西住家のOUTSIDER〜〜愛を知らない少年の物語   作:ボノぼん

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どうもボノぼんです。長い間休んでいて申し訳ございません。
それでは3,2,1 どうぞ。


誕生

「はっ!くぅ・・・・・・」

 

次の瞬間、俺が目覚めた場所は家ではなく病院のベッドの上だった。

 

「き・・・菊代さんは・・・?」

 

確か菊代さんも一緒にいたはず・・・。一体何処へ行ったんだろう。

そう思ってベッドから降りようとした時だった。

 

「あ!!目覚めたね!?」

 

振り返ると、そこには聴診器を首から掛けていた1人の医者が立っていた。

医者は、俺にゆっくりと近づいてくる。

 

「・・・・・・!」

 

医者が近づいてきた瞬間、何故か体が急に身構えてしまった。しかし、医者は、

 

「よしよし・・・・・・よく寝ていたね。それにしても、髪の毛は・・・」

 

頭を撫でながら俺を見て微笑んでくれた。何か菊代さんみたいだな。

 

「先生ちょっと・・・!」

 

扉の所に看護師がぽつんと1人立っていた。

 

「はいはい今行きますよ。じゃあね患者さん」

 

そう言うと、医者は看護師と一緒に何処かへ行ってしまった。

再び1人になった俺は何もする事もなく、

 

「寝るか・・・・・・」

 

再び寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方こちらは診察室。私は彰坊ちゃんの容体を聞こうと病院に行った。先日坊ちゃんが過呼吸を

起こして白目をむいていたのでどうしても気になったからだ。そう思っていた時、

電話が少しブルブルと震えた。急いで駆け寄り受話器を取った。

 

「もしもし・・・」

『あ!西住彰くんのお家ですか?』

「え・・・?」

『あ!!すみません・・・こちらは九州総合病院の者で・・・』

「あぁ九州総合病院の・・・」

 

電話先の相手は、坊ちゃんが搬送された九州最大規模の九州総合病院の医師。

声からして若い医師のようだ。

 

『すいませんね・・・今から少し病院お越しいただきませんでしょうか?』

「今からですか・・・・・・?」

『えぇ。今すぐにですねー』

「そうですか・・・では今から参ります」

『そうですか!ありがとうございます!!では!」

「あ・・・あの・・・・・・!」

 

ガチャン!!

 

「切れちゃった・・・・・・」

 

なんとも強引な電話に少しびっくりするも、坊ちゃんの容体が聴けるのならと思い

私は下駄を履いて病院に向かうことにした・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーー着いた・・・・・・」

 

タクシーを使ってなんとか病院前に着く事が出来た私は、すぐに病院の中へと入った。

 

病院の中に入ると、沢山の患者がロビーにいた。相変わらずここは患者の数が多い。

その為混雑するのでどうも道が塞がってしまう。そう困っていた時だった。

 

「あ!もしかして彰くんのお家の方ですか?」

「え?」

 

後ろを振り返るとそこには少し癖毛気味で白衣を着ていた1人の若い医師が立っていた。

 

「あ・・・あの貴方は・・・?」

「あぁすいませんね!さっき電話をした者なんですが・・・・・・」

「あ!あの時の・・・!」

「理解してくれましたか!さあこっちへ」

 

そう言うと私の前を歩いて先導して行く。それについて行く私。そして、そのまま進んで行くと、そこは診察室ではなく資料などがまとめて入れられていた小さな部屋だった。

 

「あのここは?」

「気にしないでください。ここは院長室なんですが、今日は大事な話があると

 伝えたので特別に許可を得たんです」

「す、すみません!!ただの話だけでここまで気を遣ってくれまして

 『いえただの話ではありません・・・』」

「え・・・・・・??」

 

顔を上げると、さっきまでのほんわかした顔ではなくキリッとした目つきで至って

真剣な表情をしていた。

 

