EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

26 / 29
EDEN(エデン)
そこは、この世界ではない
何処かにある“街”



Last File.「光、溢れる(エデン)

「……失礼します。レオポルド隊長」

「……あぁ、入っていいぞ。ローレン」

私が返事をすると、制服姿のローレンが隊長室に入って来た

 

「……」

「……」

「……」

「……さ、座ってくれ。お茶でも淹れよう」

 

「……このお茶…」

「あぁ、この間オリバーさんから貰った物だよ。私も気に入ってね、愛飲させてもらってると、伝えてくれ」

「……マジで会ってたんですね、みんなに」

「…すまないことをしたと、思っている。だが、お前の素性を知らないまま、じっとは出来ないであろう?彼らは」

「……まぁ、確かに…おかげであいつらとはより分かり合えましたし…」

そう言ってローレンは紅茶を口に運んだ

 

「……うまっ」

「……して、今日は何の用だ?ローレン」

あえて私の方から話を振ってみた

 

「……本当は、知ってるんじゃないですか?()()

「……『ルシファー』との戦いは、大義であった。おかげで事件は解決に向かっている」

「……」

「…私がネディを蘇られた」

「……やっぱりな…」

ローレンはまた紅茶を口に運んだ

 

「……私は500年前に死に、この時代に蘇った。そして、その街の全てを監視し、この街の全てを管理してきた」

「……神、か…」

「……これを神と呼ばずになんと呼べばいい…?」

「…知るかよ、そんな事…」

「…怒っているか?」

「当たり前だろ…!ネディは、あんたのエゴによって蘇らされたって事だろ!そんなの納得出来るわけねぇだろ!」

「……お前の言いたいことも、思っていることも、私には全て分かる。だからこそ、私も全てを話そう」

「……紅茶おかわり」

「2杯目の準備はもう出来ている」コトッ

「……その力、ちょっとキモイな…」ズズッ

 

 

遡ること、12年ほど前だ。私はこの時代に蘇り、この街の管理者、つまり神となった

と言ってもみんなが想像するような高貴な存在ではなく、姿形はただの人間である

それ故、私は自身の力に気付いていなかった

 

だから無意識だった……

私は1件の家を全焼させてしまった

 

「…っ!それって…!?」

「……クローネ家だ」

「……アクシアの…家…」

「…それが全ての始まりだった──」

 

自身の才能を自覚した私はこの街とアクセスした

この街の歴史や文明

ありとあらゆる情報を手に入れ、私はひとつある事に気付いた

 

「……この街には、英雄が必要だと」

「……英雄…?」

「…この街には人々を纏めあげる存在がいない。かと言って、私が人々をコントロールする訳にもいかない…そこで私は、とある計画を思い付いた」

「……その計画って…まさか!」

「…そう、『EDEN補完計画』だ」

「…っ!」

 

その名の通り、EDENを完璧な街に仕立て上げ完全なものとする計画

その為にはまず、この街に英雄が必要と考えた

私はEDENの人間の遺伝子にその兆しをみつけ、それを覚醒させようとした。しかし、そう簡単に行くことも無く、覚醒は人それぞれ覚醒条件と覚醒内容が違うことも知った

 

そこから数年、同じ状態が続いていた

しかし、ある日転機が訪れた

 

「…エバンス一族、『エヴァ』がこの街にやって来た」

「……」

「彼らは私の計画に大きく貢献してくれた……一時期問題となった大量毒殺事件は、EDENの人間たちに大きな刺激を与えてくれた」

「……チッ」

「……」

 

『エヴァ』の若頭、オリバー・エバンスはアクシア・クローネやレイン・パターソンらに多大なる影響を与え、覚醒までの進化を促した

 

だがそれだけでは足りなかった…

 

もっとこの街には、刺激が必要だ

私は狂っていたんだよ

 

そしてあの日、私はお前に声をかけた

 

「……あの立て篭り事件の時か…」

「…お前は私の想像を絶するほどの天才だ。覚醒までの進化スピードは4人の中でも1番早かった」

「……だが、俺は今日覚醒したんだぞ?遅くないか?」

「…いいや、お前は既に覚醒状態にあったんだよ。ガルーシュ・ハラゼラニウムと同じだ」

「……え?」

 

《……雑魚、DOWN…!》

 

