EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、美しい色に染まる街
この街は、まるで美しい虹のようだ…



File.25「紅、染まる(エデン)

「はぁぁぁ!」

「はァァァ!」

全身を炎に覆うローレン

全身を光に覆う私

お互いの拳と拳を押し付け合う

 

「てやぁぁ!」

「ぐっ…はぁぁ!」

ローレンのキックを受けるがすかさず反撃

 

「くっ…!」

両腕でガードするローレン

しかしその表情は笑っていた

 

「…何がおかしい!」

私は怒鳴りながら挙げた拳を振り下ろした

 

「…なっ…!」

それを片手で受け止めるローレン

 

「……俺はな、ネディ…この世に正義なんてねぇと思ってる…」

「……」

急になんの話だ…?

 

「俺はいつだって自分の為に動いていた。利己の為に……でも、お前は違ったよな…」

「……っ」

「…困ってる人がいれば迷わず手を差し伸べ、嫌な顔ひとつしない…まるで天使みたいで……俺はお前が眩しく見えた」

「……」

「…でも、今のお前は…全っ然眩しく見えない!」

「っ!」

ローレンの拳に炎が集中する

 

「今のお前は、自分の事しか頭にないただの自己中野郎……まるで昔の俺を見ているようで胸糞悪いぜ!」

「……っ」

ローレンのパンチを避け続ける私

ローレンは恐れる事無く突っ込んでくる

 

「…あの日、お前俺に言ったよな…「俺の夢はなんだって」…」

「……」

「…なら、ここでお前に同じ質問をしてやる!……ネディ!お前の夢はなんだ!?何を望む!?何が欲しい!?何がしたい!?」

「……私は…!」

私は光の弓を出現させる

 

「……君に…死んでもらいたい!」

「…なら、全力で殺しに来い!」

ローレンは目にも留まらぬ速さで私との距離を縮める

 

「ぬっ…!」

矢を数本放った私、ローレンはそれを軽々と避けた

 

「……はっ!」

「…っ!」

私が指を鳴らすと放った光の矢がローレンを追尾し始める

振り返ったローレンはその矢を弾く

 

「やぁぁあ!」

「…なっ…!?」

ローレンを抑え込む私

そして全身に力を込める

 

「……やぁっ…はぁぁ!」

「なっ…!」

光のエネルギーを解き放ち、爆発が起きる

捨て身の戦法だが、これでは終わらない

 

「……やるな…ネディ」

「…ローレンこそ、なかなかしぶといね…」

「…言っておくが、俺は死ぬつもりは無い。負けるつもりもない。俺には俺の居場所が…帰る場所があるからな!」

「……私には何も無い…つまり何も失わない…!私には怖いものなんてない!」

翼を大きく広げ、雨空を上がっていく

 

「…っ」

ローレンも後を追って来る

 

「……」

「……」

雷が轟く雨雲の中、私たちは睨み合った

 

「……はぁぁぁ!」

「…はァァァ!」

再びお互いの拳がぶつかり合う

 

「この街には夢がある!希望がある!守りたい命がある!笑顔がある!そして何より……信頼出来る、仲間がいる!」

「……っ!」

「俺はそれを全部ひっくるめて、守りたいんだァ!」

「ぐはっ…!」

突き放される私

彼の攻撃にはたしかに重い意志が乗っかっている

この攻撃は、私にはあまりにも重い……

 

しかし……

 

「……へっ…流石は不死身の身体だな…」

「……」

彼が作った傷や血流は私自身の力で元通りになってしまう

 

「…私は自分自身の意思があればこの身体を自由に変化させる事が出来る…君が作った傷も、証も、全て水の泡となってしまった……」

「……」

「…君が私を倒すことは不可能だ…それでも抗うって言うのかい?」

「……結局、人の心を動かせるのは人の思いだけだ…」

「……」

「…だったら、俺は俺の思いをお前にぶつけて…俺がお前に勝てねぇなんていう戯言を、根本から否定させてやる!」

「……っ…」

 

そういう所だよ、君は……

 

私は少しだけ口角が上がったのを自覚した

 