「あの・・・ただの話では無いとは一体・・・・・・私は坊ちゃんの容体を・・・」

「ですから今から容体のことを全て話すので、落ち着いて聞いてください・・・」

 

医師は、曖昧な表情を浮かべる私に対して、次の瞬間最悪なことを伝え始めた。

 

「まず彰くんの髪の事なんですが・・・もう・・・・・・一生黒い髪(・・・)が生えるのはまずありません・・・」

「え!?」

「白髪になった理由なんですが・・・・・・実は膨大なストレスから出来る“自律神経失調症”

 だったんです・・・彰くんは・・・・・・」

「嘘・・・嘘・・・・・・」

「すみませんもっと早く気づいていれば・・・・・・本当に申し訳ございません・・・」

 

現実を受け入れられない私に向かって医師は頭を下げていた。その時私はどう対応したらいいのか分からなかった。しかし、最悪はそれだけじゃ無かった。

 

「後・・・お母さんにもう一つ程お聞きしておきたいことがあるのですが?」

「はい・・・・・・何ですか?」

「彰くんの“右目”と“右耳”はいつから悪くなったか知りませんか?」

「は・・・・・・・・・???」

 

一瞬何を言っているのか分からなかった。目と耳が悪い。何を言ってるんだ。

目は分かるが、耳が悪いとはどういうことだ。

 

「彰くんが病院に運ばれて来際に診察したのですが・・・・・・右目の視力はほとんどなくて、

 右耳の聴力は多分一生元に戻らないです・・・・・・」

「でもその二つにはある不可解な点があるんです」

「不可解な点?」

「はい。“右目”と“右耳”どちらも強い“衝撃”や“暴力”が無ければならないんです。

 ですから何か知っていればここで全て教えて欲しいのですが『・・・・・・ざけるな』」

「え?」

「・・・ふざけるな・・・・・・ふざけるな!!」

 

ガシッ

 

「ちょ、ちょっとお母さん落ち着いて!!」

「そんなの嘘よ!!坊ちゃんの・・・彰坊ちゃんの右目が失明だなんて!!

 彰坊ちゃんの右耳が失聴だなんて嘘よ!!」

 

気がつくと、私は医師の胸ぐらを掴んでいた。そんなのは嘘だと思いたかった。

罪も無い子供に体の大事な部分を片方ずつ奪うのだなんて!

 

「落ち着いて下さい!!!!」

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

ようやく取り払われると私の両腕を看護師達が離さんとばかりに握っていた。

医師は尻餅を突いていたが、直ぐ起き上がり私の方に近づいてゆっくりと優しい声で

伝えてくれた。

 

「お母さん急にそんな事を言われたら誰だってそう言ってしまうんです・・・・・・」

「ハァハァハァ」

「でもこの件については彰くんには一切喋らないので安心して下さい!」

「・・・・・・はい」

「後、右耳はもう治ることはまず無理ですが・・・目の方は後からレーザー手術で治せますので」

「・・・・・・・・・・・・」

「今日はここまでしてお開きという事でもう彰くんの顔だけを見てまたお越し頂き下さい」

「今日は本当にありがとうございました」

 

そう言うと、医師はきれいに頭を下ろした。後からも看護師などがありがとうございましたと

頭を下げてくれた。私は、医師の言う通りに坊ちゃんの顔だけを見て帰ることにした・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「坊ちゃん・・・・・・」

 

院長室を抜けた後、私はすぐに坊ちゃんが入院している部屋にやって来た。いつもなら私の顔を

見ると、ほんの少しだけ頬を緩ませてくれるが今はぐっすりと眠っていた。

 

「坊ちゃんごめんなさい・・・・・・坊ちゃんごめんなさい・・・!」

 

坊ちゃんの手を握り私はただ謝ることしか出来なかった。坊ちゃんはいつも家元夫婦や

上役の人達に虐待に近い暴力を浴びて、奥様達からは厳しく躾られお嬢様2人には毎日嫌がらせをされていた。その光景をいつも見ていた私達家政婦は、引いているのもいればやられて当然だと

