EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、誰かが目覚める街
この街は、可能性に溢れている…



File.20「醒、目覚めの(エデン)

時刻 23:16

 

「授業だと!?ふざけるなぁ!」

「僕は僕のすべき事をします!この街でプロフェッサーとして生きている限り、僕は誰かに教え続けますよ!そして貫き通します、僕の信念を!」

「ぐぬぉ!」

僕の攻撃を躱すことなく受け止めるバンデルであるが

そろそろ限界が来たようだ

 

鋼鉄の皮膚はひび割れている

それほど僕の攻撃が聞いているということだ

 

「……『バース』も打ち込んでねぇのに…バケモンかよ」

「いいや、僕は人間ですよ」

その後も攻撃は続く

 

「…ただ、貴方の痛みは理解してるつもりです。だからこそ、僕は君に伝えたい…」

「…あぁ!?」

「…人は…変われるという事を!」

僕は思いっきりパンチをする

バンデルは腕で受け止めるも、右前腕の装甲が完全に破損

 

「…ば、馬鹿な!?」

「……」

「…ま、まさか…!?」

「…?」

「…いいや…そんな事はありえねぇ!あっちゃいけねぇ!」

バンデルの攻撃を受け流す僕

バンデルは明らかに動揺しているようだった

 

「……まさか…そんな…!?」

「…一体なんだと言うんです?」

「…まさかあんたに…!」

「……?」

「……『覚醒』の兆しが…!?」

「……『覚醒』?」

「うわぁぁぁ!」

自暴自棄になったバンデルは今度は瓦礫を投げつけて来た

 

「…ふんっ!」

僕はそれを蹴り上げて粉砕した

 

 

 

「…っ!」

「……」

なんなんだよ…!

なんであんたが…俺たちよりも先に…!

 

「……バンデル…貴方は2つの過ちを犯した」

「……っ」

「…1つは、僕との約束を破った事…」

「…うっ…」

「……そしてもう1つは…」

オリバーは拳を握る

 

「…僕の大切な仲間に、手を挙げた事です!」

「ぐわぁぁあ!」

強烈なアッパーを喰らい、意識が朦朧とする俺

 

肉弾戦だけで、こんなにダメージを喰らうのか…!?

俺の鋼鉄の身体が…全く歯が立たねぇ!

 

「はぁぁ!」

「ぐわぁぁあ!」

「……」

「……ヒッ!」

「……」

この鋭い眼光

何度も見てきたこの眼を、久しぶりに見た感想は…

 

「……」

 

怖ぇ…

 

「……貴方は人間ですか?それとも人間ではなくなってしまったのですか?」

「…くっ…俺たちはこの街の神だ!いずれこの世界を蹂躙する者たちだ!そんなすげぇ奴らに、あんたが勝てる筈がない!……ブッ!」

オリバーは俺の顔面を鷲掴みにし、俺を睨んだ

 

「…そうですか…安心しました……貴方たちは人間ではないのですね?」

「…ムッ!?」

「……なら…人間でない貴方たちを擁護(ようご)するつもりはありません…あの世でみっちりと反省して来なさい!」

「…ぐがっ…ぎがががが!」

俺の頭がギチギチと音を立てながらひび割れてくるのが分かる

 

殺される…!

 

俺は次第に恐怖に打ちのめられそうになった

 

「……うっ…ぐっ…」

「……」

「…ぐふっ……ぶはっ…!」

「……」

突然手を離したオリバー

俺は腰が抜けて地面にへたれ込む

哀れんだ目を俺に向け、口を開いた

あの日のように

 

「……貴方は決して強くはありません…あの日から、何も変わっていない」

「…っ」

「…僕はあの日、言いましたよね?強くなりたいか、と」

「…あぁそうさ…だから俺は強くなった…あんたに負けないくらい強くなって見返してやる為に!」

「それは違う!」

「…っ!」

「…思い出せ!貴方が本当に強くなりたいと思った理由を!それ程まで貴方を駆り立てた何かを!」

「……っ」

「……」

本当に強くなりたかった、理由…?