「……ふっはは!」

「……」

「…ふはははは!ははははははは!」

「……」

「…ははは…はぁ〜……」

「……」

ローレンは目を閉じた

私は息を整え、潤った目尻を拭き取る

 

「……ふぅ〜…」

深呼吸をするローレン

互いに準備は整ったようだ

同時に、覚悟も決まったようだ

 

「……はぁぁぁあ!」

「はァァァァ!」

気合いを溜め、最大限まで力を振り絞る

 

「……ネディイイイイイ!!」

「……ローレンンンンンン!」

私たちは勢いよく互いに迫り、拳をぶつけ合う

 

「はぁぁぁぁぁあ!」

「はァァァァァァ!」

「はぁぁぁぁ!」

「はァァァァ!」

「ネディ…!俺は…!お前を…!」

「……っ!はァァァ!」

光と炎がぶつかり合い、大爆発が起きた

 

「ぐはっ!」

「くっ!」

互いに地面に落下する

立ち上がる気力もない

しかし、お互いに悶えながらも立ち上がろうとする…

 

そんな時だった…

 

「……っ!?」

「…はぁっ!」

「…っ!」

突如、ローレンの目の前にガルが迫っていた

右手に蒼炎を纏わせ、さも今からローレンの息の根を止めようかというほどの形相でいた

 

「…っ!」

「……ローレン…!」

 

私の声は、誰にも届かなかった

 

 

ネディ……俺は、お前に何してやれなかった

 

高校の時、クラスで浮いていた俺に唯一声をかけてくれたのは、お前だったな…

 

好きな漫画の話や、ゲームの話

たわいのない話でよく盛り上がったな…

 

警察学校に入って2人でよく特訓し合ったよな…

俺が29勝で、お前が32勝、引き分けが58だったか?

 

そういえば…あの時冷蔵庫に入ってた俺のアイス食ったの、お前だろ?

分かってるよ、お前の好みは俺の好みと似てるから…

 

2人で教官にたんと怒られた事もあるよな

俺とお前が珍しく殴り合いの喧嘩して、教官に「いつまで子供みたいな事言ってるんだ!」って……

あの日のパンチ、今でも覚えてる

 

でも、その後2人で笑い合ったよな…

楽しかった…

 

俺が警察になって早々辞めたけど、お前は止めはしなかったよな。「君の意見を尊重したい」って……まぁ結局お前のワガママに付き合わされた結果、お前は死んだんだよな…

 

久しぶりに泣いたよ

今まで泣く事なんて殆どなかったのに…

それ程お前の存在は大きかった

 

なんで死んじまったんだよ…

なんであの時俺を庇った…?

あの3人はお前が雇ったんだろ?

本当に俺の事を殺そうとしてたのか?

 

疑問しか出てこねぇよ…

自暴自棄になってたのかもな……

 

でも、俺はお前との約束を守る為、警察に復帰した

そこからは大変だったよ…

 

アクシアが俺のバディになって『スローンズ』っていうコンビ名で様々な事件に巻き込まれ、『EDEN補完計画』なんて言う変な事件まで担当することになった

アクシアは可愛い奴でな、素で出た時の笑顔は本当に幸せそうな顔してる

今はパイロットとして俺のサポートもしてくれている

運転技術が荒いのがたまに傷だが…まぁいいか

アクシアは可愛い見た目と性格はしてるが、本当は男らしい奴でさ、1度決めた事は曲げない意志を持っている

そういう意味ではお前と似てるかもな

まぁ、あいつは俺の唯一無二のバディだがな

 

エバさんっていう人がさ、実は元マフィアのボスで

『EDEN補完計画』と深い関わりがあったんだが…その前にアクシアの話とかその人の評判を聞く限り、悪い人じゃなさそうと思って思い切って試してみたんだ、その人がどんな人か……すると、滅茶苦茶いい人でさ!少し怖いところとかあるけど、愛嬌もあって甘い物も好きで…

そして何より、エバさんには過去を乗り越えるっていう強い心があった…

マジで憧れるぜ、あのプロフェッサー

 

