Xenoblade2 君とともに歩む未来   作:のりたろう

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2-3 もう一人の私

 日が落ちてから、アヴァリティアから戻ってきたレックスは、ヒカリたちが泊まっているという部屋にやってきた。部屋の内装を見て彼は、

 

「凄いな……」

 

と感嘆の声を出した。

 それに一人掛けのソファに座っていたニアが、

 

「やっぱり、そう思うだろ」

 

と賛同の声を上げる。

 ヒカリは三人掛けのソファの端に座り、膝の上にあるホムラの頭を撫でていた。ホムラはヒカリの膝の上に頭を乗っけて、丸まって寝ていた。分厚い本を大事そうに抱きしめている。

 その愛らしい寝顔に、レックスは近づいて覗きこむ。

 

「寝てるの?」

 

と彼は赤髪に触れようと手を伸ばした。

 それにヒカリが言う。

 

「今起こしたら、君を見て泣くんじゃない?」

 

 その言葉に、レックスの手がギクリと固まる。

 記憶を失った彼女に初めて会った時、レックスを見た少女は泣き喚いてしまったのだ。それを思い出して、彼は手を引っ込めた。

 ある種、トラウマに近い。

 あそこまで拒絶されるなんて。

 しかも、好きな人に。

 

 苦笑いしながら、レックスはその場にしゃがみ、少女の寝顔を眺めるだけにした。

 いいなあ、とレックスは呟いた。

 

「何が?」

 

 ヒカリが反応した。それに彼は、ホムラから視線を外すことなく答える。

 

「ホムラに懐かれてて」

「す、素直だな……」

 

 ニアが驚いたように言った。そんな彼女を一瞥して彼は言う。

 

「ニアだって、ホムラに避けられてたら嫌だろう?」

「そりゃあまあ、そうだけどさ」

 

 彼女の肯定に、レックスはホムラを見た。

 いつもの赤いブレイドとしての正装ではなく、白いブラウスに紺色のショートパンツを身につけていた。いつもよりもずっと露出が少なく、身体のラインも幾分ぼかされている。この服を用意したのは、どうやらカグツチらしい。目のやり場に困らないのは、いいことではある。

 腕や足の包帯はすでになくなっていたが、右目を覆う包帯はまだ残っていた。

 それに彼は首を傾げる。

 

「右目はまだ治ってないの?」

「ええ、まあ……お腹の方もまだよ」

「ニアの力で治さないのか?」

「ニアのことまだ避けてるのよ。近づこうとすると、逃げるし」

 

 そっか、と彼はホムラを見た。

 ヒカリに撫でられると、どこか嬉しそうに顔を綻ばせる。

 それは記憶を失っても変わっていない。ホムラはヒカリに褒められたり、優しくされるとこの顔をするから。

 彼は微笑むと、

 

「外には?」

「まだ、無理かも」

 

 ヒカリが頭を振った。

 それにレックスは、ヒカリを見上げて、

 

「全く、全然?」

 

と首を傾げる。

 

「人目を気にしてるのかも。相手が顔を隠してたら、少しは大丈夫みたいだけど」

 

 現に顔を兜で隠しているスペルビア兵士には、そこまで怯えていなかった。

 それを聞いて、レックスは顎に手をやって思案する。

 人目が気になるのかあ……。

 だからといって、このまま全く外に出ないというのも良くないだろう。

 うーん、と唸る。

 そしてレックスは何かを思い付いたのか「あっ」と小さく声を上げた。立ち上がって、手に持っていた分厚い封筒をニアに渡した。

 

「ニア、これをメレフに届けてくれる?」

「いいけど……どこか行くのか?」

「うん、まあね。トラがどこにいるか知ってる?」

「トラなら、ハナのメンテと改造とかで家にいるはずだよ」

 

 トラは、もしも戦闘になってもいいようにハナのメンテナンスや、得意の改造をするためにここ数日家に引きこもっている。

 ニアにそのことを聞くと、レックスは頷いた。

 

「そっか、トラの家に行ってくる。すぐ帰ってくるからさ」

 

 彼はそう言い残してさっさと部屋を飛び出していった。

 そんなレックスに、ヒカリが呟く。

 

「一体なんなのかしら?」

「さあ」

 

 ニアは首を傾げた。

 程なくして、レックスは包みを持って帰ってきた。

 どこか得意気に包みから何かを取り出すと、それをヒカリの前に掲げる。

 

「これなら人目も気にならないんじゃないか?」

 