 

《……お兄ちゃん…!》

 

「……っ」

「……」

「……そうだ…俺は…!」

「……」

「……だが、もう過去は変えられない…失った命は戻ってこない…だからこそ…!」

「……っ」

「…俺は絶対的な力を手に入れるんだァ!」

「…ふんっ!」

俺の攻撃に耐えるオリバー

 

「……この街は僕を導いてくれた…だから今度は、僕がみんなを導いてあげたい…」

「…ふぬぅ!…ぐぉぉ!」

「…くっ……バンデル…それは貴方も例外ではない…!」

「……ぐぐっ…!」

「…貴方を導いてみせる!教師として!貴方を正しい道へと!」

「……簡単に…言うなぁ!」

「…っ!」

オリバーはネクタイを緩め、袖を捲った

 

「うぉぉぉぉぉあ!」

「はぁぁぁぁぁあ!」

お互いにパンチを決め込み、お互いの頬が腫れる

 

「…くっ…」

「…むっ…」

「……」

「……」

「…はぁぁあ!」

「うぉあぁぁ!」

続けてもう1発

今度は俺の攻撃の方が早く、顔面にヒットした

 

「…へっ!……っ!?」

「……貴方はいつもそうだ…!」

「…うっ!」

「気を抜くなぁ!」

「ぶぉぉおぁぁ!」

オリバーの強烈なキックに一瞬怯むも、体制は保たれた

 

「はぁぁぁあ!」

 

しかし、何処から取り出したのかも分からないロケランを抱えたオリバーが、一瞬で俺の懐に入って来た

 

「なにっ!?」

「レイン君!お借りしますよ!」

「ぐわぁぁあ!」

オリバーがロケランのトリガーを引く

次の瞬間、俺の身体の前側に強烈な衝撃と熱

爆撃を受けた俺はコンクリートの壁に追突した

 

「……あっ…はっ…」

「……」

「……夢を…見た…」

「……そうですか」

「…妹の…ベリーの、夢だ…」

「……」

完全に戦意喪失した俺は語り始めた

 

あれはそう、俺がまだガキの頃だった…

 

 

俺には妹がいた

名前はベリー、ベリー・カイブドウ

 

まだ小さかった俺たちはいつも一緒にいた

夏の暑い日は川に行って一緒に水浴びをした

冬の寒い日には身体を寄せ合った

 

俺たちは充実した毎日を過ごしていた

しかし、俺たちの家には欠点があった

 

俺の家は貧乏だった

 

ちゃんとした家もない

まともに飯は食えない

服も買えない

そんな生活を、俺たちは送っていた

 

だが、

 

「お兄ちゃん!起きて!」

「…ん〜」

ベリーがいれば、何も怖くなかった

こいつといれば、どんな困難も乗り越えられる

俺たちは無敵だった

 

「……食べ物を恵んでください…」

休日になれば、街に出て町中の人に声をかけた

だが…

 

「……」

 

「……誰か、食べ物を…」

「……」

 

「……あの…」

「ちょっと!触らないで汚らわしい!」

 

だが、誰も俺の声に応えてくれなかった

 

「……」

「……お兄ちゃん…」

「…大丈夫だ、ベリー…明日にはおなかいっぱい食えるからな」

「……う、うん」

ここ毎日、まともに飯にありつけてない

 

お腹を摩るベリー

俺も腹の虫が鳴る

 

「……腹減ったなぁ…」

1人になると、いつも弱音を吐いていた

道端に落ちている食いかけのサンドイッチを見ると、喉から手が出るほど欲しかったが…

 

「え!?私にくれるの!?ありがとうお兄ちゃん!」

「…あぁ、たーんと食えよ」

「うん!」

 

「……」

「……」

俺が食料漁りから帰ると、ベリーは家で泡を吹いて倒れていた

既にウジ虫が湧き、ベリーの顔を呑気に歩いていた

 

この間食べたサンドイッチには、毒が入っていた

誰が何の為に仕組んだのかは分からねぇ

ただ言えるのは、人の手による物だと言うことだ

 

ベリーは殺された

飢えという苦しみがある上に更に毒による苦しみの中で死んでいったんだ…

 

「……」

俺は絶望した

同時に全てを捨てる覚悟も出来た

 

俺はありとあらゆる場所で情報を集め、数年後遂にEDENで流行った大量毒殺テロ事件の大ボスであろうマフィアのアジトに乗り込んだ

 

