ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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ナルトも終わりか……ssが書きたくなって来た。
だが、こっちを完結させてからだね♪


死の絆

同日

 

現在、黒き愚者の幽閉塔【最上階】

 

「兄さんッ!?」

 

総司は目の前で仰向けに倒れる洸夜に駆け寄った。

洸夜は僅かに眼を開いているが、その眼には光がなく虚ろなものであった。

しかし、身体も多少は傷付いているが息はしている為に一応の安全は知る事が出来、総司は後ろから来た美鶴に洸夜を預ける。

 

「洸夜ッ……! クッ……アルテミシア!」

 

美鶴は洸夜の側に寄り添い、アルテミシアを召喚するとメディラマを洸夜へ掛ける。

メディラマによって少しずつ傷は癒され、呼吸も落ち着いて来た洸夜に今度は美鶴達が安心し一呼吸入れる。

そして、総司と美鶴達は次に陽介達の様子を見る為に辺りを見回すと、陽介達は十字架に磔にされたままで、タナトスも両断された状態に地面に放置されている。

総司はタナトスに近付こうとするが、目の前でタナトスは硝子の様に砕け散ってしまう。

 

「ペルソナブレイク……」

 

「ク、クマのシャドウを倒したタナトスが……!」

 

目の前で光の粒子となって消えるタナトスに、総司とクマはただただ驚くしかなかった。

自分達を圧倒し、クマの影はおろか自分達にすら恐怖を抱かせたタナトスが、目の前で呆気なく消えていったのだから。

 

「……風花。君からはどう見える?」

 

「……少し待って下さい」

 

洸夜の背中に手を置きながら支える美鶴は、そのままの状態で風花へ陽介達の事を聞き、風花はユノを召喚し陽介達と十字架を調べた。

すると、陽介達は怪我を多少負っているものの、気を失っているだけで命は安全なのが分かり、十字架にも『魔封』としか表示されず直接的な害はなかった。

風花はその事を皆に伝えると、美鶴はある意味で安心した。

 

(どうやら、幾月の作った装置とは無関係の様だな……)

 

あの事件で幾月が使用したペルソナを封印させる装置も十字架だったが、風花の言葉を聞き美鶴はそう判断した。

おそらく、洸夜の影が精神的な揺さぶりを込めての十字架なのだろう。

そして他のメンバー、総司とクマも陽介達の一応の無事を知って少し落ち着いた時であった。

 

「オラァァッ!!これ外しやがれぇぇぇッ!!」

 

上の方からする謎の怒号が辺りに響く。

中々に迫力があり、風花は思わず肩をビクッとさせてしまう。

美鶴達は何事かと辺りを見回すが、総司とクマにはその声に聞き覚えがあり、声のする方へ見上げるとそこには十字架に張り付けになっている大柄の少年がいた。

怒鳴り散らしながら暴れて十字架を揺らす少年、それは総司とクマの予想通りの人物であった。

 

「完二!?」

 

怒鳴り声をあげていた少年、それは総司の後輩である巽完二その人であった。

そして、総司の声に完二も気付き、完二は総司達を見つけた。

 

「総司先輩ッ!?クマッ!?それと……洸夜さんの取り巻き!」

 

「取り巻きって、私たちに言ってるわよね……?」

 

ゆかりの言葉に互いが顔を見合わせながら返答に困るが、否定しようにも総司達が先に完二と会話をしてしまう。

 

「どうしてここにいるんだ。確か、皆は月光館に残された筈だろ?」

 

「そ、それがよ先輩……先輩達がいなくなった後、実は……」

 

完二は困惑気味に語り出した。

それは、総司達が二階付近に到達していた時の事……。

 

▼▼▼

 

少し前。

 

現在、月光館学園【保健室】

 

「……と言う訳で、イザナミが最後に生んだ火の神『カグツチ』。カグツチは火の神であり、その為に火を纏いながら生まれ、それが原因の火傷でイザナミは死んでしまいました」

 

陽介達が保健室を訪れ、江戸川先生と対談して早数十分。

最初は洸夜の事を聞いていた筈なのだが、いつの間にか日本神話の話になってしまい、終わる気配のない話に陽介達は疲れ果てていた。

 

「ねえ、これっていつ終わるの……?」

 

「俺に聞くなよ。そう言うなら里中があの先生に言えよ」

 

「無理言わないでよ……絶対、話聞かなさそうだし」

 

陽介と千枝は互いに溜息を吐いてしまう。

先程から止まらない神話トーク。

勉強にはなるが、江戸川の知識量の方に驚いてしまいそっちに意識が向いてしまうのだ。

そんな中、雪子が手を上げて先陣を切った。

 

「あの、今回の合同授業はどうなっているんでしょうか?私達、迷ってここに来てしまったので……」

 

雪子の言葉に全員が上手いと心で呟く。

修学旅行の話を出せば、見た目が不審者でも教師である以上は話を聞かない訳がない。

漸く話が終わると思った陽介達、しかし……。

 