「…あの時、お前は既に覚醒していたんだ」

「……そうだったのか…」

「1度アクシア・クローネの同期を投げ飛ばしたことがああるだろう?あれはそれの予兆だ」

「……マジか」

 

お前の覚醒を機に、私は一気に動きを見せることにした

 

都市警備部隊の隊長に就任し、お前とネディを迎えた

そしてあの日……

 

「私はあの3人にネディの抹殺を命じた…というより、そう洗脳した」

「……マジかよ」

「…あぁ、マジだ」

「……じゃああんた…ずっと俺に嘘を付いてたのか?ネディが悪魔だって…」

「……お前が更なる進化をする為、致し方ない事だった」

「……」

 

私は即座にネディを蘇らせ、私の意思を彼に伝えた

 

「……ローレンを…この街の英雄に…?」

「あぁ、その為にお前にも協力してもらいたい」

「……ローレンに…会えるんですか…?」

「…あぁ、いずれな」

 

私は彼に私の力の一部を授け、暫くして『ルシファー』が組織された

 

彼はバンデル・カイブドウ、マディ・ガイローズ、メルス・ラフガーベラ、そしてガルーシュ・ハラゼラニウムを仲間に受け入れ、この街に反旗を翻した

 

レオス・ヴィンセントをルシファーへ勧誘し、私の血液をサンプルとした薬品を作らせた

 

「……それが『ピース』か…」

「彼の進化も、ここから既に始まっていた…」

「……マジでみんなあんたのせいなんだな」

「……」

「……何とか言ったらどうなんだよ…」

「…私は様々な人間の人生を狂わせた…この街の神でありながら、この街を泣かせた…」

「……」

「……だが、私はこれが間違っていたとは思わない。現に今こうして5人の英雄がこの街に君臨した…私は満足だ」

「俺は不満だらけだ…!なんなんだよ一体…!?なんでアクシアの家が燃えなくちゃならなかったんだ!?なんでヴィンさんがルシファーに入らなきゃいけなくなったんだ!?なんでパタ姐は命を張る事になったんだ!?……なんでネディが死んじまう羽目になったんだ!?」

「……ローレン…」

ローレンは涙を流しながら怒鳴っていた

 

「……俺は、今日大切な物を失った…消える筈がなかった命…本当は今頃元気にゲームしてるはずだったんだ…なのにっ…なんで…!」

「…過去は変わらない。失った命が戻ることも無い」

「あんた神なんだろ!?何とか出来ねぇのかよ!?」

「…すまない…出来ない」

「……俺はこの街が好きだ…この街は俺にとっては楽園だ…みんなにとっても、楽園であって欲しい……だが…!」

「……」

「…あんたみたいなゲス野郎が作った街なんか!俺は絶対に好きにはならねぇ!」

「……ローレン…お前は…」

「……っ」

「……私を許してくれるか…?」

「許すわけねぇだろ…!絶っ対…!」

「……それでいい」

すると、部屋の外からパトカーのサイレンが鳴り響いた

警備部隊の本部なのだから、ここに犯人が来る訳でもない

 

「……これは…?」

「私が呼んだんだ…もっとも、彼らは私をわけもわからずに逮捕するだろうけどね」

「…何言ってるんだ?」

「……私はね、ローレン…神として生まれ変わったことを後悔している。私だって、普通の生活がしてみたかった…人間として……」

「……」

「…だったら最後くらいは、警察として…一人の人間として、罪を償いたい。私もこの街が大好きだ…だからこそ、この街は君たちに任せる」

「……隊長…」

「……たった今、これまで『ピース』や『バース』基『ルシファー』によって被害にあった全ての人間たちからその記憶と副作用を消した。この事件は忘れてはいけないが、覚えてもいけない。君たちが後世に繋ぐんだ」

「……」

「……ローレン…私を逮捕してくれ」

「……」

ローレンは両手を差し出す私の手首に手錠をかけた

 

「……6時53分…グリファード・レオポルド…あんたを緊急逮捕する」

「……あぁ」

 

隊長室に大量の警察が入ってきて、私を取り囲む

 

「……ローレン、オリバーさんに伝えてくれ…出所したら、また紅茶を淹れて欲しいと!」

隊長室の扉が閉まり、ローレンの姿は見えなくなった

 

