魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~   作:秋風

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お久しぶりです。
最後の投稿は去年の6月……1年以上も開けてしまいました
申し訳ありません……待っている人なんているのか、と不安になりますが

遊戯王の小説の方ばかり書いていたことや、仕事の忙しさが増したせいで投稿が出来ませんでしたが、ようやく1つ書き終えたので投稿しようと思います。小説そのものも久しぶりだったので色々と不安要素がありますが、リハビリ感覚で書いているのでどうかご容赦くださいませ……
まあ、覚えている人ももういないとは思いますが、これからもひっそりと、たまーに更新して、最終回まで持っていけたらな、と思っています。
今度映画もあることですしね

最近はFate/Grand oderとロックマンゼロをクロスさせようかなんて妄想もしてますが……まあ、まずは目先の小説が先ですな

それでは、どうぞ


15「ホテル・アグスタ」(後編)

「ゼロ、さん……」

 

 目の前にいる戦士、ゼロの姿にティアナは驚きを隠せなかった。散々自分は不信の目を向けてゼロを避け、勝手にその強さを嫉妬していた。それなのにもかかわらず、ゼロはそんな自分を庇いVAVAの砲弾を受け止めていた。しかし、驚くべきはそこだけではない……今のゼロの姿に、ティアナとその場にいたフォワードメンバーであるスバル、エリオ、キャロも驚かざるを得ない状況だった。VAVAからの砲弾を防いだゆえに吹き飛んだ左腕。そこからは機械のコードが垂れ下がり、そのコードの先端がバチバチと音を立てる。また、ゼロの身体そのものもスパークを起こし、まるで身体が悲鳴を上げているようにも感じる。

 

「その、身体は……」

 

「……事情は後で話す。今は目の前に集中しろ」

 

 そういいながら残った右腕でZセイバーを構え直すゼロ。その先にある煙の中からゆっくりとVAVAが出現する。ティアナもその目の前にいる敵に恐怖しながら、その手にあったクロスミラージュを構え直す。しかし、そんな光景を見たVAVAは1つため息を吐くとその肩に装備された砲塔を下ろす。

 

「つまらん」

 

「……何?」

 

「つまらんといったんだ。ゼロ……貴様、いつからそんなに弱くなった?」

 

 VAVAは言いながらゼロを見るが、そこに先程まで剥き出しとなり、ティアナも恐怖していた殺気は微塵にもなくなっていた。むしろ、侮蔑や哀れみすら感じる。

 

「気が変わった……今回は“見逃してやる”。お前を殺してから、エックスを殺しに行くとしよう……どうやらクライアントの目的も果たせたようだしな。ゼロ、次に会う時はお前が死ぬ時だ」

 

 その言葉とともに、VAVAはその姿を消した。おそらく、転送装置のようなものを使ったのだろう。そのVAVAが消えた直後、ゼロがその場で膝をついた。どうやら相当な無理をしていたらしい。

 

「ゼロ!」

 

 その様子を目にしたリインフォースがすぐにゼロへと駆け寄った。その目には薄っすらと涙が浮かんでおり、今にも泣きだしそうだった。しかし、新人メンバーたちを前に泣くことはできず、必死にこらえているのだろう。倒れそうなゼロを支え、慌てた様子でゼロを見るリインフォース。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「……今のところは大丈夫だ。クロワールが俺の稼働補助をしている。俺のことはいい、この現場の指揮は部隊長補佐のお前の仕事だ」

 

「そ、そうでした……ヴィータ! 将! 周囲警戒を! シャマルとザフィーラはゼロをヘリの方へ! フォワードメンバーは集合を!」

 

 リインフォースの言葉にヴォルケンリッターたちが動き、ゼロはシャマルたちに釣れられて待機するヘリの方へと連れて行かれた。フォワードはそんなゼロを見つつ、リインフォースの元へと集まった。

 

「スターズ、ライトニングは裏手の周辺の警備を任せる」

 

『了か「ただし」……?』

 

「“今見たこと”に関しての他言は一切許さないということを覚えておけ。これは部隊長でも同じことを言うだろう」

 

 そのリインフォースの言葉に驚く4人。その声にはどこか怒気のようなものが籠っているようにも感じられる。というよりも、どこか表情は険しい。そんなリインフォースの剣幕にライトニング両名は頷くしかなかった……しかし、スターズ両名は納得がいっていない。その中でもスバルは特に気になっていたようで、耐えられずリインフォースを見た。

 

