EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─ 作:キャメル16世
そこは、希望も何も無い。だが…
その街は、確かなものが有る…
時刻 21:32
「……くっ…」
「…ぐっ…へへっ…」
「……ふっ…」
手を握り会い、力較べをし続ける僕達
腕の筋繊維1本1本が鼓動するのがわかる
「久しぶりだなぁ!またこうやってあんたと力較べ出来るとは思っても見なかったぜぇ!」
「…えぇ…!僕も高揚していますよ……かつての部下が僕に歯を向けるなんて…こんなイレギュラーな事がありますか!」
「ガッハッハッ!やっぱりあんたはこっち側の人間だ!だからこそ潰しがいがあるってもんだぜぇ!」
「……くっ…!」
バンデルは僕を投げ飛ばす
何とか体制は崩さぬまま、僕は彼の目を見る
「……」
「……へっ…!」
「…何がおかしいんですか?」
「……俺はあんたのその目が気に食わなかった…全てを諦めたような…全てに期待をしていないようなその目が」
「……」
「…俺はあんたに期待されていなかった……だから必死に鍛えて、誰よりも強くなってやるって思った…」
「……」
「……でも違ったんだ。あんたは俺たちを見限ったんじゃない……」
「……」
「……あんたは自分を見限ったんだ」
バンデルは僕に指を指して不敵に笑う
「…あんたは将来有望なマフィアのボスとして君臨した。先代が亡くなり、後継者のあんたは紛うことなき『エヴァ』の……『俺達』のボスだった!」
「……」
「…最初は憎かったさ。俺より年下のあんたが好き勝手指図するんだ…不服に決まってる。だがあの日、あんたは似合わぬ教職の道に進んだ。情報収集の為とか言ってたが、教授となったあんたの目は、俺達に向ける目とはかけ離れていた」
「……」
「…ガッカリしたぜ……いきなり『エヴァ』を解散させ、俺たちを路頭に迷わせた……だがおかげで俺は『ルシファー』に入ることが出来た」
「……なぜ『ルシファー』に?」
「当たり前だろ!この街に未練が亡くなったからだ!家族を失い、信頼出来るものも失った俺に…この街は要らねぇ……全力でぶっ潰す!」
「……」
バンデルは拳を握り自信満々に笑う
「……」
「……それが…俺の願いだ」
「……僕は幼き頃、この街に来た。大半の人間は、異端な僕らを蔑んだ。地位も名誉も、居場所もない僕にとって、ここは行きずらい場所でしたよ……でも、それも終わりです」
「……あ?」
「…この街には僕を導いてくれる人達がいる。僕を認めてくれる人達がいる。その人達の為に……僕は戦う」
「……甘いんだよ!誰かの為に戦おうなんざな!」
「…確かに僕は甘いのかもしれない……でも、安心してください。僕は……」
「……」
「…殺る相手に、慈悲は与えません」
時刻 21:39
「うわぁぁああうぅああ!」
「…くっ…!」
暴れ狂うビックフットのような見た目の「クリーチャー」
「バース」を打ち込まれた者はどんなものでもこんな風になってしまうのか…?
「わぁああう!」
「ぬっ…!」
私は何とか攻撃を避け続け、体制を立て直す
「……しぶといですね、貴方は1番仕留め易いと思ってましたが…」
「……ふふっ…レインくんにとことん特訓してもらいましたからね…!」
それは避けるだけじゃない
攻撃も!