「ああ、それは大丈夫。なんか桐条君達がいなくなって大変らしく予定が変わったってさっき電話きたから」

 

「ああ?なんで桐条って人達がいなくなったからってそんな大事になるんスか?抜け出してどっか行ったかも知れねえだろ?」

 

ここで完二がまさかのファインプレーを出した。

洸夜達がテレビの世界に行った等とは言えないから、完二はありえそうな事を言ったのだ。

だが、江戸川はボリボリと頭をかき、緊張感ない反応を示す。

 

「正確には桐条美鶴……彼女が大事。彼女の性格上、無断で抜け出す事はしない。しかも、この学園に資金援助しているのも桐条グループ。上の人は大変だ……ヒッヒッヒッ」

 

まるで他人事かの様に言う江戸川に呆気になる陽介達。

 

「花村先輩。このままじゃ話が全く進みませんよ?」

 

とうとう、りせも我慢が出来ずに陽介へ言った。

それに対し、陽介も考える。

総司と洸夜達が危機が迫っているのは間違いない。

ならば、何を迷う事があるのだろうか。

陽介は意を決して、少し分かりやすく大きな咳をした。

 

「エッフンッ!!」

 

咳をして話を強引に戻す強硬策に陽介はでた。

良く思われないかも知れないが、時間がない事には変わりない。

陽介は咳をした後、江戸川の方を力強く見た。

だが、無表情で自分を見る江戸川の姿に思わず恐怖を感じ、寒気を覚えた。

 

「君……もしかして風邪かい?本当は風邪って病名は存在しないけど、風邪かい?」

 

そう言って江戸川は陽介達に背を向けると、何やらビーカー等をカチャカチャと鳴らしながら何やら液体を入れる音が陽介達の耳に入る。

何やら、先程までしなかった変な臭いも発生している。

陽介達が息を呑む中、江戸川が振り向くと何やら手に怪しげな色の液体が入ったグラスを握っており、そのまま陽介へ近づい行く。

 

「えッ!?いや、さっきのは……!」

 

迫り来る危機に陽介は、両手を振って体調不良は誤解だと江戸川へアピールする。

まさか変な薬品を飲まされそうになるとは一体、誰が予測出来ると言うのか。

陽介は修学旅行に来てまでこんな無意味な事に巻き込まれたくはなかった。

しかし、江戸川の足は止まる事を知らない。

 

「遠慮しないで、せっかくの修学旅行でしょ? 体調をしっかり整えなきゃね。さあ、飲みなさい」

 

「いやッ!? だから俺はーーー」

 

「さあ、飲むんだ!」

 

江戸川の迫力に気付けば陽介は薬を飲んでいた。

しかし、見た目とは裏腹に味は栄養ドリンク風味であった。

 

(あれ……思ったよりイケる……ッ!?)

 

イケると思った陽介だったが、ところがどっこい。

突如、陽介は生涯で味わった事のない味覚に襲われてしまった。

辛い、甘い、しょっぱい等、それらの一般的な味覚を凌駕する謎の味覚に陽介は飲み終えると同時に動きを止める。

若干、表情が青白い気もし、呆気に捕らわれていた千枝達も漸く正気に戻る。

 

「花村君ッ!?」

 

「先輩ッ!? おい! あんた何を飲ませた?!」

 

雪子が心配する中、完二は江戸川へ先回りの薬品について問いただすのだが、江戸川は平然とした表情を崩さずに言った。

 

「昔、洸夜君も飲んでいた万能薬。どんな風邪でも次の日には殆ど完治する江戸川特性です」

 

あんたが作ったのかよ。

全員がそう思い、自家製の薬を作る様な教師の存在に恐怖すら感じてしまう。

 

「こ、こんな変な薬……一体、誰が飲むのよ……!」

 

「さっきも言ったように洸夜君筆頭に生徒複数人」

 

どうやら洸夜の高校生活は日常的にハードモードだった様だ。

千枝の呟きに返答する江戸川の答えに、顔色が良くなって来た陽介を始めとしたメンバー達はそう思ってならない。

神話に詳しく、自家製の薬も製造する保険医、一体どんな学校だ。

 

「当時の洸夜さんのストレスの原因。絶対にこの学校も入ってる……」

 

「今回ばかりはテメェに同意するぜ」

 

りせと完二が半分引いている表情をしながら、そう呟きあう。

少なくとも、三年間の殆どをこの江戸川と会うと思うと胃に穴を空けない自身がない。

胃に穴が空くと言えば、江戸川が薬を飲まそうとしそうだが、そう思うと更に不安が押し寄せる。

 

「う~ん。洸夜君も『彼』も黙って飲んでくれたんだけどな?」

 

「それって、ただ言葉が出なかっただけーーー」

 

「待って花村君。あの、『彼』って言うのはこの写真の……」

 

余計な問題を増やさない為に雪子が陽介を止め、陽介の写真を指しながら江戸川の言う『彼』について聞いた。

二年前のシャドウ事件、それを己の命を懸けて終わらせたペルソナ使い。

ある意味、『彼』について聞くのも洸夜に関係していると思い、雪子は江戸川は聞いたのだ。

そして、雪子からの問いに対し、江戸川は雪子達へ背を向けた。

先程まで色々と話していた江戸川とは思えない程に静かにして……。

 

「うん、そうだよ。洸夜君達の後輩……それが『彼』」

 

「あ、あの……『その人』は今は……」

 

どうしているんですか?