 そう言って彼が持ってきたのは、いつだったかグーラでホムラが一度だけ着た耳付きポンチョだった。褐色の布地に、グーラ人のような猫耳がついたフードが特徴のポンチョである。

 ヒカリはそれを見て懐かしむように言った。

 

「前に一度、着たわよね。それ」

「そうなのか?」

 

 ニアが不思議そうに聞いた。

 そしてニヤニヤしながらレックスを見て、

 

「なんだ、レックスの趣味とか?」

「違うって、ていうかこれトラのものだし……ほら前に、ニアがグーラ軍に捕まったことあっただろ? その時に街で情報取集するのに借りたんだよ」

 

 レックスは慌てて否定して、経緯を話した。

 ホムラがこれを着たと知っているのは、ホムラと記憶を共有していたヒカリとトラ、そして彼の育て親であるセイリュウ、レックスだけだ。

 そもそも、これを着るのを提案したのはトラである。街中ではホムラの翠玉色のエーテルラインは目立つから、とそれを隠すものが必要だった。奇しくも、トラの趣味が有効活用された一例である。

 

「とにかく、これ着れば少しくらいは、人目気にならなくなると思うんだけど……」

 

 どう? と、ヒカリに聞いた。

 彼女は片眉を上げて、それを受け取った。

 

「まあ、悪くないんじゃない。そろそろ、人に慣れてもらわないと私も困るし」

 

 人が来るたびにヒカリの背中に隠れては、彼女も動きにくい。しかも、一人になるのが嫌なのか、ヒカリから離れようとしないのだ。これではホムラのコアクリスタルを奪った犯人の所在が分かったところで、ヒカリが動くことができない。

 彼女を戦いの場に連れて行くのは、あまりにも危険だ。

 ホムラは自分の身を守る術がない。

 戦いの場に連れて行くにしても、少し離れてもらわなければ戦えない。

 それには人に慣れること、一人に慣れることは急務であった。

 

 ヒカリは受け取ったポンチョを暫し眺めてから、それを広げて未だに眠っているホムラの身体に掛けた。風邪は引かないだろうが、一応念の為に。

 

「でも、ホムラに甘えてもらって、正直嬉しいいんだろ?」

 

 とニアが言った。

 それにヒカリは顔を真っ赤にして、

 

「そ、そんなわけないじゃない」

 

慌てて否定する。

 その様子は説得力が皆無で、ニアはそんなヒカリを見て笑う。

 

「レックスもそう思うだろ?」

 

 と同意を求められた彼は、ヒカリに真っ赤な顔で睨みつけられながら言った。

 

「ん? いつもホムラはヒカリには甘えてると思うけど?」

「え?」

「えっ?」

「ん? 何でヒカリまで驚くんだ?」

 

 ヒカリの反応にレックスは首を傾げた。

 彼に言葉に、ヒカリは困惑する。

 

「そうだったっけ?」

「うん、気づいてなかった?」

「ええ……?」

 

 レックスに言われて、この三年間のことを振り返ってみる。

 確かに彼の言う通り、分離したての頃はお互い嬉しくて常に一緒にいた。食事だったり、買い物だったり……。

 イヤサキ村にレックスと共に居を構えたばかりの頃、三人それぞれの部屋を決めて家具を運んだりした。台所に近い方からホムラ、レックス、ヒカリの順になるように。その家に住み始めて一週間くらいは、ホムラが寂しいと言うからヒカリの部屋で一緒に寝たりもした。

 

 けれど、それ以降は何もない。当初、家事は当番制にしていた。ホムラは家事を卒なくこなし、ヒカリがやると上手くいかなくて結局ホムラがやった。家の事を何一つ上手くこなせないことに落ち込んでいると、ホムラが言った。

 

「人には得て不得手があります。家の事は私に任せて。ヒカリちゃんは、ヒカリちゃんに出来ることをやればいいよ。せっかく、いいところがいっぱいあるんだから」

 

 それを言う彼女はとても柔らかく微笑んでいた。

 だから、ヒカリは傭兵団の仕事に注力した。自分にできること、誰かの助けになることをと思って。

 それからは、家に帰ればホムラが暖かい夕食を作って待ってくれていた。

 手を洗わずに食べようとすると叱られ、摘み食いをしようとして叱られ、部屋を汚しては叱られ、髪をろくに拭かずにリビングに戻れば叱られ……。

 

 あれ? 私叱られてばかりじゃない?

