EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─ 作:キャメル16世
そこは、未完成な街…
この街は、私のモノ…
「よろしくな!ヴィンさん!」
熱い握手を交わした私たち
ローレン君はにこやかに笑う
ローレン君は私の右手首にかけられた手錠に手を伸ばす
きっと、外してくれるのだろう
そんなローレン君は、空いた手錠を私の左手首に掛けた
「……ん?」
「…じゃあ、まめねこを不法所持している件について説明してもらおうか?」
「……え?」
一瞬、頭の中が真っ白になった
すると、私の胸ポケットに隠れていたまめねこが顔を出した
「…2匹も飼ってたのか」
「…いや、ローレン君…これは…」
「問答無用。パタ姐、やっておしまい!」
「あいあいさー!」
赤髪の女が私に改めて絞め技をしてきた
「いででででで!なんなんですかこの小娘は!?」
「小娘って言うな!これでも25歳なんだぞ!」
「えぇ〜!?その声でぇ!?」
「…その声でって…言うなぁ!」
「ア゛ァ゛ア゛!!!!」
レオスの叫びが研究室に響く
「……ふふ」
「…先生、どうかしたの?」
「…いや、また…面白くなるなと、思っただけですよ」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
「…ゔぅん!」
私は喉の調子を整え、ローレン君達に向かい合った
一旦まめねこの事は置いておいてもらい
本題に入ろうとしていた
「…率直に言うと、私も本筋は分からないんです」
「……」
「ルシファーの連中は、私の才能だけを利用しています。『EDEN補完計画』という名称自体は知っていますが、詳しい内容などは…」
「…ヴィンさんでも分からないのか…」
ローレン君は少しだけガッカリしていた
「ただ、「ピース」については全て私に一任されています」
「……」
「「ピース」とは、人体における身体能力の向上、筋力増加、その他諸々による、人体を
「……
「…「ピース」の解毒剤を作るのは少々難しいですが、「ピース」に対抗出来る薬なら開発可能です」
「……」
すると、ローレン君は黙ってしまった
「…目には目を…歯には歯を、か…」
ボソッと呟き、私を見つめる
「…あまり気乗りしないが…頼めるか?」
「…はい!任せて下さい!」
「…そういえばローレン、『EDEN補完計画』って、具体的にどんな計画なの?」
アクシアくんは無邪気な顔で言う
「…確かに、私も知りたいぞ」
レインくんもローレン君に言う
「……っ」
ローレン君は下を向き、何かを言おうとした
すると、施設内の警報機が作動した
サイレンの音が響き渡り、私達は緊張に包まれた
「…まさか…おれ達の存在がバレたのか!?」
「…これはまずいですね、奴らに捕まれば…」
「まずいよローレン!今すぐ逃げよう!」
「……あぁ」
ローレン君は立ち上がり、私を見た
「…ヴィンさん、逃げ道はあるか?」
「ありますよ、もちろん」
私は皆さんを案内し、裏ルートから逃げ出した
もちろん、私も
小さい方のまめねこも着いて来る
警報機は、ずっと鳴り響いたままだった
『EDEN補完計画』
それはこの街を混沌の渦へと変貌させ、カオスへと導く物
そして全てが無に帰され、新たなEDENを創造する
それが我々『ルシファー』の陰謀であり、夢
というのが表向きに知れ渡っている物
本来の目的はそうでは無い
それを知っている者は『ルシファー』の中でも少ない
せいぜい4、5人だ
……
どうやら侵入者が現れたようだな
我々『ルシファー』の存在に迫るとは
飛んだ命知らずだな
……
なるほど、レオスの元に来ていたのか
「ピース」について言及していたのだな
あの男…もしやローレン・イロアスか?
