それから1時間程時間が経った後、夏目安吾の事情聴取を終えた善吉がキャンピングカーに戻ってきた。
「……と、ここまでが夏目の自供内容だ。」
「アリスとほぼ同じですね。善吉さん、他には何も?」
「夏目のスマホも、アリスのと同じだな。EMMAも本人も特に異常なしだ。」
「また収穫なしかよ…」
「収穫なしとは言ってない。例によって誰かが覗いてた痕跡はあったぞ。」
「マジかっ!?」
「それが誰か分かれば一発で事件解決まで持ち込めるのにな。」
「で?相手はわかるか?」
「…スマン、わからん。痕跡があるだけだ。」
「うーん。何者かに監視されていたのは二人とも一緒か。しっかし、犯人は誰で、何がしたいのかよく分からんな。」
その後も打ち合わせが続いたが改心事件がEMMAの登場時期と偶然重なっている程度の情報しか得られず、その日は解散した。
「ユウジ、俺は一足先に北海道でターゲットの周りを探っておく、お前はアイツらを北海道まで送り届けてくれよ。」
「分かりました。善吉さんもお気をつけて。」
「あいつらはきっとここ仙台で祭りを楽しんでから来るだろう。その間も警戒を怠らないようにな。」
「分かってます。心配いりませんよ。」
「そうか、ならいいんだ。お前は黒幕はいると思うか?」
「……正直分かりません。俺は実際にそのジェイルとやらに入ったわけではないですし、怪盗団のその不思議な力とやらも半信半疑ですが…善吉さんが信じてる以上俺が疑う理由はありませんよ。」
「……そうだな。俺も見るまでは信じられんフィクションかと思っていたが、見せられちゃ信じるしかないからな。いっそのことお前も北海道のジェイルとやらに入るのは…「嫌ですよ」そうか。」
「とりあえず。善吉さんはもう行った方がいいですよ。新幹線か飛行機か知りませんが時間があるでしょう?」
「そうだな。じゃあ頼んだぞ。」
そう話を終わらせて俺らの会話は終わった。
ジェイル…善吉さんが入ったというその不思議な世界。
俺は疑う訳では無いが正直まだ半信半疑だ。
「なぁEMMA……ジェイルってのは本当にあるのかね。」
『ピロリン…その質問にはお答えできません。ユウジ。』
「お前でも答えられない事もあるんだな…。」
『ピロリン…すみません、ユウジ。いつかお答えできる日があればお答えします。』
「そうか、そう遠くない未来だといいな。」
『はい、その時には必ず貴方も一緒に……』
「一緒にねぇ…まぁ楽しみにしてる。」
意味深な言葉を残してEMMAは終了した。
その言葉を俺は一生覚えておくことになる、だが今はまだ知らぬ事だ。
次の日は七夕祭りだった。
普段から活気のある商店街が彩られさらに輝きか増している。
さらに短冊も吊るされ、出店や観光客で大賑わいだった。
そこには夏目安吾の小説の話などひとつも出ておらず、街が正常に戻ったことを示していた。
「この様子を見るに改心は本当に成功したとみて間違いないようだな。」
「あら、疑っているんですか?怪盗団の功績を。」
「そういう訳では無いが。まぁほら、昨日の今日だからな。少しは気になる気持ちもある。」
「ふふっ、仕事熱心ですね。」
そんな俺は新島と祭りを歩いていた。
別にデートでもなんでもない、警察の仕事を見てみたいって話だから同行を許しただけだ。
「新島は警察になりたいって言ってたな。」
「ええ、父が立派な警察だったように私も。」
「そうか、目指すのは悪くないし、止めはしない…が!大変だぞ〜!」
「そうですか?なんだかユウジさんと善吉さんを見ていると楽しそうに見えますけど。」
「そりゃ勘違いだ、面倒なことをこっちに押し付けてるだけだよ!あのおっさん。」
「ふふっ、でもユウジさんと善吉さんいいコンビに見えますよ。それこそドラマで見るような関係で。」
「そりゃ刑事ドラマの見すぎだ。実際はもっと辛く嫌なことも多いからなぁ…。ってすまんな、なりたいって言ってる若者を前に仕事の愚痴は良くないな。」
「いえいえ!そんな事ありませんよ!本職の人の話を聞けるのはまたとないチャンスですから!」
「まぁ、俺は警察ってよりかは公安だからまたちょっと違うがな。」
そんな軽口を喋りながら新島と祭りを徘徊している後ろで…
「ねぇねぇ、あの二人どう思う?」
「うーん公安ってのが引っかかっるが、俺としちゃ悪くない2人だと思うけどな。」
「いいな、祭りを回る兄妹にも見えるから、絵になる。」
こっそり覗き見をしている怪盗団メンバーに対しモルガナはお前らなぁと呆れているのだった。
お久しぶりです。この話は短いですが仙台は終わりです。
北海道では物語を動かそうと思っているので気楽にお待ちください。