「…ぶうぅ!」
「……ふっ〜…」
ビックフットの腕に蹴りを入れるも、やはり効いていないようだ
「…なるほど……どうやら、私はあなた達を甘く見ていたようだ。あなた方の実力は認めましょう……しかし、私の
「…っ!」
するとマディは次々と
次々とビックフットに変貌する屍人達
いつの間にか私は巨体の群れに囲われてしまった
「…えぇ〜!?そんなのアリですか〜?」
「…うぅぅぅうぅぅ!」
「うがァあ!あぁああ!」
「…ぐうぅううぅぅ!」
「……」
私はこれまで他人に依存すること無く生きてきた
自分以外の人間ほど信頼出来るものがなかったからだ
人間というのはとても醜い種族だから
彼と出会い、共に行動したのは
一時の気の迷いと言いますか…
彼と出会わなければ、こんな死に際には一切合わなかったでしょうに……どれもこれも、全て彼のせいです
「……ふっ」
「…?」
でも──
「……ヴィンさん何してるんだ?」
「ローレンくん……」
「…へぇー…新しい研究か…」
「「ピース」に対抗するべく、新たな薬品を調合しているのですよ!もちろん、人体に被害の及ぼさない物をね!」
「……」
「……ローレンくん…?」
ローレンくんは悲しそうな
「…今更なんだけどさ、悪かったな」
「……え?」
「…俺は初め、あんたを許せなかった……EDENを苦しめる張本人の一人だったからな…」
「…それは……」
「…でも今では、信頼してる」
「…え?」
「初めは弄れたあんたの考えを正そうとしてあんたの元に来たってのもある。でも、関わっていくうちに……あんたは俺たちの中で一番人間らしいって事が分かった」
「…人間…らしい…?」
ローレンくんは寂しそうな表情から、立ち直ったような表情をした
「…あんたは特に喜怒哀楽が激しいからな」
「よ、余計なお世話ですよォ〜…」
「…ふっ」
「……」
信頼している
この言葉が、どれだけ私に自信と勇気を与えてくれたか
貴方には分からないでしょうね
社会からあしらわれ、友人に裏切られ、闇の中を彷徨う私は、いつだって私を見失ってた
でもあの日
「…ローレン・イロアス…あんたの作ってる薬について話がしたい…」
彼らは私をその闇から引きずり下ろした
あのままの人生で行けば、私は安泰の生活をしていたでしょう
一生何不自由なく暮らせる暮らしは、まさに私にとって理想です
でも、その代わり
私は私を見失ったままだったでしょう
私は『ルシファー』を抜けて「凡人」に成り下がった
だが、彼と出会わなければ
私は「凡人」にすらなっていなかった
本当に醜いのは
私だったのだ
そんな私を、彼は「人間らしい」と言ってくれた
ありのままの私を受け入れてくれた
本心かどうかは置いておいて
彼からの言葉が、私を勇気立たせてくれた
だからこそ、今こうして死の間際に遭っている
全ては彼のせいであり、全ては彼のおかげなのだ
「……ふっ…ふふふふっ!」
「……なんだ?何がおかしい?」
「…いいえ、ただの思い出し笑いですよ……」
「…気味が悪いな」
「…当たり前じゃないですか……だって私は…!」
「…っ!」
「…マッドサイエンティストなんですからねぇ〜!」
時刻 22:15
「……ハァ…ハァ…」
物陰に隠れ、
結構奥まで来たと思ったが……
まだまだ先は長そうだ
「……なぁローレン…」
「…ん?どうしたパタ姐」
「……みんな…大丈夫かな?」
「…大丈夫……きっとな…」
「……ローレン…」
パタ姐は気づいているのだろうか
俺は自覚していた
震えている
俺はこの場に於いて、恐怖を感じていた
それは俺の命の危機からくるものではない
仲間の死
それだけが、何よりも怖かった
「……大丈夫…だよな!」
「……え?」
「…うん!きっと大丈夫!いや、絶対大丈夫!」
「……パタ姐…?」
「……ローレン…私はさ、正直自分が死ぬのは怖くないよ…私はいつだって命を張って来たから」
「……」
「…でもやっぱりそうだな……」
「……」
「……仲間が死ぬのは……怖い…かな」
「……っ」
それは見ただけで分かる
パタ姐は笑顔を作って俺に安心して欲しかったのだろう
怖いのは自分だけじゃない
みんな、仲間が死ぬのを恐れている
当たり前のようなその事が、俺を勇気立たせてくれた
「……パタ姐…行こう」
「…うんっ」
俺たちはお互いを意識しながらこの戦いに望んでいる
それは故に、俺たちは独りじゃないという事だ
『……ローレン……ローレン…!』
「…っ!アクシアか!?どうした!?」
受信機に無線が入る
ノイズが酷いスピーカーからアクシアの声が聞こえた
『…大変だよ!街が…!』
「……っ!」
時刻 21:53
「……」
街をヘリで飛びながら観察するおれ
街はいつもどうり平和だった
「……大丈夫かな…みんな…」
おれは街を見守りながら、みんなのことを心配していた
「……」
「…止めてみなよ、『EDEN』の皆様?」
ガンバーさんを殺した…あの男…
あいつがネディなのか?