「……大丈夫…君たち5人が揃えば、何も怖いものは無い…これからも、この街のことをよろしく頼んだよ…」

 

私は長い廊下を歩きながらそう呟いた

 

 

「……はぁ…」

レオポルド隊長が隊長室からいなくなり、俺は呆然としていた

同時に、肩の荷も降りた

 

まさか全ての元凶、それもこの街の神が隊長だったなんて

みんなにどうやって説明しようか…

 

「……これで解決したのか?」

俺はあまりにも無知だ

この事件でその事を嫌という程判らされた

この街には謎や陰謀が常に渦巻いている

 

「……はぁ…寝みぃ…」

俺は隊長室のソファに腰掛け、目頭を摘む

1日丸通しで戦ってたからな…流石にきつい

 

「……ネディ…終わったよ、全部……多分」

「…あれ?ローレン!こんな所で何してるのさ?」

「アクシア…!レオポルド隊長が通らなかったか!?」

「…レオポルド…?誰の事?」

「…え?」

「寝ぼけてないで、早く!挨拶行くんでしょ!」

「…あ、あぁ…そうだな…」

 

この街には謎が多い

往々にして陰謀渦巻くこの街は、俺をあまり寝かせてくれない…

 

「…おや、全員揃いましたね」

「もう!遅いぞローレン!」

「全く〜遅刻なんてするもんじゃありませんよォ〜!」

「いやそれヴィン博士が言う!?」

「……フッ」

 

でも、それでいい

 

「…ん?どうしたの?ローレン」

「……いいや…」

「……?」

俺はみんなの顔を見て笑顔で答えた

 

「……楽しいなって、思っただけだ!」

 

今の俺には、こいつらがいる

 

もう、何も怖いものなんてない

 

 

1年後

 

「それじゃあみんな、今日は俺の1周年記念配信に来てくれてありがとな!んじゃ、またね〜お疲れさまでしたー!」

配信画面を待機画面にし、マイクをミュートする

 

「……んん〜!今日も疲れたー!」

こんな事を言っているが、実際のところは超楽しい

達成感もあるし、ホントこの仕事をやってよかったと思う

 

あの日……

 

 

 

「…ローレン!」

「……アクシア…」

「…終わったの…?」

ネディが消滅し、ガルーシュもどこかに行ってしまった

俺はしばらくの間この状態のまま呆然としていたらしい

 

「ローレン君!」

「ローレン!」

「ローレンくん!」

続々と集まってくるみんな

 

「……みんな、ありがとな」

俺は涙目でみんなにお辞儀をする

 

「……みんなのおかげで、俺は…俺は…っ」

肩に置かれる手

見るとエバさんだった

 

「それはこっちのセリフですよ、ローレン君」

「……え?」

「私たちも、ローレンやみんなの言葉がなかったら負けてたかもな!」

「大変でしたよォ〜…でも、ローレンくんの言葉を思い出して何とか踏ん張りました〜!」

「……みんな…」

「…ローレン…ローレンはみんなに助けられたって思ってるかもしれないけど、おれたちもローレンに助けられてるんだよ」

「……」

「…ローレン君は自分の責務を果たしました。何も責めることなんてないですし、そもそも感謝してますから」

「戦い自体は大変だったけど…この街を守れたなら…」

「それでいいんじゃありませんか〜?」

「……みんな…っ」

またもや目から涙が……

 

「…おれたち5人は、これからもお互い支え合って生きていこう!この街を守る為に、沢山の笑顔を守る為に!」

 

俺たちは五角形に拳を合わせ、空に掲げた

雲はとっくに晴れていた

 

その後、街へ降りた俺たち

そこには……

 

「……やぁ、ローレンくん」

「…た、田角さん!ありがとうございました!」

「いいっていいって、気にしないで」

「…で、でも…」

「…お礼なら、彼らに…」

田角さんが振り返ると、ざっと100人近くいる人達が勢揃いしていた

 

「ローレン!あの人たちが敵軍団からこの街を守ってくれてたんだ!」

「あぁ知ってる。俺がお願いしたからな」

「えぇ!?」

「…ローレンくん…君たちはこれからどうするんだい?」

「…え?まぁ、この街で警察として…」

「その他は?」

「…その他は…ええっと〜…」

腕を組んで考える俺

すると、田角さんは目を光らせながら俺の両腕を掴んで来た

 

