EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─ 作:キャメル16世
そこは、青空が綺麗な街
この街は、おれを笑顔にしてくれる…
みゃ〜お
「ほらほら〜、こっちだよォ〜」
にゃぁ〜ん
「…なんだ、君にも相棒がいたんだね…」
2匹のネコが戯れているのを、おれ
アクシア・クローネは見ていた
「……いらっしゃい」
おれの朝のルーティンは、まずはカフェに行く事だ
マスター自家製のコーヒーは格別だ
「…砂糖は?」
「4つでお願いします!」
「……はい」
サイドに頼むのはショートケーキ
朝からケーキは正直キツいが、別腹という言葉がある通り
1切れならペロリとたいらげてしまう
それほど美味しいのだ
その後は、本屋に寄る
最近は電子書籍にしてしまっているが、紙製の漫画が好きだ
ギャグ漫画やコメディ、推理ものなんかがお気に入りだ
しばらく立ち読みをして、その場を後にする
「……ん?」
と、近くからネコの鳴き声がする
とてもか細い声
おれはいてもたってもいられなかった
近くの公園の木の上
黒猫が木から降りれなくなっていた
みゃ〜
「……っ」
途端に、昔の事を思い出す
待ってろ…今助けてやるからな…
《来い!アクシア!》
《無理だよぉ!高いよォ!》
《大丈夫だ!俺を信じろ!》
「大丈夫!おれを信じて来い!」
みゃ〜
「…怖いよな、分かるよ…でも…」
《アクシア…お前は…笑顔を忘れてはいけないぞ…》
「泣いてばっかじゃ、何も変わらないよ!」
みゃ〜…
「……っ」
おれは両腕を広げた
「来い!」
みゃ〜…
みゃッ!
木から降り立った黒猫は、俺の胸の中に収まった
みゃ〜…
「よく頑張ったな、偉いぞぉ〜」
「…あ!すみませぇーん!」
近くにいた男性がおれに近付いてくる
どうやら、この猫の飼い主らしい
「ありがとうございました…なんとお礼すれば…」
「大丈夫です!これがおれですから!」
「…え?」
おれは男性の元を離れ、仕事先に向かった
「…よぉーし!今日も頑張るぞぉ!」
猫を救ったおれは朝からテンションが上がっていた
そしてこのエデンの空に拳を突き出し言った
「…対よろぉ!」
数年前
「本日は、戦闘機訓練を実施する。各々配置に付け!」
全員が訓練用の装備に身を包み、整列する
「…おい…またあいついるぜ…」
「この間教官にたんと怒られたのに、めげない奴だな…」
そんなヒソヒソ話が聞こえてくる
先日、訓練に必要な器具を無くしてしまい、教官である
アルデにこっぴどく叱られたばかりである
しかし、無くしてしまったのではないと、あとから気付いた
「…こんな所に…」
器具はゴミ袋の中に紛れ込んでいた
どうりで気付かないわけだ
でも、この器具を捨てた覚えはない
犯人はすぐに分かった
「……へっ」
先程ヒソヒソ話をしていた、シアラという男に捨てられていたのだ
でも、証拠などはなく、おれは誰にも言えないでいた
その頃から俺は、笑顔を忘れていた
「発進!準備よーい!」
初めての戦闘機実施訓練
おれは緊張していたが、一通りの操作は慣れし、何度も練習を重ねてきた
ここで認められれば、おれは立派な機動歩兵部隊になれる!
そう思うのも束の間だった
「……え?」
エンジンがかからない
「なんで…」
他の訓練兵たちはエンジンを掛け始めていた
そして、俺の横の戦闘機には、シアラが乗っていた
「……っ」
シアラは俺を見て笑っていた
不敵な笑みで、おれを見下すように
「……まさか…」
緊張も相まってか、おれは自然と頭が熱くなる
《アクシア…お前は…笑顔を忘れてはいけないぞ…》
「…はっ!」
おれは我に返り、深呼吸する
慎重にエンジンのバルブを捻る
「…おっ!」
すると、エンジンが掛かった
「……くっ…」
シアラは悔しそうにしていた
おれがドヤ顔で見ていたからだ
「…全機、発進!」
数十台の戦闘機はアルデの指示で一斉に飛び立つ
そうだ…おれは…あの人との約束を守らなくちゃ…
《俺の命はそう長くない…でもな、アクシア…》
「……発進!」
《お前を空から見ているぞ…》
《じゃあおれが、空に行ってお迎えに行くよ!》
《…そうか…楽しみにしているぞ!俺とお前の約束だ!》
《うん!約束!》
命が戻らないという事実は、あの人が死んでから初めて知った
だからせめて、あの人に少しでも近付けられるように
おれは…パイロットになったんだ…
「でさぁ〜、この間マッチングした人がさぁ、エイムくそ下手でぇ!」
「まじか!ランクは!?」
「それは大丈夫、無事帰還したから」
「へぇーそれでチャンピオン慣れたんだすげぇ」
ローレンと知り合って、だんだん話が弾んで来るような関係になった頃
ローレンとおれは同じFPS好きの共通点を持ち、よくその話で盛り上がった
「…おい」
「…シアラ…」
シアラが物凄い形相で睨んできた
「…あ?なんだこいつ」
「…おれの同期で…」
「…へぇ〜…」
「…おいアクシア…ちょっとツラ貸せや…」
シアラは何故か怒っていた
理由は分からない
こういうのが原因なんだろう
「おいおいちょっと待てや馬面」
「あぁ!?なんだテメェ!」
挑発するローレンの言葉に、シアラが反応した
まさかローレン…
「…こいつは俺のバディだ、手出しはさせねぇ」
「うるせぇ!俺は今猛烈にイライラしてんだ!こいつの顔面ぶち破らないと気がすまねぇ!」
「…そうかそうか…なら、いいストレス発散方法を教えてやる」
「あぁ!?なんだ!?」
シアラの方に腕を組み、耳打ちをするローレン
「…それはな…」
ローレンはシアラの両足を捉え、持ち上げた
シアラは背中を地面につけている
「テメェ!何する!?」
「…はぁぁぁ…」
ローレンは回転しシアラを振り回す
「おい!やめろ!テメェ!」
「…ぶっ飛べぇ!」
「あぁああぁあぁああぁあぁあ!!……」
ローレンは両手を離し、シアラはまるでギャグ漫画のような感じで飛んでいって見えなくなった
「空の果まで飛んでけぇ!」
ローレンは追撃で叫ぶ
「…ローレン…」
「…ああいう輩は、ああいう風にあしらっとけば良いんだよ」
まさかローレン…シアラの注意をおれから避けたのか…?