思う者達ばかりいた。そのせいで坊ちゃんは誰にも助けてもらえなかった。

 

でも、私だけは坊ちゃんの居場所になろうと頑張った。ボロボロになっている坊ちゃんの近くに寄って手当てしてあげたり、叱られている坊ちゃんを守ったり出来る限りのことをした。すると、前と変わらず皆には煙たがられていたが私といる時はそんなことは無くなり、

逆に笑顔を見せてくれた。

 

その笑顔を見た時私は、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

 

しかし、今はその笑顔は無く今まで以上に苦しんでいる姿が映った。

もうこれ以上やられると坊ちゃんはもう完璧に壊れてしまう。

 

まずは何とか奥様と旦那様を説得しなくては。そして、後から家元夫婦と上役達に。

 

もう坊ちゃんを傷つけさせない。坊ちゃんは必ずこの私が守る。心の底で私は神に誓った。

でも・・・

 

 

 

 

 

後にこの思いが簡単に崩れるのをこの時私は知らなかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院してから2週間が過ぎようやく俺は退院することが出来た。

でも、医者からは髪の事や目の事は何も話されないままだった。

 

どうして教えてくれないだろうと思い、つい菊代さんに聞くも、聞いていないと優しく微笑み

ながら教えてくれた。そう車で病院を出て数十分経つと大きな門が見えた。そう家だ。

 

家に帰るのは本当久しぶりで、少し緊張した。でも菊代さんが手を掴んでくれると、

緊張が無くなった。門をくぐって数分経つと目の前に大きい屋敷が見えた。菊代さんが先に

入って、戸を開けてくれた。俺はまず靴を脱いで、すぐに両親の所に向かうことにした。両親が

いる部屋までに行く間の渡り道を通っていると、向こうから誰かがぽつんと腕を組んで

柱にもたれながら俺を見ていた。

 

「何だ。もう少し病院にいると思ったらもう帰って来たのか」

 

俺を見ていたのは俺と1つ違う妹のまほだった。

 

「・・・・・・何だよ。ジロジロ見やがって」

「フッ・・・髪が白くなったって女中の人達が言っていたから本当かなぁと思っていたら

 本当だったからつい可笑しくて可笑しくて」ニヤッ

 

ニヤニヤしながら俺を軽蔑するまほ。そんなまほを俺は少しギロっと睨みつけた。すると、

 

バキッ!!

 

「グハァッッ!!!!」

「何だその顔は。何かイラつくな・・・」

 

どうやら俺に睨みつけられたのが気に入りなかったのか膝蹴りをかましてきた。

 

「雑魚彰・・・・・・お前の様なおじろくの分際で、私を睨みつけるなっ!!!」ドゴッ!!

「ブフッ!!」

 

そして、続け様に大きく構えてからのストレートを打ってきた。鼻から鼻血が出ている。

 

「フッ・・・おい雑魚彰。よく聞け。再来週は、お祖父様達の家で新年会をするらしい・・・

 私達も晴れ着に着替えるがお前だけは晴れ着が着れないらしい・・・・・・何故だか分かるか?

 お前が“厄介者”だからだ。ハッハッハ」

 

ドス黒く染まった笑みは正しく悪魔の面だった。そんなまほの顔を見て、俺は少し恐怖を覚えた。

 

「まぁそう言うことだ・・・お前はじっと大人しく下を向いていればいいんだよ」

 

そう言うと、自分の部屋へと向かっていた。俺はゆっくりと立ち上がって、

再度両親の所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでさ病院の時って凄く暇だったんだ!」

「・・・・・・そう・・・」

「それがどうした」

 

両親がいる部屋に着いた俺はどうしても無性に構って欲しくて、両親と少しでも構って欲しくて、俺はいつもと違って明るく振る舞ってみた。でも、両親はいつもと態度が変わらない・・・。

 

「ねぇねぇ!!それで病院ではね!たくさんの『さっきからごちゃごちゃうるせぇな!!!!』」

 

パンッ!!