「部隊長補佐! あの、ゼロさんのあの腕、あの体はいったい……」

 

「……ゼロのことについては一切、他の局員のいる場所ではするな。それについての説明は後で部隊長にしてもらう」

 

「あの、どうしてそこまで……」

 

 エリオはそこまで言うが、リインフォースに睨まれて「すみません」と食い下がる。そんな様子を見てか、リインフォースは小さくため息を吐いた。

 

「すまないエリオ……ゼロのことは管理局に知られてはまずい存在なんだ」

 

「管理局に、ですか?」

 

「そうだ。他の何者でもない、我々の部隊を除く者達に知られてはならない。理由を知れば理解もできるだろう……以上だ」

 

 こうして、フォワードメンバーたちはホテルの裏手へと移動していく。ただ、スターズの二人は納得がいかないような表情であった。

 

 

 

 

「曹長。急いで頂戴! ゼロの体がどこまで持つか私たちにはわからないの!」

 

「わかってますよシャマルさん! にしたって、ゼロの旦那の体はどうなってんです、そりゃ!?」

 

「理由は後よ! あと、ゼロの事は他の人には言わないでね。説明はきっと部隊長がしてくれるはず」

 

 ヘリに乗り込んだシャマルはゼロをヘリの座席に寝かせてヴァイス・グランセニックに急いで六課に戻るようにと指示を飛ばす。ヴァイスもゼロの事は気になってはいるようだが、事情を説明できないことを察してか操縦に専念している。そんな風に焦っているシャマルに対して、ゼロは掠れる声でシャマルを落ち着かせていた。

 

「……シャマル、慌てるな。クロワールが欠損部分の補助をしている。それに、駆動系統に損害は出ていないから、死ぬようなことはない」

 

「ゼロ……ごめんなさい。私たちがいながら、また貴方に負担をかけてしまったわ」

 

「気にすることはない。この程度、設備があればすぐに治る。それに、VAVAは強かった……それこそ、以前話したネオアルカディア四天王……いや、コピーエックスにも匹敵するだろう。俺も少し、戦いの勘が鈍っていたのかもしれん」

 

 そうゼロが言うも、シャマル、そしてザフィーラは憤りに震えていた。そんな強敵達すら、ゼロは今まで退け、レジスタンスを導いてきた。今回の戦いでのゼロの負傷は明らかに自分たちの落ち度。もし、自分たちがあの場に居なければ、苦戦こそするかもしれないが、負けることはなかったかもしれない。ティアナを庇うとともに、ゼロはその防御力を底上げして後ろにいたヴォルケンリッターたちも守っていた事実を知っているだけに、シャマル達は悔しかった。シールド全体の耐久力が下がり、ゼロの左腕が吹き飛ぶ形となったことに関しても、本来ティアナは自分たちの部下で、ティアナを守るのも、そして止めるのも自分たちが行うべきだったはずだ。しかし、ヴォルケンリッター全員すらもそのVAVAの放つ凄まじい殺気に一瞬戦慄していた。故に、あの場での新人であるティアナが恐怖に駆られて起こした行動は、人間として正しい反応だったと言えるだろう。

 

「それに、武器に関してもZセイバーやシールド、バスターも全て“魔力カートリッジ”を取り入れた試作品だった。ガジェットには通用するが、レプリロイド相手には無理があったらしい。あれ以上クロワールに出力を上げさせていれば、武装が壊れていた」

 

 そう、VAVAが言った「ゼロが弱くなった」という理由はそのゼロの武装にあった。シエルが新しく開発したゼロの武装。シャーリーと共同開発した魔力が発生したデバイスに“見せかけるため”にカートリッジシステムを組み込んだ試作品の武装でゼロは戦っていた。長年愛用している武器ではない上、耐久性がいつもに比べて低いことから、加減した攻撃しかできないことでVAVAにはダメージが通らず、VAVAもゼロが弱くなったと錯覚を起こしていたのだ。

 

「シャマル先生! ザフィーラの旦那! ゼロの旦那! 六課が見えてきましたよ!」

 

 ヴァイスの声に、シャマルが顔をあげて前を見る。ヘリポートの付近にはすでにシエルが運転してきたであろうトレーラーとシエル、そしてシャーリーの姿があった。ヘリが着陸すると、すぐにゼロはトレーラーへと運ばれ、修理が開始される。シャマルはここまで運んできてくれたヴァイスにゼロについての説明と他言無用であることを伝え、はやてへと連絡を取った。

 

「はやてちゃん、シャマルです」

 