りせは江戸川にそう聞きたかった。

亡くなっていると聞いてはいたが、それが洸夜自身も勘違いしていると言う可能性もある。

洸夜の仲間達が、洸夜に酷い事を言ったと陽介達から聞いている為、もしかして『彼』の事も本当は嘘をついているのではと考えた。

しかし、りせの考えとは裏腹に江戸川はボリボリと頭を掻くと、静かに語り始めた。

 

「……噂で亡くなったと聞いたね。葬儀は親族だけで行ったらしいよ」

 

「……」

 

陽介達は黙った。

亡くなったと言うのが本当なのだと分かり、僅かな可能性に縋った自分達が馬鹿みたいに思えたのだ。

漫画やドラマの様な展開等、ある訳がなかった。

そして言葉が見つからず、黙ってしまう陽介達に何か思ったのかどうかは分からないが、江戸川は言った。

 

「でもね……なんと言うか、亡くなっているとは思えないんだよね」

 

「ああ?どう言う意味だよ?」

 

「言葉通りの意味です。『彼』はそう思わせる様な生徒だったんだよ」

 

完二の言葉に冷静に江戸川は返すと、お替わりいる?と陽介達にコーヒーかココアのお替わりを聞いた。

別にどっちでも良かったが、無下に断る理由もなく陽介達はマグカップを江戸川に手渡し、江戸川はポットを動かすが、その間の間がどうにも気まずい。

そう思った為、千枝が江戸川へある事を聞いた。

 

「あの、その名前はなんて言うんですか?「その人」は……」

 

「名前かい?名前はね……『あーーー」

 

「ぶえっくしょいッ!!」

 

それは江戸川が名前を発したと同時、まさに最悪なタイミングで陽介が大きなクシャミをしてしまい、江戸川の言葉を遮った。

おいおいマジかよ、そんな思いを胸に非難の眼を陽介に向けるメンバー達に、陽介は慌てて弁解した。

 

「いやいや! 今のは仕方ない……ッ!!?」

 

弁解する中、再び陽介の背筋に寒気が走る。

突然の寒気に反射的に背後を向くと、そこには言うまでもなく江戸川の姿があった。

その手にはカップではなく、自作の薬を持って……。

 

「君、まだ調子が治らないのかい? なら今度は試作品を……!」

 

「いやいや!? 大丈夫だから! そ、そうだ……これ! このテレビはどうしたんですか?」

 

再び薬の被験者の様になるのは御免だと、陽介は話題を保健室の隅に置かれている大型テレビへと向けた。

 

「ん? ああ、あれはね……使われていなかったヤツを保健室に持ってきたんだけど全然使わないし邪魔になっているんだよね」

 

江戸川はそう言うと、興味が変わったのか再びコーヒーとココアを入れ始める。

その光景に陽介は安心し、お前のおかげだと言いながらテレビの画面へと触れた時であった。

 

ズズズ……!

 

沼に沈むかの様に鈍くテレビの画面に陽介の腕は呑まれてしまった。

 

「へ……?」

 

突然の出来事にポカンとする陽介。

何故、稲羽じゃない町でテレビに呑まれるのか、ハッキリ言ってそこが疑問だが目の前の現実はテレビに入れると言う事。

しかも、抜こうとしても抜けない。

これはヤバいと思い、陽介は千枝達に助けを求めた。

 

「おい! 皆ちょっと手を貸してくれ!?」

 

陽介の言葉を聞き、千枝達も漸く陽介の事態に気付いた。

 

「ちょッ!? なにしてんの!」

 

「抜けねんだよ……助けてくれ!」

 

「だぁ! 男なら騒ぐなって先輩! ったく……あれ? 抜けねえ」

 

陽介に注意しながらも腕を掴み引っ張ろうとする完二だったが、腕はビクともせずに寧ろ完二ごと更に呑み込んで行く。

いよいよ不味くなってきた事態に、千枝や雪子、りせも二人を掴んで引っ張ろうとするが陽介はどんどんテレビの中へ入ってしまう。

 

「ええッ!? どうなってるの!」

 

雪子が叫んだ瞬間、突然物凄い力が陽介達をテレビへ引っ張りこみ、四の五の言う事も出来ずに陽介達はテレビの中へと消えて行った。

 

「はい。出来ましたよ……あれ?」

 

そして、保健室には江戸川だけが残されたのだった。

 

▼▼▼

 

現在、黒き愚者の幽閉塔【三階フロア・別ルート】

 

