Xenoblade2 君とともに歩む未来   作:のりたろう

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キズナトーク:どっち?

 スペルビア本国からグーラへの船内で―――

 捜査資料を読んでいたレックスに、隣に座るメレフが言った。

 

「そう言えば、彼女たちとはどこまでいったんだ?」

 

 唐突な質問に、レックスは目を丸くして一瞬固まる。

 

「え? 急にどうしたの?」

 

 戸惑う青年に、彼女は、

 

「いやなに、君もそろそろ身を固める時期ではないか、とね」

「身を固めるって、俺まだ十八だよ?」

「もう十八だと思うがな。世間的には君はもう大人だ」

「……うーん、まあそうだけど。っていうか、メレフからそういった話されるなんてね」

 

 意外だった。

 この手の話はカグツチ辺りから切り出されるものだとばかり思っていた。

 メレフはそれを聞くと、「むう」と眉を寄せた。

 そんな彼女にクスクスとカグツチが笑う。

 

「最近はネフェル皇帝陛下に、世継ぎをって様々な女性とお見合いをしているからね。それで年の近いレックスのことも気になるのよ」

 

とカグツチが言う。

 なるほど。

 陛下第一の彼女らしい。

 ネフェルとメレフは謂わば姉弟関係にある。弟がそういった状況なら、気にもなるか。

 

「どこまでって、別にこれといって進展はないよ」

 

 期待しているようで、残念だが。

 彼の返答に、彼女たちは驚いた表情をする。

 

「一緒に暮らしているのだろう?」

「まあ、色々忙しかったし、俺もヒカリも依頼で家にいないことも多いからね」

 

 新大陸を得て三年。

 天の聖杯のドライバーであるレックスの名が知れ渡り、フレースヴェルグ傭兵団には毎日山のような依頼が世界各地から舞い込む。嬉しい限りではあるが、ほとんど仕事に出突っ張りである。

 

「だが、聞くところによると方々の女性と逢い引きをしているとか。その辺はどうなのだ?」

「へ!?」

 

 メレフがいきなりそんなことを言い、レックスは身を固くする。そして、慌てて斜め前に座るヒカリを見た。彼女は隣に座るニアとともにうたた寝をしている。それに安堵する。

 

「どうって、別に……依頼が来たからやってるってだけで……」

「まあ、君も有名だからな。その名に乗っかりたいと思う者も多いだろう。その様子だと、特に気になる女性はいなかったようだな」

 

 彼女は慌てるレックスを見て、クスリと笑う。

 それにレックスは唇を尖らせる。

 三年前から各国の有力者の娘との所謂お見合いみたいな形で、デートに行くという依頼をやっていた。インヴィディアの女王には英雄として身を固めろと言われてしまうし。天の聖杯のドライバー、世界を揺るがす秘密結社イーラやマルベーニの悪事を挫いたとして、彼に近づこうとする女性は多い。

 普通に話しかけられて、「付き合って欲しい」と言われたときは断るようにしているが、依頼ならばそうはいかない。傭兵団の名を落とすようなことはしたくない。だから、ヒカリやホムラには内緒で依頼を受けていた。

 まさか、メレフに知られているとは……。

 

「そろそろいいんじゃないか?」

「何が?」

「この三年、君たちの働きはよく知っている。そろそろ君自身のことを考えてもいいと私は思うがな」

「………」

「それに、彼女たちの気持ちも分かっているんだろう」

 

 彼女の優しい諭しに、レックスは苦笑する。

 知っている。

 彼女たちが彼をどう思っているのか。

 彼自身、彼女たちをどう思っているのか。

 三年前なら、彼女たちは二人で一人だった。だから、どっちがどっちということもなかったけど。

 本命がどちらか、と問われれば答は既に持っている。

 でも―――

 

「どちらかを選べば、どちらかがいなくなってしまう、って思っているのかしら?」

 

 カグツチが言った。

 それに彼は困ったように笑って、頬をかいた。

 

「あはは、参ったな。なんだか、見透かされてるみたいだ。それって、女の勘ってやつ?」

「ふっ―――君は分かりやすいからな」

「ええ、メレフ様の言うとおりです」

 

 彼女たちはクスクスと笑う。

 

「あなたがどちらを選んだにしても、彼女たちがあなたから離れるとは私には思えないわ。あなたが思っているほど弱い子たちじゃないでしょう、あの子たちは」

「それは―――そうかもしれないけどさ……」

 

 いつも彼女たちに守られて、支えられて。

 守られるだけのか弱いだけの女の子じゃない。それは知っている。

 だが、彼が懸念しているのは―――

 

「確かに、どっちを選んでもヒカリはいなくなったりしないと俺も思う。でも―――」

「ホムラ、か?」

「うん」

「それこそ、あり得ないと私は思うがな」

 

 メレフの言葉に、レックスは首を横に振る。

 

「ここ最近、ホムラの様子がおかしいんだよね。どこか遠くを見ているっていうか、寂しそうな顔をしているっていうか……」

「それは、あなたたちが家を空けているからじゃないの?」

「うーん、それだけならいいんだけどさ……それだけじゃないような気がするんだ」

 

 例えば、夕食を三人で取った時、ヒカリに洗濯の仕方を教えているとき、村の子どもたちと遊んでいるとき―――ふとした瞬間に彼女は寂しそうな顔で微笑んでその光景を見ているのだ。それが見間違いならいいけど。

 

「何か、悩んでいるなら聞いてあげればいい」

 

 メレフが言った。

 レックスは素直に頷く。

 それに、とメレフが続けた。

 

「君の口ぶりでは既に本命が決まっているみたいだ。手を拱いているなんて、レックス、君らしくない」

「あはは、俺だって初めてのことなんだ。ビビりもするさ」

「なら、なおのこと当たって砕けるくらいの勢いがあっても良いと思うが?」

「砕けるのは、ちょっと……」

 

 恐らく、しばらくは立ち直れないだろう。

 ホムラをメツ達に連れ去られたとき以上に、落ち込むに違いない。

 

 帰ったら、三人で話し合おう。

 これから先のこと、これから二人とどうなりたいのか。二人はどうしたいのか。

 彼女の言うとおり、足踏みしているなんてらしくない。

 そろそろ前に進むべきだ。

 俺たち、三人で――――

 

「でも、意外だったわ」

 

 カグツチが言った。

 

「何が?」

「あなたたちのことだから、一緒の家に住んで毎日イチャイチャしているのかと……」

「イチャイチャって……」

「私たちとの旅でも、結構イチャイチャしてたから」

「ええ!? そ、そんなことしてないと、思うけど……」

 

 レックスが慌てて頭を振ると、彼女はメレフを見る。

 

「だ、そうです。メレフ様はどう思ういます?」

「……困ったものだな。あれで、違うと言われるとはな」

 

 メレフは呆れたように首を振った――――

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