 

 けれども、思い返してみても最初の頃以外、ホムラが甘えてきた記憶がない。果たして、レックスはどの事を言っているのだろう。

 怪訝な顔をして、彼を見上げた。

 

「全然、思い出せないんだけど……本当にそんなことあった?」

「うん、あったよ」

 

 しかし、彼は微笑みながらそれだけ言うと、それ以上何も言わなかった。

 

 

   ◆

 

 

 次の日、ホムラは記憶を失って初めてトリゴの街に出た。

 物珍しさ半分、人の多さに怯える半分でヒカリの背後に隠れながら周囲をキョロキョロと見ていた。そんな彼女の背後にビャッコとニアが着いていく。

 一応、ヒカリが買い与えた本によって、この世界の基礎知識を叩き込んである。とは言っても、文字の読み方すら分からなかったから、ヒカリが全て読み聞かせるという事態になったけれど。それでも、ホムラの物覚えが言いお陰で、あまり苦労はしなかった。全てを読み終えた訳ではないが、普通に会話する程度なら問題はない。

 

 農場を抜け、橋を渡り、商店街へ向かう。

 一層増えた人通りに、ホムラはヒカリの手を握る力を強めた。

 耳付きポンチョを身につけている所為か、街の人たちはホムラに気が付かない。ヒカリには気が付く。

 怯えた様子の少女に、前の印象と違うからかもしれない。

 まあ、ヒカリにとっては好都合だった。

 一々、説明するのも面倒だし、記憶喪失だなんて言われたら大騒ぎになる。

 

「てか、ここでは私よりもホムラの方が人気あるなんて、納得いかないわ」

 

 例え同じ存在だとしても、人目を引くのはなんだか許せない。

 せめて同じくらい人気があるならまだしも、圧倒的にホムラの方が好まれているのは納得がいかなかった。

 ヒカリの物言いに、ニアが肩を竦ませる。

 

「仕方ないんじゃない? ホムラの方が仕事でこっち来ること多いしね」

 

 しかも、仕事の内容から老人や子どもにかなり人気がある。露出が多く男の目を惹く格好に対して、ホムラの物腰は非常に柔らかく丁寧だ。仕事柄、家政婦然としたことが多いため、彼女の家庭的な部分は周知の事実となっている。母親や嫁にするならホムラのような女性がいいと、専らの評判だった。

 ニアの言い分が分からないわけじゃない。

 けれど腑に落ちない。

 

「仕事なら私だって……」

「草原を灰にしたのに?」

「うっ……あ、あれは偶々よ」

 

 ニアの指摘にぐうの音も出ない。

 ヒカリは唇を尖らせてそっぽを向いた。

 すると、

 

「ホ、ホムラ様!」

 

急にビャッコが声を上げた。

 その方をヒカリたちが見ると、ホムラがヒカリを離れてしゃがみ込み目の前のノポンを触っていた。

 

「もも!? なんだも!?」

 

 当然のことながら、触られたノポンは戸惑っている。

 ヒカリは慌てて彼女の手を止めると、ノポンに謝った。ニアとビャッコも合わせて謝ると、ヒカリはホムラの両手を取って向き直る。

 

「ホムラ、突然知らない人を触っちゃダメよ。分かった?」

 

 ヒカリに言われて、ホムラは目を瞬かせ頷いた。分かってるのか分かってないのか、分からない顔をしている。それにヒカリは不安になる。

 人には怯えるくせに、ノポンやビャッコのような毛深い生物は興味津々に触ろうとする。

 困ったものだ。

 ヒカリは頭を抱える。

 そんな彼女にニアが、

 

「大変だな、ヒカリは」

「他人事だと思って……」

「だってアタシが近づこうとしても避けられるし……」

 

 彼女がホムラに近寄ろうとすると、途端に怯えたようにヒカリの背後に隠れる。そして伺うような視線を向けるだけ。

 ほらな、とニアはヒカリを見る。

 ヒカリは肩を竦ませ、盛大にため息をついた。

 

 暫く彼女たちは街を散策した。商店街に行って、色々な商品を見て回った。ホムラはどんな物にも目を輝かせて見ていた。気になるものがあればヒカリの方をちょんちょんと突いて聞いてくる。彼女でも答えられないものはビャッコが答えた途中からビャッコしか答えられなくなって、ヒカリたちは彼にホムラを任せて昼食を買いに行った。

 ホムラを連れて噴水広場で昼食をとった。広場のベンチに腰をかけて、サンドイッチを齧る。中の鶏肉とレタス、甘酸っぱいソースが口の中に広がる。ヒカリはその美味しさに、気分が上がった。隣で黙々と食べ進めるホムラを見ると、口の周りにソースをつけながら嬉しそうに食べていた。

