EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

11 / 29
NEDE(ネディ)
この街には、誰もがいて
誰もが居ない……



File.11「友、導く(エデン)

「……」

地下帝国『NEDE』

そこは死者の魂が彷徨い、徘徊する街

死んだ者はこの街で永遠の時を過ごす

 

私はこの街を見つけた第一人者

だから街の名は、私の名である『ネディ』を採用した

 

一件普通の街

だけど陽の光が届く事はなく、心のない魂があるだけだ

“いる”のではなく、“ある”のだ

 

この街はエデンの街と直結しているが、まるで遠い

隣り合わせにあるのに、物凄く遠い所にある

地下深くとも捉えられるし、いわゆる別世界とも捉えられる

私がこの街を行き来しているあのエレベーターも、異世界を渡るのかもしれない

 

非現実的だって思うだろ?

でも知ってるかい?この街に、常識なんて存在しない

この街にも、あの街にも…

 

「……」

真実がいつも正しいとは限らないんだ…

ならば私は、真実を正しいものへと導く

それがきっと、この街に来ることが出来る私の使命だ…

 

 

「……パタ姐、頼みがある」

「…なんだ?」

アクシアが眠っている病室を出て、俺はパタ姐と話した

 

「……エバさんの行動を監視して欲しい」

「…っ!やっぱりローレンも気付いてたか!?」

「…あぁ、最近のエバさんは何かがおかしい。何か裏がありそうでな」

「…そうだ…多分、ルシファーの奴らと接触してるぞ?」

「…マジか…それが本当なら、だいぶマズイな…」

「なんでだ?」

「エバさんはガンバー・スカイビットとも繋がっていた、そんなガンバーが再び殺されたとなると…」

「…先生が手を回したって事?」

「…信じたくないが…可能性はある」

「……」

「…危うくアクシアも殺されそうになった、つまり相手は俺達を殺す事を目的としている」

「…事故に見せかけたね」

俺はひとまずパタ姐と別れ、俺は病室に残った

アクシアはまだ眠ったままだ

 

「……クソっ!」

ネディ…お前なのか…?

お前がこんな事をしたのか…?

 

正直、エバさんを100%疑うのは違うと思う

アクシアがガンバーと会っていた時はエバさんは俺達と一緒にいた

 

でもネディと絡んでいるなら話は別だ

あの犯行はネディのもので間違いはない筈だ

 

一体どうなってる…この街で一体何が起こってる!?

 

「……クソっ…クソクソクソっ…クソォ!」

俺はここが病室である事も忘れて叫んだ

 

「……」

 

《期待してるよ?大惨事になる前に》

 

「…大惨事…」

あいつ…この街をどうするつもりだ?

 

すると、俺のスマホが振動する

電話の相手はヴィンさんだった

 

「…もしもし?」

『ローレンくんですか?』

「…あぁ、そうだ」

『…見せたいものがあります。すぐに拠点に来てください』

「…分かった、すぐ行く」

俺はヴィンさんの言われるがまま拠点に戻った

 

家に入るなり、まめねこが俺の手を引いて歩いた

 

「…ローレンくん、これを」

ヴィンさんはパソコンの前に座り、意味深な表情をしていた

 

「……」

俺は不安になりながらも画面を見る

 

「…実は私、ルシファーの研究材料を漁っていた時、異端なものを見つけたのを思い出しまして」

「…異端なもの?」

「…このデータには『ピース』に関する事が主に載っているのですが…」

ヴィンさんはカーソルを下に動かし、ひとつのファイルをクリックした

 

「……これは…!」

「…死者蘇生に関する記述、この間の事件と関係がある筈です」

「……っ!」

 

 

「…久しぶりだね、ローレン」

「…お前、やってくれたな」

「あぁ〜…彼生きてるの?それとも死んだ?」

「命に別状はない、銃弾がもう少し奥まで入ってたら遅かったってよ」

「そぉ〜、命拾いしたね、彼」

「……」

私達は先日会った喫茶店にいる

ローレンから連絡があり、丸腰を条件に2人で会う約束をした

 

