魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~   作:秋風

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どうも、秋風です
とりあえず、1話目投下。感想やお気に入り、ありがとうございます

最近は就職活動のせいで更新が相変わらず週1での更新ですが、気長にお待ちください




01「少女と英雄」

―女性が目を覚ます少し前―

 

 とある世界のとある場所。そんな場所の荒野を、一台のトレーラーが走り抜けていた。それはかつて、この世界でレジスタンスと呼ばれた者達が乗っていたトレーラー。理想郷『ネオアルカディア』と呼ばれた物があったのはもう、今は昔の話。この世界の人類は今、絶望の中にいる。そんな絶望から救いだす者たち…人々はそれをレジスタンスと呼んでいる。現在トレーラーにいるのは運転をしているレジスタンスのリーダー『シエル』。そして…

 

「こちらゼロ・・・現在異常なし」

 

 トレーラーの上で警護する1人のレプリロイド。紅き英雄、ゼロ。ゼロが『異世界』に行ったのも、また少し前の話だ。それはおよそ1年前の話。ゼロはドクターバイルと戦い、異世界へと放り出された。そこは多くの人間が平和に暮らし、そしてレプリロイドがいない世界。そこでゼロは、一人の少女に出会う。異世界から来た者に何の疑いもなく、そして優しく受け入れる少女。そんな少女と出会い、その世界でさまざまな事件と出会いを超えて、ゼロはこの世界へと帰還したのだった。

 

「ねえゼロ?」

 

「どうした?」

 

「はやてたち、元気かしら?」

 

「さあな…だが、あいつらならきっと大丈夫だ」

 

 ゼロの肩にチョコンと、小さな妖精が座っている。それはサイバーエルフ『クロワール』。彼女もまた、ゼロと共に異世界へ行き、戦い続けたゼロの大切な相棒である。そんな彼女は、自分たちを家族として迎えてくれたはやてたちが今頃何をしているのか、気になってしょうがない。そんな会話をしていると突然トレーラーが止まり、運転席から一人の少女、レジスタンスのリーダーにして科学者であるシエルが降りてきた。

 

「ゼロ、休憩にしましょう。もうすぐ反応地点よ」

 

「了解」

 

 そう言ってゼロはトレーラーの上から降り、トレーラーの中へと入る。昼食を作るためにシエルが厨房に立っている。しかし、シエルの場合は普段そんなことをしないからか悪戦苦闘中。それを見かねたゼロは、シエルから包丁を取り上げた。

 

「シエル、食材はただ刻めばいいというわけではない」

 

「え、あ…」

 

 言いながらゼロは、シエルが切っていた材料をシエルと違い丁寧にかつ綺麗に切り刻んでいく。

 

「手は丸めてこのように包丁と平行にしろ。後は火を通す物をもっと細かくして、形を整えろ。じゃないと火が通りにくい」

 

「え、ええ…!」

 

 そんなゼロにシエルは喜びながら、ゼロから料理を教わるシエル。ほどなくして料理は完成し、食事を取る。当然ゼロは食べられないが、シエルはそのゼロと同じ席に座っていられることがこの上なく嬉しかった。最近では、こんな風に日常生活をこなしている。

 

「ゼロは異世界でたくさん料理をしたの。だから料理はゼロに任せちゃいましょうよ、シエル」

 

「そうね、お願いしちゃおうかしら」

 

「…できれば、次からは自分で頑張ってくれ」

 

 そんなクロワールやゼロの言葉に、シエルはクスクスと笑う。こんなにも、ゼロと食事をしながら楽しい時間を過ごすなど、昔では考えられなかったことだ。

 

「ゼロ、変わったわね」

 

「そうか?」

 

 確かにゼロは変わった。外見的な意味ではない。内面的に、大きく変化を見せていた。なによりも、昔より表情が和らいだ。シエルはそうゼロの変化を喜びつつ、レプリロイドの新たな可能性を感じていた。

 

「食事を終えたら出発だ。俺は警戒を続ける」

 

「ええ、お願い」

 

 ゼロは外に出て、周囲の警戒を再開した。そして、それと同時に今回の『反応』について考える。そのエネルギー反応が感知されトレーラーを走らせたシエルとゼロだが、今回二人での調査には理由があった。本来ならゼロが一人で向かえばよかったのだが、そのエネルギーはこの世界ではあり得ない非科学的なエネルギーということで、不用意に触らないためにシエルが同行する調査となったのだ。ゼロはその荒野の先を見つめる。その先に、反応のあった物があるという。

 

「ゼロ…今回のこと、どう思う?」

 

「…わからん」

 

「私達の世界で、それもシエルが解析できないような物があるとは思えない。あるとしたらやっぱり…」

 

 ゼロについて来ていたクロワールがそこまで言ったところで、ゼロがその言葉を続ける。

 

「ロストロギア…」

 

「うん、私達の世界で突然変異によって生まれたのか…それとも、異世界から流れ着いたのか」

 

 単に不明なエネルギーというなら普通の解析で済むのだが、ゼロやクロワールにとってはそれらの代物が単なるアンノウンで済まされないことになりかねないということを考慮していた。それがゼロたちの関わった異世界での知識。

