EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、美しいだけじゃない世界
その街は、強さを持っている…



File.17「美、研ぎ澄ます(エデン)

「……ハァ…ハァ…」

「…ハァ…ハァ…ッ…」

どのくらい走っただろうか

なんせルシファーの本部は広くて場所が把握しづらい

ただでさえ道を覚えるのは苦手なのに…!

 

「…ローレン!こっちはどうだ!?」

「…あぁ!」

パタ姐の指さす方向に進んで行く

 

パタ姐はこういっところでは勘が鋭い

今は彼女を信じて進もう

 

「…っ…パタ姐…!」

「…なんだ?」

小声で俺はパタ姐を呼び止めた

パタ姐も小声で反応する

 

「……っ」

「…これって…?」

俺は目配せで壁に埋まったドアノブに気付かせた

明らかに隠し扉だ

 

「……行くのか?」

「…あぁ、この先にあいつがいる気がする」

罠かもしれない

でもあいつに近づけるのなら好都合だと俺は判断した

 

「……」

「……」

暗い通路を歩いていると、しばらくすると男性の声と女性の声が聞こえた

 

「…んで?あいつらを捕まえてどうしようってんだい?」

「どうもするつもりは無いよ。どうするかは彼ら次第だ」

「甘いね〜…私ならすぐにでも殺すけど?」

「メルスさんは少し考え方が怖いんですよ。彼らは殺すには惜しい」

「…んじゃ一体どうするんだい?」

「……私は……?」

「……」

俺はいてもたってもいられず、ネディの前に姿を現した

 

「……ネディ…!」

「…やぁ、ローレン」

「あら?彼がローレン・イロアス?なかなかいい男ね……それにそこにいるお嬢ちゃんも…」

「…っ」

「……お前は?」

「私はメルス・ラフガーベラ。ルシファーの中で1番美しく、1番強い女よ〜」

メルスは太ももを強調するように服を少しはだけさせた

正直そこには目は行かなかった

 

「それじゃメルスさん、ここはよろしくお願いしますね」

ネディは俺たちを置いて立ち去ろうとした

 

「…っ…待てっ!」

追いかけようと足を動かすと、次の瞬間にはナイフが俺の顔の目の前に来ていた

ネディはもう既にいなくなっていた

 

「悪いけど、ここであんた達を足止めさせてもらうわ〜!それが彼の願いなのよ」

「……願い…」

さっきも聞いた

ネディの願い

一体それはなんなんだ…?

 

「ローレン!」

パタ姐はメルスの腕を蹴飛ばしてナイフを手放させた

 

「…チッ」

「はっ!」

続いて頭部を狙うように上段蹴りを決め込むも、メルスはそれを腕で防御した

 

「…ローレン!ここは先に行って!」

「…パタ姐…!でも…!」

「ローレンにはやるべき事があるだろ!?私の事はいいから!」

「……パタ姐…」

パタ姐はメルスと取っ組み合いに入った

今なら行けるか…?

 

「舐めた事言うじゃない!」

「…がっ!」

「パタ姐!」

メルスの攻撃を防ぎきれなかったパタ姐

頭から血が流れている

 

あの女、なんてパワーだ…

 

「ここは通さないわよ!」

「…っ」

腕を広げて立ち塞がるメルス

 

「……があぁ!」

「…ぬおっ!」

パタ姐はメルスにタックルをした

 

「…この!小娘が!」

「…っ…行ってローレン!……っ!」

何度もパタ姐の腹部を殴るメルス

 

「……っ…パタ姐…頼んだぞ!」

「…あぁ…またな、ローレン」

「…っ!」

俺は走った

ネディの向かった方向に

 

「……ううぅ…ううわぁ!」

「邪魔するな!」

どんだけ俺を足止めしようとしても無駄だ

俺は止まらねぇ

 

「……ネディ…お前を倒す!」

俺はどこまでも続く廊下を走った

 

 

「…やっ!」

「…ふふっ…いい攻撃だわ!」

「くっ…!」

だいぶ押されている

この女は私の比にならないくらい強い

 

「…あなた、名前は?」

「…え?……レイン…パターソン…」

「……そう、レイン・パターソン…いい名前ね」

「…?」

「実は私、『魅惑の人魚(セイレーン)』なんて呼び名があるのだけれど…男には興味ないのよね〜…」

「…は?」

「…私が興味を持つのは、強さと弱さ…そして、美しさと可愛らしさを兼ね備える女性……そんな人を見ると……」

「……」ゴクッ

私は唾を飲んだ

今からこの女が言うことは、とんでもない気がしたから…

 

「……襲いたくなっちゃうのよね〜!」

メルスは顔を赤らめて唇を舌で舐め回す

私を見る目はさながら獣だった

 

この女の性癖を理解した私はこう思った

 

「……」

襲われる!!

 

「……ふふっ」

「……っ」

なんて事だろう

この女は私を一人の“女”として見ている

何故だか身震いがした

 

「……っ!」

私は身の危険を感じながらも果敢に攻めた

 

「……そして同時に……っ!」

「…っ!?」

しかし次の瞬間、私の頬に切り傷が出来ていることに気が付いた

 

「……」

私はゆっくりと振り返る

メルスはさっきと同じ顔をしながら言った

 

「…殺したくなっちゃうのよね〜!!」

「……」

襲われる!!(色んな意味で)

 

「…っ」

でも、逃げる訳には行かない!