「…ったく、ああいう奴、ホントにむかつくな」
…いや、ローレンはそんなに器用な人間じゃない
それくらい、今のおれでも分かる
ローレン・イロアスという男は、とても分かりやすい
「…うん、そうだね!」
「…ふっ…やっと俺の知ってるアクシアに戻った」
「…へへっ!」
「EDEN補完計画?」
ローレンからそう言われた時は、何を考えてるのかさっぱり分からなかった
「うちの隊長から、この事件について調査を頼まれた」
なんだ、そういう事か
「…ところで、そのEDEN補完計画ってのは?」
「それは、まだ分からない。でも、この街に危機が迫ってるかもしれないんだ」
「…それって、最近の闇取引と関係あったりする?」
「…それもまだな…」
「…そっかァ…」
「…なにか、有力な情報が欲しいな…」
情報か…
なにかいい案はないか…
「…うぅ〜ん…」
最近の情報の受け取る場所といえば、SNSが主流だ
SNSをよく用いるのは特に若者…
若者が集う場所といえば…
「……学校…」
「…そうか!学生に色々と情報を聞けば!」
「…いや、それじゃあこっち側の動きも直ぐにバレるよ」
「…そうかぁ…じゃあどうすればいいんだよ…」
ローレンがヘタレ混む
それほどこの事件に真剣なんだろう
「…若者とよく絡む、先生なんてどう?」
「…教師か…それなら、沢山情報も持ってそうだし、何より口が堅い!」
「…おれの知り合いにエデン大学の教授がいるんだ、その人に話を聞かせてもらおう!」
「あぁ!いいアイデアだ!」
後日
おれ達は早速エデン大学まで行き、目的の人物を尋ねた
彼は授業中という事で、教室を訪れてみてくださいと言われた
広い教室
学生席は段状になっていて、席はほぼ埋まっていた
特に女性生徒が多い
教室の大きな黒板の前、緑色のスーツと
黄緑色の髪色をした男性が講義をしていた
キリッとした鼻筋や輪郭はイケメンと言わざるおえないだろう
「…あの人が…」
「うん、オリバー・エバンス。おれより5歳上なんだけど、めっちゃおれによくしてくれて、尊敬してるんだぁ」
「…ほぉう」
教室の隅で小声で話す
ローレンはとても興味深そうに先生の事を見ていた
「…それでは、今回の講義はこれで終わりたいと思います」
オリバー先生がそう会うと、生徒達がぞろぞろと先生を囲んだ
いや、モテすぎじゃね?
生徒達が捌けるのを待ち、おれ達はやっと
1体2で話せる状態となった
「久しぶり!オリバー先生!」
「おや、アクシア君。その方は?」
オリバー先生はローレンに目配せをした
「エデン中央都市、都市警備部隊所属のローレン・イロアスだ。あんたがオリバー・エバンス、だな?」
「…だから、そう言ってるじゃん!」
「あぁ!今いい感じの雰囲気だったじゃん!俺だってカッコつけたいの!」
どうやらローレンがオリバー先生を凝視していたのは、嫉妬からだったみたいだ
「…えぇっと?」
オリバー先生は戸惑っている
「あぁ…ちょっとだけ先生にお話があって…」
「…なんだ、そういう事でしたか…それなら、僕の部屋でお話しましょう?」
「改めまして、若輩ながらプロフェッサーと呼ばれています…オリバー・エバンスと申します」
「プロフェッサー、ねぇ」
ローレンはまだカッコつけている
「…それで、話とは?」
「…実は、今この街に危機が迫ってるかもしれないんだ」
「ほぉう、危機ですか」
「驚かないんですか?」
「…いえ、驚いてますよ?ただ、教授というのは常に冷静な判断を要するので」
「…そうか…突然だが、『EDEN補完計画』ってのを知ってるか?」
「…EDEN補完計画…」
暫くの間が空く
「…さて、なんの事やら」
「生徒達から、そんな感じの噂を聞かないですか?」
おれは先生に質問する
「いえ、うちの生徒は真面目な人達ばかりですからねぇ…」
「…そう、ですかぁ…」
おれは収穫なしかぁ
と、少しだけ凹んでいた
しかし、ローレンだけは違った
「…あんた、嘘ついてるな?」
「…え?」
何故かおれが反応してしまった
「…どういう意味ですか?」
「…あんた、本当はなにか知ってるんじゃないか?この街の何かを…」
ローレンは先生を見続けた
それは嫉妬の眼差しじゃない
疑いの眼差し
暫くの沈黙の末、オリバー先生が発した
「…分かりました…全てお話しますよ…」
「……」
「……この街の…真相をね…」
To Be Continued...
次回
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