 

「もし、ロストロギアだったら…」

 

「その時は破壊するしかない…あいにく、封印は出来ないからな」

 

 魔導師ではない彼がソレを封印することはできない。だが、その物体を破壊することはできるかもしれない。暴走の危険もあるが、誰かに悪用されるのも困る。そんなことを考えながら、時間は過ぎて行くのだった。

 

 

「では、ミッションを開始する。安全を確認したら転送座標を送る」

 

《わかったわ、気を付けてね、ゼロ》

 

 反応地点から少し離れた所でトレーラーが停止し、ゼロはそこから反応地点へと急ぐ。ロストロギアという物の危険性を考慮し、ゼロはシエルにトレーラーに待機してもらって行動を始めた。道には野生化したメカニロイドが数機。ゼロの敵ではない。メカニロイドもこちらには敵意が無いのか、それともゼロが恐ろしく見えるのか、向こうから手を出してくる様子はないようだ。ほどなくして反応地点へと辿りついたゼロは、周囲を見渡した。周囲一帯は変わらず荒野。だが、そこに何かの影を見つけた。倒れ込んでいる人影。ゼロはソレを見つけて駆け寄る。

 

「これは…」

 

 倒れていたのは女性だった。女性は辛そうに呼吸をしているので、一応生きているようだ。クロワールも周囲の警戒をするために上空へと飛ぶ。すると、クロワールが驚きの声を上げた。

 

「ゼ、ゼロ! ゼロ、あそこ!」

 

「どうした、クロワール」

 

「あそこを見て! あれって…!」

 

 クロワールが指差す先を見ると、そこにはガラスのポッドらしきものがあった。その中に横たわる少女。強い金髪をしたその少女に、ゼロは見覚えがあった。

 

「フェイト!」

 

 そう、かつて異世界で敵であったが和解した少女達の一人、フェイト・テスタロッサの姿がそこにはあった。ゼロは女性を安全な場所に寝かせるとすぐにそちらへと駆け寄った。ガラスを丁寧に割って取り除き、フェイトを救出する。その際、フェイトは何故か全裸。クロワールの転送機能でゼロが昔着ていたパーカーをフェイトに着せた。

 

「フェイト、フェイト…! しっかりしろ!」

 

「う、ん…」

 

 ゼロの呼び掛けに反応はするが、意識は戻らない。呼吸はしていることから、安堵するゼロとクロワール。しかし、ゼロには何か違和感があった。このフェイト、どこか前にあったフェイトよりも幼いような気がする。背も小さいし、まるで別人のようだ。

 

「ゼロ、さっきの女の人の所に戻ろう。シエルに連絡しないと」

 

「そうだな。こちらゼロ…シエル、聞こえるか?」

 

《ええ、聞こえるわゼロ。どうだった?》

 

「人間2名を発見。一人は俺と面識のある人間だ。こちらまでの安全は確保した。転送座標を送る」

 

《面識がある…? 了解したわ。未確認のエネルギー反応の方はどうかしら?》

 

 シエルに言われ、ゼロは再度周囲を見渡した。すると、女性と少女の周囲に蒼いひし形の宝石がいくつか散らばっていることを確認する。

 

「宝石を幾つか見つけた。どうやら、これが原因のようだ。現在の所、エネルギー反応があるも危険性は見られない。回収を終えてから転送を頼む」

 

《ええ、わかったわ…》

 

 ゼロはそれに危険性が無いと判断し、それらを回収。倒れていた女性のところへと戻る。すると、そこで女性が苦しそうにしていることに気がつく。

 

「おい…! しっかりしろ!」

 

 ゼロの言葉に答えるように、女性はゆっくりと目を開いた。その紫色の目と、ゼロの黒い瞳が重なる。すると、女性は静かに口を開いた。

 

「ここはどこなの…? 私は、生きているの…?」

 

「…ああ、そうだ。お前はまだ、生きている」

 

 ゼロの回答に、女性は悔しそうな表情を浮かべていた。だが、そんな場合ではない。ゼロから見ても、この女性は明らかに衰弱していることが分かった。

 

「今、トレーラーへ運ぶ。名前を言えるか?」

 

「…私は…私は、プレシア・テスタロッサ…」

 

「「!!」」

 

 女性はそう言って気絶する。その女性の名前を、ゼロとクロワールは知っていた。以前、フェイト自身がゼロに語った出自に出てきた人物の名前。フェイト・テスタロッサの母であり、そして今はこの世にいないはずの人間。それがなぜ、この世界に現れたのか…

 

《ゼロ? 転送はいつでもいいわよ?》

 

「…了解だ、転送を頼む」

 

《え、ええ、わかったわ。転送!》

 

 多くの疑問を残しながらもこうしてゼロは転送され、その荒野を後にするのだった。

 

 

 そこは美しい高原だった。そんな場所に、少女は立っていた。金髪に紅い目をした、幼い少女。少女はキョロキョロと周囲を見渡した。

 

「あれ? ここどこ?」

 

《おや? 人間の…しかも、女の子がここにいるのは珍しいね…》

 