こんな所にノコノコ現れるとは…
面白い…
しかし無駄な事だ
いくら「ピース」を調べようとも、『ルシファー』に近付こうとも、『EDEN補完計画』に迫ろうとも。何者にもその本質が分かるはずがない
私の計画は、完璧なのだから
拠点に無事帰還したおれ達に、ローレンは衝撃な事を言ってきた
「……え?」
「…
「……」
ローレンはパソコンを取り出し、USBメモリを差し込む
中に入っていたファイルには、『EDEN補完計画』と書かれていた
ローレンはカーソルをそこに合し、ダブルクリックする
開かれたファイルには、こう表示されていた
『このフォルダーは空です』
「…このUSBメモリを貰った日には、既にこうなってたんだ」
「…どうして今まで黙ってたんだ?」
おれの思いをパタさんが代弁してくれた
「…確証が無いものに付き合わせてる罪悪感と、それと…」
すると、ローレンは黙ってしまった
「……俺は、俺が信じたいものを見極めたかったんだ…」
「…っ」
すると、ローレンの携帯電話が鳴った
「……もしもし」
電話に出るローレン。曇った頂上は晴れることなく「了解しました」と言って電話を切った
「…どうしたの?」
心配になったおれは構わず声を掛けた
「駅前で盗難事件だ、俺はそっちに向かう。皆は引き続き作戦を練っててくれ!」
早足で拠点を出て行くローレン
暫く沈黙の間が続いた
「…相変わらずだなぁ」
不意に口から出る言葉
その言葉に3人は反応した
「…どういう事ですか?アクシア君」
「…あいつ、なんでも1人で抱え込む癖があって。なんか、昔に揉め事があったみたいで、それがきっかけで警察にもなって、あいつは…信じ合える仲間が欲しかったのかも」
「…信じ合える仲間?」
パタさんが突っ込む
「…1人で抱え込む必要なんてない。そんな事は自分でも分かってる筈なのに、どうしても抱え込んでしまう。だから、あいつが信じる事が出来る、“仲間”ってのが欲しかったんだよ」
「……仲間、ですか」
ヴィン博士の胸ポケットからまめねこが顔を出す
ヴィン博士はそれに反応し、頭を軽く撫でていた
「……みんな!」
おれは皆に向き合い、頭を下げた
「…あいつは不器用で、不用心で、無鉄砲で、ノーデリカシーな奴だけど…とっても良い奴なんだよ!」
「……」
「…だから……あいつのこと、信頼して欲しい。もしあいつが皆を裏切るような事したら、おれがあいつの顔面ぶん殴るから!」
「…………ぷッ…くくくっ…」
「……へ?」
「……ふふ」
「…はははっ…アクシア君」
エバ先生がおれの肩に手を置く
「僕達は、彼のそういう所が好きなんですよ」
「そうだぞ!確かにローレンは私の事たまにバカにすることあるけど、そこもあいつのいい所だ」
「私だって!彼の真剣な目が気に入っています。まだ知り合ったばかりですが、彼とは何か近いものを感じる」
「……みんな…」
「…さぁ、彼の言う通り、作戦を練りましょう。凄い作戦を考えて、彼を驚かせましょう!」
「お!それ良いね先生!」
「それなら私の頭脳が使えるでしょうねぇ〜!」
「期待してますよ?レオス君」
「な!私の方が歳上なんですが〜!?」
たわいのない会話が続く
本当にこの人達は…
「……いい人達だなぁ…」
「…ん?アクシアくん今なんて?」
「…ううん、何でもない!」
ほんと、ローレンが羨ましいよ
こんなにいい人達に囲まれてさ
おれも皆に好かれるように頑張らなきゃ!
……
そういえば、ローレンの方は大丈夫かな?
「…約束通り、一人で来ましたか」
「……あぁ」
この街には色んな場所があり、色んな顔がある
それは、街と比例して人間にも色んな顔があるのと一緒だ
「…突然連絡して来て何の用だ」
「…ふふっ…貴方にも教えておこうと思いましてね…」
男は机を指で叩きながら相席するよう促す
いつしか俺は、本当の顔を忘れてしまっていた
どれが本物の俺なのか、もう分からねぇ
だからこそ、あの日の葛藤を忘れずに生きて来た
「…私達の、計画について…」
「……」
「貴方も知りたいですよね?」
「……」
「……ローレン・イロアス?」
「……」
今の俺は、どんな
To Be Continued...
次回
File.8「暁、照らす