EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、生徒達の笑い声が聞こえる街
この街は、僕を導いてくれる…



File.3「影、潜む(エデン)

「……」

夢を見る

当たり前の事だ

だが、最近の僕からしたら

異常な事だった

 

ココ最近、僕はまともに寝れていない

理由は分からない

眠たい筈なのに、すぐに起きてしまう

 

だから、夢なんて覚えていなかった

 

でも、今日の夢ははっきりと覚えて…

 

「……あれ?」

僕は今、どうな夢を見てたんだ?

 

「……」

そんなに気にすることではない

いつもの事だ

 

僕、オリバー・エバンスは緑色のスーツに着替え、髪型をセットする

教授たるもの、身だしなみはきっちりしていなければならない

生徒達にいつでも顔向け出来るように…

 

僕の生徒達はみんな優秀だ

大学の教授になって暫く経つが、みんな僕を受け入れてくれた

そして…

 

「この間近所に空き巣が入ったみたいでぇ〜…」

「あの政治家、不倫でクビになったみたいですね…」

「この間、俺の同級生がヤクザに絡まれたみたいで〜…」

 

色んな情報をくれる

素晴らしい生徒達だ

 

「本日の講義は終了となります。忘れ物がないようにね」

全ての講義が終わり、定時も過ぎた

そろそろ帰ろうとした時

僕の書斎にお客が来た

 

「…先生!今お時間良いですか?」

「…おや、アクシア君。どうなさいました?」

二回生のアクシア・クローネ君

彼は最近僕の講義に来るようになった

 

「今日の講義も素晴らしかったです!…そこで、ちょっとだけ先生に相談が…」

「…なんですか?」

僕は持っていたカバンを再び机の上に置き、机の前のソファに腰をかけた

 

「アクシア君も、座って?」

「…は、はい!」

元気よく返事をするアクシア君

僕はその後、彼の将来について相談を受けた

 

「…パイロット、ねぇ…」

「…はい…おれ、パイロットになるのが夢で…」

「…機動歩兵部隊に入隊するおつもりで?」

「はい!その為に、今も勉強してて!」

「…でも君、漢字苦手だからねぇ〜」

「…いや…あれは…」

「バビ雑言…」

アクシア君はギクッ!っと肩を動かす

 

「…ははは…冗談ですよ、ちょっとした意地悪です」

「…もぉ〜、勘弁してくださ〜い〜」

「…それで?」

「…はい。そこで、なんですが……」

彼は、どうしたらパイロットになれるのか、や

僕の人生経験などを聞いてきた

 

僕はそれになるべく答えた

生徒と紳士に向き合うのも、僕の役目だ

 

「…あぁ!もうこんな時間!」

「おや、やけに話が弾んでしまいましたね」

時計を見ると、時刻は19時を回っていた

 

「先生!明日も講義、来ていいですか?」

「勿論です、歓迎しますよ」

「はい!じゃあ先生!おやすみ!」

「…えぇ…おやすみなさい、良い夢を」

 

 

アクシア君が卒業し、程なくして

パイロットになれたという連絡が本人から来た

 

「……おめでとう…アクシア君…」

 

夜の街を歩く

イルミネーションや街灯が光る大道路を抜け、路地裏まで来た

ここなら、誰にも見つからない

ここが、僕達の共有スペースでもあった

 

「……収穫は?」

物陰から、図太い声の男が話しかけてくる

僕等は毎日、仕事終わりに近況報告をするのが日課だった

何かトラブルが起これば、どんなに些細なことでも伝え合うようにしていた

 

「いや、まただ…そっちは?」

「こっちもだ…早くしねぇと、計画が進まねぇぞ…」

「…大丈夫…必ず上手くいく」

「…本当に大丈夫なんだろーな…Livie(リヴィー)…」

「…俺を疑うのか?」

「…はいはい、仰せのままに…ボス…」

「……」

 

 