 少女の後ろに、蒼い光が立ち上る。ソレは人の形こそしているが、少女のようにハッキリとした姿ではない。その姿を見た少女は驚きの声を上げる。

 

「お、おばけぇ!」

 

《あはは、まあ確かに…僕はもうお化け、かな? でも大丈夫、僕は君に何もしないよ》

 

「本当…?」

 

《うん、僕は人のためにいるからね》

 

 その蒼い影は頷き、座っていた少女の隣に座りこんだ。すると、安心した少女は蒼い影に質問を投げかけた。

 

「貴方のお名前は? ここで何しているの?」

 

《僕は名乗るほどの者じゃないかな。僕はここで…待っているんだ》

 

 蒼い影は優しい声で答える。少女はその透き通っているかのような優しい声に惹かれて行くような気がした。

 

「何を?」

 

《大切な人さ。そう、すごく大切な友達を。君は、どうしてここに?》

 

「…うーん、わかんない。でも、悲しい夢を見ていたと思う」

 

《夢?》

 

 蒼い影の言葉に、少女は頷き悲しそうな顔になった。

 

「うん。おかーさんがね、ずーっと、苦しそうにしている夢。それでね、おかーさんに新しい家族の女の子が出来て…でも、お母さんはその子を嫌っているみたいだった。お母さんがその子に酷いことして…私の知らないお母さんがそこにいたの」

 

《辛い夢を見たんだね…》

 

「…私がお母さんに『やめて』って言っても、私の声は届かなかった…」

 

 少女の目から、自然に涙が溢れる。やめてと、いつものお母さんに戻ってと、必死に叫んだ。何度も、何度も。だが、その声は届かなかった。泣き始めてしまった少女の頭に、ポン、と優しい掌が乗る。それは蒼い影の手。

 

《怖かったね…》

 

「うん…」

 

《人間は…いや、意志のある者は進化を続ける。でもそれが正しい道かは分からない。道を外しても、またその元の道に辿りつくことが出来る。だからこそ、人間の可能性は無限大だ》

 

「ふぇ…?」

 

 蒼い影の言葉に、少女は首を傾げる。言葉が難しくてついていけないようだ。そんな表情をしていた少女に蒼い影は苦笑する態度を見せ、再度少女が理解しやすいように、説明する。

 

《つまり、君のお母さんは怖くなってしまったけど、また優しいお母さんに戻るかもしれないってことさ》

 

「ホント!?」

 

 蒼い影の言葉に、少女は嬉しそうな顔になった。蒼い影は頷きながらその広大な草原のその先を見据えていた。

 

《人は間違いに必ず気がつく。過ぎ去った過去を振り返り、自身の過ちを悔いる…それが出来るからこそ、未来に進める。人間も、レプリロイドも、きっと…》

 

「幽霊さん?」

 

《さあ、君もそろそろ目覚める時間だ。僕はここで待つことしかできないけど、君には待ってくれている人がいる》

 

 そう言いながら蒼い影は立ち上がり、掌に握っていた光を少女の手に渡した。

 

「これ、なーに?」

 

《それは君への特別なプレゼントだ…君のお母さんの所へ…いいや、君自身の体に戻るための道標》

 

「私の、体…?」

 

《さあ行くんだ。君はまだ、ここに来ちゃいけない。もうすぐこの夢は終わるから》

 

 蒼い影の言葉と共に、少女の体はフワリと浮き始める。そんな少女を襲う異常現象。しかし、そんな現象を無視して少女は蒼い影に向けて叫び続ける。

 

「ま、待って! 幽霊さんは来ないの!?」

 

《うん、僕は留まることしかできない。まだ、彼は来ていないからね…》

 

 必死に蒼い影へと手を伸ばす少女。しかし、少女の意志を無視して少女の体は渡されたひし形の光に引っ張られ、上へ、上へと浮かび続ける。

 

「あ、ねえ!貴方名前は…!? 教えて! 貴方の名前! 私、アリシア! アリシア・テスタロッサっていうの!」

 

《…アリシア、か。良い名前だね。僕は、エックス。ここのことは、きっとアリシアは忘れるだろうけど、僕はずっと覚えているよ。バイバイ、アリシア。僕に楽しい一時をありがとう》

 

 少女、アリシアは段々と上昇して行く。そして最後に蒼い影、エックスはそれを笑顔で見送る。蒼い影だったはずの彼の表情が、アリシアにはハッキリと確認できた。その笑顔はとても優しく、それでいて強い意志を秘めた瞳だった。そんなエックスの顔に、寂しさから流れる涙を流しながらも、同じくアリシアは目一杯手を広げ、笑顔をエックスに向けた。

 

「うん! バイバイ、エックス! ありがとう! またね!」

 

「うん、またね…アリシア」

 

 こうして少女、アリシア・テスタロッサの意識はその空の中へと溶けて行くのだった。

 

 

 




というわけで、1話でした
アリシアとエックスを出すのに一応考えた結果がこんな感じでした
まあ、今後はエックスもStSで出る予定がありますので、お楽しみに

Next「変わる者、変わる世界」
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