魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~ 作:秋風
覚えている人も少ないだろうな、という感じでこっそり更新。
一応、次の話の構想も頭の中ではできているので、後はそれを文面に書き上げられるモチベがあれば、なんとかなりそうです。というわけで、感想、評価など待っております。
リメイク前を読んでいただけている方からすれば、完全に今までとは違う方向へ走っているので、まあ、次回もまたちょっと時間はかかりそうですが、今ちょっとそこそこにモチベがあるので、頑張りたいとは思います。
では、23話です。どうぞ
レヴィアタンが戦闘を始める少し前のこと
「ここが聖王病院か」
『目的地周辺です。音声案内を終了します……なんてね♪」
起動六課より、聖王病院へと出向したゼロとクロワール、そして依頼をしたなのは。ゼロとクロワールは特になんの気に留めることもなくアディオンから降りるも、一方のなのはは違っていた。
「ふえぇぇぇ……」
目を回していた。速度にしておおよそ300km強でここへと到着したわけだが、空戦魔導師として本来のように空を飛ぶのならばともかく、今回は自分の意志とは違う方法でその速度にさらされたことによってなのはは三半規管がダメになってしまい、目を回す結果となった。
「大丈夫か、なのは」
「ら、らいちょうぶれふ~」
明らかにダメそうである。ひとまず病院のベンチの座らせるゼロだが、そこで異変を感じ取る。人の気配がまるでしないのだ。医者も、看護師も、患者も、見舞客や清掃員などすらその姿はない。すると、空中に浮遊するようにレイジングハートが出てきた。
『ゼロさん。先ほど、聖王教会のシスター、シャッハ・ヌエラ様より伝言が。先ほど保護した人造生命体の少女が脱走したとの報告がありました。危険性を考え、病院内の人間はすべて避難させた、とのことでした』
そう、レイジングハートがなのはがそのバイクによってとても通信が聞けないことから受け取ったメッセージを伝える。レイジングハートはできる子である。
「それにしては、やりすぎだろう。あの子供はなんの力も感じなかった」
『彼女はそう思っていないらしいです。また、聖王教会から教会に所属する方が援軍でいらっしゃるとのことです』
「援軍……っ!?」
レイジングハートの話を聞いていたゼロだったが、そこでまるでジェット機のような音と共に感じた殺気を感じてすぐにZセイバーを抜刀して振り抜く。それによって得物がぶつかった。片方はZセイバーだが、もう片方はゼロの武器と似ているが、紅い刀身でやや短いもの。それを見て、なのはは正気になってレイジングハートを手に構えた。
「流石だな、ゼロ……報告書に聞いた通り、腕は鈍っていないようだ」
「お前は……馬鹿な、なぜおまえがここにいる!? ハルピュイア!」
「……それは、私のセリフでもあるのだがな。まあ、いい」
そこにいたのは翡翠のボディに、ゼロとは反対に白いタイツスーツ。羽根を模した形のヘルメットと、物々しいジェットパックを身に着けた1人のレプリロイドの姿だった。それはかつて、ゼロと何度も激突したことのある、ネオアルカディア四天王の一人、賢将ハルピュイア。なのはも驚き目を丸くするのだが、それを見てか、そのレプリロイド、ハルピュイアは剣を下ろして地上へと降り立つ。
「貴女が機動六課のスターズ隊長の高町なのは一尉。俺は聖王教会所属の『神父』、ハルピュイアだ。もっとも、貴殿にはこういった方が分かりやすいか。ネオアルカディア四天王、賢将ハルピュイアだ」
「……! ゼロさんの世界の、ゼロさんと何度も戦った、ネオアルカディアの将軍……」
驚きと共に、自分の仲間であり、想い人であるゼロと敵対してきた人物の1人との出会い。それになのはは緊張な面持ちでレイジングハートを構えていた。ゼロと同じく、この人物に隙というものが見当たらない。バリアジャケットを纏う一瞬すらないほどに。しかし、そんな空気の中、ハルピュイアは自身の愛刀であり、十の光る武具 と呼ばれた武具の一つである『ソニックブレード』を下ろした。
「安心しろ。貴様らと戦う気はない。特に貴殿、人間である高町なのは、貴女とはな……」
「へ?」
「俺は人々の命と未来を守ると誓った身。そうそうのことがなければ、人を斬る気はない。もっとも、お前が戦う気があるというな別だがな、ゼロ」
