EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、陰謀渦巻く街
この街は、俺をなかなか寝かせてくれない…



File.1「闇、渦巻く(エデン)

 ピピピ ピピピ

 

 ピピピ ピピピ

 

「…うぅ〜ん」

 

 ピピピ ピピピ

 

 ピピピ ピピピ ピッ

 

「……はぁ、起きるか…」

ベットの横にある目覚し時計を止め、俺、ローレン・イロアスは朝日を浴びる為、ベットから体を起こし、掛け布団をたたみ、パジャマのまま部屋のカーテンを開ける

 

この(エデン)の朝日はいつも眩しい

今にも鳥のさえずりが聞こえそうだった

 

「……んんっ」

背伸びをし、顔を洗いに行く

 

洗面台の鏡には、ワインレッドの髪色に、これでもかと言うほど伸びた襟足をした20代前半の男が立っていた

 

水の音を立てながら顔を洗い、タオルで拭く

いつもと何も変わらない毎日だ

 

料理は得意じゃない為、朝はトーストで済ませてしまっている

テキトーに焼いて、テキトーにバターを塗る

今日は上手く焼けた

こういう日は、必ず何かが起こる

 

「……ふぅ…」

制服に着替え、お気に入りの鍵のペンダントを首にかける

 

「……行くか」

玄関のドアを開け、日光に手を添えながら、俺はドアの鍵を閉めた

もちろん、首の鍵じゃない

 

さて、今日もイカれたこの街に挨拶をしよう

 

「……こんにちワッサ」

 

 

エデン中央都市、都市警備部隊

要はエデンの警察だ

そして、俺はその警官

正しくは警官じゃないが、今回はそういうことにしておこう

 

『…昨今、この街で闇取引の事件が多発している。早急に対処しなくてはならない!』

隊長であるレオポルドは、台に乗りマイクを掲げて朝礼の挨拶をしていた

 

『いいか!この街に今、これまでにない脅威が迫っている!警備部隊諸君!これからの毎日、安心して眠れる日など来ないと思え!』

俺を含む、警備部隊総勢数百名が返事をする

 

『機動歩兵部隊も警備部隊に協力をし、共にこの街を守ろうではないか!!』

警備部隊の真横に並んでいる機動歩兵部隊

飛行機や戦車、潜水艦や大型戦闘用ロボットなどを扱い、これまでに幾多の事件を武力で解決してきた

 

「……」

と、黒髪の爽やか系の男と目が合う

無邪気そうなその笑顔は、俺にそっぽを向かせた

 

『…そこで、我々警備部隊は機動歩兵部隊との共同グループを作り、より捜査や調査などをしやすいようにしたいと思う』

レオポルドの発言に、会場が少しだけざわついた

 

『…各々グループを作り、捜査に当たってくれ!』

「…まじかよ…」

俺もそうだが、周りも動揺を隠しきれていなかった

周りを見渡し合い、目配せをしている奴らもいた

 

『……今日の朝会はここまで!今日も勤務に励むように!』

解散した俺達は、早速グループを作る事となった

 

…と、その前に

 

「隊長!」

「ん?あぁ、ローレンか」

俺はレオポルド隊長を呼び止め、走って向かう

首の鍵が揺れる

 

「どうした?」

「…最近この街で増えてる事件についてお話が…」

「…さっきも言ったが、それは機動歩兵部隊と協力してやると言ってるだろ?お前達も立派なEDENを守る者同士だ、上手くやれるだろう?」

「…はい…それはそうですが…今はそうじゃなくて…」

すると、遠くからレオポルド隊長を呼ぶ声が聞こえた

 

「…すまんローレン、外せない会議があるんだ、話はまた今度聞いてやるから…」

「…あぁ…はい…」

早歩きで去るレオポルド隊長を見届ける俺

だから気づかなかった

 

「……うわっ!」

「…へへっ」

真後ろに()()()がいた事に…

 

「…お前…」

そいつは先程目が合った好青年だった

 

「俺はアクシア・クローネ、パイロットやってるんだ!」

そう言うと、アクシアと名乗った好青年は手を差し出した

 

「…ローレン・イロアス……」

社交辞令で俺も自己紹介する

アクシアの手は意外と冷たかった

 

「…あのさ!」

「……なに?」

「……俺とペアにならない?」

 

 

「……へっへっへっ…」

「…やったな!これで俺達も大金持ちだぜ!」

大金が入った大袋の中身を見て、ナカモトが喜ぶ

 

「おいおい落ち着け!まだ逃げきれたわけじゃねぇ!」

もう1人、オダカがナカモトをあやす

 

「『スローンズ』の連中がいつ来るか分かんねぇ…それまで油断は禁物だ」

「そうだな…今俺達が捕まれば、()()()()の事もバレちまうからな…」

「あぁ、それまでこの街の外に逃げよう!」

そう入ったのも束の間、聞き覚えのある声が2人の耳に聞こえた

 

「何処に逃げるって?」

路地裏に隠れていた2人に、ローレン・イロアスは声を掛けた

 

「…こんにちワッサ〜」

 

遡ること数時間前…

 

「ローレン!事件発生だよ!」

「あぁ!分かってる!」

すぐさまヘリに乗り込み、状況を把握する

 

正午前、エデン中央都市の1番大きな銀行のエデン銀行が強盗に会った

犯人は2人

 

大金を所持した後、逃走したようだ

 

ヘリは上空に飛び立ち、エデン銀行まで向かって行く

 

「……」

「…相変わらずの運転技術だな、アクシア」

「…え?パイロットだからね!これくらい出来ないと!」

「…そうじゃなくて…」

アクシアはヘリを急降下させる

 

「後ろの奴の事も考えてくれぇ!」

「この方が早い!」

「アクシアァァア!」

 