 

「っ!!」

「父さんは今仕事しているんだ。邪魔をするならどっか行け!!」

「・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

「ったく・・・お前のせいで、もし仕事が遅れたらどう責任を取るんだよ・・・」

「ごめんなさい・・・・・・」

「もういい謝らなくて・・・・・・聞いているだけ腹が立つからな。

 ほら!!分かったらとっととどっか行け!」

 

父親はいつもより機嫌が悪くて、さらに機嫌を悪くさせてしまった様だ。

仕方ない。次は母親の所へ・・・。

 

「母さん!!あのね僕『彰。母さんは今忙しいの。再来週のお正月までに

 仕事を済ませないといけないから後にして頂戴』」

「・・・・・・ごめんなさい」

 

結局久しぶりに両親と話をしようと思ったけれど、何にも出来なかった。

後ろからはクスクスと俺にバレない様に(まほとみほ)が俺を見て笑っていた。

 

 

嗚呼神様教えて下さい。何故俺だけがいつもこんな風に冷徹な態度を受けるのですか。

何故ですか。教えて下さい。

 

神様・・・・・・!!

 

 

そう心の中で呟きながら早いこと2週間が過ぎ、お正月の日がやってきた。

そして、この日が俺の人生の分岐点ということを俺はまだ知らなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

退院してから2週間が過ぎて、年が変わった。この年から俺は、小学5年生と進級する。

でも、あまり学校に行きたくない。だって虐められるからだ。特に石田と太田と江藤の3人に・・・。

 

そんなことはさておき今は祖父母の家に来ている。そう新年会だ。はっきり言って行きたく

なかった。また暴力を振るわれるからだ。家族や上役の人達は皆晴れ着を着ているのに、俺だけは黒いセーターとズボンだった。晴れ着は?と俺が聞くと、両親や女中は何も聞かれていないかの

様に無視された。所詮俺などに金をたくさん使いたくないのだろう。それにしては、妹2人には

かなり高級な晴れ着を着せているのに。そう暇で仕方なく俯いていると、周りからは口々と何か

呟いていた。

 

「ねぇ見て。しほさんとこの息子さん・・・髪が真っ白よ」

「本当だな。全く・・・あの年で髪を染めるだなんて何という教育をさせているんだ」

「だから私は言ったんだ。あの子なんかを・・・『ちょっと!それ以上は禁句よ』」

 

周りから聞こえる自分の批判。何も知らないのに、髪のことに愚痴をいう上役の人達を見て俺は、少し怒りを覚えた。でも、勇気が無かった。あんな愚痴に言い返す勇気が無かった。

 

「坊ちゃん・・・」

 

その時、顔を上げるとそこには菊代さんが正座で俺を見つめていた。

 

「坊ちゃん・・・明けましておめでとう御座います。今年も何卒よろしくお願いします」

「あ!よ、よろしくお願いします!!」

 

頭を下げる菊代さんに遅れて、自分も深々と頭を下げる。そんな俺を見て、菊代さんはクスッと笑っている。クスッと笑った後菊代さんは俺にある小さな封筒を差し出した。

 

「坊ちゃんお年玉です。どうぞ」

「あ、ありがとう・・・」

 

お年玉なんてほとんど貰ったことが無かったから、少し焦ってしまった。

後から恐る恐る封筒を除くと一万円札が入っていた。

 

ワイワイ賑わっていたこの部屋も、祖父母達が来ると急に静まり返った。

まず、祖母が軽く挨拶をするとシャンパンを片手に持って、

 

「それでは皆、昨年はお疲れ様でした。挨拶はここまでにして楽しい新年会にしましょう。

 それじゃあ···」

 

「「乾杯!!!!」」

 

