EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─ 作:キャメル16世
そこは、守るべき
この街は、私を怠惰にさせる…
「…本腰は…反エデン組織、『ルシファー』…」
「……ルシファー…」
すると、雨が降り始めた
屋内にいて良かった
予報では晴れだったのに…
「ルシファーって、魔王サタンの別名だよね?」
アクシアが質問する
「本名って噂もあるけどな」
俺はそれに答える
「ルシファーは、イチから…いや、ゼロからこの街をやり直し、自分達の理想とする《楽園》を作ろうとしている」
「…楽園?」
「…本当の理由は僕にも分からない…でも…」
「そいつらの計画が実行されれば…」
「……たくさんの人が死ぬ…」
オリバーは溜めて答える
「……絶対にさせねぇ…」
色んなものが溜まっていたのか、それを吐き捨てるように俺は呟いた
拳に力が入る
「…どうする?ローレン」
「…どうしたもこうしたもねぇ…この街は俺達で守るぞ、アクシア」
「…うん!」
「…あっちが『EDEN補完計画』なら…こっちは『EDEN救済作戦』だ!」
「良いねぇ!それ!」
「あいつらの陰謀は必ず俺達で止めるぞ!」
「おぉー!」
「……ふふ」
そんな会話をしてると、オリバーが笑った
「…本当に面白い人達ですね、あなた達は…」
すると、オリバーは手を差し出す
「…僕も、その作戦に協力させて下さい…」
「…いいのか?死ぬかもしれないぞ?」
俺は煽るつもりで言った
「…なぁに…命の重さは、誰よりも分かってますよ…」
その言葉の真相は聞かないでおいた
俺は警察である前に、1人の人間なのだ
「…それに、僕もこの街が気に入っています…この街の生徒達が悲しむ所など、想像したくありません…」
「……」
「この計画は、僕がケジメを付けなければいけません…だから、僕も君達に協力したい」
「……」
オリバーの目は本気だった
「…分かった…あんたの熱意には負けたよ」
俺はオリバーの手を握った
「…宜しくな、
「…はい、ローレン君!」
エバさんの笑顔は、意外と素敵だった
こりゃモテるわけだ
警察が元マフィアのボスと手を組むとはなぁ…俺も落ちたもんだ
…でも、これでいいんだ
「…でもこうなると、『ルシファー』の連中と衝突するのは避けられないかもな…」
「そうですね…大幅な戦力アップをした方がいいかもね」
「なんで?3人とも戦えるじゃん」
「…お前、3人でどうこうなる話じゃないだろ…」
「ルシファーは意外と大きな組織ですから、戦力に特化させるに越したことはないですよ」
「…そっかァ〜…じゃあ、そういうのに特化した仕事をやってる人に頼んだ方がいいかもねぇ〜…」
「…っ!」
すると、アクシアの言葉にエバさんが反応した
「…そうか…彼女にお願いすれば…」
「…彼女?」
「…えぇ…この街には、腕利きのボディーガードがいるんですよ…」
「ボディーガード?」
アクシアも疑問に思ったようだ
女性のボディーガード
そんな奴がこの街にいるのか?
「…彼女はいつも…あの店にいます」
エデン中央都市の外れにあるパチンコ店
『ユートピア』
「……」
毎週金曜になると、16列目の5台目がよく当たることを
彼女は知っていた
「……よし!よしよしよし!やっぱり金曜だなぁ〜!」
金曜日に留まらず、最近は毎日来ている
それ程彼女は、パチスロにハマっていた
「…おいおい…昼間っからなに油売ってんだぁ?」
そんな彼女に近付く5人組の男達
側まで来て更に言う
「…レイン・パターソン?」
赤毛で黒のメッシュが入ったポニーテール
谷間がやけに見える服装に軍服
手元にはサメのぬいぐるみ
エデンの街でボディーガードをやっているこの女
レイン•パターソンはその男達に振り返って言った
「……依頼か?」
「…本当に大丈夫か?その女」
「僕が大丈夫って言ってるんですよ?安心してください」
「毎日パチスロやるとかなぁ…」
「そうやってモチベーションを上げてるんですよ」
エバさんの紹介で、レイン•パターソンなる人物を訪ねに向かう俺達
今日もその店にいると思う
ってエバさんは言ってる
「…先生、そのレイン•パターソンって人、どのくらい強いの?」
「…ん〜…少なくとも、彼女は剣術や武術、銃術等を極め、これまでにいくつもの命を守ってきましたよ?」
「へぇ〜、そんなに強いんだ〜」
「…きっと、ローレン君よりも強いと思いますよ?」
「…え?」
素の反応が出てしまった
俺もそれなりに自身はある
長年の苦労と努力の末、やっと警察になれたんだ
それは戦術もそう
沢山努力してきた
そんな俺よりも強いだと?
