EDEN ─ その5人は《楽園》を動かす。─   作:キャメル16世

9 / 29
EDEN(エデン)
そこは、夢が溢れる街…
この街は、俺がいるべきではない…



File.9「夢、儚い(エデン)

「…なるほど、それがアクシアくんの尊敬してる人ですか…」

「…うん、あの人がいなかったら、今のおれはここにいないよ」

「…ん?何の話してるんだ?」

おれとヴィン博士との話の中、パタさんが買い物から帰って来た

 

「アクシアくんの尊敬してる人についてね、話してたんですよ」

「へぇ〜!気になる!どんな人?」

「…えぇっとねぇ…」

すると、玄関の扉からローレンとエバ先生が勢い良く入って来た

 

「おい!また大変な事が起きてるぞ!」

「これはまた、厄介な事になりそうですよ」

「…一体、何があったんだ?」

「…「クリーチャー」よりも厄介なのですか?」

「……いいや」

ローレンは溜めて言った

 

「…死んだ筈の人間が、生き返ってるんだ!」

「……え?」

その時はまだ忘れていた

その日を、まるで悪魔のように、今も思い出す事を

 

 

1週間前

 

「それじゃあここで!新たなる計画を発表致します!」

 

「ルシファー」本部

ネディを含む5人が机を囲んでいた

 

ネディは手を大きく広げて場を盛り上げる

 

「前振りはいい、さっさとしてくれ」

「…んもぉ!せっかくこの冷めた空気を温めてあげようとしたのに!」

「余計なお世話だ」

白いスーツに丸メガネ

きっちりとした身なりは逆に目立つ

 

「…流石、『氷結の雪男(イエティ)』と呼ばれるだけあるよ。マディさん」

「私をその名で呼ぶな」

マディ・ガイローズ

「ルシファー」の幹部の1人であり、頭脳明晰の男

その冷たい態度と対応から、『氷結の雪男(イエティ)』と呼ばれている

 

「そんな男ほっといてさ、本題に入りましょう?」

「お!話が早いねぇ!流石!出来る女!」

「…ふふっ」

メルス・ラフガーベラ

「ルシファー」幹部の女、才色兼備なだけあり、多数の男に言い寄られるらしい

別名は『魅惑の人魚(セイレーン)

白いドレスに銀色の長い髪が特徴だ

 

「私は一刻も早くここからここから去りたいのです」

「あら、それは私も同感よ?貴方みたいな人がいたら、空気が重くってしょうがない。もっと優雅に行きましょう?」

「それが余計なお世話と言っているんだ。第一、私も貴方のような人がいるのは御免です」

「…あぁ?なんですって?」

早速喧嘩が始まった

この2人はいつもこうだ

顔を合わせればすぐに喧嘩を始める

 

「おいオメェら!いい加減にしやがれ!」

「…っ」

「…っ!」

「……ったく、やっと静かになったぜ…」

「……」

今怒鳴った男、バンデル・カイブドウ

同じく幹部

別名『脳筋の鉄人(ゴーレム)』と呼ばれる程の鍛え抜かれた肉体、図太い声

リンゴは余裕で握りつぶせる

常に上裸、白いズボンを履いている

 

「……んで?その新しい計画ってなんなんだ?」

「…んふふ〜それはですねぇ!」

ネディは急に真顔になる

 

「……ネディの街の住人を、何人か解放しようと思う」

「…それって、死者を甦らせるって事?」

「そうです、あくまで経過観察としてですが。何か変化があるんじゃないかと思いましてね」

「なるほどなぁ、つまり!死んだ妹にも会えるって訳だ!ガハッハッ!」

「貴方が1番うるさいですよ、バンデル」

「…あぁ!?」

「まぁまぁ!喧嘩はそれまでにしておいて、お前の意見を聞きたい」

すると、ネディは俺に視線を送って来た

 

「…ガル」

俺の名はガルーシュ・ハラゼラニウム

別名は『漆黒の神狼(フェンリル)

「ルシファー」の幹部であり、ネディの1番の理解者と言っても過言ではない

ネディは俺の事を「ガル」と呼び、慕っている

 

「……悪くないんじゃないか?」

「…ふっ…そうだな」

俺は、彼の1番の理解者だ

 

 

「死んだ筈の人間が生き返ってるって…まさかそんな…」

半信半疑のパタさん

 

「行けば分かる、皆着いてきてくれ」

おれ達はローレンの導かれるがままに街を歩いた

 