「……ん? ここは?」

 

陽介は気付くと霧に包まれたおかしな場所にいた。

色々な色に染められた変なフロア。

ずっと見ていると頭痛が起きそうな程に目に悪い色合いなのは間違いない。

一体、何がどうなっているのかと思いながらも、陽介が辺りを見ると同じ様に倒れている千枝達の姿があり、陽介は咄嗟にポケットに入れっぱなしだった眼鏡を付けた。

すると案の定、霧は晴れて視界が広がり、陽介は千枝達の下へ駆け寄る。

 

「おい里中! 天城! 完二もりせも起きてくれ!」

 

「う~ん……に、肉丼?」

 

訳の分からない事を言いながら千枝が眼を覚まし、それに続く様に雪子達も起き上がり始める。

 

「おい! 寝ぼけてる場合じゃねえぞ! 俺達、テレビの中に来ちまったみていだぞ!?」

 

「え……えぇっ!?」

 

陽介の言葉に完全に眼を覚まし、千枝達も陽介同様にポケットから眼鏡を取り出して掛けてみた。

すると、やはり霧は晴れて視界が広がる。

 

「マ、マジかよ……本当にテレビの中か」

 

「け、けど、こんな場所、私達行った事ないよね?」

 

雪子が驚く完二の困惑気味にそう言った。

今いる場所の風景、それは城でも大浴場でも劇場でもない見覚えのない場所。

霧があるのだからテレビの中に間違いないとは思うが、雪子達は現在地が分からない事で不安を覚えてしまいそうになるが、りせがヒミコを召喚して周りを探知し始めた。

 

「りせちゃん何か分かる?」

 

千枝が恐る恐るりせに聞き、りせもちょっと待ってと言いながら周りの地理を調べ、その結果を語った。

 

「此処、私達の拠点からそんなに遠くない場所にあるよ」

 

その言葉に全員が互いに顔を見合わせた。

 

「拠点から近い? でもよ、こんな場所ってあったか?」

 

「寝惚けて探知ミスったんじゃねえのか?」

 

呆れ風にりせへ完二はそう言ったが、それに対しりせも顔を膨らませて反論した。

 

「ミスってないわよ! 脳筋馬鹿の完二には分からないと思うけど?」

 

「んだとコイツ!」

 

グヌヌ、と互い睨み合うりせと完二。

どっちもどっちだが、そんな二人に溜め息を吐きながら雪子が間へと入る。

 

「二人共、此処に来てまでも喧嘩しないの」

 

「だって雪子先輩、完二が!」

 

「だって天城先輩、りせの野郎が!」

 

同時に互いを指差してそう言う二人は再び互いに睨み合い、その様子に雪子も勝手にしなさいと手の掛かる子供の母親の様な感じで再び溜め息を吐き、陽介と千枝はこの場所について話していた。

 

「にしても、本当に此処ってどこなんだろ?」

 

険しい表情で千枝は呟くが、その疑問に対し陽介はある心当たりがあった。

「……なあ。もしかして、此処って洸夜さんが生んだ世界なんじゃねのか?」

 

その言葉に全員の動きが止まった。

テレビの世界に関わらず見覚えのない世界だが、思い出せば洸夜と総司達はテレビの世界へ行ったのだ。

しかも、洸夜はあの時シャドウ化していた為、この世界に来てこの空間を誕生させても不思議ではない。

そして、陽介の言葉に何かを感じたのか、りせは再びヒミコで探知を始めた。

今度はこの場所について詳しく、そしてりせは気付いた。

 

「いた! 洸夜さんとそれに似た強い力!」

 

「マジか!? 場所は?」

 

「このダンジョンの最上階! それと、このダンジョンの別の場所から総司先輩達の気配も感じるよ!」

 

「やっぱし先輩と洸夜さんの取り巻き達も此処に来てんだな。こりゃ、決まりッスよ」

 

今度は喧嘩せずに二人は陽介へ向ける。

もし、りせの言葉が本当ならば自分達がするべき事は一つしかない。

 

「行くぞ。恐らく、洸夜さんのシャドウが出てる。今度は俺等があの人を助ける番だ」

 

陽介の言葉に全員が頷く。

今まで自分達を影で支えてくれて、時には反発もしたけど結局は自分達の事を考えての行動をしてくれていた洸夜。

一人で悩み続けている洸夜を、今度は自分達が助ける番だと陽介達の心は一つとなった。

 

「そう言えば、瀬多君達とは合流できないのかな?」

 

雪子が今出る案の中で最善策とも思われる案を提案する。

ハッキリ言えば戦力は重要であり、総司、そして二年前の戦いを生き残ったペルソナ使い達との連携は考えるのは当然でもあった。

だが、その案にりせは首を横へと振った。

 

「多分無理。久保の時と同じで合流が出来ない様になってる」

 

「マジかよ……今更だけど、この世界のそう言う所は嫌になるぜ」

 