パタ姐は見た目こそ大人だが中身はまるで子供見てぇでよ、でもなんだか妙に姉御気質でさ

年上だけどいじりたくなっちまうんだよな〜

まぁ向こうも俺たちのこといじってくるから、お相子だな

最初はEDENの街でボディガードやってるって言うから怖い奴なのかと思ってけど、滅茶苦茶優しいし、気遣いもしてくれるし、そういうところがパタ姐らしさかな

それに、パタ姐には覚悟があった

どれだけ強くてもやっぱり女の子だからな、本当はこの事件に巻き込まれて怖がってるんじゃないかと思ってが…

俺の思い過ごしだったみたいだ

流石、俺たちの自慢のボディガード

 

ヴィンさんは、最初は許せなかったな…

ほぼほぼ事件の元凶だし、まめねこ所持してたし…

でもまぁ、関わっていくうちにヴィンさんのいいところも見えて来た

ヴィンさんは自分でマッドサイエンティストとか言ってるけど、実際優しいし、偉そうな態度とってるけどどこか抜けてるところあるし…

あと、ヴィンさんは俺たちの中で1番人間らしい

出会いは最悪だったけど、上手く丸め込まれたな

やっぱりあの人はマッドサイエンティストかもしれない

 

ここまで来るのに、本当に長かった…

沢山の悲しさと、後悔が積もった数年だったが

楽しさや喜びも感じられた最高の数年でもあった

 

 

 

「……っ!」

「はぁっ!」

「ガル…!ローレン…!」

「うぉぉぉ!」

「……」

 

 

 

俺の人生はつまらないものだった

まるで白いキャンバスのように、誰の物かも分からないような人生を送っていた

 

 

 

「……ハッ!」

「……ごぼっ!」

「……」

 

 

 

だが、あいつらがそんな俺のキャンバスに色を塗ってくれて、それはまるで虹のように輝き、俺の人生は美しく染まった…

 

 

 

「…ご…ぐふっ!」

「……ネ…ディ…?」

「……な、何故だ…!?なぜこの男を庇った…!?」

 

 

 

だが、本当は何も無かった筈なんだ

俺の人生にはキャンバスすら置かれていなかった筈なんだ

そのキャンバスを俺の目の前に置いてくれたのは、紛れもない、お前だ

 

 

 

「……ネディ…」

「……やぁ…無事かい?ローレン…」

「……っ」

 

 

 

お前がいたから、今の俺がいる

今の俺が居るのは、全部お前のおかげだ

 

ありがとう

 

 

 

「……なんで…?」

「……」

ネディの胸に空いた大きな穴

ガルーシュが俺に喰らわそうとした一撃は、ネディが庇ったことにより、ネディは致命傷を負った

 

「…今ならこいつを殺せたのに…なぜ庇った!?」

「……確かに、何やってるんだろうね…私は…」

「……」

俺はネディを抱き上げた

ネディは血まみれになった手で俺の手を握って来た

 

「……ローレン…私はひとつ、君に嘘をついた」

「……嘘…?」

「…私は君が嫌いと言ったことだ…」

「……っ」

なんだよこれ……

涙が止まらねぇ……!

 

「……本当は…君の事も、この街の事も、大好きなんだ…だから君を見殺しにするなんて…私には出来ない…」

「……なんで…傷が治らねぇんだよ!?お前なら簡単に治せるはずだろ!?」

「……残念だけど、無理だね」

「…何でだよ!?意味分かんねぇよ!」

「…私自身が、死を望んでいるからだよ」

「…っ!?」

すると、段々雨が止んできた

 

「…私は醜い人間だ…これまで沢山の偽善行動を行って来て、自分を肯定し続けて来た……でも、世間には眩しい人がいっぱいいると、この街に思い知らされた」

「……ネディ…」

「……この街は本当に綺麗だ…いつまでもこの輝きを守って欲しい…」

「…あぁ勿論だ!俺はいつまでもこの街を守ってみせる!お前の分も!俺たちの力で!」

「……では約束だ…」

ネディは震える手で小指を立てた

 

「……っ」

俺はそれに応えるように力強く小指を交差させた

 

