ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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我は影、真なる我

同日

 

それは総司の戦いが終わって直ぐの事だった。

 

ーージュネスなんて潰れればいいのにーー

 

ーー娘さんがジュネスで働いているなんてご主人も苦労するわねぇーー

 

ーー困った子よねぇーー

 

突然、何処からか声が聞こえてきた。

 

「この声は一体……?」

 

まるで陰口の様な声。

しかし、一体誰に対しての事なのか分からない。

そう思いながら洸夜が辺りを警戒していると、陽介が口を開く。

 

「何だよこの声……ッ!! おいクマ!ここは、ここにいる者にとっての現実だとか言ってたな。それって……ここに迷いこんだ先輩にとっても現実って意味なのか?」

 

「此処にいる者にとっての現実……? つまり、此処に訪れる者達によってこの世界は姿を変えるのか?」

 

陽介の言葉を聞き、洸夜はようやくこの世界のルールを全て把握する。

また、そうなるとこの陰口の対象は亡くなった小西早紀に対する言葉に成る。

そう思いながら洸夜は考えていると・・・。

 

“私、ずっと言えなかった……”

 

今度は別の声が辺りに響き渡る。

声から察すると、年齢的にも考えて恐らく小西早紀だと言う事が分かる。

 

「この声って確か!!」

 

「間違いない! 先輩の声だ……!」

 

そう言って総司と陽介達は酒屋の中に入って行く。

そして、洸夜も見付からない様に入口から中を除いて見るが、中は色々変異していて異様な物だった。

すると、再び声が響き渡る。

 

“私、ずっと花ちゃんの事……”

 

「えっ……先輩、俺の事……」

 

そう言って何か楽しみに次の言葉を待つ陽介。

そして、はっきり言って余所でやって貰いたいと思う総司と洸夜・・・だが。

 

“ウザいと思ってた……”

 

「えっ……」

 

「……おい、花村」

 

小西早紀の声に、倒れそうになる陽介を総司が心配して声をかけるが声はまだ続く。

 

“仲良くしてたのは店長の息子だから都合いいってだけだったのに、勘違いして盛り上がってホントにウザい……!”』

 

最早、追い撃ちと言う次元を越えているで有ろう言葉に、陽介は顔を天井に向けて叫んだ。

 

「ウソだ…! 先輩は……先輩はそんな人じゃないだろ!!!」

 

だが、次の瞬間。

 

『ククク…可愛そうだな……でも、何もかもウザいと思っているのは自分の方だっつうの! アハハハハハハハハッ!』

 

「な、何だアイツ……!」

 

突如、酒屋の部屋の隅に陽介そっくりの人物が姿を現した。

だが、雰囲気も目の色も全く別物で、その姿や雰囲気からシャドウに近い。

しかし、その姿に総司と陽介も驚愕しているのだが、クマは別の意味で驚愕していた。

クマは陽介?の方を指さすと口を開く。

 

「シャドウだクマ! 抑圧された内面が具現化した存在がそれがシャドウだクマ!」

 

「シャドウだと! あんな風に人間から出現するなんて話は、親父さんからも美鶴からも聞いてないぞ……! 此処のシャドウはタルタロスにいたモノとは別の様だな」

 

クマの言葉に洸夜は驚きが隠せないでいた。

二年前の戦いで洸夜はシャドウについて、自分は詳しい方だと思っていた。

だが、今回の事件でシャドウは自分や桐条が思っているより深いモノだと理解する。

無論、ペルソナも同じだ、なのに、自分は何も知らない。

戦う敵であるシャドウもペルソナも・・・。

洸夜がそう言って、自分の力の意味を考えていた時だった…。

 

「うるせぇッ!!!!」

 

「ッ!…何だ!?」

 

突然の陽介の怒鳴り声に洸夜は驚いてしまった。

恐らく、洸夜が考え事をしている間に陽介?から何かを言われたのだろう。

陽介は陽介?を睨みながら口を開く。

 

「散々、勝手な事言いやがって……! 何なんだよお前はッ!」

 

『ククク、アハハハハ! 何言ってんだよ? オレはお前だよッ!』

 

「ッ!? 黙れ、黙れよ! お前は俺じゃねえ!!」

 

陽介は、まるで陽介?を否定するかの様に話すが、それが引き金と成ってしまった。

陽介の言葉を聞いた陽介?は可笑しそうに笑うと、全身から闇を放出させた。

 

「ククク……そうだよオレはオレだ! テメェと一緒にすんじゃねえ!!!」

 

陽介?が放出した闇に包まれると、下半身は緑色のカエルの様な化け物で、上半身はマフラーを首に巻いたシャドウ『陽介の影』が出現する。

 

『我は影、真なる我……ククク……アハハハハ!!此処も、お前も、全部オレがぶっ壊してやるよ!!!』

 

「ば、化け物だ……!」

 

「花村! クソッ!クマ、花村を頼む!」

 

「わ、分かったクマ!」

 

総司の言葉に、クマは自分のシャドウに怯えて動けない陽介を運び、総司はシャドウの前に立ちはだかる。

 

『あぁ? 何だお前は? 目障り何だよッ!』

 

「クッ!イザナギッ!」

 

殴り掛かってきたシャドウを総司はイザナギで迎撃して向かい打ち、総司の初めての大型戦が始まった。

 

「まさか、こんなにも早く大型シャドウとやり合う事になるとは……仕方ない、影ながら援護を……ッ!?」

 

総司を援護する為、ペルソナを召喚しようとする洸夜だったが、その後ろには先程総司が倒したシャドウの『失言のアブルリー』が大量にいた。

その数は約三十体、しかも真ん中のアブルリーは他のシャドウに比べ身体が巨大なモノだった。

 