頭を抑えながら陽介は、今更ながらこの世界の非現実な洗礼に嫌になってしまう。

 

「けどさ、今の私達って武器がないんだよね? ペルソナだけでも戦えるけど、体力とかもつかな……」

 

その場で跳んだりし、戦いへのウォーミングアップをしながら千枝は言う。

確かにペルソナだけでもシャドウと戦えるが、それでは体力等が持たない。

どちらにしろ体力等は使うが、やはり武器があるとないとでは天と地の差がある。

そして、それは陽介達も分かっているらしく、再び悩みの色を表情へ浮かべた。

その時だ、完二は自分達のいるフロアに並べられている"ある物"に気付く。

 

「ん? あぁッ! あれって俺等の武器じゃねえか!?」

 

「……本当だ。私の扇子もある」

 

全員がその場に近づくと、そこには綺麗に並べられた陽介達の武器があった。

陽介のクナイ、千枝の具足、雪子の扇子、完二の盾、それが品物の様に綺麗に並べられており、ここまでくれば作為的にしか思えない。

 

「どうやら、俺達の事もお待ちかねの様だな」

 

陽介の言葉に全員が武器を持ちながら頷く。

どうやら、このダンジョンの主は自分達もこの戦いに参加させる気だった様だ。

 

「そっちがその気なら、俺達もやってやるさ。行こうぜ皆!」

 

陽介の言葉に全員が頷き意思表明をし、陽介達はフロアの奥にある階段を上って行った。

 

 

▼▼▼

 

現在、黒き愚者の幽閉塔

 

拍子抜け、それが幽閉塔を昇って行く陽介達が感じた感想だ。

昇って行く中、シャドウは陽介達へ牙は向けるがそれは決して苦戦するような相手ではない。

洸夜のシャドウだから何かしら強い影響をシャドウ達に与えていると思っていたのだが、現実は大型シャドウは一匹も出てこない。

陽介は気になり、りせに聞いてみるとどうやら他のエリアの方に大型シャドウ達は集中しており、此方の方は手薄になっている様だ。

案外、体力面は節約できるかも知れない。

陽介達は口には出さないがそう思っていたが、それは強ち間違いではなかったりする。

そう、”体力面”だけでは。

 

「あぁ? なんだこりゃ?」

 

先頭を歩いていた完二が目の前に存在する黒い扉を前にして足を止め、その言葉に陽介達も足を止めて完二の後ろから千枝も覗き込む。

 

「扉だよね? 見た目的には変哲もないけど……」

 

千枝は思った扉の感想を口にするが、この世界で普通に見える物ほどに怪しい物はない。

 

「う~ん……別にこれと言って問題はないけど?」

 

りせがヒミコで扉を調べた結果を口にする。

これでシャドウが化けているとか、扉が罠であるとかは無くなったが問題は扉の中。

開けた瞬間、モンスターハウス宜しくシャドウだらけとも考えられる。

最悪、吊り天井に床から串刺し等の忍者屋敷パターンかも知れない。

考えれば切がないが、だからと言ってここで引き返す訳にもいかない。

いつの間にか自分達が修学旅行と言う事も忘れ、陽介達は扉の先へと足を踏み入れた。

 

 

▼▼▼

 

現在、黒き愚者の幽閉塔【最上階前の通路】

 

結果だけ言おう。

扉の先で見たのは洸夜の過去であった。

しかし、総司達が見たのとは違い、陽介達が見たのは二年前の事件などについてだ。

 

洸夜が迷い込んだタルタロス。

親友の犯した過ち。

新たに入る仲間。

目を覚ます満月の大型シャドウ。

暗躍し対峙する人工ペルソナ使い・ストレガ。

語られる真実に裏切り等、これ等以外にも陽介達は最上階に来るまで洸夜と言うより、過去の事件について知った。

友の正体、最後の選択、滅びを与えるニュクス。

それらが同時に自分達が思っていた以上に重く悲しい事件であったのかも。

陽介は最上階の扉の前に触れながら、思わず呟いてしまう。

 

「なんか、俺等が思っていたよりも事態はヤバかったんだな……」

 

「えっと……特にはどれが?」

 

「……全部」

 

混乱して変な質問をしてしまう千枝に、陽介はそう即答する。

どれがなんて選べる訳がなく、本音を言えば洸夜の親友がシャドウを倒したが同時にペルソナを制御出来ず、民間人の命を奪ってしまった、その時点でも陽介的にはギブアップだ。

前に、洸夜が自分達にペルソナについて厳しく言ったのは根源を見た気がしてしまう。

ヒーローみたいで楽しい、自分達は特別、ペルソナに目覚めてそう思っていたが先程の光景で見たストレガと言う人達はペルソナを扱うだけでも文字通り命懸けだった。

最後には命を落とし、人工ではない洸夜の親友でさえペルソナを扱えきれずに暴走させてしまった。

 

「私達、恵まれていたんだね……」

 