「…あんた、本当はなにか知ってるんじゃないか?この街の何かを…」

「…分かりました…全てお話しますよ…」

「……」

「……この街の…真相をね…」

あの日から、暫が経った今日

立派になったアクシア君は、警察のローレン・イロアスなる人物を連れて来た

 

そして彼は、僕にこんな事を言う

 

「……」

僕が口を開こうとした瞬間、ローレン・イロアスは手を向けた

 

「いや、話さなくていい…なんならあんた、最初から話す気なんて無かっただろ?」

「……」

「…先生?」

「…俺達は、とある事件を追ってる。多分、あんたも知ってる」

すると、ローレン・イロアスは1つの茶封筒を渡して来た

 

「…これは?」

「…俺達が追ってる、『EDEN補完計画』について記されている資料だ」

「…何故、それを僕に?」

「…俺はあんたを信頼する」

「…え?」

この男は、何を言ってるのだろう

 

「アクシアが本気で尊敬する人間だ、俺もそんなあんたを信じたい。そのUSBを開いて、何か情報があったら教えてくれ。些細なことでもいい」

「…もし僕がこの情報を漏洩したら、どうするんだい?」

「…地の果てまでも、あんたを探してぶっ潰す」

「……ローレン…」

「…分かりました…」

僕はそのUSBメモリを受け取った

その後、2人はすぐに帰って行った

連絡先も聞いていないのに、どうやって報告しろと…

 

このUSBは、もしかしたら偽物かもしれない

でも、彼のあの目

本気だった

本気で僕の事を見ていた

もし、本物ならば…

 

「……収穫は?」

今日も、いつもの路地裏に集まる僕等

今日は僕から話しかけた

 

「…さっぱりだな、まるで得られねぇ…」

「……」

「…あんたは?」

男は問いかける

 

「……」

 

《俺はあんたを信頼する》

《じゃあ先生!おやすみ!》

 

「……何も。この街は平和ですね」

「……そうか、今日も収穫なしか…」

「…えぇ」

 

僕は家に帰り、急いでパソコンを開く

 

手慣れない動きで暗証番号を打つ

何度か引っかかり、3度目でようやくログイン出来た

 

USBを指す場所は…ここか

あれ?…あぁ、向きが反対だ…

 

そんなこんなで、ようやくUSBの内容を知る事が出来る

 

そして驚いた

このUSBメモリー…

画像がびっしりとはられていただけだ

一枚目の写真には、ローレン・イロアスとアクシア君が、「このUSBは偽物です!」と書いてある大きな紙を持つ写真がはられていた

2人は満面の笑みだった

 

「……はっ…最初っから、僕は信頼されてなかったのか…」

仲間にUSBを渡さなかったのがアホらしい

僕はパソコンを閉じようとした

しかし、操作をミスって次の画像に行ってしまった

 

「……これは…」

僕はその後も

何枚も、何枚も

2人が撮ったであろう楽しそうな写真を見続けた

どれも2人の笑顔や、色んな表情が伺える

 

「…楽しそうですね…2人とも…」

アクシア君…君は、いい仲間を持ったのですね

 

嬉しさ半分、悔しさ半分

でも、僕の心は晴れていた

 

「……これは…映像?」

暫く写真を流していると、今度は映像が流れた

画面から映像と音声が流れる

 

『…OK!良いよ!』

『…あぁ〜…ん"ん"っ!』

酷い咳払いをするローレン

1人で突っ立っている

 

『…この動画が開かれてるってことは、この動画を見てる人物はただ1人、オリバー・エバンス、あんただな?』

「…っ!」

何故?僕がこの動画を見ると?