「……なんでアクシアを殺そうとした?」

「目障りだから、かな?」

「ふざけんな…あいつはな、俺のたった1人のバディなんだよ」

「へぇ〜、バディね〜…」

「……」

「昔の私と君みたいな?」

「…っ」

ローレンは俺の胸ぐらを掴んだ

 

「…落ち着けって、周りのお客様が見てるだろ?」

「……チッ」

大人しく席に着くローレン

 

「ほんと気性荒いよね、君は」

「……」

「そこは昔とまるで変わらない」

「……お前はどうなんだ?」

「…ん?」

「…この2年で何があった、この街がお前に何をした」

「……私はこの2年間、この街を外から見て来た」

「……」

「…そして気付いたのさ、この世界の不条理さに」

「…不条理?」

「……少し、昔話をしようか」

「……」

私は席を立つ

 

「…君の目的は、『NEDE』だろ?」

「…それが何なのかはよく分かってねぇが、確かにそれが目的で来た」

「…なら案内するよ、それまでゆっくり話そう」

「……」

店を出た私達は斜めに並んで進んだ

ローレンは私の少し後ろを歩く

 

雨上がりの道路に街灯や車のヘッドライトの光が反射する

 

「…光って、綺麗だよね」

「…え?」

「…君は知ってるかい?本当の暗闇って奴を」

「…さぁな」

「…私はよーく知ってる。本当の暗闇って奴なね…」

顔だけ振り向き、彼の顔を見る

 

「…どれだけ照らしても、消えないものさ」

「……影か」

「そう、影はどれだけ照らしても新たな影を生み出す。それは即ち、何者にも負ける事がないって事さ」

「……」

「…世界は時に残酷だ。強い者が勝ち、弱い者が負ける。ごく当たり前の事だが、おかしいと思わないか?だったら生まれつき弱い人間は勝てないのか?違う!勝てない者が弱いのだ!どれだけ強くても、勝てなくては意味が無い」

「……」

「…分かるかい?表裏一体なんだよ、逆説とも捉えられる。強い者が勝ち、弱い者が負ける。そして、勝った者が強く、負けた者が弱いんだ!」

「……」

「…君は、どっちだろうね?」

「…俺は、どちらでも無い。どちらとも捉えない」

「…ん?」

ローレンは足を止めて話し出す

 

「…大事なのは結果じゃない。それまで培ってきた物が大切なんだ」

「…培ってきた物?なんだいそれは」

「…努力、友情、信頼…負ける事で無駄になってしまうかもしれない…でも、己の中で培ってきた物は、決して無駄にはならない。必ずどこかで役に立つ」

「……」

「…それを、あいつらは教えてくれた」

あいつら…あぁ…ローレンのお仲間達か

 

「…どうやら俺とお前は、本当に分かり合う事が出来ないようだな」

「……そうだね、私達は全く逆だ」

「……」

「…命の価値観も、見解も、私には理解出来ない事が多すぎる」

「……」

「…だから知りたいと思った。全てを」

「……え?」

「…ローレン、最後のチャンスだ」

私はローレンに手を差し出す

 

「…君も私達と共に来い。こんな狭い街よりも、もっと大空に羽ばたこう」

「……」

ローレンはゆっくり手を出す

そして、私の手を弾いた

 

「……」

「…悪いな、俺はそんな物に興味はない。俺はこの街が大好きだ、この街に住んでる奴らが大好きだ。そして俺は、全てを知りたいとは思わない」

「……っ」

「…俺はこの街で生きる。このEDENという楽園が、今の俺の居場所だ」

「……そうかい」

呆れた私はひとつのドアの前に立つ

 

「……これは?」

「…地下帝国『NEDE』に行く為のエレベーター」

「……地下帝国?」

エレベーターの扉が開き、私は中に入る

 

