EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、美しい街
この街は、汚れを知らない…



File.14「急、繋がる(エデン)

「……改めまして、私は都市警備部隊隊長のグリファード・レオポルト。ローレンの上司です」

客室…というかリビングにレオポルト隊長を案内したおれたち

ベージュ色のコートを羽織り、白のハットを被った男性

右手にはビジネスバックを持ち、見た目はサラリーマンだった

 

「……お茶です」コトッ

「これはどうも、いただきます」

席に座ったレオポルト隊長はオリバー先生が置いた紅茶を上品に飲んだ

 

「…とても美味しい…どこの紅茶ですか?」

「僕のゼミ生の家の紅茶です。新鮮な茶葉から抽質してあって、僕もお気に入りなんです」

「そうですか…今度仕入れて隊員たちに振る舞いたいですね…」

「……ところで、本日は?」

「……」

もう一口飲もうとしたレオポルト隊長の手が止まる

 

「…レオポルト隊長、ローレンの過去って…一体どういう意味ですか?」

「…アクシア・クローネ…君は、ローレンの事をどう思う」

「……え?」

「…あいつはとても優秀で、私は彼がこのエデンを救うと思っていた。彼の正義感は本物だからな」

「……思っていた…?」

「……ローレンは…一度己を見失った事がある。正義感に押しつぶされ、一度警察を辞めたことがある」

「……そうだったんだ…」

「…知らなかったんですか?アクシア君」

疑問に思ったのか、オリバー先生がおれに質問してきた

 

「…うん、ローレンと知り合ったのはエデン大学を卒業して機動歩兵部隊に入ってすぐだったから……ローレンはもっと前から警察やってるって言ってたし…」

「…知らなくて当然だ。あいつはそういった事を他人に話したがらない」

「……他人…」

パタさんが呟く

 

「……だが、そんなあいつを再び警察に呼び戻してくれた人物がいる」

「……」

「……ネディ・デイジー…」

「…っ!?」

すると、そばで静かに聞いていたヴィン博士が飛び跳ねるように反応した

 

「な、なんですってぇ!?」

「落ち着いて!ヴィンさん!」

そのそばにいたパタさんが鎮めた

 

「……あの日、ローレンくんが言っていたんです。「ネディ」という名を、そして…その日は一日中、全身白ずくめの男と会っていました」

「…白ずくめの男!?まさか…!?」

ガンバーさんを殺した……あの…!?

 

「……君たちは、ネディ・デイジーの事を知っているのですか?」

「……知ってるって訳じゃありませんけど。ローレンと深い関わりを持っている事だけは分かります」

「…そうですか…」

「……どうしたんですか?」

「……いえ、なんと言いますか…」

「……」

「…いえ、全てをお話しましょう。ネディ・デイジー…ローレンと共に都市警備部隊に所属し、この街の平和を守ってきました」

「……」

「…ある日、正義感に押しつぶされたローレンが警察を辞め、普通の生活をし始めていた時、ネディ・デイジーはローレンを最後のチャンスと言って、ある任務を遂行することになったのです」

「……」

「…そこまで難易度は高くない。万引きGメンレベルの任務にローレンとネディ、2人で挑んだんです」

「……」

「…任務は順調に進み、あとは脱出するのみ。しかし、少しの間でも警察を辞めていたローレンは気を抜き、失態を犯してしまった。結果、2人の存在が相手にバレて……」

「……バレて…?」

「……ネディ・デイジーは、敵に射殺されたんです」

「……射殺…?」

「…死んだ…って事ですか?」

「はい。ですから、この世にネディがいるなどありえない筈なんです。ですが、本当にローレンはネディと会っていたんですよね?」

「……その筈です。私はこの目で見ましたから」

「…ならば…やはり…」

「…隊長?」

「……彼は、神になったのですよ」

 

 

「……ア、アクシア…」

「見つけたよ、ローレン」

その時には夜だった

アクシアは高台でタバコを吹かしていた俺を見つけてドヤ顔をしていた

 

「……そっか、隊長が…」

「ローレンの事、心配してたよ?」

「……なんで俺の居場所がわかった?」

「…ローレンは頭が効くけど、分かりやすいから」

「……」

「…いくらおれたちのもとを離れても、この街から出て行く筈がない…だからローレンはこの街のどこかに居る。そう思ったんだ」

「……でも、それでもこんな広い場所…」

「この街は俺の庭、でしょ?」

「……そうだ…この街は俺の庭…汚す事なんて許せねぇ」

「……」

「……話す時が来たみたいだな。俺の過去を」

「……」

「…あれは2年前…いや、もうすぐ3年経つ──」

 

 