 

私はホオジロさんの口に手を突っ込み、中から拳銃を取り出した

両手でしっかり抑えてトリガーに指をかける

 

「君たちがあの男の願いを叶えるなら、私はローレンの願いを叶える!」

「…なんだい?それは…」

「…あいつの願いは、街の平和だ!」

私はトリガーを引き、そのまま突っ込んだ

 

「…っ」

「やぁぁ!」

身体を屈ませ今度は足元を掬うように蹴りを入れた

 

「…っ!」

しかしメルスはそれを軽々避けてそのまま私に蹴りを入れた

 

「…ぐっ!」

必死に腕でガードしたけど、やっぱり並のパワーじゃない

この感覚…!

 

「きゃっ!」

吹き飛ばされる私は床を滑った

メルスの一つ一つの攻撃は常軌を逸していた

 

「…美しさとは、強さの象徴。可愛げは、弱さの象徴」

「……っ」

「…しかしその両方は、女の象徴…!」

「……」

「私は女の美学を追い求め続けるわ!最高の女になる為に!」

「……最高の…女…?」

「…女に産まれたのなら…女らしく生きるべきなのよ!」

「…っ!」

次の瞬間、メルスは私に猛攻撃を仕掛けた

 

「女なんてものは所詮は男の道具!いいように使われて最終的には捨てられる運命なのよ!でもそんなのあんまりじゃない!?」

「…っ」

メルスはそんな戯言を言いながらも私に攻撃してくる

 

「…散々いいように使われれば後は用済み。女は自分自身を主張出来ないまま死んで行く……私はそんな事実が大嫌いだったわ……」

「……」

「…だからこそ男は嫌い…自分の事しか考えない野蛮な生き物よ。男は女の恐ろしさを知らない……結局痛い目に遭うのは男の方なのよ…」

「……まさか…あんた…!?」

「…私を捨てた男は、全員私が殺してあげたわ。だってそうでしょ?私は愛されたかったのに、奴らはそうしなかった……モラルに反する奴らには制裁が必要なのよ」

「……それだけで、人を殺したのか…!?」

「…っ!…貴方も女なら!男を恨め!世界を恨め!」

「……」

私は彼女の言っていることが何一つ理解出来なかった

今まで人を守る為に戦ってきた私にとって、彼女の存在はイレギュラーだ

 

それにより情緒が乱れていってしまう

だからこそ私は、生まれて初めてかもしれない

パチスロをやっているときでさえこんな感情にはならなかった

 

私は怒りを覚えた

 

「……人の…命を…」

「……ん?」

「…人の命を…踏みにじるな!」

 

 

「…ハァ…ハァ…っ」

どこだ…!

どこにいるんだネディ…!

 

俺は長い廊下を走りながらネディを探し続けた

 

「……ローレン!」

「アクシア!?」

すると、曲がり角でアクシアと遭遇した

街の状態を確認した後こっちに向かって来てくれたらしい

 

「…みんなは!?」

「幹部共と交戦中だ…早くしねぇとな…!」

「予想通りだね……でも確か幹部ってもう一人いなかったっけ?」

「……あぁ…そういえば……っ!?」

走りながら会話をしていた俺とアクシア

すると、廊下の右側の壁からヒビが生じ、即座にそこの壁が崩壊した

一瞬の出来事で逆にスローに見える

 

壁から誰かが飛び出し、俺とその男は目が合った

 

誰だ!?

そう思ったのも束の間

男は俺の顔面を鷲掴みにして勢いのまま反対側の壁に俺の頭を押し付けた

男は壁を3枚割り、俺を突き放した

 

「ローレン!!」

「……くっ…!」

「……」

男は黒髪で黒いコートを羽織っている

黒い手袋をして手首をグリグリしていた

 

「……お前…誰だ!?」

「……」

「ローレン!大丈夫!?」

「……あぁ、なんとかな…」

「……」

無口な黒ずくめの男を目の前に、俺はアクシアに支えてもらいながら立ち上がった

 

すると、今度は背後からも気配がした

 

「…やぁ!ローレン!」

「…ネディ…!!」

「私のバディが何か迷惑かけたかい?」

「…お前がやれって言ったんだろ?ネディ」

「あはは!軽いジョーダンだよ!怒るなよガル」

「……バディ…?ガル…?」

こうしてみるとこいつらは全くの逆の存在のように見える

 

 

「ローレン紹介するよ。彼はガル…今の私のバディだ」

「正しくはガルーシュ・ハラゼラニウム。こいつとは協力関係にある」

「ちぇー…つれないな〜ガルは〜」

「……おいおい…勝手に話進めてんじゃねぇーよ…」

「……そうだね、今は戦いの最中だ」

「お前が街に怪物を解き放ったせいで大変な事になったんだぞ?」

「でも見事それを防いだようだね…まさか君が助っ人を呼べるほど人望が暑かったなんて…」

「まぁな…っ!」

「大丈夫!?ローレン!」

「…君もよく生きてたね…あの爆発で死なないなんて驚いたよ」

「……」

見ただけでわかる

アクシアはネディを酷く憎み、同時に酷く恐れている

 

あの日の事は後ほど聞かせてもらった

そんな方法でアクシアを殺そうとした、ネディは許せない

 

「……行けるか?相棒」

「…勿論、ローレン!」

 

「……さぁ、決戦の時だよ…ローレン」

「……」

 

 

「……そ、それは…!?」

「…ぐふっ…ぐへへへへ…」

バンデルの身体はみるみる変化して行った

まだ人間の原型は保っているものの、その姿は怪物に酷似していた

その姿はまるで…ゴーレム

 

「『バース』投与…フェーズ2…完了…!!」

「……っ!」

「…さぁてと…宴の始まりだァ!」

 

To Be Continued...




次回

File.18「神、選ばれし(エデン)
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