時にアイギスと明彦から何かを感じ取ったんだろうな)」

 

総司が自分と美鶴達との事を知る機会があったのは食事の時だけだ。

そう思った洸夜はそう言って総司に問い掛けたが、どうやら洸夜の考えは正しかった様だ。

総司は洸夜の方を向いてこう言った。

 

「あの時、アイギスさんと真田さん……あの二人はペルソナと言う言葉に反応した。あの人達、兄さんが関わった事件に関係してるんじゃないの?」

 

「……。(……アイツ等、一体どんなリアクションしたんだ?)」

 

総司がここまで言うのだ。

アイギスと明彦の反応は余程分かりやすかったのだろうと洸夜は思ったが実際は、それ程まで大きなリアクションはしておらず、総司が気付いたの彼の洞察力が高かったの理由だが、洸夜は気付かなかった。

だが、総司の次の言葉を聞き自分の弟の鋭さに驚く事に成った。

 

「それに……桐条の悪い噂はネットでも噂されてる。昔程じゃないけど……今だって噂はある。兄さん……言いたくなけど、二年前の事件って桐条が関係してるんじゃないの?」

 

「……。(流石は俺の弟か……あんな僅かな情報でここまで考えたのか)」

 

洸夜はそう思いながら弟の能力の成長に驚きと嬉しさを覚えたが、同時に恐怖もあった。

何の関係もない総司が、自分のせいで少しずつだが二年前の事件に近付いて来ている。

少なくとも洸夜は『彼』に対しての罪を感じている。

それを……自分のせいで弟と両親にも背負わせてしまう。

洸夜自身は自覚は無かったが、無意識の内に心の内側から恐怖していたのだ。

それだからか、洸夜は一瞬だけ後悔するかの様に眼を力強く閉じるとすぐに開き、総司へこう言った。

 

「……総司、お前はあの事件に関わるな。 お前は今、仲間と共に目の前の事件だけに意識を向けろ」

 

「でも、兄さーーー!」

 

総司は洸夜へ反論しようとする。

兄の洸夜はよく自分を守ってくれた。

なのに何故、ここまでして自分に頼ってくれないのか? 総司にとって歯痒い事この上無かった。

だが、総司の反論は最後まで言えなかった。

 

「お前等は今! 終わった過去の事件なんか調べている暇なんかあるのか……? 久保が模倣犯なのはお前だって勘づいている筈だろ? あの事件は……終わったんだ」

 

総司の反論は洸夜によってかき消された。

洸夜の言う事は最もだ。

今の総司達に解決した事件に興味を向けている暇は無い。

その事は総司も理解したのか再び歩き出して洸夜の前へと行く。

その姿に、洸夜は息を吐いた。

 

「……すまない総司。(だが……だが絶対にお前だけは、あの事件に巻き込みはしない! 絶対だ……)」

 

拳を握り締めながらそう言った洸夜。

だが、その想いは祭りの後の夜風によって消され誰の耳にも届く事は無かった。

 

 

End

 

 

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