そう言ってゼロを見るハルピュイアだが、ゼロもそれを見てか、自身の持っていたZセイバーの刀身を消してホルスターへとしまう。
「もともと俺は戦う気はない」
「ふん、相変わらずだな……」
「……なぜ、お前が生きている? お前はあの日……」
「ふっ、その話はあとでいいだろう。ファーブニルを交えた後でも遅くはない」
もう1人の四天王、闘将ファーブニルすらもこの世界にいることに驚くゼロだが、さらに驚くべきはハルピュイアの纏う空気だった。ゼロがかつて出会ったばかりの頃のハルピュイアといえば、はレジスタンス達をゴミと見下すような傲慢なところがあった。だが、ゼロに敗れた後、何度も激突していくうちにハルピュイアという男をゼロは知っていったつもりでいた。他人に厳しく、そして自分にはさらに厳しいが、エックスへの忠誠心はどの四天王よりも強い、厳格な戦士だ。だがしかし、今の彼はどうだろう。今まで纏っていた張りつめている空気を感じない。自分と戦うとき、何もかも忘れていられると言ったときに見せた、1人のただのレプリロイドという印象を受ける。
「あの、そういえば、昨日保護した女の子のことなんですけど」
「ああ、そういえばそうだった。つい話し込んでしまったな。ヌエラの話では、子供が1人脱走した、との報告だが……」
「それほど危険を感じる子供には見えなかったがな」
「……だろうな、彼女の悪い癖だ。俺が言うのもなんだが、まじめすぎる。ファーブニルにも見習わせたいところだ。急いで彼女と合流しよう」
そう言って歩き始めながらもやれやれとため息を吐くハルピュイアと、未だに戸惑いを感じるゼロ、そしてなのははそのハルピュイアの後を続く。しかし、そこで爆発音が鳴り響く。外での戦闘。それにゼロとハルピュイアはすぐに駆け出す。それを追うように、なのはもバリアジャケットを纏って空を飛んで2人と並走する。
「戦闘……!? ハルピュイアさん! これは」
「……十中八九、ヌエラだろう。だが、ゼロ。話が違うぞ。子供に聖王教会のシスター、騎士と戦えるほどの力はあるのか?」
「ない。クロワール……」
「そのとーり! 昨日スキャンしたけど、衰弱した人間の子供! 何の力も感じなかったわ!」
「となると、別の人物が戦っているのか? チッ、報告にあった戦闘機人か? どちらにしろ急ぐぞ、ゼロ。お前と肩を並べるのは余り好まないが……ついてこれるか?」
かつては敵であったから、未だどこか割り切れていない様子のハルピュイア。しかし、ゼロはそんなことを気にした様子はなく、ただ一言言い放つ。
「お前がついてこい」
「ふっ、面白い!」
ゼロの言葉に頬を吊り上げたハルピュイアは、その地面を蹴って跳びあがり、その背中のジェットを使って空中を飛ぶ。それとほぼ並走するように、ゼロはハルピュイアと共にダッシュで走っていくのであった。
*
時間は戻って、聖王病院中庭
「ゼロ……それに、ハルピュイア!?」
「……とりあえず、ヌエラ、武器を下ろせ」
「ハルピュイアさん!? し、しかし……!」
ハルピュイアの言葉に驚く女性、シャッハ・ヌエラだが、そのハルピュイアの無言の圧力と視線にため息を吐くと、シャッハは自身の双剣型デバイスである『ヴィンデルシャフト』を下ろした。が、もう片方のレヴィアタンはそうもいかなかった。ゼロを目にしたことで彼女の中に潜む狂気が顔をだしていた。
「うふ、うふふふ……ゼロ! また貴女に会えるなんてね! ああ、嬉しいわ! 本当にうれしい! さあ戦いましょう! 貴方を今度こそ引き裂いて「レヴィアタン。一度、落ち着け……今、この場で戦うことがお前の目的か?」……仕方ないわね」
好敵手であるゼロを見たことで、彼女の視界にはゼロしか映らなくなって暴走気味に殺気を溢れさせるレヴィアタンだったが、ゼロが戦う気がないことに気が付き、さらにゼロの言葉によって冷や水をかけられたかのように正気へと戻ることで渋々と自身の槍を下ろした。
「レヴィアタン。久しぶりの再会で悪いが、事情を話してもらう。何があった?」
「なにって、あそこの子供、ヴィヴィオをその女から守っただけよ。私は……というか、どういうこと? 久しぶり? だって、私たちはオメガと戦って……」
「ああなるほど、お前も”そこで”記憶が止まっていたか。そのことはあとで説明してやる……ひとまず、高町一尉、彼女を頼めるだろうか。我々では、あの少女を怯えさせてしまう」
