EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

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EDEN(エデン)
そこは、私が見ている街
この街は、本当に見えている物が分からない…



File.8「暁、照らす(エデン)

「……」

「…そんな怖い顔しないでよぉ〜」

「……」

ローレン・イロアス…

エデン中央都市、都市警備部隊生粋のエリート警察

これまでにいくつもの事件を解決し、収めてきた

この業界では知る人ぞ知る人物だ

 

それ故に、彼は敵を作る

 

そう…私達のようなね…

 

「…お前が俺に接近するって事は、何か目的があるんだろ?」

「…どうかなぁ?ただ、昔の戦友とただお話がしたいのかもよ?」

「……何が戦友だ…!」

ローレンの表情はどんどん曇って行く

どうやら怒っているようだね

 

「俺達の事裏切っといて…よくそんな事が言えるな…」

「…そんな昔の事、まだ気にしてるの?」

「…ふざけんな…お前ェ!」

ローレンは机を叩こうとする

 

「シッ!ここはお店の中だよ?」

「……チッ!」

こいつはどこまでいっても警察

揉め事は避ける筈だし

何より衝動的に何かをしようとする奴でもない

 

「…まぁゆっくり話そうよ、腹を割ってね…」

「……チッ」

渋々ローレンは私と相席する

 

「…で?」

「ん?」

「…用がないなら本当に帰るが?」

「あぁ〜…そうだねぇ…まずはどの話からしようか…」

「……」

「…じゃあまずは…」

ローレンは私の方を見る

ちょっとだけからかってみようか

 

「…私が道端で拾った当たり棒の話を」

「帰る」

そそくさと去ろうとするローレン

 

「…ちょっ…待ってよローレン!」

「黙れ、俺を名前で呼ぶな」

ものすごい眼光、殺気

 

「…確かに…私に君を名前で呼ぶ権利はないね…」

「……」

「…でもいいのかな?せっかく収穫があるかもしれないのに…君達の調査にも進展があるんじゃない?私の言う事を聞いてくれたら、私達の計画を教えてあげるよ?」

「遠慮しておく」

「……」

即答かよ

 

「…どうしてだい?私の計画が進めば、沢山の人の命が落とされるんだぞ?」

「……そうだな」

「…君は、そうなっても構わないって言うのかい?」

「そんな訳ないだろ!」

またもや即答するローレン

 

「……俺はただ、今のお前に借りを作れば、仲間に顔向け出来ねぇと思ったんだ」

「……」

「……俺は一度罪を犯した人間だ…だから今度こそは、胸を張って生きたい。胸を張って、あいつらの元に帰りたい」

「……」

甘いよ、君は…

私は君のそういう所が…

 

「…お前との間に生まれた亀裂は一生治らねぇと思うけどよ。俺はその亀裂さえも乗り越える!」

「……っ」

「…そして、新たな道を見つける!俺が、歩く事を許されている道をな!」

「……はぁ〜…」

「……な、なんだよ…」

「…呆れるよ、君って奴は…だから嫌われるんだよ?」

「…はぁ!?」

「…まぁでも、今の君には…心配いらないか」

「……?」

私は席を立ち上がり、ローレンの横を通り過ぎる

 

「…またね、ローレン。あぁ…裏切り者のレオス君によろしく」

「……必ず、お前を捕まえるからな」

「…期待してるよ、大惨事が起こる前にね」

私は店を後にした

 

「……」

地下に続くエレベーターを下る

どのくらい下なのだろうか…数えたことも無い

 

この街には秘密がある

それはローレンも知らないであろうトップシークレット

 

まぁ、地上の奴らが知らないだけで

ここでは結構メジャーだったりする

 

「…よぉ、帰ったか」

「うん、まぁ収穫はないけどね」

「…しっかりしてくれよぉ?一応リーダーなんだからな」

 

地下帝国『NEDE(ネディ)

『EDEN』を皮肉った名前であり、そして…

 

「…ネディさんよぉ」

「……ふふ」

私の名前でもある

 

 

「……チッ」

店に取り残された俺は腑に落ちなかった

 

ネディの奴…何を企んでやがる…

 

《昔の戦友とただお話がしたいのかもよ?》

 

「……はぁ…帰るか」

俺は携帯で時間を確認してから店を後にした

 

そういえば、この店も変わってないな…

 

この街は夜になると活発になる

外は人で溢れかえり、建物は光で溢れる

 

「……」

あいつは、こんな平和な景色を、どうしたいのだろうか

 

「…あ、おかえり!ローレン!」

「おかえりなさい、ローレン君」

「ローレン!ステーキと魚フライ、どっちが良い?」

「私は断然ステーキですけどね!君もそうでしょう!ローレン君」

「……」

「……ローレン?」

「…いや、なんでもない…俺もステーキだ!パタ姐、ミディアムで頼む」

「難しいけど…よぉっし!やるぞぉ!」

「パタさん、おれも手伝うよ」

「やれやれ…僕も手伝いますよ」

「まめねこの分もよろしくお願いしますよ!」

 

でも、今の俺には

信じ合える仲間がいる

それだけで、今は十分だ

 

こいつらにも、いつか話さなくちゃな

 

 

「……あれ?そういえばパタ姐は?」

「朝からパチンコ屋行ってるよ」

「…大丈夫か?あの人」

「…さぁ…まぁ、先生も着いてるから大丈夫でしょ」

 

