EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、選ばれた街
その街は、私に選ばれた…



File.18「神、選ばれし(エデン)

「彼は、神になったのですよ」

レオポルド隊長の言葉に、全員の意表が突かれた

 

「……え?神?」

「そうです。神です」

「…こいつ頭大丈夫か?」

「コラコラレイン君。そんな事を言ってはダメですよ」

思わず口を抑えるパタさん

 

「正確には神ではありませんが、それにとても近い存在と言っていいでしょう。この街には伝説が存在します。「ある日蘇った命は、この街の全てを監視し、この街の全てを管理する者となる。その者、神と呼ぶ」とね」

「…神じゃん」

「つまり、ネディ・デイジーこそがその伝説って事ですか?」

「私共も詳しい事はわかりませんが、彼が人間を超越した存在である事を忘れないようにしてください。特にアクシア・クローネ…君は1度彼に殺されかかっているのだろう?ならば尚更彼を刺激しない方が……」

「いいえ、おれはやりますよ」

「……え?」

「…自分から行くわけじゃないけど……でも、その時が来たら…」

「……」

「…立ち向かいます。それはあの人の意思でもあるから」

「……」

レオポルド隊長はハットを被り、コートを着る

 

「…どうやら、私があれこれ言っても無駄のようだな」

「……隊長…!」

「…だがこれだけは命令する。彼らと戦うのであれば、必ず生きて帰ること、そして……負けるな」

「…っ」

「君たちの敗北が、この街の終わりを指している。必ず生きて帰るんだ、いいな?」

「……っ」

体調はおれの答えも聞かずに拠点を去って行った

エバさんから貰った紅茶の葉を大事そうに抱えながら…

 

「…無理なこと言うな、あの人」

「まぁなんというか…情熱的な人ですね」

「そうですねぇ〜そういうところはローレンくんに似てたりしますねぇ〜」

「……」

「…不安ですか?彼と戦う事は…」

「…うん、まだ怖いよ。でも、逃げる訳には行かない」

「……本当に強くなりましたね、アクシア君」

「…どれもこれも、全部皆のおかげだよ。ありがとう」

 

 

「……っ」

「…ふふっ」

ネディの目線は完全におれを指していた

逆にガルーシュという男はローレンの目をじっと見ていた

 

「……」

「……」

睨み合う両者、そこには冷たい空気だけが流れた

 

「俺がこいつの相手をしてもいいが、どうする?」

「ん〜…ローレンはどう思う?私と戦いたい?」

「……ふざけんな…お前とケリを付ける為にここに来たんだぞ?」

「…それもそうだねぇ…では、私と戦うかい?勝てないと思うけど」

「……」

ローレンは急に黙り込んだ

ネディの顔を見るなり目を逸らした

なんせ相手は不死身、勝算なんてない筈だ

 

「……気が変わった。俺が相手をする」

するとガルーシュはローレンの顔面に向かって殴りかかった

 

「…っ!」

即座に腕でガードして攻撃を防ぐローレン

しかし威力に負けて吹き飛ばされた

 

「ぐわぁ!」

「ローレン!」

「おっと!……君は私とだよ〜」

「…っ!ローレンと戦うんじゃないのか!?」

「ガルの気が変わった。つまりそれは……」

 

「……」

 

「…彼のスイッチが入ったって事さ!」

「…っ」

「…さぁ!私たちも楽しもう!戦いを!殺しを!」

「……くっ…」

おれは拳に力を入れる

本当は憎くて憎くて堪らない、許せない、殺したい

 

「……」

それでも、みんなの顔が浮かぶと

自然と力が抜けていく

このままじゃダメだと…

 

「…っ」

おれはネディを睨んだ

こいつを捕まえて洗いざらい吐いてもらう、それがおれのすべき事だ

 

「……やっぱりそうか…彼に相応しいのは…」

「…はっ!」

おれはネディにパンチを喰らわせる

腕で弾くネディは余裕そうだった

 

「…はっ!やっ!」

「…ふっ!」

アクロバティックに避けるネディ

おれを見てニヤついた

 

「……君に問う。君は何を望むんだい?」

「…え?」

「私はNEDEを解放させ、街に光を灯したい。全ては我が楽園の為」

「……楽園…」

「……」

「…おれにとっての楽園は、みんなが笑顔でいる世界だ。笑顔が無い世界なんて…おれは耐えられない!」

「……」

「…笑顔を守る為なら、おれは命も惜しくない!ホントは怖いけど…立ち向かわなくちゃ行けないんだァ!」

 