「……」

「……小僧がよくこの『エヴァ』に1人で乗り込もうと思ったなぁ…」

髭を生やした老人が俺を見下す

俺は『エヴァ』に乗り込みいきなりボスとの接触に成功した

ただ後ろにはゴツイ男たちが何人もして無闇に動けない

 

「……」

だが俺は全てを捨てる覚悟を持ってここに来た

今の今まで俺は妹の死を忘れたことは無い

今こそ復讐の時

俺は懐から小刀を取り出し、老人に向かって走って行った

 

「うおぉぉお!」

「……やれ、リヴィー」

「うぉぉ…うほっ!」

次の瞬間、俺は腹部を思いっきり殴られた

ゴツイ男たちにじゃない

俺と年は変わらない、少年に

倒れる俺は抵抗も出来なく、その少年に袋叩きにされた

 

「……こんなもんか?親父」

「…いいだろう…吊るし上げて見せしめに…」

「ちょっと待て」

「…ん?どうしたリヴィー」

「……」

リヴィーと呼ばれた少年は屈んで俺の髪を引っ張り顔を向かせた

 

「…ヒョロっちぃ身体してんな、お前」

「……え…?」

「…なぁ、俺の下に付かねぇか?」

 

リヴィーの言い分はこうだ

俺の下に付いて修行すれば、力が手に入る

『エヴァ』の中でそれなりに地位を獲得出来れば、いつかは世界の基準も正す事が出来る

貧富の差、終わらない戦争

リヴィーはそれらを望んではいなかった

 

俺は死ぬ気で修行した

1番は妹の死に報いる為、俺が世界を変える為

 

そしてもう1つ…

 

「…この時を持って、『エヴァ』を解散とする。全員、くれぐれも情報を漏らさないように…」

 

「……冗談だろ…俺はあんたを目指してここまで強くなったのに……くそっ…クソクソクソ!」

『エヴァ』が解散され、路頭に迷う俺

まるであの日々に戻ったかのような絶望感と、喪失感に苛まれた

 

「……ベリー…俺は、世界を変えられなかったよ…」

雨が降る街の中で、俺はポツンと誰も来ないような場所で蹲った

 

人が歩く足音も聞こえない程、大きな雨音の中

ビニール傘に雨が当たる音が、遠くから聞こえて来た

 

「……」

「……」

白髪の男は俺に傘を授けた

自分が濡れてもお構い無し

 

「……あんたは?」

「…私はネディ、君を導く者だよ」

 

俺は『ルシファー』に入り、絶対的な地位を獲得した

これで俺は世界を変えられる

この腐った世界を、もう一度いちから正す事が出来る

 

全ては妹の死に報いる為、そして…

 

「…あの男を見返してやる…俺が1番強いとなぁ!」

 

 

「…馬鹿だよな…俺……今の俺を見て、ベリーが笑ってくれる筈がねぇ…」

「……バンデル…」

「…笑ってくれよ、リヴィー…俺はあんたには一生掛けても勝てねぇ…ひ弱な男だ」

「……いいえ、貴方は強いですよ」

「…何を言って…」

「だって貴方は、最後まで貫き通したじゃないですか…自分の意志を」

「……俺の、意志…?」

バンデルは本当に分からないような顔をした

 

「……僕にも兄弟がいるので、気持ちは痛いほど分かります。助手くんは僕にとって大事な弟ですから…」

「……」

「…貴方は妹を一生想い続けた。あの苦しい日々の中、ずっと妹さんの事を考えていたのでしょう?あの眼はまさに、漢の眼でしたよ…」

「……リヴィー…」

「…貴方の心の強さには、僕は負けます」

僕はニコッと笑って見せた

 

「……フッ…やっぱり、あんたには適わねぇわ…」

「……バンデル…貴方の理想は、嫌いじゃありませんでした」

「……俺も…あんたの事、嫌いじゃなかったぜ…」

「……それではバンデル…おやすみなさい、良い夢を」

「…あぁ、あばよ…リヴィ…いや、オリバー・エバンス…」

バンデルの身体は灰のようにホロホロと崩れ、風に流されてしまった

 

雨が降っているのに気付いたのは、その後だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7月18日 23:40

 

 

オリバー・エバンス (本名 オリバー・D・エバンス)

 

バンデル・カイブドウ (フェーズ2) を撃破

 

 

 

 

 

To Be Continued...




次回

File.21「情、呼び覚ます(エデン)
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