「…覚悟が出来たら、君も乗りたまえ」

「……」

ローレンは息を飲んでから扉をくぐった

 

扉が閉じ、エレベーターはどんどん下へと進んでいく

 

しばらくしてからエレベーターは止まり、扉が開く

 

「……っ!」

ローレンはゆっくりと外に出た

 

「……何だここ…?」

「…地下帝国『NEDE』、死者が彷徨う影の街」

私は街に夢中のローレンを見て言う

 

「……ようこそ、我が楽園へ」

 

 

扉に入った!?

ローレンくん…無事でいてくださいよォ…

 

ローレンくんと謎の男の後を追ってしばらくした時、ローレンくんと男はエレベーターのような物に乗って行ってしまった

 

「……大丈夫ですよ、まめねこ」

まめねこが心配そうに見つめる

 


 

数時間前

 

「……これは…!」

パソコンに映し出されていた文字には、『『NEDE』と死者蘇生に関する報告』と書かれていた

 

「…ネディ…」

ローレンくんは爪を噛んでそれを見ていた

 

「……なるほど、『ピース』は死者を甦らせる為に、作られた物だってのか」

「…そのようです。『ピース』を死者の身体に打ち込むことで、一時的な蘇生を完了出来るそうですね」

「…それを生身の人間に打つと、『クリーチャー』になるってのか」

「…恐ろしい研究を刺せられていたのですね、私」

「…分かった、ありがとうヴィンさん」

「これからどうするおつもりで?」

「……ルシファーのボスに会ってくる」

「…え!?知ってるのですか?ボスの招待を」

「……あぁ、この事についてはいつか説明する。ただ、今は俺を信じて欲しい」

「……勿論です」

「…ありがとう…明日、そいつに会ってくる。ヴィンさんは俺の後を着いて行ってくれ。そして俺に何かあれば、すぐに皆に知らせてくれ。あ…アクシア以外にな」

「…分かりました…つまり、命の危機があるって事ですか!?」

「…まぁ、そりゃあな」

「…えぇ〜!?軽い!?」

「……ぷッ…くくくく」

「笑い事じゃないですよォ〜!」

「…悪い悪い…でも、命を張る理由もある」

「…アクシアくんの事ですか?」

「…あぁ…あいつの為にも、俺がこの事件の真実を見つけてくる。だから楽しみに待っていてくれよな!ヴィンさん!」

 


 

「……」

貴方はいつもそうやって頑張るのですねぇ…

私も見習わなきゃですね…

 

 

「…ハァ…ハァ」

「……どういうつもりですか?レイン君?」

私が構えている銃の銃口は、オリバー先生を捉えていた

暗い部屋、私は耐えきれなくなって思わず銃を構えていた

 

「……オリバー先生…いつも言ってたよね…」

「……」

「…良い夢をって…」

「……」

「……私は今まで…夢を見てたって事…?」

「……」

「……ねぇ!答えてよ!オリバー先生!」

「……」

オリバー先生は何も喋らない

 

さっきから私の目をじっと見るだけだった

 

私には殺れないとでも思っているのだろうか…?

 

「……ハァ…ハァ…やぁぁあ!」

私は銃の引き金に指を置いた

その瞬間だった

オリバー先生は私の銃を奪い、私の額に銃口を押し付けた

ついでに片腕は掴まれて動かせない

 

「……へ?」

気付いた時には危機的状況だった

 

「……レイン君…」

「……」

オリバー先生はいつもの優しい声で囁いた

これはドッキリ

私は今夢を見ているんだ

 

そう、だからこのオリバー先生も私の見ている夢であり、本物じゃない

だから…

 

「……夢は…覚めるものですよ」

「……っ!」

暗い部屋に、バンッ!と鈍い音が響いた

 

To Be Continued...




次回

  File.12「師、出会う(エデン)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。