祖母の合図と共にグラス同士がぶつかり合う音が響いた。それと同時に始まった宴。

皆楽しそうに食べ始めるが俺だけは、

 

「・・・・・・・・・」

 

この新年会に楽しさを感じることが出来なかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤー去年は色々ありましたが、何とかなりましたよ」

「本当本当色々なことがあったけど、この飯を食べると全部忘れてしまうよ」

 

無事新年会は始まったものの俺は相変わらずぽつんと静かに食べていた。

周りの皆は隣同士で喋っているのにも関わらず。

 

 

そう静かに食べていると祖母がスッと立ち上がり、2つ隣の妹達に何かをあげていた。

何だろうと思い、目を向けると、

 

「はーい!!まほちゃん〜みほちゃん〜おばあちゃんからお年玉だよ〜!」

「ありがとうございます。お祖母様」

「ありがとうおばあちゃん!!」

「・・・・・・・・・」

 

お年玉を貰ってニコニコしている2人の妹を見て俺は少しばかり羨ましいと感じだ。 祖母からは一度も貰ったことが無いから今年こそはと思ったが結局貰えなかった。そう2人が貰っている所を遠くで見ていると祖母がこっちが見ているのに気づいた。すると、いつもの様に目を鋭くさせ、

 

「何だいその面は。余りジロジロ見ないで欲しいんだがね」

 

少し怒気がこもった言葉をぶつけられた。

 

「・・・・・・・・・」

 

相変わらず俺はいつもの様に無表情の顔をしていた。そして、その顔が気に入らなかったのか

近づいて来て、更に睨みつけられた。

 

「ったく・・・・・・相変わらずその面は気に入らないわ」

 

そう言うと、チッと舌打ちをして俺から離れていった。しばらくすると近くにいた周りの皆が

俺をゴミを見るかの様な目で見ていた。

 

「本当に鬱陶しい子供(ガキ)だ。家元に怒られる子供なんてアイツだけだ」

「後継者のまほちゃんには“雑魚彰”って呼ばられているらしいよ」

「本当非の打ち所がありすぎる困った厄介者だな」

 

わざと俺に聞こえやすい様に耳元近くで話す上役達。それを聞いていた俺はあの時の悪夢を

思い出して、額から冷や汗をかいていた。何とか落ち着こうと、水が入ったコップを

持とうとした瞬間悲劇が起きた。

 

ガシャン!!

 

「!!」

「「!!」」

「「「「「!!」」」」」

 

コップを持とうとした右手が汗でツルッと滑ってしまい水を溢してしまった。

それに加えてコップ自体も割れてしまった。

 

「あああああ・・・・・・」

 

その瞬間、俺は体中からとても冷たいモノを感じた。その冷たいモノとは、

 

「・・・・・・ああああーーー!!!!やってくれたな彰君よー!!!!」

「!!」

 

そう祖父のことである。

 

「本当に・・・・・・この厄介者が!!!!!」ブンッ!!

「くっ!!」

 

杖を振り上げた瞬間、俺はあの時のことを思い出し、体を丸めて痛みに耐えようとした。

しかし、一向に痛みは来ない。どうしたのかと思い目を開けるとそこには、

 

「坊ちゃんを・・・もう傷付けないで下さい・・・・・・」ツー

「え・・・・・・?」

「な!!菊代!!何故お前が!!!」

 

何と菊代さんが、俺と祖父の間に入って庇ってくれたのだ。

菊代さんは頭から血を流しながら俺を守ってくれていた。

 

「お願いします御父様!!もう彰坊ちゃんに暴力を振るわないで下さい!お願いします!!」

 

そう言うと、頭を畳に擦り付けた。そう謝罪の最上級・・・土下座だ。土下座をした菊代さんを

見た俺はこれが本当に俺が知っている菊代さんかと思った。

 

(菊代さん・・・もう良いよ。俺は自分でもう諦めてるんだから・・・・・・)

 

菊代さんに顔を上げてもらおうと何かしようとした瞬間、

 