『シャマル!? ゼロは!? ゼロは大丈夫なん!?』

 

「六課へと帰還してレジスタンストレーラーへ運びました。シエルさんとシャーリーが修理を開始しています。損傷は左腕とそれを支える間接パーツ、及び骨格パーツの破損です」

 

 通信越しのはやての声は酷く震えていた。若干、涙声で喋っているようにシャマルは感じ、はやてが相当我慢しているのがわかった。その横では、リインフォースがはやてを落ち着かせている様子が確認できる。

 

「ゼロの腕も、スペアパーツとこちらの世界の素材で何とかなるとの事です。ですからはやてちゃん、はやてちゃんは部隊長としての指示をしっかりとしてください」

 

『シャマル……』

 

「それと、はやてちゃんたちにゼロから伝言があります。“心配しなくていい、仕事を終えたお前たちを六課で待つ”と」

 

『……ゼロ』

 

 シャマルが預かったゼロの伝言を聞いて、はやての目に光が灯る。すると、はやては気合をいれてなのかその両頬を両手で叩き、気合を入れ直していた。

 

『よっし! ゼロがそう言ってくれたならやるしかあらへんな!』

 

「はい。頑張ってくださいはやてちゃん」

 

 そう言ってシャマルは通信を切って修理中のゼロを見た。シエルとシャーリーが修理をする傍ら、メンテナンス用の培養槽からクロワールが出てシャマルの所へと飛んでくる。液体の中にいたからか、ボタボタとその水を垂らしていた。

 

「シャマル、タオルを取ってくれる?」

 

「ええ、わかったわ……って、クロワール。貴女はもう大丈夫なの?」

 

「攻撃を受けた衝撃でさっきまで頭がグワングワンしてたけど、今はもう大丈夫。とりあえず、エネルゲン水晶でエネルギーだけは回復できたから活動に支障はないわ。それよりシャマル。お願いがあるんだけど、クラールヴィントに収録されたVAVAの映像を見せて」

 

「え? ええ、いいわよ」

 

 シャマルから受け取ったタオルで体を拭きながら、ゼロとVAVAが映った映像を見るクロワール。その表情は真剣そのものである。普段のクロワールなら考えられないと思ったのはシャマルだけの秘密である。

 

「何か、気になることがあるの?」

 

 シャマルの問いに、クロワールは頷きながら映像を止めてVAVAを指さした。

 

「ええ。今回、VAVAと戦った時に思ったの。前に戦った時よりも受けた攻撃がとんでもなく重くて強力だって。それに、ロケットパンチなんて海鳴で戦った時にはなかったはず」

 

「誰かが改造を施したってこと?」

 

「恐らくジェイル・スカリエッティだとは思うわ……でも、おかしいと思わない?」

 

「え?」

 

 おかしい、とは何がおかしいのだろうか。クロワールの言葉にシャマルは首を傾げた。

 

「VAVAの残忍性と戦闘力は知っての通りだし、何よりVAVAの目的は元の世界に戻ること。目的が果たされたらスカリエッティはVAVAにとって用済みのはず……なのに、VAVAは洗脳された様子がない。言い方は悪いけどレプリロイドの洗脳って実は結構簡単なのよ?」

 

 実際、クロワールは把握していないが、過去にゼロが対峙した敵ではダークエルフの影響を受けて複数のレプリロイドがエルピスに洗脳されてゼロが戦ったことがある。ほかにも、ドクターバイルが従えていたバイルナンバーズももとはネオアルカディアに仕えるレプリロイドたちだったが、改造によってバイルの忠実な部下として洗脳され、残忍な性格に変貌していた。さらに言えば復活したコピーエックスことコピーエックスMk-2も盲目的にバイルのいうことを信用しており、あれも一種の洗脳だったのかもしれない。

 

「つまり、どうしてスカリエッティがVAVAを洗脳して自分の駒にしていないのかということが気になるのね?」

 

「ええ、その通り。レプリロイドがいないこの世界でVAVAを修理したとなれば間違いなく天才でしょうね。下手をすればVAVAの構造を理解してコピーまでされかねない。だというのに、何故スカリエッティは洗脳を施して手駒にしないのかしら。VAVAの言い方だとVAVAとスカリエッティは対等の立場のように語っていたわ」

 

 それがクロワールには理解できなかった。もし、戦力的が欲しいテロリストなら機能が停止している状態から改造を施し、自分に忠実な部下にすればいい。VAVAのように構造に欠陥があり、残忍な性格であるならなおさらの事だ。下手をすれば逆らわれて殺されかねない。だというのに、VAVAは改造まで施されてパワーアップしている。