休日、私は久々と言ってパチンコ屋に足を運んでいた

 

「よし!よし!流れ来てるぞぉ!」

「程々にしてくださいよ、レイン君」

「大丈夫!大丈夫!今日は勝てそうだから!」

「そうやってこの間も大負けしたじゃないですか」

「…あれは…たまたまだよ…」

「…はぁ…飲み物を取ってきます、何かリクエストは?」

「コーヒー!」

「分かりましたよ」

オリバー先生はニコッと笑って私の元を離れた

 

しかし、待てど暮らせど、オリバー先生は帰って来なかった

まぁ、数十分しか経っていないが、それしても遅い

迷子になったのかと心配になって席を離れる

ホオジロさんを椅子に置く

こうすればハイエナされる事はないだろう

まぁ、今日は客も少ないし

 

「……どこ行ったんだろう」

自販機や購買を見に行ったけど、そこにオリバー先生の姿は無かった

 

まさか、この間の私みたいに変な奴らに絡まれたんじゃ?

 

と思い、私は「ユートピア」の裏まで回ってみた

しかし、そこにも居ない

一体どこに行ったんだ…?

スマホを取り出して、オリバー先生の番号を開く

 

でも、そこで指が止まる

なんだか、今電話を掛けてはダメな気がする

私は感に従い、スマホをポーチにしまう

 

暫く探し、私はもう心配を抱く必要がないことを悟る

 

オリバー先生は店内にいた

少し遠くで死角で見えないが、誰かと話していたようだ

 

なんだ、知り合いといたのか…

私はホッとしながらオリバー先生に近付く

 

そして、私は目を見開いた

オリバー先生と話していたのは、白スーツの男だった

多分だけど、「ルシファー」の連中の見た目と特徴が一致している

 

私は物陰に隠れ、様子を伺った

オリバー先生は真剣な表情をしたり、たまに不敵に笑う

 

それが5分近く続いた

 

オリバー先生はふと気が付くと、男に手を振り

身体の方向を変えた

 

「……」

 

「…随分と遅くなってしまいましたね、レイン君」

「…あぁ…うん、大丈夫…」

「…どうかしましたか?」

「…いや…何でもない!」

私はオリバー先生からコーヒー缶を貰って栓を開けてグビっと飲む。ほんのり苦味がある

だけど、なんだかちゃんと味わえない

先生にお礼を言わなきゃいけないのに…

 

「……」

なんだこの緊張感は…!

先生の目が、さっきのとは違う

優しさの目じゃない

じゃあなんなの?

分からない

私には、今の先生が分からない

 

「…本当に大丈夫ですか?震えてますよ?」

「…あぁ…なんだか、最近の疲れがどっと来たみたいだなぁ…」

「…そうですか…それじゃあ、今日は帰りますか」

「……うん」

私達は店を後にする

ホオジロさんも忘れずに

 

「……」

オリバー先生はいつも通りに歩いている

私はオリバー先生の少し後ろを着いていく

 

結局、何も無いまま私達は拠点に帰った

 

「おかえり、パタ姐」

「あぁ…ローレン…ちょっと…」

「ローレン君、少しいいですか?」

「…え?…あぁ、分かったエバさん」

すると、ローレンはオリバー先生と別室に消えて行った

 

「……」

自然と、息が荒くなる

さっきのプレッシャー…

いや、恐怖に近い

私は先生に、恐怖を感じている

 

この感覚…前にもあった…

 

怖い

 

怖い怖い怖い怖い怖い

 

誰か…助け…

 

「どうしたの?パタさん」

「どうかしましたか?レインくん」

「…アクシアくん…ヴィンさん!」

「どうしたのパタさん!?」

「ほんとにどうしたんですか!?」

「…ぶわぁぁ!なんでもないよォォォ!」

「…えぇ…?」

 

言えない

こんな事、誰にも

 

オリバー先生…一体何を考えてるんだろう

とりあえず、経過観察といこう

 

 

「ネディさんはよ、何がしたいんだ?」

「…ん?」

野暮な質問だね

 

「…あんたはこの(ネディ)を解放して何がしたい?」

「……ん〜」

私の目的はこの街の解放

 

地下に住み続ける苦しみからの

窮屈なこの街からの

解放

 

それが私達の全て

 

「…この世界は不平等なんだよ。神は人間という野蛮な生物を生み出した。そして、その人間は自らのエゴによって、争いや貧富の差を生み出してきた」

「…そうだな」

「…でもさ、こんなのあんまりじゃない?陽の光さえ浴びられないなんてさ」

「……」

「…地上の連中は、その事を知る由もない」

「……」

「それが妬ましくて、同時に羨ましい」

「……え?」

「…地上の話をすれば、皆が口を揃えて言う。いいなぁって。それっておかしくないか!?なんでこの街の子供達よりも、地上の子供達の方が幸せに暮らしてるんだ!?大人達だってそうさ!」

「……」

「……私は常々思うよ、この世界の残酷さを」

「……だから、あんな計画を思いついたのか」

「…そうさ、全てはこの街の為」

私は立ち上がり

男に手を差し伸べた

 

「…さぁ、私達で見に行こう。この街の、夜明けを」

そして、この街の英雄となるんだ!

 

この、死んだ者の魂が蔓延る街のね…

 

To Be Continued...




次回

  File.9「夢、儚い(エデン)
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