「ハッハッハハッハッハ!!!!」

「!!!!?」

 

突如祖父が大きな声で笑いに笑っていた。一体何がそんなにおかしいんだ。

 

「ハッハッハ・・・そうか菊代。そんなに彰を助けたいんだな」

「・・・・・・・・・はい」

「じゃあ1つ聞こうか。菊代。お前は彰に“右目”と“右耳”が使いもんに

 ならんとはちゃんと言ってるのか?」

「え・・・・・・」

「は・・・・・・・・・」

 

一瞬祖父が発言した言葉に耳を疑った。右目と右耳が使いものにならない・・・・・・

そんなの嘘だよね。菊代さん。

 

「ハッハッハハッハッハどうした菊代。言ってるのか言ってないのかと聞いてるんだが

 何だその顔はハッハッハ」

「嘘・・・・・・何で知っているのですか?」

「何・・・お前と彰が行ったあの病院の院長は、わしの知り合いだからな」

「そんな・・・・・・」

「哀れだな菊代。彰には隠そうとしたのにすぐに喋れるなんてな」

「菊代さん・・・・・・・・・」

 

俯いている菊代さんを見て俺はようやく理解した。この話は本当だと言うことを。

そう感じると俺の心はもう・・・限界だった。

 

「さてもう分かっただろう。分かったらとっととそこを退け」

「・・・・・・・・・」

「聞いてるのか?退けと言ってるんだ!!この『ふざけるな!!』」

 

バギッ

 

「ブフッ!!」

「ふざけるな!!元はと言えばアンタが坊ちゃんの目を潰したんだろうが!!」

「ちょ菊代。落ち着け!!」

「うるさい!!」

 

怒りが完璧に出た菊代さんは、祖父の胸ぐらを掴んで祖父に喰れてやろうと殴ろうとした。

それをただ茫然と見ている他の皆。妹達は見たことない菊代さんの姿を見てびっくりした。

そう周りがびっくりしている中俺は・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

右目と右耳のことでもう抜け殻状態になっていた。

それを見ていた2人の上役は黒い笑みを浮かべ俺に近づいて来た。

 

「よー厄介者。まださっきの事引っ張ってるのか」

「そんなの仕方ないだろう・・・お前が日頃ずっと家元達の癪に触る様なことを

 ずっとしていたからそうなったんだからよ」

「・・・・・・・・・」

「おい。何シカトしてんだよ!!」ドカッ

「グハァッッ!!」

「ムカつくんだよ!!その面がよ!!」バギッ

「グハァッッ!!」

 

2人から平手打ちと蹴りを貰った。本当なら痛いのにもう痛みも感じていなかった。

 

もうどうでもいい。何もかもどうでもいい。そう思っていた時、

 

「きゃあああ!!!!」

「わしがずっとやられて黙っていると思っているのか?」

「菊代。お前も彰と同じ痛みを知れ!!」

「やめて!!」

 

バギッ!!!!

 

「グハァッッ!!」

 

俺が叫んだ瞬間、菊代さんに杖が振り下ろされた。

菊代さんは頭から血が出てピクリとも動いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、俺の中で何かがプツンと音を立てて切れ、体中に赤黒いモノが纏わりついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい何動いてるんだよ!この厄介『死ね』」

「え?」

 

バギッ!!!!

 

「カハァッッ!!!!」ドサッ

「え!!?」

「次はお前」

「ちょ、何するん・・・・・・くっ!離・・・・・・せ・・・よ・・・・・・ブフッ」ドサッ

 

思い切り首を握ると、上役は痙攣して気を失っていた。

 

「おい!!どうしたお前ら!!」

 

祖父は一体何が起こったか、理解できていない様だ。俺はゆっくりと幽鬼の様に祖父に

近づいていく。祖父は俺を見て怯えている。父親も母親も妹達も俺の姿を見て体を震わせていた。

 

「き、気持ち悪いんだよ!!!!」ブンッ

 

ビビりながら俺に杖を振り上げてきた。俺は逃げること無くわざと杖にぶつかった。

 

「・・・・・・・・・」ツー

「ハァハァハァハァ」

「それだけ?」

「!!うおおおー!!」

 

バギッ!!