 

「それについては、一度はやてちゃんたちが戻ってきてから考える必要がありそうね」

 

「ええ、そうね。今は、ゼロの回復を待ちましょう」

 

 こうして、機動六課の任務は終わりを迎えるのだった。

 

 

 

 

「ご苦労だったねVAVA。君と、ゼストたちのお蔭で私の欲しい物が手に入ったよ」

 

「フン……貴様の欲しかったものなど興味がない。どうせ、ロストロギアだろう」

 

「その通りさ。とても、重要なね……」

 

 そこはスカリエッティのアジト。その研究室らしき場所でスカリエッティ、そしてVAVAが立っていた。

 

「さて、と。これで君との契約は完了だね。望み通り、君を元の世界へ返そう」

 

「その件だが、まだ待たせてもらう。この世界でやることができたからな」

 

「ほう? 君が言っていたあのゼロというレプリロイドのことかい?」

 

 VAVAの言葉に、どこか意味ありげに笑うスカリエッティ。その笑みはそうなるだろうと予測していたものが当たったというような笑みだった。

「そうだ。奴を粉々に破壊し、元の世界でエックスを倒してこそ、俺は完全なる勝利を手にすることが出来る」

 

「なるほどね……」

 

 そう拳を握りスカリエッティに語るVAVA。だが、スカリエッティはこう言い放った。

 

「残念だがVAVA……君はもう、“必要ない(・・・・)”」

 

「なん……ガアッ!?」

 

 瞬間、VAVAの体を何かが貫いた。完全なる不意打ち。本来ならその熱源でセンサーが反応したはずだった。いや、正確には反応していたが、その速度が速すぎて避けることが出来なかったのだ。その攻撃を受けてその場に倒れるVAVAはスパークを起こし、起き上がることが出来ない。それを見てスカリエッティは笑っていた。

 

「ご苦労だったね、VAVA。君の役割は終わった……つまりは用済みだ」

 

「な、に……?」

 

「何故君のようなレプリロイドを洗脳せず、首輪まで外して自由にさせていたのか。それは君というサンプルケースを観察するためだったのさ。君の全力の戦闘データは洗脳しては手に入らないからね。なにより、報酬をぶら下げればやる気も出るだろう? 機動六課にいるもう一人のレプリロイドと戦わせることで君を通し、彼というレプリロイドを理解することもできた。そして、完成させることが出来た(・・・・・・・・・・・)

 

 コツ、コツ、とそのVAVAの後ろから足音がする。それはおそらくVAVAに不意打ちをした者の足音だろう。暗がりから光が当たるところへと姿を現した。その姿を見て、VAVAは驚きの声を上げる。

 

「き、貴様は……! 馬鹿な!」

 

「博士、止めを刺しますか?」

 

「必要ないよ。さっきの一撃は致命傷だ……時期に彼は止まるだろう」

 その声の主の問いにスカリエッティは手で静止させてVAVAを見る。

 

「君にはとても感謝している。何より、君というよりも……君の記憶(・・)にだがね。なにぶん、私の記憶(・・・・)だけでは不安定だった」

 

「ぐ、まさか、てめぇ……!」

 

「その通り。君のメモリーを見るためには君を起動する必要があった。そして、何より今日のオークションで手に入れたものは……()を起動させるためのパーツだったのさ。ありがとうVAVA、君はいい道化だったよ……だが、君はもう幕引きだ。あの世で彼を待つといい」

 

 その言葉を聞いて怒りがこみ上げたVAVAは最後の力を振り絞って肩に着いたキャノンの銃口をスカリエッティへと向ける。しかし、それと同時に再びVAVAを貫いたソレが発射され爆発を起こすことでキャノンは使い物にならなくなった。

 

「くそ、が……」

 

「危険を感知したため無力化しました、博士」

 

「ご苦労。君はもう下がっていいよ。コレの処分はガジェットにやらせる」

 

「はい」

 

 スカリエッティの言葉に頷き、声の主はスカリエッティと共にその場を立ち去って行った。意識が薄れていく中、その二人を見ながらVAVAは声を振り絞っていた。

 

「またしても、またしても俺の邪魔をするのか……おのれ、オノレ、おの、れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……エックス(・・・・)!!!」

 




NEXT 16「力を求めた者」

今回でスカリエッティの正体に気が付いた人が結構いそう……

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