雪子の呟きは小さいながらも、確かに全員の耳に届いたが陽介達は何も言えなかった。

誰でも言える様な無責任な発言しか思い浮かばなかったからだ。

 

「……まあ、なんつうか。今は目の前の事に集中しましょうや」

 

沈黙を破ったのは完二だった。

完二は流れを変える様に何事もないように言うが、りせは納得できなかった様で案の定、完二に噛み付いた。

 

「ちょっと完二! 少し白状じゃない? 洸夜さん達、凄い大変だったじゃない!」

 

「別に何も考えなかった訳じゃねえよ。でもだからって、俺等がどうこう言える立場じゃねえだろが。かわいそうだとか、そんな無責任な事を考えるのがオチだろ?」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

以外にも完二に冷静に正論をぶつけられ、りせは口ごもってしまい、完二は今度は陽介達も視界に入れて言った。

 

「先輩達にも言っとくけどよ、今のオレ等がする事は洸夜さん達の過去を知ったからってそれについて悩む事じゃねえ筈だぜ。オレ達の時の様に今度は洸夜さんを助ける……そうだろ? こう言う時は少し単純に考えれば良いんスよ」

 

母親が眠れなかった為に族を潰した完二らしい言葉に、陽介達は少し驚きながらも頷くが、千枝はまだ悩んでしまっていた。

 

「そ、そうだけどさ。見ちゃったモノは仕方ないじゃん……」

 

「別に何にも思うなって言ってる訳じゃねって。何にもならねえのに煮詰まんなって言ってるだけッスよ。ただ、学ぶ物は学ぶ、それで良いだろう?」

 

その言葉に今度こそ千枝は納得したかの様に頷いた。

完二にしては珍しく正論の嵐であり、小さい頃を知っている雪子は嬉しそうにしながら完二へ近づいた。

 

「成長したんだね完二くん。おばさんも泣いて喜ぶと思うよ」

 

「なッ! なんでここでクソババァが出てくんだよ!!?」

 

顔を真っ赤にして雪子へ反論する完二だが、それは怒りからではなく照れからくる事なのはすぐに分かった。

 

「完二照れてるぅ~」

 

「そう言う所は可愛いのに、普段は口が悪いもんね」

 

「だあぁッ!! うっせんだよ! とっとと行くぜ!」

 

りせと千枝と続いて好き勝手に言われ、完二は一人で扉の方へいってしまう。

それでも、耳まで真っ赤なのを見て更に陽介達が笑ったのは言うまでもなく、陽介達は笑いながら扉の中へ入って行った。

 

▼▼▼

 

現在、黒き愚者の幽閉塔【最上階】

 

洸夜は倒れていた。

己のシャドウに挑んだがペルソナはおらず、眼を見た瞬間に身体から力が抜けて現在に至っていた。

洸夜の影はペルソナ白書を持って何処かへ行ってしまったが、何か嫌な予感だけは洸夜は覚える。

どうしようもない無力感だけが洸夜の中に溜まろうとする中、扉の方から聞き覚えのある声が届く。

 

「洸夜さん!?」

 

洸夜は聞き覚えのある声の主に微かに眼を開き、その名を呼んだ。

 

「花村……何でここに?」

 

洸夜の途切れそうな口調の中、陽介は倒れている洸夜の上半身を起こして頷き、他のメンバーも二人の周りへと集まり始める。

 

「洸夜さん! 大丈夫なんですか!?」

 

「ああ……見た目程、悪くはない。ただ、身体に力が……入らないんだ……!」

 

心配するりせに洸夜はそう返答するが、見た感じはやはり調子が悪く見えて仕方ない。

そんな洸夜に雪子は近付いて回復しようとした、だが、同時にりせはある気配を感じ取った。

 

「なにこれ……! この感じ……今までのシャドウとは違う!?」

 

「ッ! 戻ったのか……マズイ、花村逃げろ。皆を連れて逃げるだ……!」

 

「なに言ってんだよ!? んな事、出来る訳ねえだろ! シャドウがいるなら今度は俺達が守る番だ!」

 

逃げろと言う洸夜の言葉に陽介は反論し、それに続いて他のメンバー達もそれに賛同して洸夜の言う事を聞かない。

だが、それでも洸夜は、逃げろ……と言い続ける。

 

「違う……今までの大型シャドウとは……とは違う! 逃げるんだ……」

 

険しい表情で洸夜は言う。

自分のシャドウだからとか、そんな自惚れではない。

確かに己のシャドウの恐ろしさは理解しているが、直感的なもの等を踏まえても危険過ぎる。

殆どのアルカナとペルソナの力を持つシャドウ。

自分の経験等も全てを持つ大型シャドウ。

そして、その時は訪れた。

 

『己と向き合った仮面使い……か。だが、心はまだ幼い……』

 

「ッ!」

 