でも確かに、今日の街の空気は歪んでいた

 

「…あの人って!」

パタさんが再び口を開く

 

「…あぁ、この間ニュースでやってたよな。過労で亡くなった中年の社会人」

「……」

「…まさか…本当に…」

ニュースで出ていた写真の男

そして、おれ達の目の前にいる男の顔が、全くと言っていいほど一致していた

 

「…生き返ってる…?」

「話を聞きたいところだが、敵の罠かもしれねぇからな。無闇に近寄れん」

「……それにしても、自然ですねぇ〜」

「…えぇ、完全に溶け込んでます」

「…どうするんだ?ローレン」

「……う〜ん…」

腕組みをするローレン

 

おれはそれ所ではなかった

 

「……死んだ人が…蘇る…」

「…ん、どうしたんですか?アクシア君?」

「…あ、いや…何でもないよ…」

「……」

 

今の…

 

「……とりあえず、帰って事件を整理しよう。アクシア、戻るぞ」

「……」

「……アクシア?」

「…え?…あぁ!ごめん!」

「……」

 

拠点に戻ったおれ達は今回の事件のおさらいをしていた

 

「…やはり非科学的です!死んだ人間が蘇るなど!」

「でもでも!その目で見たでしょ!?」

「まぁまぁ追いついてレイン君」

「…不測の事態だ、今までにない出来事でパニックになるのも無理はない……やはり、本人に直接聞くしかないか…」

 

死んだ人間が蘇った

そういうニュースが幾つか浮上している

死んだ爺ちゃんが生き返った。持病でなくなった恋人が生き返った。終いにはペットの犬

 

巷では、神様の御加護だとか奇跡だとか言ってる

 

「…皆、失った者が元に戻ると、こうなるんだな」

「…普通に怖い事だよな」

「……ん〜…」

「…私は信じませんからねぇ〜!」

「……」

 

9月26日 14:25

 

「…そうか、突然」

「はい!丁度遺品の片付けをしようと朝起きたら、普通に朝ご飯作ってたんです!ね!おじいちゃん!」

「…あぁ…元気いっぱいじゃ!」

「……」

 

9月27 8:39

 

「…ふぅ〜ん、どうやって出てきたんだ?」

「…こう…ポンッ!というか…ズンッ!というか…とにかく、本当に突然でびっくりでした!ね!マイハニー!」

「…うん!マイダーリン!」

「……あは…あはは…」

 

9月28日 11:16

 

「…では、深くは語られなかったと」

「はい…突然現れて、普通に生活してるので、なんか…なんも言えなくて……正直、私も不安なんです。あの人が本物なのか…でも、話すと何ら変わらないあの人で…ホッとして…私って、変…ですかね?」

「…いいえ?ごく普通の事ですよ、僕もこんな事が現実に起これば、まず疑います」

 

9月29日 14:28

 

「いやぁ〜!まめねこに手は出さないでください〜!」

「ワン!ワン!」

「大丈夫ですよ、この子そう簡単に噛みはしませんから…人間以外」

「いやぁぁぁぁあ!」

 

10月1日 12:30

 

「…久しぶりね、アクシア君」

「…おばさん、お久しぶりです」

「…それにしても、大きくなったわねぇ…」

「ありがとうございます。おれ、パイロットですから…」

「…そぉう…それはさぞかし、あの子も喜ぶわ」

「……はい」

ガチャッと、玄関の扉が開く音がした

 

「……あら、おかえり?早かったのねぇ」

「あぁ、ちょっとコンビニ言ってただけだからなぁ」

「……」

おれは立ち上がり、男の目を見た

 

「…お、お前…アクシアか…?」

「……久しぶりっ……ガンバーさん…」

おれの目からは涙が溢れる

 

ガンバー・スカイビット

おれの恩師であり、おれがパイロットを目指すきっかけになった人だ

 

つまりこの人は……

 

「…おう!大きくなったな!」

 

既に死んでいる

 

 

「…色々と散策したが、皆曖昧な表現しかしないな」

「…今回のハプニングによるパニックと、喜びが混じっているのでしょうね」

「…喜び?」

エバさんが不可解な事を言った

 

「…誰だって、想い人が生き返れば喜びますよ」

「……そういうもんか…?」

俺には分からなかった

 