『『『ヒャア~!』』』

 

「花村のシャドウに影響された、突然変異型のシャドウか……それならばこの数も頷けるな」

 

本来ならば総司を援護する筈だったが、今の内に大型シャドウと戦うのも良い経験だと思った洸夜は標的を突然変異型と雑魚シャドウの大群に変更する。

いくらペルソナ使いでも、戦って経験を積まないと意味がない。

 

「流石に今の総司では、この数と大型シャドウを一辺に相手には出来ないか……なら俺がこっち側だよな……オシリスッ!」

 

洸夜はオシリスを召喚すると迎撃態勢に入る。

 

「さて、こちらは何時でも良いぞ……掛かってきな」

 

そして、洸夜とシャドウ達の戦いも始まった。

 

===============

 

「ハアッ!」

 

『スラッシュ!』

 

『ぐふッ!オワッ!』

 

「良いぞ~センセイ! 畳み掛けるクマ!」

 

現在、陽介のシャドウと戦闘している総司は、クマにサポートして貰いながら戦っていた。

イザナギで斬っては、総司が殴るの繰り返しでシャドウを追い詰めて行く。

さっきは効かなかったが、ペルソナが使える様に成ったら通常の武器もシャドウに通じる。

それにクマのサポートも適切。

総司はこのまま一気に押し切る事にした。

総司はそう思いながらイザナギを一旦、自分の側にもでし構え直した。

そして、再びシャドウ目掛けて走り出した……が。

 

『いい加減にしやがれ、このヤロウ!!! チャージ!』

 

突如、シャドウの身体が光だし、何やら不穏な気配を感じる総司達。

 

「相手が放つ前に終わらせるッ!イザナギ!」

 

総司は放たせる前に終わらせようとイザナギに指示をだし、再び突っ込む。

しかし、クマがそれを止め様と口を開いた。

 

「ダメクマよセンセイ!。シャドウの方が早いクマ!」

 

「なにッ!?」

 

『遅ぇんだよ! 喰らいな、忘却の風!!!』

 

「ぐわぁぁッ!」

 

クマの言葉を聞き、一旦態勢を立て直そうとした総司だったが、シャドウの方が対応が早かった為に攻撃を喰らってしまい、巨大な風によってイザナギもろ共壁に叩き付けられてしまう。

 

「「瀬多ッ!/センセイッ!?」」

 

総司が吹っ飛ばされた事により、陽介とクマが駆け付ける。

それに気付いた総司は、手を挙げて大丈夫だと知らせる。

 

「(だけど、一体どうすれば良いんだ……)」

 

そう思い、総司は周辺を見渡すと周りに積み重ねてある酒瓶に気付く。

 

「一か八か……イザナギ!」

 

『ジオッ!』

 

総司の指示を受け、イザナギは雷を放つがそのままシャドウの横を通り過ぎる。

 

『あぁ?テメェ何のつもりだ?』

 

「こう言うつもりさ……後ろを見てみろ」

 

『後ろ……? ゲッ!』

ガシャアアアアンッ!!!

 

総司の言葉にシャドウは後ろを向いて見ると、そこには先程のジオの衝撃で酒瓶割れ、大量の酒がシャドウに降り注がれる。

 

『グワッ!ペッ!ペッ!あのヤロ~……何処に居やがる!!!』

 

「此処だッ!イザナギ!」

 

『ジオッ!』

 

総司の言葉にイザナギは、ジオを纏った大剣を振り上げてシャドウに迫る。

 

『クソッ!きやがれ!返り討ちに……って、しまったっ!今、オレって濡れてる!?』

 

そして、シャドウもようやく自分の置かれた状況に気付く。

ただでさえ、電気属性が弱点で有るのに、更に身体全体が濡れていると有ればどうなるかは言うまでもない……。

 

「ハアァァッ!」

 

『ぎゃあああああああああああああああッ!!!!』

 

放電しながら喰らう攻撃を最後に陽介のシャドウは動きを止めた。

 

==============

 

「(初めての大型戦は苦戦したが何とか勝利、と言った所だな)」

 

先程の戦いを見ていた洸夜はそう思いながら、総司達を見ていた。

消滅していく大量のシャドウの残骸を背景にしながら…。

 

「それにしても、まさかシャドウが人の中から出て来るとはな……ん?アイツ、何をする気だ?」

 

洸夜の視線の先には、総司とクマと何かを話していた陽介が、陽介?に近付いて何かを話している姿が会った。

自分のシャドウと何かを話している陽介。

洸夜はその様子に静かに耳を傾けて見ると……。

 

「頭の中では分かってたんだ……だけど、認めんのが怖かった。だけどよ、今はちゃんと言えるぜ。お前は俺だ」

 

陽介の言葉に陽介?は頷くと光り輝き、両手に星型の武器を持つペルソナ『ジライヤ』に姿を変えるとカードになり、陽介の手の平に舞い降りた。

 

「シャドウがペルソナに転生したか……まあ、イゴールもシャドウとペルソナは似たような存在だと言っていたからな、それ程不思議では無い」

 

それだけ言うと、洸夜は総司達のいる酒屋に背を向けて歩き出す。

逆に心配なのは、総司達がペルソナと言う力の危険性に気付かなく、ヒーローごっこか何かの道具見たいに扱わないか……。

 

「まあ、そう成ってしまった時は叩き潰してでも、この事件から手を引かせれば良いだけだ。と言っても、俺がそうさせなければ良いだけ何だがな……」

 

そう言って洸夜は手を翳し、総司達より一足先に現実の世界に戻って行った。

 

END


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