ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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仮面の覚醒

現在、テレビの世界

 

 

「どう成っているんだ?。昨日は霧何て無かった筈だが……?」

 

あの後、洸夜は自分の部屋のテレビから入り、再びこの世界に足を踏み入れていた。

しかし、前回来た時とは違い、辺りは霧が立ち込めていて視界が悪い。

 

「この霧は辛いが、仕方ないな。……ワイト!」

 

洸夜はワイトを召喚し、ジャミングを使う。

この霧の中でシャドウに奇襲を掛けられたら堪ったモノではない。

そう思いながら洸夜が行動を開始しようとした時だ。

 

「ちょっ、キ、キミ達! 何でまた来たクマ!?」

 

「この声は確か…前来た時に……」

 

下のフロアから前回来た時に自分に近付いてきた謎の存在の声が聞こえる。

 

「(ちょうどいい、何かの手掛かりに成るかも知れないな……)」

 

そう思いながら洸夜は、気付かれ無い様にゆっくりと下の方に目を向ける。

すると、そこにはゴルフクラブを持った二人の男子学生とクマ?らしき何かがいた。

しかし、洸夜はクマ?よりも男子学生の内の一人に気付く。

 

「アレは総司……! アイツもイゴールから頼まれている筈だから、遅かれ早かれテレビの世界の存在に気付くとは思っていたが……しかし、武器がゴルフクラブか……」

 

洸夜は総司が持っている武器がゴルフクラブだと思うと少し頭痛がした。

対人ならともかく、ペルソナ使いでは無い者の攻撃はシャドウに通じない。

しかも、ワイトに探らせたが総司はペルソナ使いとして覚醒していない。

 

「あのままシャドウと遭遇したら、十中八九返り討ちだな。それに、隣の男子学生は確か総司が言っていた……花村陽介?」

 

そう言いながら洸夜は、何やらクマと揉めている陽介と言う総司から聞いたクラスメイトに視線を向ける。

 

「だから、さっきから言ってんだろ! 俺達は犯人か小西先輩の手掛かりを探しに来たんだよ!」

 

「ウソも大概にするクマ! この間来たのに、また来たのが怪しいクマよ!」

 

「話が進まないな……」

 

そんな感じで揉めている陽介とクマ、そしてそれを苦笑しながら見ている総司。だが、洸夜はそんな会話を聞いていると気に成る事が幾つか思い浮かぶ。

 

「あのクマらしき生物の話からすると、総司は前にもこの世界に来たんだな。それはそうと、あの花村とか言う奴、この状況を楽しんでいる感じする……危ういな」

 

ああ言う奴程、予想外の出来事や何か力を持つと何をするか分からない。

善か悪、どちらに転んでも可笑しくない。

そう思いながらめ洸夜は、再び三人の会話に耳を傾けた。

 

「分かったクマ! やっぱりこの世界に人を入れているのは君達クマね!」

 

「人を入れている……!?(あのクマ、サラッととんでもない事を口走ったな……)」

 

クマの言葉に洸夜は少しずつだが、大体事件の犯行方法が分かって来た。

亡くなった人達は恐らく何者かにテレビに入れられている。

しかも、この世界にはシャドウも徘徊している。

ならば、害者に外傷も無く死因が不明なのも頷ける。それに、二人にはある共通点がある。

それは、亡くなる前に二人はメディアに取り上げられている事。

だから、二人共何処かで見た覚えが合ったのだ。

 

「(それに、二人の遺体が見付かった時は必ず霧が濃い朝だった筈……霧?。そう言えば確か俺がテレビに入った時は、現実の世界に霧が出ていた。だが今日は霧が出てない……なのに、こちらの世界は霧が出ている……成る程な段々分かってきたな、この世界の仕組みが)」

 

「だ・か・ら!!! 違うっつってんだろ!!!って待てよ……お前今、誰かがテレビに入れてるって言ったよな? つまり、誰かが此処に人を入れているのかよ!?」

 