 そんな彼女に微笑みながら、

 

「ホムラ、口……」

「ん……」

 

ヒカリはハンカチを取り出して口を拭いてやる。

 

「美味しい?」

 

とヒカリが聞くと、彼女は目一杯笑みを浮かべて頷く。

 それにヒカリの口角も上がる。そして、サンドイッチを食べる。

 仲睦まじい聖杯少女二人に、ニアが感心したように言った。

 

「ほんと、仲良し姉妹って感じ? いつもと逆だからなんだか新鮮だな」

「いつもと逆って……どう言う意味よ」

 

 半眼でニアを見た。

 ヒカリが頬に食べカスをつけてはホムラがそれを取ったりしていた。でもそれはたまにあるくらいで、いつもではない。

 ヒカリの言葉に、ニアは「別に〜」とサンドイッチを食べ始めて答えなかった。

 彼女は腑に落ちない反応に、眉を寄せた。

 

 いつもと逆、という彼女の言葉にヒカリは喉に何かが引っかかるのを感じた。

 いつもはホムラがしっかりしていて、私が何かをやらかしては叱ったり、方々に謝ったりしている。けど、先日サタヒコに言われたとおり、ホムラは生まれたばかりだ。それは確かにそうなのだろう。なまじ五百年も一緒にいたから分からなかったけど、彼女が一人で歩き始めたのはつい三年前のことだ。

 そんなホムラに何かしてやれていたのだろうか。

 いつも迷惑ばかり掛けて、面倒ごとを押しつけて。

 それでも、彼女は文句の一つも言わない。

 しっかり者で、几帳面で、優しく、ヒカリの傷も涙も受け止めてくれる―――そういう風にヒカリが作った。いつも一緒にいて、自分の一部だからなんでも分かって、なんでも共有できて、でも今はそうじゃない。

 レックスは言っていた。

 

 ―――いつもホムラはヒカリには甘えてると思うけど?

 

 その言葉が全然理解できなかった。

 ホムラが甘えてきたことなんて、覚えてすらいなかった。いや、認識できていないだけかもしれない。

 

 どちらにせよ、私は何も見えていない。

 私は、私のことしか見ていない。

 もう一人の私(ホムラ)のことは、何も見えていなかった。

 分かったつもりでいたけど、何も分かっていない。

 レックスやサタヒコの方がよっぽどホムラを見ている。

 

 ヒカリは隣で黙々と食事を続けるホムラを見る。

 彼女が今何を考えているのか、全く分からないけど。少なくとも、今の彼女は感じていることが行動に出るから、分かりやすい。怯えているのか、興味を持っているのか、傍にいて欲しいのか……とか。言葉は少ないけど、それでも分かりやすいのだ。

 普段のホムラは分かりやすそうでいて、一番何を考えているのか分からない、そう思うときがある。

 最近のホムラは特にそうだった。

 何か言いたげで、でも何も言わずに飲み込んで、微笑んでいる。

 

 肝心なことを何も言わずに黙っている、それはある種ヒカリとホムラの悪癖だった。

 それが災いして、楽園への旅路で皆に迷惑を掛けた。

 だから、その旅が終わった今ヒカリはなるべく誰かに話すようにした。

 人によっては我が儘に聞こえるかもしれないが、それがヒカリなりの変わり方でもあった。それが分かっていたからレックスもホムラも、彼女の物言いを受け入れていた。

 不器用な彼女なりに、前に進もうとしたのだ。

 レックスも変わって、ヒカリも変わって。

 ホムラはどうだっただろうか。

 

 

 

   ◆

 

 

 レックスはメレフと共にグーラ軍基地にある会議室で、各地域で確認された被害状況を確認していた。

 昨日になってインヴィディアで被害があったという報告を受けて、レックスは顔を顰める。

 相手の動きが全く掴めていないどころか、新たな被害者まで出してしまった。敵の顔も手口も、動機が分からない。

 ホムラが顔を見ているかもしれない、と分かっていたところで相手の居場所がわからないのでは意味がない。

 スペルビア、グーラ、そしてインヴィディア。

 三つの地域で被害が連続して起きている。

 レックスはメレフに聞いた。

 

「他に被害は?」

「いいや、他にはないな。悔しいが、我々は相手が動いてくれなければ、判断のしようがない」

 