ハルピュイアは状況を整理しつつも、近くにいたなのはへ少女、ヴィヴィオの保護を頼んだ。凄まじい戦いを繰り広げたレヴィアタンとシャッハ、そしてそれを止めたゼロとハルピュイアでは少女を怯えさせてしまい、どうなるかわからない。となれば、と、ハルピュイアは人間であるなのはへヴィヴィオを落ち着かせることを頼んだ。なのははそれを承諾すると、彼女が抱えていたが、落ちてしまったうさぎのぬいぐるみを拾い上げてヴィヴィオを宥めに行く。こうして、一連の騒動は幕を下ろすのだった。
*
機動六課
「ふーん? ここは異世界で、私はあの時死んだ扱いになっていて、バイルは1年前に死んだと」
「え、ええ……そうよ。理解できた?」
「できるわけないでしょうが! 何その非現実的、非科学的な話! シエル! 貴女の正気を疑うわ!」
機動六課の食堂にて、エネルゲン水晶から抽出されたエネルギーを変換して飲み物のように飲むレヴィアタンは、シエルにそう声を荒げる。突然、そんな話をされれば、そう叫びたくなるのも無理はない。むしろ、過去、異世界へと転移したゼロの冷静さが異常であったといえる。幸い、機動六課の面々は仕事中故に人はいないのだが、隣で同じようにジュースを飲んでいたヴィヴィオがビクリと震える。
「でも、事実なの。貴女にとっては、受け入れがたいかもしれないけれど」
「……ネオアルカディアの人間たちは、無事なんでしょうね」
普段、ゼロとの戦闘に闘志を燃やすレヴィアタンだが、彼女もまた人を守護するネオアルカディア四天王の一人。ゆえに、彼女としては自分たちの世界の今を知りたかった。
「ネオアルカディアの中心地点……議会があった場所はラグナロク作戦で跡形もなく吹き飛んでしまったわ。今のところ確認できている死者は、辛うじてバイルに『生かされていた』バイル派の議員たちだけ……住居地区にいた人間たちは奇跡的にレジスタンスが救い出した。今は、その辛うじてライフラインが生きているネオアルカディア地区に仮設住居を作っているのが現状ね。少しずつ、エリアゼロへ人を送っているところよ。エリアゼロの居住範囲の開拓と、建設の見積もりから見れば、早くて5年で、ネオアルカディアからエリアゼロへ、人の移動を完了できる」
「……ふーん、あの人間に反旗を翻していたレジスタンスが、人間を助ける、ねぇ? どういう風の吹き回しなのかしらね。」
シエルの説明を受けて、レヴィアタンはどこか苛立ちを覚えた様子でそうシエルに言う。本来ならば、それは自分たちがすべきことだった。人々を守り、その生きることができる範囲を広げていく。それが自分の役割だったはずなのに。と、どこか逆恨みというか、嫉妬のような感情がレヴィアタンには生まれていた。しかし、そんなレヴィアタンを諭すように、シエルはレヴィアタンの手を握る。
「確かに、貴女からすれば虫のいい話なのは、わかっている。人間たちは私たちレジスタンスを恐れてもいた。そして、バイルの支配とレプリロイドの存在から逃げるように人間はエリアゼロへと流れていった。けど、私も、そしてレジスタンスの皆も、決して人間が憎いわけじゃない。私も、彼らも、ただ、死にたくなかった。ただ、それだけだったのよ」
「……」
「そして、私たちレジスタンスと……いいえ、レプリロイドと人間はエリアゼロでまた昔のように手を取り合うことができるようになったの。互いを認め、新しい未来へ歩くことができるようになった。もっとも、それは私たちだけじゃなくて、ゼロの存在も大きいけれど」
シエルの言葉に、レヴィアタンは心の中で燃えるように渦巻いていた負の感情が急速に冷えていくのを感じていた。まっすぐに自分の手を取って見てくるシエルの目に、レヴィアタンは理解してしまったのだ。彼女が言っていることは本当のことだし、嘘偽りでないということを。少ない期間であるものの、自分が生み出され、ネオアルカディアにシエルがいたころ。彼女は自分に嘘をついていたという記憶もない。だからこそだろう、その話を聞いて、自分の世界の人間たちが本当の平和を得ることができたということを……もっとも、そのきっかけとなっているのがゼロであることが気に食わなくはあるのだが。
「わかったわ。今は、貴女の言うことを信じてあげる」
「ありがとう、レヴィアタン」
「話は終わったか」