「白々しいクマ~分かってるんだクマよ、君達が帰った後に、更に“二人程”此処に来たクマよ! 君達が入れたんじゃないクマか?」

 

クマの言葉に総司と陽介は互いに顔を見合わせる。

 

「それってもしかして……!」

 

「多分、いや間違いない!」

 

そう言うと陽介はクマに近付き、クマの頭を掴んだ。

 

「おい、クマ! その二人について詳しく聞かせろ! 恐らく、それが小西先輩と犯人だ!」

 

「……。(すまん、それは俺だ)」

 

陽介の言葉に謎の罪悪感が湧く洸夜。

そんな時、総司達とクマが移動を始めた。

 

「……移動したか(さて、俺はどうするかな。このまま、総司達と合流するのも良いが……総司がペルソナに覚醒していない以上は逆にそれの妨げに成るかも知れない……暫く様子を見るか)」

 

そう思いながら洸夜は下のフロアに飛び降りる。

伊達に鍛えていた訳ではない為、このぐらいの高さならば余裕なのだ。

 

「よっと……! さて、アイツ等は一体どっちに……ん?」

 

気が付くと、洸夜の足元に黒い眼鏡が落ちていた。

対して意味はないが何と無く洸夜はそれを掴んで手に取って見る。

 

「何故眼鏡が……? ん? コレは……!」

 

洸夜が眼鏡のレンズを覗き込んで見ると、全く霧が写らなかった。

構造は一体どうなっているのか不明だが、洸夜はその眼鏡を付けて見る。

 

「……悪くないな。誰のか分からないが借りて行くぞ」

 

そう言って洸夜は総司達の後を追って行く。

 

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現在、異様な商店街

 

総司達を追って行く内に洸夜は町の商店街に似た場所に出た。

似ていると言っても雰囲気は別物で活気所か不快感しか無い。

 

「似ている……一体、此処は何なんだ」

 

余りにも異様な商店街に、同じく似たように異質な自分の影。

そして、自販機も異様な感じがした洸夜。

 

「…!何が合っても、ここでは買いたくないな」

 

タルタロスとも違う全てが謎と異質な世界。

洸夜が此処の商店街に謎の恐怖を抱いていた時だ。

 

『カシャシャ!?』

 

ワイトが突如、何かに反応して洸夜に知らせる。

そして、ワイトがこうやって騒ぐ時は大抵奴らが出て来る時だけだ。

 

「シャドウか……!」

 

「待つクマ!? そこにいるクマよ! やっぱり襲って来たクマ!?」

 

「うわわッ!」

 

洸夜が口を開くと同時に少し離れた所から、先程のクマと陽介の叫び声が響き渡る。

そして、その声を聞いて洸夜は走り出した。

 

「間に合えよ……!」

 

================

 

現在、総司達の前に丸い身体にシマシマ模様をし、巨大な口を開いて舌を出しているシャドウ『失言のアブルリー』が二体程立ち塞がっている。

そして、突然のシャドウの襲来に陽介は座り込んで怯えており、クマは恐怖で動けなく成っている。

だが、此処で何もしない訳には行かない。

総司はゴルフクラブを強く掴み、そのままシャドウに向かって行く。

 

「うおぉッ!」

 

総司はゴルフクラブをシャドウに叩きつけ、クラブがシャドウに減り込む。

 

「や、やったのか……?」

 

ゴルフクラブが命中し、シャドウは吹っ飛ばされたのを見て花村は恐る恐る立ち上がるが……。

 

「に、逃げるクマッ! そんなのがシャドウに効く訳ないクマよッ!」

 

「「ッ!?」」

 

クマの言葉と共にシャドウが起き上がり、舌を出しながら総司に反撃する。

 

『ヒャア~!』

 

シャドウは口から巨大な下をだし、その舌を使って総司に体当たりする。

 

「グッ!」

 

シャドウに吹っ飛ばされた総司はそのまま尻餅を着いた状態に成ってしまう。

先程の攻撃が全く効いてない。

 

「どうすれば良いんだ……!」

 

攻撃が効かないこんな化け物をどう倒せば良いのか分からない。

総司がそう思っている時……。

 

「瀬多ッ!」

 

「うわわッ! クマはどうすれば……!」

 

総司が吹っ飛ばさた事で更に慌てる二人。

最早、この二人は戦力には数えられない。

 

『『ヒャア~』』

 

しかし、シャドウにはそんなの関係ない為、少しずつ総司達に近付いてくる。

 

「クッ!(ここまでなのか…!!)」

 

総司が自分の運命を諦め様としたその時。

 

チィリーン……!