 

『他の奴が一枚目の画像を開けば、画面ぶち抜くだろうからなぁ』

「……」

『…言ったはずだ、俺はあんたを信頼するって』

「……っ」

『あんたを信頼したから、あんたは他の奴にこのUSBを渡さないと予想し、この映像を撮ってる。あんたが今この動画を見てるって事は、あんたは俺達を信頼するって事で良いんだよな?』

「……あぁ、そうだな…」

『…11月24日正午、この場所で改めてこのUSBを回収させてもらう』

ローレンは地図を示し、場所を定めた

 

『…あんたの話が聞きたい。最後に、あんたを試すような真似をしてすまなかった…』

ローレンは深々と頭を下げる

 

『…これも、この街を守るため…俺と協力して欲しい…』

ローレンは、ポケットからUSBメモリを取り出す

 

『あんたが開いてるこの動画の次に、『EDEN補完計画』についての調査結果が載ってる。意見を聞かせてくれ…』

映像はそこで途絶えた

 

「……」

 

 

「…来るかな?先生」

「…信じるしかないだろ、これであの人が来なければ…」

「……」

「…俺達の負けだ」

「……」

「…尊敬、してるんだろ?」

「……うん、あの人は…あの人だけは、おれの夢を紳士に聞いてくれた。だから、信じたい…」

「……俺もだ…」

俺は視線をアクシアからあの人が来るであろう道に移した

未だ人影は無い

 

11時55分

 

「……あと5分…」

「……」

来るか…?

 

11時56分

 

俺は正直、あの人が怖い

 

11時57分

 

それでも、俺は信じたんだ…

 

11時58分

 

あの人の、可能性を…

 

11時59分

 

「……あと1分…」

「……」

頼む…来い!

 

12時00分

 

「……っ!」

「…はっ!先生!」

時間ピッタリ

オリバー・エバンスは1人で俺達に向かって歩いて来ていた

 

「…遅くなって申し訳ない…ちょっと立て込んでてね…」

「……先生…!」

「……信じてたぜ、あんたの事」

「…ありがとう…では、今度こそ全てを話すよ」

 

俺達は場所を移動し、カフェに着いた

 

「…僕は、実はこの街の人間じゃない」

「だろうな、あんたの経歴を調べると、不審な点が多い」

「…更に言うと、僕はこの街を裏で支配しているマフィア、『エヴァ』のボス、『Livie』だ」

「…え…そんな…」

「エヴァって、例の強盗犯2人の交渉相手じゃねぇか…」

「あの二人がしくじったことにより、我々の計画は保留状態になっていた」

「……それが…」

「…EDEN補完計画」

「先生が牛耳ってたの!?」

「アクシア、落ち着け」

「でも安心して欲しい…先程、そのエヴァを解散させた」

 

 

「エヴァを解散って、どういう事だ!」

「警察に計画がバレた、もう後がない」

「…ったく!テメェが教授なんかやってるからだろ!」

「情報を聞き出すためだ」

「…そんな事言って、本当は気に入ってたんじゃねえのか!?」

「…なに?」

「……最近のあんたは特にな!調子乗ってんじゃねぇぞ!マフィアの一族の血を引いてるからってな!」

「…っ!」

僕は男に銃を向ける

 

「…ひっ!」

「……いいか?貴様はもうこの計画から足を洗え…そして、誰にも言うなよ?もし情報が漏洩してみろ…貴様を地の果てまでも探し出し、その頭蓋骨を粉砕してやる…」

「…ひっ…ひぃっ!」

腰を抜かした男は青ざめていた

 

その場にいたその他の部下も青ざめる

 

「…この時を持って、『エヴァ』を解散とする。全員、くれぐれも情報も漏らさないように…」

 

 

「…っとまぁ、こんな感じで」

「……」

「……」

怖っ

流石はマフィアだな…

 

「……って事は、万事解決?」

アクシアが疑問形で俺達2人に問いかける

 

「……いや、まだ終わってませんよ」

「…どうしてだ?『エヴァ』が『EDEN補完計画』を進めていたんだろ?」

「……いいや、我々はその計画を支援していたに過ぎない…」

「……と言うと?」

「…本腰は…反エデン組織、『ルシファー』…」

 

「……ルシファー…」

俺は、雨が降り始めたエデンの街を見ながら反芻した

 

To Be Continued...




次回

  File.4「雨、降り注ぐ(エデン)
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