「……警察を辞めるって、どういう意味だよ!」

「…そのまんまだ。俺は警察を辞める」

「なんでだよ!私と君はバディの筈だろ!?」

「ネディ…俺は警察になるには器が狭すぎた……世間は悪いヤツばっか…その均衡を守る為に俺は警察になった。だけど、それは俺じゃなくても出来る事だ」

「……何を言って…!?」

「ネディ…お前は優秀だ、俺なんかよりももっと活躍出来る…この街を頼んだぞ…」

その日、俺は警察を辞めた

20歳になったのだから、いいきっかけだったのかもしれん

 

「……」

俺は警察を辞めた

使命も、責任も、全て捨てて自由を手にした

同時に、全てを失った

金も、友も、信頼も……何もかも…

 

普通の生活なんて程遠かった

街中で引ったくりに遭遇すれば自然と身体が動いていた

子供が迷子だったら最後まで親を探した

老人が信号を渡るのを手伝った

 

そして最後に、必ず言われた

 

「ありがとう」

 

この言葉だけが、俺の生き甲斐になった

 

「……くそっ」

だからこそ、独りになると無性に自分に腹が立った

マジで何の為に警察になったんだよ…

何の為に努力して、何の為にあの日々を送ったんだ…!

 

俺は日常を求めていた

でも不思議なもんで、自分から刺激を求めに行っていた

 

そんなある日だった

 

「……ローレン…最後に、私にチャンスをくれないか」

「……」

 

日常が崩れる気がした

良い意味でも

悪い意味でも

 

 

 

「……闇取引の現場を取り押さえる?」

「そうだ、簡単だろ?この任務は私達の連携が大事になる。肝に銘じておけよ?」

「…いや、俺まだやるとは…」

「…来たぞ!」

「…ったく……仕方ねぇな…」

俺は笑っていた

これは仕事でも、ボランティアでもない

命を懸けた、戦い

 

それなのに、俺はその非日常を楽しもうとしていた

 

だから気が緩んでいた

 

「ローレン!」

「…あ」

 

「あっちに行ったぞぉ!」

「追いかけろ!叩き潰せぇ!」

 

「…ハッ…ハッ」

「…フッ…フッ」

「…なんだかこの感じ…久しぶりだな!」

「…え?」

「…ローレン…また警察やらねぇか?」

「……」

「ローレン…私はね…この街の夜明けが見たい」

「…夜明け?」

「この暗い街に光を灯したい…それが私の夢だ」

「…何を言って…この街は充分…」

「ローレン!君の夢はなんだ!?」

「…俺の…夢…?」

「そうだ!君は何を望む?何が欲しい?何がしたい?」

「……」

「…君が警察になった理由はなんだい!?」

「……俺は…」

 

初めは分からなかった…どうして警察になったのか

考えれば考えるだけ分からなくなった…

 

だが、答えは決まっていた

 

「…俺は、この街が好きだ…俺にとってここは楽園だ。だから…」

「……」

「…俺は俺の居場所を守りたかっただけだ!」

次の瞬間、後ろから発砲音がした

奴らが発砲したのか…!?

 

「…っ」

遅いと思ったが、俺は振り返った

そこには、白い服に血を滲ませたネディが撃たれていた

 

「…ハッ!?」

「…ぐっ!」

「ネディ!」

背中に3発

血はどんどん広がって行く

 

「……くっ…!」

 

「殺れぇ!トドメを刺せぇ!」

「おぉ!」

 

「……」

相手は3人

武器は拳銃のみ

 

「……」

10秒で始末してやる…

 

 

 

「……ローレン…?」

「…ネディ……お前…」

「…あぁ…こりゃ…死ぬな」

「……なんで…俺を…?」

「…君がようやく話してくれたんだ…君の夢を…」

「……」

「…ずっと聞きたかった…いつも一緒にいるのに…君は自分の話をしなさすぎだ…」

「……お前…」

「…でもいいんだ…もう……願いは叶った…」

「……」

「…私の意思を…君に託した…ローレン…」

「……」

「…この街の…EDENの夜明けを……見てくれ…」

「……」

「……」

「……クッ…」

「……」

「……クッソォォォ!」

 

次の日から俺は警察に復帰した

ネディの思いを背負い、警察として再び歩もうとしていた

 

そんな最中…

 

「……え?今、なんと言いましたか?隊長」

「…先日の闇取引の件、犯人3人が自白した……」

「……」

「…証言によれば、3人の取引相手は…「ネディ・デイジー」と名乗ったそうだ」

「……ネディ…?」

「……ネディの経歴を探ると、幾つか情報が出て来た。そして、分かったことがある」

「……」

「…ネディはこれまでに警察の極秘情報を外部に無断で漏洩させていたようだ。ネディ・デイジーは……」

「……」

「…悪魔だ」

 

ネディが……あの事件の首謀者…?