「……っ!」

街の上を行くヘリからは、全てが見える

この街の事を知り尽くす俺にとって、犯人の場所など容易に分かる

 

「アクシア!ここで降りる!」

「了解!下降!」

「……ふっ!」

ヘリが建物の屋上に近付くのを確認し、降りられそうな高さまで下降

俺はヘリから飛び立ち、建物を渡って行く

 

「アクシア!援護を頼む!」

『あぁ!上は俺に任せて!』

「信頼してるぜ相棒!」

内線で会話をし、俺は犯人の所に急ぐ

 

「…こんにちワッサ〜」

「げっ!スローンズ!」

「もうここが分かったのか!?」

俺を見て逃げる犯人の2人

 

「待てぇ!」

俺はすぐさま2人を追う

ペンダントがやけに弾む

 

「二手に別れるぞ!」

「おう!」

大金を持った男は右手に、生身の男は左に逃げた

 

「…くそっ!」

俺はまずは右の男を追うことにした

 

「…へっ…へっ…」

大金を担いでるのにこのスピード

なかなかの強者だ

 

「…へっ…へっ…おらよ!」

急ブレーキを掛けた男は振り返り、俺に何かを振りかざした

 

「くっ!」

俺はそれを避けるついでに、スライディングをし

男の下を取った

 

「オラッ!」

「うおっ!」

男の顎に蹴りを入れる

これでだいぶ怯んだ筈だ

 

「…へへへっ…やっぱり、流石はスローンズだなぁ」

「っ!」

「…だかなぁ…この俺を…あんまり舐めるなよォ!」

男は大袋を振り回し、迫ってくる

 

「……」

「オラオラオラァ!!」

「…ふっ!」

一瞬の隙をつき、俺は男の背後をとった

 

「なにっ!」

「てめぇこそ俺を舐めんな!」

俺は男の背中に蹴りを入れる

 

「ぐおっ!」

「オラッ!」

そのまま押し倒し、腰に装備していた手錠に手をかける

 

「14時54分、現行犯と公務執行妨害で逮捕する!」

「…くっ…クソがァァ!」

男が叫ぶのと同時に、俺は男に手錠を掛けた

 

「……」

「…ったく、手こずらせやがって…」

俺は大袋の中身を開ける

中には大量の紙幣が入っていた

 

「……ん?」

しかし、違和感があった

これは…

 

「…偽札?」

長年の勘と経験がそう思わせた

 

「…そうさ、それは偽物…」

「…っ!」

「…つまりお前は、相方に逃げるチャンスを与えちまったってわけだァ!あははは!」

「…くそっ!」

俺は男を置いて走った

 

すると、無線が通る

 

『ローレン!もう1人は東の方向に行ったよ!』

「分かった!そのまま追跡を続けてくれ!」

『うん!』

「…ところでアクシア!」

『なに?』

「…東って…どっちだ?」

『…その進んでる方向で合ってるよ!』

「分かった!」

俺はアクシアとの通信を頼りに、犯人を追って行った

 

しかし

 

『違うよローレン!そこを左!』

「こっちか!」

『違う違う!そこを右ィ!』

「あぁもう!ひっちゃかめっちゃかだ!どっちに進めばいい!?」

『…うぅ〜ん…そうだ!』

すると、アクシアがなにか閃いた

 

『…えぇっとぉ…犯人はスギ百貨店の近くにいるよ!』

「…スギ百貨…そこか!!」

俺は今度は道に迷うこと無く進んだ

 

「…この街は俺の庭だ…俺から逃げる事なんて出来ねぇぜぇ!」

『……』

 

 

「…ふぅ…ふぅ…」

息を殺し、隠れる

 

今度こそバレない所まで来たはずだ

いくらスローンズとはいえど、こんな場所までは…

 

「…っ!?」

「…こんにちワッサ〜!」

背後から飛びつく男に気づかなかった

俺は押し倒され、後ろで腕を組まされる

 

「貴様!なぜ此処が!?」

「この街は俺の庭だ、この街での悪事は許さないぜ…」

そう言うと、警官男は俺の手首に手錠を掛けた

負けた

 

「…クッソォォォオ!」

「…チェックメイトだ」

 

 

「おつかれ、ローレン」

「あぁ、ナイスアシストだアクシア!」

俺とアクシアは腕を組み、いつもの手遊びをする

 

しかし、この事件はそう簡単には片付く話ではなかった…

 

「…EDEN補完計画?」

「あぁ、あの強盗2人が盗んだのは、金ではなかった…」

俺を呼び出したレオポルド隊長は、1つの封筒を渡して来た

 

「…これは?」

「犯人が盗んだのはそのUSBメモリー、その中にはこの街についての情報が詰め込まれている。その中のファイルのタイトルに、『EDEN補完計画』と名付けられていた」

「…でも、どうしてこのUSBがエデン銀行に?」

「分からない…この事件はそう簡単に片付けられるものでは無いらしい」

「…どうして俺にこれを?」

「…率直に言う、ローレン…この事件をお前に任せたい」

「…え?」

「お前は優秀だ、機動歩兵部隊のアクシア・クローネと手を組んでからというもの、手柄を次々と取っている。我々はお前達に期待しているのだ」

「…()()?」

「…もし、仮にもしこの街に危機が迫っているとしたら、お前はどうする?」

「……守りますよ、全力で」

「…うん、いい返事だ…とりあえず、この事件の事、考えておいてくれ」

レオポルド隊長は俺の返事を聞くと、早足で去って行った

 

「……EDEN補完計画…」

俺はレオポルド隊長から預かったUSBメモリーを見詰めた

 

この街は、本当に俺を寝かせてはくれない…

 

To Be Continued...




次回

  File.2「空、広がる(エデン)
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