陽介達は声のした方を振り向くと、そこにいたのは見た目は洸夜だが、眼はシャドウ特有の金色の瞳をした洸夜の影であった。

そして、そんな洸夜の影と眼があった瞬間、陽介達は洸夜の言葉の意味が分かった。

今まで戦ってきた自分達の大型シャドウは、確かに恐怖等を感じたの事実だが、洸夜の影はそんな比ではなかった。

恐怖を通り越し、身体から心まで見透かされている様で戦意処か精神までもが油断していると一瞬で鬱になり、絶望しか見えなくなってしまう程の力を持っていると見て間違いない。

あくまでも、これは陽介達の直感的に感じた意見だが、直に肌で感じたモノより説得力があるものもそう存在しないだろう。

だが、それでも自然と武器を構える陽介達。

彼等には例え恐ろしい相手でも逃げると言う選択肢は存在せず、ジッと洸夜の影を睨み続けた。

 

『……クク。俺と戦いたい様だな?』

 

「お前が洸夜さんを殺そうとするなら相手になってやるぜ」

 

『だが、当の本人にはそんな意志はないようだがな』

 

陽介の言葉に洸夜の影も、陽介が抑えている洸夜を指さしながら返答し、陽介達も洸夜を見た。

洸夜は表情は力強くして己のシャドウを睨んでいるが、身体が震えている事に陽介達は気付いた。

こんな洸夜は見た事が無い、自分達と多勢に無勢に戦った時でさえ震える事もなかった洸夜が震えている、

それ程までに、自分のシャドウが洸夜にとって脅威なのだと、陽介達も嫌でも分かってしまうが気持ちが分からない訳ではない。

千枝達は洸夜を守る様にして前に出ると、洸夜の影から黒い光が発光し始めた。

 

『クククッ! 良いぜ……邪魔をするなら先ずはテメェ等から殺してやるよ! これが真なる影、オレの姿だっ!!』

 

「っ!! 皆、構えて!!」

 

りせの言葉に全員が身構える。

洸夜の影は全身を黒い何かで覆い尽くすと、その身体は徐々に巨大なモノへと変貌を始めた。

 

「やっぱり、こうなっちゃうのか……」

 

「ハッ! 結局はいつも通りって事じゃねえか!」

 

千枝と完二が前衛に構え、雪子とりせが後衛のサポートに入る。

そして、身体が徐々に形を整える洸夜の影を陽介が睨む中、支えられている洸夜が陽介に語り掛けた。

 

「すまない……花村」

 

「何、言ってんすか。礼なら終わってからーーー」

 

「そうじゃない……」

 

お礼だと思って言った陽介だが、洸夜はそれを否定しそれが謝罪だと分かったが一体、何に対しての謝罪なのかは陽介は分からないが、洸夜は続けて語り出す。

 

「己と向かい合うってこんなに大変で、こんなにも辛いんだな……お前等は凄い。己と向き合えたのだから……俺には無理だった……!」

 

「……」

 

陽介は驚いて言葉が出なかった。

弱音を吐いているのだ、あの洸夜が。

それ程までに追いつめられているのだ、洸夜の心は。

 

「すまなかったな……あの時、あんなに叱って。あんなに叱んなくても良かったよな? 本当にすまなかった……花村」

 

あの時とは、ペルソナ等について言われた時の事だと陽介は理解したが、洸夜のその言葉一つ一つがまるで遺言の様に力なく語られる事に陽介は怒りを覚える。

そんな弱弱しく話すなよ、そんな諦めたような表情をするなよ。

そんな感情が陽介の中に溢れ、気付けば陽介は洸夜へ叫んでいた。

 

「やめろよ! そんな弱弱しくしないでくれよ! 俺はあの時、洸夜さんに言われて恨んでないし、寧ろ感謝してるんだ! きっと、あのままだったら力の責任について気付かなかったかも知れねえし。けどよ、一番気に入らねえのは今のあんたの姿だ!! 俺から見ても……あんたは格好良く見えたんだ。だから、そんな事は言わないでくれよ……!」

 

「……」

 

陽介の言葉に今度は洸夜が驚いてしまう番であり、陽介はそう言うと立ち上がって洸夜の前に立った。

 

「見ててくれよ……今度は俺達があんたを守る番だ」

 

そう言って洸夜の影と対峙する陽介達だが、洸夜は陽介達に迫る危機に身体を揺らしながらも立ち上がった。

 

(マズイ……! このままでは花村達が……クッ! 頼む、少しでいいからアイツ等を守れる力を……!)

 

己に呼びかける洸夜だが、もうペルソナは自分に宿ってはいない。

それでも何とかしたいと思う気持ちが届いたのか、洸夜は自分の中から何かが出現するのを感じ取り、己の背後を見るとそこには棺桶の形をした何かを纏う一体のペルソナ『タナトス』がいた。

 

『ヴォォォォ……!』

 

唸り声をあげ、目の前の洸夜の影を威嚇するタナトス。

何故、タナトスだけが召喚されたのかは分からないが、そんなタナトスに洸夜は希望を託した。

 

(タナトス……今だけは力を貸してくれ! 総司にやっとできた本当の仲間達なんだ……絶対に死なせん!)