話を終えたところで、そこにゼロとハルピュイアが現れる。2人ははやてのところへハルピュイアが挨拶と聖王教会からの伝言を伝えてきたのである。もちろん、ゼロ以外のレプリロイドとの邂逅には驚きを隠せなかったし、聖王教会のトップであるカリムを知るはやてからすれば大混乱であった。そして、一方のレヴィアタンとしては、今すぐにでもゼロと戦いたいという気持ちに狩られるのだが、ここで暴れれば多くの人間に被害が出るだろうし、何より、自分の立場というものが危うくなる上に、どうやら組織に所属しているというキザ坊やこと、ハルピュイアの立場も悪くなるだろう。それは、レヴィアタンも望むところではない。
「ええ、ちょうど……貴方とこうして話すのも久しぶりね、ハルピュイア」
そのゼロの隣にいたハルピュイアに、シエルはそう静かに話しかける。彼もまた、エックスを元に作られたレプリロイドであり、その設計や製作には少なからずシエルは関わりを持っていた。また、秘匿ではあったが、システマシエルについてネオアルカディアへ手紙を送ったのも、シエルからハルピュイアへ宛てたこともあった。
「ああ、そうだな。シエル。俺たちの世界のことは、ゼロから聞いた。バイルを倒したこと、ネオアルカディアの人間たちを助けてくれたこと。レジスタンスであるお前に言うのは癪だが……礼をいう。ありがとう」
「いいえ、当然のことをしただけよ。これからは、一緒に戦える。違うかしら?」
「ふん、せいぜい足手まといにならないことだな。貴様らレジスタンスの力などたかが知れている」
「みたみた? ゼロ、あれってはやてが言っていたツンデレよね!」
どこか素直になれないハルピュイアに対して、クスクスとクロワールが笑って水を差す。そんな彼女に青筋を立てるハルピュイアだが、そんな彼を見て、今更ながらレヴィアタンもどこか驚いた様子であった。
「驚いた。あのキザ坊やがこんなに丸くなるなんてね。どうしたのかしら?」
「……色々あった。お前やファーブニルと違い、俺がこの世界で目が覚めたのは半年ほど前のことだ。このミッドチルダにある聖王教会という場所で、今は神父をやっている」
「神父ぅ!?」
ここが異世界である、という説明をシエルから聞いたとき並みに驚きの声を上げるレヴィアタン。今までそれなりに長い付き合いである彼女からすれば、どう見てもあっていない役職であると言わざるを得なかった。
「そのことについては、後日、ここの部隊長と隊長陣たちとともに、聖王教会にて話すことになる。お前はしばらく、ここで待機だ。レプリロイドのメディカルチェックができるのはレジスタンスのトレーラーしかないからな……万が一がある。しばらくはシエルとこの部隊の世話になれ」
「命令しないでくれる? もう、ネオアルカディアはないから四天王もないでしょうに……でもまあ、そうね。あとでここの部隊の隊長さんとやらには会っておこうかしらね」
そう言ってエネルゲン水晶の補給を終わらせるレヴィアタン。そんな相変わらずの彼女に短く笑みを見せるハルピュイアは、ちらりとその隣でジュースを飲む少女、ヴィヴィオを見た。
「それでゼロ。この少女はどうする」
「なのはから、一応しばらくは六課で預かるとのことだ」
「あ、妖精さんだ!」
「はぁい、ヴィヴィオ。一緒に遊びましょうか?」
「いいの!?」
先ほどまで難しい話に首をかしげていたヴィヴィオだが、クロワールを見つけると、椅子から飛び降り、飛び回るクロワールを楽しそうに追いかける。最初こそ、怯えていたが、なのはやクロワールの奮闘によってこの短時間で少しずつ心を開いているようである。特に、聖王病院の一件からレヴィアタンには懐いているし、ゼロもある意味恩人だと感じているのか、先ほどなのはとゼロが離れるときは2人の服をつかんで行かないでと泣き叫んだほどである。
「了解した。カリムには俺から伝えておく。また明日、聖王教会で会おう」
「……ああ」
そう短く言葉を交わし、ハルピュイアはその六課の食堂を後に、聖王教会へと戻っていくのだが、それを見てか、ヴィヴィオがハルピュイアへ「ばいばい」と手を振ると、ハルピュイアは一度だけ振り返り、笑みを見せて右手を挙げて挨拶をして、無言で食堂を立ち去っていくのだった。
*
その日の夜
「やーあー! ヴィヴィオ、お兄さんとお姉さんと寝るのぉ!」
「ヴィ、ヴィヴィオ、お願いだから泣かないで。ね?」