 

「……バ、バンデル…その姿は…!?」

「…ふっへへ…」

バンデルの身体はゴーレムのように変化し、その巨体を動かした

自分の姿を見て興奮していた

 

「……これがフェーズ2の領域…すげぇな…」

「……っ…」

「驚いたか?無理もないさ、『バース』を打ち込んだ人間は正気を保てなくなる。『ピース』をはるかに凌駕する効果を持ってるからな〜…一発で精神が崩壊し死に至る」

「…では…なぜ…!?」

「…俺たちは、神に選ばれたんだよ」

「……神に?」

「あいつはEDENの街でクソみたいな人生を送って来た奴らに手を差し伸べ、俺はその潜在能力を見込まれた……そして『ルシファー』の幹部として君臨したってわけだ」

「……その神とは…まさかネディ・デイジーの事か!」

比喩的な表現かと思えば、あながち間違ってもいないのか?

 

「その通り!あいつこそが『ルシファー』のボスであり、NEDEの神でもある」

「……」

「あいつに不可能などない。この街はいずれ俺たちのモノとなる。あんたがどれだけ足掻こうと、全部無駄だぜ?」

「……無駄な事なんてありませんよ。この人生の全てに、意味がある」

「……あ?」

「…しかし、その意味を作り出すのは自分自身!僕は僕の人生に意味を見出してみせますよ!これは僕の為でもあり、この街のためでもある!僕も……」

「……」

「この街の住人なのだから!」

僕はバンデルに臆すること無く突っ込んだ

鉄のように硬い皮膚でも攻撃をし続ければいずれは砕ける

僕はガラ空きになった彼の腹部に連続で打撃を与えた

 

「…ぐっ…生意気なァ!」

身体を大きく回して抵抗するバンデル

しかし、その巨体では身体が動くのにも止まるのにも少し時間がかかってしまう

鈍くなった攻撃を避け、僕は彼の首元に蹴りを入れた

 

「……っ」

「……ぐへっ…ぐふふふ…」

「…っ!?」

馬鹿な!急所を狙った筈なのに…手応えもあった

まさか…彼は僕が思う以上に…

 

「……ふはははは!」

「…っ」

防御力が増している!

 

「ふぬぁぁ!」

破壊力も!

 

「…へっへっ…」

「…一体どんな修行をしたら、そんな風になるんですか…?」

僕は興味本位で質問してみた

これも僕と同じ人間の筈なのに、既にその領域を超えている

 

「……天性…だよ」

「…天性?」

「俺は昔からひ弱だった…だがあんたを目指して強くなった…その努力を、功績を、あいつは認めてくれた」

「……」

「…神の御加護を受けた俺たちは、強靭な肉体と精神を与えられた…こういう日の為に」

「……神の…御加護…」

「俺たちには素質があった…神になる素質が…!」

「…っ」

バンデルは僕に迫りながら僕の足元の地面を殴り続けた

 

「もう諦めろ!あんたらが俺たちに勝てる未来は来ない!」

「……っ」

「この街は俺たちルシファーのモノだ!」

「……おかしな事を言うのですね…」

「…あ?」

僕の言葉に、バンデルは攻撃をやめた

 

「……この街は、誰のモノでもない……この街が…この街の住人が、この街の人間らしく生きられる…誇りを持てるようにしてあげたい…人生を悔やむ必要なんてない…過去を引きずる必要もない…」

「……っ」

「…僕はプロフェッサー、オリバー・エバンス!この街の未来は、僕が守ります!」

「…笑わせるなぁぁ!」

勢いのまま拳を振り上げるバンデル

僕はそんな彼の攻撃を受け止めた

 

「…何っ!?」

「……これから貴方に…」

「…っ!?」

「…最初で最後の…授業を始めます…!」

 

 

「いけ!私の実験体(モルモット)!」

「うぅうううぅぅ!」

「…くっ…ふっ!」

ビックフットの攻撃を間一髪で避け続ける私

 

「…うぅっ…ううぅううわぁぁ!」

「…っ…なんですか〜!?」

「…ちっ…効き目が薄まって来たか…!」

「うわぁぁぁぁあ!」

次の瞬間、ビックフットは爆発を起こしながら木っ端微塵に飛び散った

 

「……なっ…!」

「…やはり適合率が低いと、あぁなってしまうのだな…」

そう言いながらマディはメモに何かを書いた

 

「……しかし、所詮は実験体(モルモット)…完全体の足元にも及ばない…」

「……か、完全体?」

「…紹介しよう!私の最高傑作にして、最強の狂戦士!」

すると、部屋の奥からドスッドスッという足音が聞こえてきた

なにか大きなものが歩いてきているのか?