 

「ッ!」

 

総司が腰に付けていた、洸夜に貰った鈴の音が響く。そして、その鈴の音を聞いた瞬間に総司の頭は冷静になる。

 

「……そうだ(こんな所で簡単に諦めたら、兄さんの背中は越えられない!)」

 

そう言って総司は再び立ち上がる。

こんな所で簡単に人生を諦めたら自分の人生の目標であり、憧れでもある兄を越えられない。

そして、そんな思いと同時に総司の中に、陽介やクマを守りたいと言う気持ちが生まれた。

今まで、親の言う事に流されて生きて来た総司には初めての感情でもある。

そして、仮面は目覚める……。

 

「うおッ! 何だ!?」

 

「ク、クマ~~ッ!?」

 

突如、総司から青い光が溢れ出す。

そして、総司の手には一枚のカードが出現する。

総司はそのカードに触れた瞬間、頭にこの力について流れた。

不思議な事に、何故かこの力が分かる。

そして、総司はこの力はの名前を口にする。

 

「ペ……ル…ソナ……うあぁぁぁぁぁッ!!」

 

総司が手の平のカードを握ると、カードは砕け散り総司の後ろに、隙間から光る金色の瞳を覗かせる鉄の仮面。

そしてハチマキを付け、学ランをイメージさせる黒い服。

更に右手には、総司達程ある大きさの大剣を握っている。

コレが総司の仮面であり、剣と盾でもあるペルソナ『イザナギ』である。

 

=============

 

「クッ……! アレがアイツのペルソナか。無事に覚醒した様だな……総司」

 

総司達に見付からない様に、洸夜は総司から漏れ出す光を腕で顔を守り、店の影から見ていた。

だが、あの様にペルソナをカードを媒体にして召喚する方法は自分は知らない。そう思う洸夜だが、そんな事はどうでもよかった。

一番重要なのは、あのペルソナの“アルカナ”。

見た感じでは“隠者”か“運命”なのだが、もしも“愚者”アルカナならば話は変わる。

 

「探れ、ワイト……!」

 

洸夜は、ワイトに総司のペルソナのアルカナを探らせた。

そして、ワイトからの情報が頭に入る。

その情報を得た洸夜の表情は何処か、予想通りと言った顔だが、何処か複雑そうな顔でもある。

 

「“愚者”か……! 総司、やはりお前も“ワイルド”の力を持つのか……」

 

“ワイルド”の力を持つ者がペルソナに覚醒した場合は、基本的にアルカナは愚者になる。

そして、洸夜はイザナギの情報を得た後店の影から総司の戦いに視線を戻す。

 

「ハアァァッ!」

 

『スラッシュッ!』

 

イザナギがシャドウの懐に飛び込むと、そのまま一閃して消滅させる。

 

「す、すっげぇ……!」

 

陽介も総司のペルソナ『イザナギ』の力に驚きを隠せない。

 

「まだだッ! イザナギッ!」

 

『ジオッ!』

 

イザナギから雷が放たれ、そのまま残りのシャドウを飲み込んだ。

そして、イザナギの雷によってシャドウは消滅した。

 

「初陣の割には言う事なしだな……良くやったぞ総司(しかし、今回のは雑魚だが、大型シャドウならばこうは行かない筈。何も起きなければ良いが)」

 

心の中で、内心コレから先に戦うで有ろう大型シャドウに心配する洸夜だが、今は弟達の無事と、総司の初戦闘の勝利に喜んでいた。

 

END


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