六課のロビーにて、寝間着姿のヴィヴィオが大声で泣いていた。その理由は簡単。ヴィヴィオは、仲良くなったなのは、そしてゼロ、さらにはレヴィアタンと共に寝たいと言い出したのだ。しかし、レヴィアタンは今は検査中で不在。それを説明したところ、だったら、となのはとゼロと一緒に寝たいというのだ。それはできない、と口では言うが、ちょっとそれもありかもしれないと思っているなのはは困ったようにヴィヴィオをあやす。しかし、これが面白くないのがはやて、フェイト、リインフォースの3人である。今日、2人でバイクに乗って聖王病院へ行ったことといい、3人からすればどこか仲が深まっているように見えるのである。そんな嫉妬オーラに怯えるのは当然ながらフォワードメンバー。彼女たちも早々に危機を感じ取って就寝するため寮へと駆け出していたため、すでにここにはゼロ、クロワール、なのは、ヴィヴィオ、はやて、フェイト、リインフォースしかいない。
「これ、明日大丈夫かしら。明日って、ゼロとレヴィアタン、それになのはも聖王教会へ行くんでしょ?」
「シエルとお前に任せるしかない。それより、クロワール、ヴィヴィオをどうにかしてくれ」
流石のゼロも、こうも泣き叫ぶ人間の子供の相手をしたことがないため、比較的子供の扱いに慣れたクロワールにそう促す。クロワールはやれやれと首を振りながら、ヴィヴィオの肩へ降り立つ。
「ねえ、ヴィヴィオ。お姉さんとお兄さんが困っているわ。ヴィヴィオが一緒に寝たいのはわかるけど、今日はお兄さんと寝るのだけで我慢してあげて? そうしたら、明日は私が一日中一緒に遊んであげる」
「ホント?」
「もちろん。さ、ゼロが抱っこでお部屋まで連れて行ってくれるわ。行きましょう」
「……うん」
未だ、クロワールのことを妖精さんと思っているヴィヴィオはそんな彼女の説得に渋々ながらもヴィヴィオはゼロのところへと近づいた。クロワールの言葉を聞いてか、ゼロはしゃがみ込んでヴィヴィオが来るのを待つ。ヴィヴィオもすぐにゼロへ抱き着き、嬉しそうにしていた。
「えへへ、お兄さん一緒に寝よー」
「わかった。部屋へ行くぞ」
「じゃ、おやすみー」
「みー!」
抱き上げられたヴィヴィオは、クロワールの挨拶と共になのはたちへと手を振った。そんなヴィヴィオを、なのははその場が収まったことの安心感と、ゼロと一緒に寝るというチャンスがなくなってしまったことが残念という複雑な気持ちでヴィヴィオを見送り、はやてたちはそんななのはに『お話』をしようと決めつつも笑顔でヴィヴィオたちに手を振っていた。余談だが、この日の夜、またも寮にあるなのはの部屋にて、少し艶のある悲鳴が聞こえたとか聞こえなかったとか。そんなことは露知らず、ゼロは自分が普段眠っている部屋へと戻ることになる。すると、そんなゼロを不思議そうにヴィヴィオが見つめる。
「……? どうかしたか?」
「おにいさん、なんだかパパみたい」
「ブフゥッ!」
その何気ないヴィヴィオの一言に、クロワールが噴出し、笑ってしまう。ヴィヴィオからすると、唯一この六課で出会った大人の男性。ハルピュイアは終始ネオアルカディア時代と同じ格好であったが、ゼロは通常の人間と変わらない服装を着ている。確かに、傍から見れば親子と見えなくはないだろう。ただ、普段のゼロのことを知っているクロワールからすれば、ゼロが父親という図はあまりにも似合わないゆえに、爆笑していた。しかし、ここでそんなクロワールはさらに悪ノリをすることにした。
「フヒヒ……あー、笑った。なら、ヴィヴィオの本当のお父さんが見つかるまで、ゼロがパパでもいいんじゃない?」
「お前は何を言っている。クロワール」
「ゼロ、パパ?」
「……」
クロワールの言葉に、少し驚きつつも、そうゼロを呼ぶヴィヴィオ。ここで、それを断ろうものなら、また先ほどと同じようにヴィヴィオが泣き出す可能性がある。ゼロは小さくため息を吐き、どこか諦めたようにうなずいた。
「好きに呼べ」
「……! うん! パパ!」
そう言って嬉しそうに抱き着くヴィヴィオ。翌日、ヴィヴィオが食堂でゼロをパパと呼んだことではやてたちの間で波乱があったのは、言うまでもないだろう。
原作、StrikerSとの相違点
聖王教会でカリムと対談するのは後日となった。
→レヴィアタンのメディカルチェックのため
というわけで、23話でした。次回は聖王教会での対談編です。戦闘はまたしばらく先ですかね。近いうちに、ゼロVS四天王か、六課VS四天王編もやろうかと考え中です。
ではでは、また次回。
Next 24「対談」