「…ネディ…俺はお前を許すよ」

「……」

「お前がいなければ、俺はとっくに挫折していた…全てを捨てて怠惰な生活を送っていたと思う…でも今は、警察になって本当に良かったって思ってる…全部お前のおかげだ!おかげで素晴らしい仲間にも巡り会えた!」

「……フフッ…ありがとう…」

「……まだだ…まだ俺はお前に伝えたい事が……っ!?」

すると、ネディの身体が段々光の粒子になっている事に気が付いた

 

「……ネディ…!?」

「…最期にひとつだけ…」

「……」

「…この事件は、まだ終わってない」

「……え…?」

「…私は、とある人物に蘇らされた…この街の人間に」

「……っ」

ネディは俺の肩を掴んだ

 

「…君たちで、この事件を終わらしてくれ…!」

「…ネディ」

「…っ」

「……」

ネディは俺の背中に手を回した

ネディの温もりが、肌で感じる

 

「……ローレン…ありがとう…!私の、親友になってくれて!」

「……」

「…そして、ごめん…先に逝く事、許してくれ…」

「……ネディ…っ」

「…これからは、君たちがこの街を守っていくんだ…!そして、もっと沢山の人に慕われろ!君たちにはそうなるほどの価値がある!」

「……クッ…!」

「……この街を、光で満たしてくれ…EDENの夜明けを見てくれ…それが私の最期の願いだ」

「……あぁ…」

「……ではさらばだ…ローレン……」

「……」

ネディは光の粒となって消えてしまった

温もりも、何もかも跡形もなく消えてしまった

 

「……ネディっ………うわぁぁぁぁぁぁぁあ!」

「……ローレン…」

そばに来たアクシアも他所に、俺は号泣した

 

「……皮肉なもんだな…影の住人である筈のあいつが、光に包まれて死ぬとは…」

「……ガルーシュ…お前はこれからどうするつもりだ?」

泣き止んだ俺はガルーシュに話しかけた

 

「……どうするもこうするも、俺の命だって長くはない…それ程までに代償がデカい」

「……じゃあ…」

「…だから、この命が尽きるまで…この街を見守り続ける事にした。あいつが好きだった、この街を……」

「……お前は、この街が嫌いじゃないのか?」

「……気が変わったんだ」

 

かくして、7月19日 1:39

この戦いは終わりを告げた

 

しかし、事件は終わっていない

 

まだ、決着を付けないといけない人物がいる

 

その人物とは……

 

 

報告書

 

7月19日 6:19

 

オリバー・エバンス:EDEN出身の人間でないにも関わらず、覚醒状態に近い進化でバンデル・カイブドウを撃破

 

レオス・ヴィンセント:内なる魂を解放し覚醒、覚醒内容はどんな薬品でも即座に作れるという頭脳の発達、まめねこという生物との意思疎通を実現させた

 

レイン・パターソン:上に同じく覚醒、覚醒内容はサメのぬいぐるみに意思を宿すことに成功。また水面を歩く、水中でも息が続くといった水に対する耐性も出来上がっている模様

 

アクシア・クローネ:自身に雷を纏わせ、電撃攻撃を可能とした。また、恩師であるガンバー・スカイビットの魂を使用し、特大の電撃砲を放っていた

 

ローレン・イロアス:1度死亡したように見えたが、覚醒状態となり蘇生。炎を宿し、ネディ・デイジーと遜色ない強さを手に入れた模様

 

以上5名、反エデン組織『ルシファー』との戦いに於いて力を遺憾なく発揮。組織の壊滅も確認された

 

 

都市警備部隊 隊長

グリファード・レオポルド

 

 

 

「……ふぅ〜…」

報告書を書いたパソコンを閉じ、カーテンを開ける

昨夜まで降っていた雨が嘘のような天気だ

 

「……彼らは、覚悟を決めたのだな…」

 

すると、隊長室の扉からノックが聞こえた

 

「…失礼します。レオポルド隊長」

「…あぁ、入っていいぞ。ローレン」

「……」

「……」

 

今度は、私の番だ

 

To Be Continued...




次回 最終回

Last File.「光、溢れる(エデン)
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