 

「くっ!!」ドサッ

 

バギッ!!

 

「くっ!!ちょ、落ち着け・・・」

 

バギッ!!

 

「ブフッ!!」

「死ね!!」

 

バギッ!!

 

「死ね!!死ね!!」

 

バギッ!!

 

「死ね死ね死ね!!」

 

バギッ!!

 

「死ね!!死ね!!死ね!!」

 

死ねと叫びながら俺は祖父を力強く馬乗りで殴り続けた。

もしここで止めたら駄目だと自分に言い聞かせて殴り続ける。

 

やっと復讐が出来る。やっとコイツを殺せる。そう思うと更に力が入った。

 

「彰やめろ!!」ガシッ

「やめるんだ!!」

 

突如父親と親族が止めに入ってきた。しかし、今の俺にそんなのは通用しなかった。

 

「触んなよ!!!」バギッ!!

「くっ!!」

 

腕を掴まれた為、エルボーを顔に当てた。父親は俺を後ろから抱いて引きずり下ろそうとするも、

 

「な、なんて力だ。こんなの子供の力じゃない・・・!!」

 

今の俺にはいつもの力は出ない様だ。

 

「死ね!!!!」

 

バギッ!!!!

 

「ブフッ!!」

 

バギッ!!

 

「うおおおーーー!!!!!!」

 

バギッ!!×10

 

叫び声を上げながら俺はラッシュで顔を殴った。

そして、これでトドメだと今までの中で1番強く殴りつけた。

 

 

グシャッ!!

 

「「!!!!?」」

「ハァハァハァ・・・・・・ヘヘッヘヘッ」

 

物凄い鈍い音が出た瞬間祖父は一瞬ピクっと動いたと同時に動かなくなった。

その姿を見て俺の中の赤黒い感情が芽生えた。

 

「嘘でしょ・・・・・・ねぇ貴方。貴方!!」

 

祖母は祖父の肩を揺らすも全く返事しなかった。

それを見た俺は祖母を払い退け胸ぐらを掴んでこう呟いた。

 

「殺してやる・・・・・・テメェが生きてる限りテメェの女!!テメェの家族!!テメェの友人!!

 関わる人間全員再起不能にしてやる!!!!」

「テメェも!!お前も!!お前らも!!!!全員再起不能にしてやる!!」

「皆全員再起不能にしてやる!!!!!!!」

 

そう周りに叫んだ後、首を少し傾けながら俺は新年会に来ていた全員の顔を見た。

皆俺を見て怯えに怯えていた。特に妹達は体を抱き合いながらビビってやがる。

でも、アイツらはまだだ。まずやるのは、この糞ジジイと上役の犬2人からだ。

 

『僕らは卵から生まれた少年と言う名の鳥なんだよ。卵は世界だ、生まれようと

 欲するものは一つの世界を破壊しなければならない』

 

俺の頭にはヘルマン・ヘッセの名言が流れていた。

 

一つの世界・・・・・・そうこの家の糞みたいな連中達から受けた屈辱の世界だ。

俺はその世界を今日破壊した。そして、新しい世界が今日から始まる。

 

コイツらにはたっぷりと・・・・・・やり返してやる。

 

誕生。それは物事や状態が新しく出来ることを言う。

そうこの日が俺の人生の分岐点であり、俺の中にある赤黒い感情が誕生したのである。

 

 

 

 




菊代を傷つけられたことで、彰が遂に暴走。そして、破壊。
やっと投稿者が考えていた山場を一つクリア出来ました。 
次回から彰の態度が変わるので、そこにも目を向けて見て下さい。
次回は5月でご会いしましょう。


            !!See you!!
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