 

そう胸に熱い想いを宿しながら、洸夜も己のシャドウと向き合う。

そして、洸夜の影はその姿を露わにする。

 

『我は影……真なる我……』

 

▼▼▼

 

そして現在。

 

「って事があって、洸夜さんとりせのサポートでなんとかやりあってたんスけど……あのシャドウ、洸夜さんに精神攻撃したとかで洸夜さんが突然発狂したみたいに叫んだ隙に……この様だ」

 

十字架に縛られながら完二はこれまでの経緯を説明し、総司達はそれを黙って聞いている。

 

「やっぱり暴走したクマか。可哀想な大センセイ……ってあれ? っという事は大センセイのシャドウは今どこに……?」

 

クマが当然の疑問を口にする。

暴走し、陽介達を倒したシャドウがここにいない訳がない。

しかし、目の前や周辺にはそんな姿と気配もない。

 

「おそらく、姿を消してんだろ。あのシャドウ、洸夜さんの骸のペルソナの力も持ってからよ……」

 

縛られながらも完二は総司達へ助言をくれるが、それでも周りに異常はない。

総司も美鶴達も警戒する中、完二が何かを思い出したかの様に、あッ!と声を出した。

 

「どうした完二?」

 

「総司先輩! そん中にりせと同じ探知系の奴っているんスか!」

 

「探知系? それなら、風花さんが……」

 

「……?」

 

風花を見ながら総司は呟き、風花も状況が分からず完二の話の続きを美鶴達と待った。

 

「いや、洸夜さんのシャドウ……頭良いのか、りせや洸夜さんのサポートメンバーを集中的に狙ってたからよ。だから、もしかしたらーーー」

 

そう言って完二が総司達の方を見た瞬間、先程と異なる光景になっている事に気付き動きを止めた。

全員が自分を見ている中、先程まで存在しなかった黒く巨大な存在。

それが、風花の背後で巨大な何かを振り上げていた。

風花への攻撃、それを理解した瞬間、考えるよりも先に完二は腹から全力で叫んでいた。

 

「先輩ッ! 後ろだぁぁぁッ!!!」

 

「ッ!!」

 

全員に衝撃が走った。

クマもアイギスも、風花自身でさえ気付けなかった。

ワイトのアンチマハアナライズであり、気付くのが遅れた。

だが、総司達もそれで何も出来ない訳じゃない。

総司、美鶴、明彦も完二の言葉と同時にペルソナを風花の背後にいる存在に攻撃を仕掛ける。

 

『ッ!』

 

ガキィン、と刃物同士のぶつかる音が風花の真上で起こる。

 

「キャッ!」

 

突然の衝撃に叫んでしまう風花だが、その瞬間、彼女の身体は浮き美鶴達の中へ素早く移動された。

一体、何が起こっているのか風花は分からなかったが、すぐにそれが分かった。

総司が自分を抱えて移動させてくれたのだ。

しかも、俗に言うお姫様だっこで。

気付けば風花の顔が赤くなってゆくが、総司は彼女に無事かどうか聞いた。

 

「大丈夫ですか風花さん?」

 

「えっ……う、うん。大丈夫……」

 

無事が確認出来ると、総司はそれ以上は言わず風花をすぐに下ろした。

下心のないと分かる総司の行動、そんな所も洸夜とそっくりだ。

風花は思わず懐かしい感じがしてしまう、二年前の戦いの時の洸夜を見ている様だからだ。

 

「カッコいいな!」

 

「……どうも」

 

順平が総司の行動にそう言うが、今までのおふざけが嘘の様に総司はクールに返答した。

その行動に順平自身は思わず苦笑してしまうが、それは仕方ない事だ。

なにせ、目の前では風花を襲った存在がその姿を現そうとしているのだから。

 

『ッ!!』

 

その存在が何かを呟いた瞬間、その姿は徐々に変貌して行った。

右手は巨大な建物程ある刀と同化しており、左手には巨大な盾を持っている。

身体は西洋の鎧と和風の羽織りを纏っているが、それはボロくまるで立ち振舞いは放浪者の様だ。

顔も何処かオシリスを彷彿とさせるものがある。

だが、最も目立つのは身体のあっちこっちに埋めつけられているアルカナを模した仮面だった。

右手の刀には隠者や月、左手の盾には戦車や太陽等の様にアルカナを示すものがあった。

首にも全てのアルカナを意味する仮面一つ一つが真珠の様になって繋がっているネックレスまで付けている。

ワイルドのシャドウ、全てのアルカナを持つ大型シャドウにし、二年前を生き抜いたペルソナ使いの力そのものである『洸夜の影』がその姿を現した。

 

『我は影、真なる我……与えよう、最後の絆。"死"の絆を!』

 

 

二年前の苦しむ物達のこの戦いは、どう言う結果であれ一つの終局を迎える。

そして今が、その最終局面だ。

 

End

 

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