「じゃあさ!僕たちと一緒に来ない!?」

「……え?」

「ほら!この間説明したでしょ!?僕たちは『にじさんじ』っていう事務所でVTuberとしての活動もしてるんだ!君たちさえ良ければ、『にじさんじ』の1年ぶりの新人として迎え入れるよ!」

「…え?で、でもそんな…」

「え!?何それ楽しそう!」

「アクシア!?」

「うむ、いいですね〜」

「エバさん!?」

「楽しそう!任務の間とかでも出来るのか!?」

「パタ姐!」

「丁度研究の被験者が欲しかったのですよぉ〜!」

「ヴィンさん!?」

「よし!これで決まり!」

「ちょ、ちょっと田角さん!それは…」

「なんで?ローレン、やろうよ!一緒に!」

「……でも、街の事とか…」

「配信は場所関係なく出来るから、この街でも出来るよ?」

田角さんの言葉にぐぅのねも出ない俺

 

「…はぁ…分かった分かった…やるよ、VTuber…」

「やった!」

「みんな聞いた!?新人が5人も増えるよ!」

すると、田角さんの後ろにいる人達が歓声を上げた

 

 

 

そんなこんなで、今日ようやく1周年を迎えた訳だが…

 

エバさんは授業、パタ姐は任務、ヴィンさんは研究でアクシアは貧しい人たちのために働きに行っている

 

「……はぁ…集まり悪ぃ…」

ふと、俺はコメント欄をみる

物凄いスピードで沢山の文章が下から上へと登っていく

 

「……っ!?」

一瞬

ほんの一瞬だった

 

誰が送ってきたのかも分からない

スパチャでもない、メンバーでもいない人からのコメントに、俺は過剰に反応した

 

『ありがとう』

 

「……」

見失った……

そんな短いコメントは一瞬にして流れてしまった

 

脱力した俺は椅子の背もたれに体重をかける

 

「……フッ…こちらこそだよ…」

 

俺はカーテンを開けた

さっきまで暗かった空が、段々と明るくなっていった

 

「……夜明けか…フッ…」

そんな時間まで配信してたのか、俺…

 

俺は自分に労いの言葉をかけるように、そして

このイカれた街に向かって、叫んだ

 

「……おつかれワッサー!!」

 

俺たちは新たな人生へと足を運んでいた

これからはこの街だけじゃない、もっと沢山の人の笑顔を守る為、配信を続ける

 

俺たちにとっての《楽園》は、もうこの街だけではない

 

 

EDEN

─ その5人は、《楽園》を動かす。─

 

fin




あとがき

皆様、ご無沙汰しています
初めましての方は初めまして
作者の、「キャメル16世」と申します

まずは、今作をここまで読んでいただいて、誠にありがとうございました
この場をお借りして、感謝申し上げます

さて、今作は『にじさんじ』エデン組の5人の、「こんな話があったらいいな〜」っと思って描き始めたのがきっかけです。ちなみに、今作制作を開始した時点では、6話までの内容しか決まっていませんでしたww

エデン組の5人が演じる風な感じの作品にしようと思ったら、まさかのエデン組のルーツを描く物語になっていたので、自分でもびっくりしましたw

物語を書くの於いて、エデン組のキャラ設定が元とは少し違っていたり口癖や口調を真似るのはとても難しいので、難易度の高い作品ではありました。二次創作と言いつつも完全オリジナルストーリーですからね

新キャラをがバンバン出てきて焦った方もいるかと思いますが、オリジナルキャラなので本人たちとは何ら関係の無い人達です

そして、エデン組の皆さん
1周年おめでとうございます!
これからもずっと応援していきたいと思います!

今後はFile.16に登場した数々のにじさんじライバー達の戦闘シーンを、短くはありますが描きたいと思います。おまけ程度だと思ってくれれば幸いです
今のところ作中に出てきた11人は描く予定ですが、この人の戦闘シーンも見たい!っと言う方がいましたら、感想等で教えていただくと幸いです
ちなみに、エデン組以降にデビューした8人は対象外です。

秘密結社holoXも入れようかと悩みましたが、あくまでこちらはにじさんじが主なのでスルーします

長くなりましたが、あとがきを終わります。ありがとうございました!

by キャメル16世
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。