 下唇を噛む彼女に、レックスも同意見だった。

 壁に貼られた地図を見て、相手の動向を探ってみるが中々どうして見つからない。

 唸る両者の間に、静寂が満ちる。

 その静寂を破ったのは、少女の声だった。

 

「レックス!! ヤバイよ! ホムラがどこにもいないんだ!」

 

 部屋に飛び込んできたのはニアだった。

 彼らは弾かれたように振り向き、彼女を見た。ニアは慌てて走ってきたのか、肩で息をして膝に手をついている。

 

「どういうことだ? ヒカリと二人で見てたんじゃ……?」

 

 遅れてビャッコがやってきた。

 彼の問いに、ニアたちは経緯をかいつまんで説明した。

 昼食後、ヒカリとニアは商店街を散策し、ついでにトラの家に向かうも彼らの部屋はジャンク品で足の踏み場もなかった。ハナの改造に熱中しているトラとサタヒコは手が離せない状況だったため彼女らは街に戻った。

 すると、ニアとヒカリに声が掛かった。

 何でもモンスターに同僚が襲われているから助けてほしい、と。

 しかし、ホムラを連れて行くわけにはいかない。かといって、トラたちに預けられない。果たしてホムラはビャッコと共にお留守番となった。

 人目を気にしているホムラはヒカリから離れようとしなかった。仕方なく、ホムラを農場近くの原っぱに居させた。ヒカリが「ここに居て、絶対に動かないで」という言葉に従って頷いた。

 ビャッコが恭しく頭を上げて言った。

 

「面目仕様がありません。私がついていながら……」

「ビャッコのせいじゃないよ。怪我はもう大丈夫?」

「それは、はい……」

 

 落ち込んだように頷くビャッコに、レックスが聞いた。

 

「何があったんだ?」

「ドライバー数人に襲われました。恐らく、人攫いでしょう。他にも子どもが何人か捕まっていましたし」

 

 ビャッコ曰く、ホムラはヒカリの言いつけ通りその場にいた。地面に膝を抱えて座ってぼうっとしていた。

 そんな時だった、子どもの嫌がる声にホムラが反応した。しかし、ヒカリに動くなと言われた手前彼女はちゃんと動かずにいた。ビャッコもそれを聞いていたが、ホムラを一人にするわけにはいかない。だから動けなかった。

 

 人攫いのうちの一人がホムラに目を付けた。

 その後は嫌がるホムラを無理やりに、彼らに噛み付くビャッコを殴り付けた。流石に、ビャッコがブレイドとはいえドライバーと離れた状況で、ドライバー数人と相手にはできない。

 果たして彼は人攫いに痛めつけられ動けなくなり、ホムラは腹を殴られて気を失った。

 それから暫くして、なんとか動けるようになった彼の元にヒカリたちが帰ってきたのだった。

 話を聞いた彼女たちは、急いで街中を走り回ってホムラを探したが見つからなかった。ニアはとりあえずレックスたちに伝えるべく、慌ててやってきた次第である。

 

「ヒカリは?」

 

 レックスが聞いた。

 それにニアが答える。

 

「まだ、探してる。色んな人に聞いてると思う」

「分かった。俺がなんとかする」

「なんとかって……おい!」

 

 彼はそれだけ言うと、部屋を飛び出していった。

 取り残されたニアとメレフは顔を見合った。

 するとメレフが申し訳なさそうな顔をしてニアに頭を下げた。

 

「すまない、我々がしっかりしていれば、人攫いなどと……」

「いいって、それを言うならアタシたちだってホムラから目を離したんだ」

「ニア、君はヒカリと合流しろ。私も軍を動かして助力する」

「ヒカリとって……レックスはヒカリと合流してるんじゃ……」

 

 ニアの疑問にメレフは彼が去っていった部屋の入り口を見た。

 

「いや、あの少年は真っ直ぐホムラの元へ走って行ったはずだ」

「はあ⁉︎ 武器も持たずに?」

「武器なら持っていたがな」

 

 武器は武器だが、普通の剣だ。彼の手製の剣。

 ドライバー相手では心許ないことこの上ない。

 

「一先ず、ヒカリと合流し、レックスの後を追うんだ」

「ああ、分かった!」

 

 彼女は元気よく頷くとビャッコを連れて走って行った。

 




 ホムラを襲った相手(犯人)についてのキャラ設定ができあがりつつあるので、追々少しずつ書けたらな、と思ってます。
 オリキャラがでると書いておきながら、ここまで目立ったオリキャラが出てきてません。恐らく、三、四話以降になるかと思います。
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