「……くっ…!」
思い出すと胸が苦しくなる
おれはまだガンバーさんの死を受け入れられていないのだろうか
「……っ」
でも、俺のやるべき事は分かっている
もしこの街が大変なことになったら、ローレンにそれを伝える事
そしてもうひとつ、みんなに危機が迫ったら
おれがすぐに応援を呼べるようにする事
どちらにせよ、おれは遅れて登場する事になる
「……ん?」
なんだろう
この異様な雰囲気……
「……ッ!まさかっ!?」
おれはすぐに地上を見た
無数の
「……くそっ!」
こんなに早く現れるなんて…!
予想外だった!
「…ローレン!ローレン!」
『アクシアか!?どうした!?』
「…大変だよ!街が…!」
『……っ!』
「おれは一度街に降りるよ!そっちは…!」
『…いや、アクシア……こっちに戻って来い』
「…え?」
『…俺たちに加勢してくれ、そうすればネディを倒せる』
「……何言ってるんだよローレン……そんな事したら!街が大変な事になるじゃないか!?」
『……』
「……なんとか言ってよ!何よりも街が最優先じゃなかったよかよ!」
『…あぁ、その通りだ』
「…え?」
『…よく見てみろって、
「…っ!」
俺は仰天した
街中には一般人がいないどころか、多種多様な服装をした人達が前線に立っている
「…あ…あの人たちは…!?」
『こんな事もあろうかと、助っ人を呼んでおいたんだ。それが俺がして来た、準備だ』
「……まさかあの人たちに!」
『……あぁ、この街を任せる』
「……」
『…いいか?アクシア』
「…分かったよ…ローレンがそういうんだ!信じるよ!」
『……あぁ!俺を信じてくれ!』
そうだった
いつだってローレンは……
「……うん!」
時刻 22:16
一方、街では──
「うぅうぅううぅ!」
「……やれやれ…皇女の仕事も楽じゃないな〜」
女は
群青に染るこの剣は、彼女の愛剣である
「ヘルエスタセイバー!」
この女の名は『リゼ・ヘルエスタ』
『高速の皇女:リゼ』
「ィゼ〜張り切ってるな〜」
「うぅぅううぅ!」
「…っ!とこちゃん後ろ!」
「……ん〜?」
女は人間ではない
「……っ!」
「……おおきに…」
三頭の化け物、ケルベロスへと身体を変化させる
「うちケルベロスやから、負けんのよ」
女の名は『戌亥とこ』
『地獄の
「錬金術!」
女は錬金術師である
「おっぱいミサイル!」
ただし変態である
「アンジュ!」
「おまたせ、待った?」
女の名は『アンジュ・カトリーナ』
『
「ンジュ〜」
「いにゅい〜!」
「コラコラ2人とも、まだ終わってないよ!」
「ほにゅ?」
「今そこさんばかの力を見せる時やな〜」
「……行くよ!2人とも!」
「リゼ様!お供します!」
「フレン!よく来た!」
『IQを超越する騎士:フレン』
「いかぃのとびらぁがひらかれた〜!」
「突っ込めぇぇぇぇぇえ!」
「おBANですっ!」
「私も入れてよ〜!!」
『恐ろしい魔界の悪魔:でびる』
『英雄の兆し:エクス』
『夢のBARのMaster:ベルモンド』
『私も入れてよ:チャイカ』
「起立!気をつけ!」
「でろーんでろーんこんでろーん!」
「わっせ!わっせ!」
『母なる委員長:美兎』
『清楚の覚醒:楓』
『静かなる化身:凛』
その他にも続々と集まる
その数は軽く100を超えた
そんな彼らを後ろから見守る者もいた
「……みんな、頑張ってね」
「りっくんはそこで見とって」
「……うんっ」
『若き
「……さぁ、にじさんじの底力…見せるよ!」
「「「「おおおおおおォォ!!!」」」」
彼らの戦いは、また別の話──
To Be Continued...
次回
File.17「美、研ぎ澄ます