「…今回の事例は、老若男女問わず、更には犬等の動物まで…」

「……この街で確認出来る事例は僕達が調べた5件、どれも実害がある訳じゃなく、本当に生き返ってるだけ…」

「…ますます怪しいですねぇ〜…何故こんな前触れもなく…」

「……」

「……あれ?そういえばアクシアくんは?」

「…あいつはまだ報告があった家にいるみたいだ」

「…何かあるんですか?その家に」

「…いや、その家の人…昔アクシアがお世話になった家なんだ」

「……え?」

「…それってつまり…」

「…身内ではないが…アクシアの恩師とも言える人が、生き返ったらしい」

「……それは…」

「…俺にも詳しいことは分からない…でも…」

俺は少し溜めて言葉を発した

 

「……あいつが私情で単独行動をするぐらい、特別な事なんだ…きっと」

「……だったら私達は…」

「…えぇ、彼を待つ他ありませんね」

「仕方ないですねぇ〜」

「……」

……アクシア…

本当にいいんだな…これで…

 

 

「……美味い!」

「……」

「……美味い!」

「……」

「……美味いっ!!」

「…あのっ!もう少し声量を落とせますか!?」

「…あぁ!すまないっ!」

「……ふふ」

「……なんだ?」

「……いや…変わらないなと思って…」

「……アクシア…」

「教えてください…どうして貴方は、この世にいるんですか?」

「……」

ガンバーさんはこの3時間、一向に本題に入らせてくれなかった

キャッチボールをしようだの、ラーメンを食いに行こうだの…話を逸らされ続けた

ちなみに今はラーメンを食べている

 

「……それは…言えない」

「……だったら、なんであの時…」

おれ達が最初に事件の調査をした時

たまたま通りかかったガンバーさんは、俺を見た途端に…

 

「…おれから逃げたんですか?」

「……それは…」

「……」

本当なら、こんな悲しそうな顔をさせたくなかった

ガンバーさんはおれの命の恩人だ

この人がいなかったら、今頃俺は…

 

「…少し、話をしよう」

ガンバーさんは席を立ち、会計を済ませて店の外に出た

 

「……お前は、悔いてるのではないか?」

「…え?」

「……パイロットになったと、母さんから聞いた…本当に、おめでとう」

「……」

「…でもそれは、俺との約束を守る為なんだろ?」

「……」

「…母さんから聞いたろ。俺が、今までどんな行いをしてきたのか…」

「……それは…」

「…俺には、お前に見せる顔がなかった……俺はお前を裏切ったんだ…お前の思いに…」

「……」

「……すまん…アクシア……どうか俺を、忘れてくれ…」

ガンバーさんはおれに頭を下げた

 

「…それは出来ません」

「…どうして!?」

「…おれは!…貴方に助けられました。貴方があの日、おれを火事から救ってくれなかったら、おれは今頃死んでた…」

「……」

「…程なくして、難病を患ってしまった貴方は、おれと約束した……パイロットになって、必ず貴方を迎えに行くと」

「……」

「……貴方が死んで、おれはエデン大学に入った。パイロットになる為に…そして、おれは機動歩兵部隊に入り、パイロットになる事が出来た」

「……」

「…そして程なくして、貴方の母親から連絡があった…貴方はかつて、マフィア軍団『エヴァ』の一員であった事を…」

「……」

「…絶望しましたよ、貴方がそんな人でなしだったなんて…」

「……すまん…」

暫く沈黙が続いた

 

「……でも、おれは楽しかった…決して長くはなかったけど、貴方と過ごした時間は、おれにとってかけがえのないものとなった」

「……アクシア…」

「…貴方のおかげで、俺は生きる事が出来た。貴方のおかげで、笑顔でいる事が出来た。貴方のおかげで…夢を持つ事が出来た!」

「……夢…」

「……ありがとうっ…ガンバーさんっ……っ…」

また、おれの目から涙が溢れた

 

「…貴方のおかげでっ…おれの人生は輝く事が出来たっ…真っ暗だったおれの道を…貴方が照らしてくれたっ…だからおれは!…パイロットになった事を…貴方の背中を追いかけた事を…後悔などしません!」

「……アクシアッ…」

「…おれはぁ!死んでも!死んだ後も!貴方を迎えに行くと!誓います!」

「……ありがとう……ありがとうっ…!」

ガンバーさんも涙を流す

 

おれの夢は、儚いものかもしれない…でも、この人がおれに託してくれたんだ。生きる事を…

そして、ガンバーさんの夢を…

 

 

だが、ガンバーさんの2度目の死は

そう遠くない未来だった

 

To Be Continued...




次回

   File.10「善、怒る(エデン)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。