なら何故自分が担当した…?

いや、それはこっち側が決める事だ。ネディは元からこの事件の事を知っていた。だが、俺を呼び、自分が……

 

「……」

なんで俺を呼んだんだ?

わざわざ呼び出さなくても、1人で向かう事が出来るんだから逆に都合が悪くなる筈だ…

それなのに何故…

 

「……」

 

《あっちに行ったぞぉ!》

《追いかけろ!叩き潰せぇ!》

 

「……あいつら…俺しか狙ってなかった…?」

もしかしてネディは……

事故を装って、俺を殺そうと……

 

 

「…その日から約2年後、あいつは俺の元に現れた。生き返って来てな」

「……それがローレンの過去…」

「……あぁ」

「…ところでさ、気になってたんだけど……」

「…ん?」

「…7月19日…この日に何の意味があるの?」

「……その日なんだ。あいつが死んだの」

「…え?」

「…7月19日、ネディ・デイジーは射殺された。その日はあいつの命日なんだよ」

 

 

 

「……あとさ、なんでおれたちのもとを離れたの?」

「…それ聞いちゃう?」

「聞いちゃう」

「……素直に言うと、逃げたかった」

「…そっか…」

「っていうのは建前でな、実は準備をしていた」

「…準備?なんの?」

「勿論。その日のな…俺が無策で7月19日(その日)を迎えると思ったか?」

「…っ」

「…知ってるか?この世界にはな、おもしれぇ奴が沢山いるんだぜ?」

「……ローレン…!」

「…これからもよろしくな?アクシア…いや、相棒!」

「…うん!」

 

 

「迷惑を掛けた!すまん!」

「まったく、仕方のない奴だな〜ローレンは〜!」

「ホントですよォ〜!」

「…すまん!」

「…まぁまぁ皆さん、そこまでにしてあげて……ローレン君」

「…エバさん」

「…おかえりなさい」

「…あぁ、ただいま」

 

 

 

「……と、謝罪も済んだことだし、早速今回の件について話そうと思う」

机を囲むようにして座った俺たち

俺はアクシアに話した事、今までの事を全て話した

みんなは静かに聞いてくれた

まるであの日の答えを聞いているように…

 

「…なるほど、ネディという男は既に死んでいる…というのは事実なのですね」

「またしても不気味ですねぇ〜…この街には常識というものが足りない…」

「どうするんだローレン?7月19日まであと2ヶ月もないぞ?」

「どうするもこうするも、その日までひたすら特訓するしかないだろ」

「それにさ、相手が1人とも限らないよ?複数人で襲ってくるかも!」

「百鬼夜行……死人を解き放って街に出現させるつもりでしょうか?」

「そうなったら街の人達はどうするんだ!?見殺しにするのか!?」

「パタ姐落ち着け、それに関しては問題ない」

「…?」

「では、問題は本部の連中ですね……彼等には幹部が4人いるとされています」

「幹部とネディで5人……俺たちが1人づつ相手をすれば何とか…」

「上手くいくかな?」

「分からん。だがやるしかない」

「…そうですね」

「うんうん!」

「心配ですねぇ〜…」

「……頑張ろう!」

みんなが手を合わせ、最後に俺が手をみんなの手の上に重ねる

みんなは優しく俺を見た

 

「……こんな事にみんなを巻き込んですまない…だが、この街の為に戦って欲しい…これは俺のお願いだ。無理して聞く必要は無い…」

「…何言ってんだよローレン!」

「…っ」

「僕たちは元より、君について行くと心に決めています」

「私はローレンの良い所も悪い所も知ってる。だから今更引くなんて出来ないよ」

「君がくれた恩、今こそ返す時ですよォ〜!」

「……みんな…!」

「…行くよみんな!ウィーアー…!」

「「「「「エデン!!」」」」」

俺たちは重ねた手を思いっきり上にあげた

勢い余ってヴィンさんの手が照明に当たった事は黙っておこう

 

 

「……待ってろよ…ネディ…!」

 

 

「……」

この街は美しい

誰もがそう言う

 

「…おいネディ、飯が出来たぞ」

「…いらない。私はお腹が空かないんだ」

「……そうだったな…」

「……」

「…どうした?」

「……ねぇガル…彼は何を望むんだろうね…?」

「…は?」

「世界の平和かな?この街の安泰かな?……いや違う。彼はそんな事は求めていない……」

「……」

「……もう一度、彼に問い質すとしよう…」

 

美しい物はいつか汚れる

だったら今のうちに…

 

消してしまえばいいのさ

 

「……さぁ、行こう。ガル」

「……先に飯食っていいか?」

「…あ、ごめん」

 

To Be Continued...




次回

File.15「破、終わりの(エデン)
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