私は息を飲んでその全貌を見て仰天した

 

「……アルド…?」

「……」

奥から歩いてきたのは、アルドだった

かつて私の研究を横取りし、その後謎の消息不明となり一時期問題となっていた

 

そのアルドが何故ここに…?

 

「……」

「…アルド…?」

私は震える声で彼に声をかけた

しかし彼は虚ろな表情のままでどこを見ているのか分からないほどだった

 

「……そういえば…貴方は彼のお友達だったな…しかし彼はあらゆる研究者の研究を横取り、買収しては自分のモノにして来た…クズですよ」

「それは…!」

「貴方も彼の被害を受けたんですよね?だからこそルシファーに入った…そうですよね?」

「…そ、それは…」

「私も彼の被害を受け、当時ぽっと出の彼に盗られた時は屈辱でした…しかし、ネディさんが手を差し伸べてくださり、私はルシファーの研究者として名を馳せた」

「……」

「…彼への憎悪が高まった頃、私は貴方をみつけた」

「……」

そう、私をルシファーに勧誘したのは目の前にいる男だった

 

「貴方の『ピース』の研究を応用し、私は『バース』を生み出した。そして彼へ復讐する為彼を拉致し、薬を投与した」

「…っ!?」

今なんと!?

 

「…しかし、彼は私の想像を遥かに凌駕するほど『バース』との適合率が高かった…一度打ち込んでも、彼は意識を保ったままだった」

「……まさか…!」

「ここに来るまで何度打ち込んだことでしょうね…しかし、それも今日で最後。計算によれば、今回の投与が最後のトリガーとなる」

マディは『バース』が入っているであろう注射器を取り出し、振りかぶった

 

「…や、やめろォ!」

「ふんっ!」

アルドに刺さった注射器から『バース』が注入される

 

「……ぐっ…がふっ…ごおぉおおぉ!」

アルドの身体はみるみるうちに変化して行った

先程のビックフットの2倍ほどの巨体

全身が白い毛で覆われている、まるで雪男だ

 

「……最終投与完了…フェーズ2!完了!」

「……」

「…さぁ!存分に暴れろ!」

「…ごおぉおおぉぉぉ!」

「…っ!?」

すると、変貌したアルドは真っ先にマディの体を掴んだ

 

「…なっ!何をする!離せ!」

「……ごおぉおおぉ!」

「やめろォ!ぐわぁぁぁぁあ!」

断末魔を最期に、マディはアルドに握り潰された

 

「……ハ……ハ…」

「……ぐうぅ…」

「……ア、アルド…」

「……ごおおぉぉ!」

 

アルドは今度は私に向かって走ってくる

これで私も終わりなのか…?

 

「……嫌だ…」

「ごおぉぉお!」

「……嫌だァ!」

「…っ!」

「……人生とは…なんでこんなに上手くいかないんでしょう〜…私は確かに貴方が嫌いでした……でも…」

「……ぐるるっ」

「……貴方を、本当に友達だと思っていた…!」

「……」

私は倒れ込みながらも彼に向かって喋り続けた

 

「…それでも、乗り越えなければいけないんですよね〜……例えそれで後悔する事になっても…」

「……」

「…アルド…私には今、仲間がいます。とても信じられる仲間です。貴方にも、見せてあげたかった…」

「……ごぉぉお!」

「……この街には、希望があります。希望を失った私だからこそ、この街の希望は私が守りたい……」

私は指を鳴らした

 

ここはルシファーのアジト

かつては私も研究場として使っていた

 

そして覚えているだろうか

ここには、私の相棒達がいる

 

「……来なさい、まめねこ達」

すると、胸ポケットのまめねこに加え

腕が大きく発達した大型のまめねこ

芋虫型のまめねこ

羽が生えた小型のまめねこが私の後ろに勢揃いした

 

「……諸君、本日はお集まりいただき誠に感謝する。私こそが、レオス・ヴィンセントだ!」

 

To Be Continued...




次回

File.19「否、反逆の(エデン)
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