「…ねぇ先生…ローレン、なんかブツブツ言ってるけど、大丈夫そ?」
「…さぁ…君の方が分かってるんじゃない?」
「…あんなローレン初めて見たよ…」
「……それにしても…」
俺はエデンの曇った空を見た
「……ひでぇ雨だ…」
「依頼?舐めた事言ってんじゃねぇぞ!」
パチンコ店『ユートピア』の店内で、ガリアが怒鳴る
「てめぇ、この間はよくも俺達のターゲットを逃がしてくれたなぁ!」
「あ〜…シャインさんの事ね、君達が狙ってたのかァー」
レイン•パターソンはパチンコを打ちながら答える
「あぁ、そん時のお礼がしたくてなぁ…表出ろや」
顔を限界まで近付け、メンチを着るガリア
「やだ」
「…あぁ?」
「…だから…今いい所なの、やだ」
「…舐めてんじゃねぇぞ!お前ら!連れ出せ!」
ガリアは部下の男4人に命令し、レインを店の外に連れ出した
「やぁっ!今いい所なのにィィィ!」
彼女の叫びは店内に響き渡った
しかし、パチンコの音で消されてしまった
「……で?私に何をしようってんの?」
レインを囲む5人の男達
店の裏まで強引に連れ去られたため、彼女はガン萎えしていた
店の裏は高速道路の真下
外は雨が降っていたが、濡れる心配はなかった
若干の頭痛を感じながら溜息をする
「…決まってんだろ。あいつを逃がした事への制裁を加えるのさ…」
「…はぁ…あのさぁ…私は私の仕事をこなしただけだよ?どうして君達の恨みを買わなきゃいけないんだ?」
「てめぇが逃がしたのが悪いんだ!報いは払わせて貰う!殺れ!」
ガリアは4人の男達に再び指示する
男達は鉄パイプやメリケンサック等をはめてレインを襲った
「…ふっ!」
それ等を軽々と躱すレイン
「こんにゃろ!」
「…ふっ!」
左斜め後ろからの攻撃、後ろ蹴りで腹部に攻撃
「はっ!」
「やっ!」
真正面に突っ込んでくる別の男の腹部に蹴りを入れる
「…へへ」
「…っ」
しかし、蹴った左足は掴まれ抜けなくなる
「…ふっ!」
「…ぐっ…ぬぬっ!」
右脚を男の頭に絡ませ絞め技をする
男は後ろ方向に倒れ、持っていた鉄パイプ話した
「てやぁぁ!」
また別の男が鉄パイプを振りかざしながら迫ってくる
「…っ」
男が落とした鉄パイプを拾い、お互いの鉄パイプをぶつけ合う
火花が散り、レインは少し押されていた
「…へへっ…う"っ!」
しかし、男の両手は塞がっている
無防備になった男の股間に蹴りを入れる
男は悶絶し、その場にヘタレ混む
「テメェェエ!」
4人のうちの最後の一人、その男はスタンガンを持っていた
「……」
「…へへっ…どうした!」
スタンガンを向けながら迫ってくる
流石の彼女も避ける
「…くっ」
「ほらほら!」
「…くっ…はぁ!」
「ぬおっ!」
一瞬の隙をつき、レインは男の手首にチョップをかます
手からスタンガンが離れると同時に、男の腕を手繰り寄せ
背負い投げをする
受け身を取ってない男は気絶した
「……ふぅ」
「……てめぇ…」
残るはガリアだけ
レインはほのかに笑って煽る
「……くっ!……ふ…ふははは」
「…?」
「…勝ったつもりか?レイン・パターソン…」
「…なんだ?」
すると、さっきまで倒れていた筈の男達が続々と立ち上がり始めた
まるでゾンビだ
タフとか、そういう話じゃない
「…うごぉっ!」
「なっ!」
立ち上がった男達は私を拘束した
「…ぐっ…くくっ…」
なんて力…並の男のものじゃない!
「…ふん〜…やっ!」
男の拘束を振り切り、その場から逃げる
「…っ!」
近くにスタンガンが落ちていた
私はそれを拾って電源を入れる
先端からビリビリと音がし、電流が流れる
「…うがぅっ!」
「やっ!」
恐れぬまま無鉄砲に向かってくる男の首に電流を流す
男は完全に気絶し、その場に倒れ込む
それにしてもこの男達…
目の焦点が合ってない…
なんなんだ一体…
「うらぁっ!」
「くっ!…てやっ!」
向かってくる男を回り込み、押し倒す
そのまま首にスタンガンを当てる
「ぶぅあ!」
「…っ!」
振り向くと、もう別の男が迫ってくる
「はっ!」
私は男の顎を狙って蹴った
「…はっ!?」
しかし男は口を大きく開け、私の靴ごと口で受け止めた
「…あ〜…あっ〜…」
「何なんだよもう!」
口から靴をおろし、開きっパになった口に電流を流す
死んではいない、多分
「……ぐらぁあ!」
「っ!?」
最後の男は私に飛びかかり、馬乗り状態になった
「がうっ!うわぁぅ!」
「くっ…ぬっ…」
なかなか身体が動かせない私
必死に男の攻撃を避ける
「…ぶぅぁ!」
「…っ…ふっ!」
隙をつき、男に電流を流す
男は右側に倒れ込んだ
「…ふぅ…ふぅ…」
「……流石だな、レイン・パターソン…」
「……はぁ……はぁ…」
「……だがな、貴様は俺には勝てない」
残されたガリアは私を睨んだ
「…どれだけ貴様が強かろうが、どれだけ俺達が倒れようが…俺達が負けることは無い…」
ガリアは懐から注射器を取り出した
「…?」
「……この、クスリがあればなぁ!」
「……クスリ?」
その注射器には、黄緑色の液体が入っていた
雨は一層強くなって行った
「……」
『ルシファー』の本部
研究室にて、一人の男が研究に没頭していた
「…『ピース』の研究の方はどうだ?」
白スーツの男が、声をかける
青い髪に眼鏡をかけ、白衣はいつも着ている
胸ポケットに妙な生き物を飼っている男が振り返る
「…Dr.レオス?」
「……」
研究員であるレオス・ヴィンセントは眼鏡をくいっと上げた
少しだけ口角を上げて答えた
「……順調ですよ、極めて」
To Be Continued...
次回
File.5「心、燃える