エヴァンゲリオンAnotherWorld   作:時雨光多

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第拾九話 戦いの後に来るものは

議会の喧騒が収まり、ゼーレネルフと改称された組織の重苦しい空気が、僕たちの胸にのしかかる。シンジ君はまだ呆然とした表情で、僕はカヲル君の言葉を反芻していた。公式上ではゼーレの人間が、公然とネルフのトップに立つ。これは、僕たちが想像していた以上に、事態が大きく動き出している証拠だった。

格納庫に戻ると、Mark.06は既に専用の区画に収容されていた。その青鈍色の機体は、月光を浴びていた時と同じく、静かで不気味な存在感を放っている。カヲル君は、いつの間にか僕たちの隣に立っていた。彼の視線は、僕とシンジ君を交互に見つめている。

 

「シンジ君たちも疲れただろう。今日はゆっくり休無と良いさ。」

 

カヲル君の声は、いつもと変わらず透き通るような響きだった。しかし、その言葉には、今までとは違う、どこか責任を背負ったような重みが感じられた。

 

「渚君……その、司令代理って…」

 

シンジ君が、恐る恐る口を開いた。カヲル君は、シンジ君の言葉を遮るように、小さく首を横に振った。

 

「当面の間は、この呼称で構わない。それが、今の世界の望みだからね。」

 

彼の言葉は、まるで全てを悟っているかのようだった。僕たちは、彼の言葉の真意を測りかねていた。

 

「もっとも…」

 

愁いをはらむような声で彼はつづけた。

 

「シンジ君には、カヲルって呼んでほしいけどね。それに君にも」

まるでシンジ君の恋人であるかのごとき発言、ついでに僕。隣でシンジ君が息をのむのが聞こえる。ただ油断はできない、彼は17の使徒であるはずなのだから。

 

「君は……本当に、僕たちの味方なのか?」

 

僕は意を決して問いかけた。カヲル君の瞳が、僕の目をまっすぐに見つめ返す。

 

「僕は、この世界を存続させるために来た。それは、君たちリリンにとっても、最良の道だと信じている。」

 

その言葉は、僕の心に深く響いた。彼の言葉に嘘はないように感じられたが、それでも僕の心には、拭いきれない疑念が残っていた。

 

◇ ◇ ◇

ゲンドウと冬月が身を隠したゼーレネルフの上層部会議室。そこには、ミサトさん、僕、加持さん、リツコ、そして主要なオペレーターたち、そしてシンジ君が集められていた。重い沈黙の中、カヲル君が口を開いた。

 

「では、皆さんに、これまでの経緯と、僕の知る真実をお伝えします」

 

カヲル君は、これまで秘匿されてきたセカンドインパクトの全貌を、淡々と語り始めた。それは、単なる事故ではなかった。ミサトさんの父、葛城博士が提唱し、実行に移された計画だったというのだ。

 

「ゼーレの関係者だった葛城博士は、自分の提唱した理論の正しさを証明するため、海の浄化、すなわちリリン(人類)の住めない赤い世界への変革を求め、それを実行しました。彼自身の命と引き換えにね。」

 

その言葉に、ミサトさんは凍りついたように大きく息をのんだ。彼女の瞳は見開かれ、信じられない、という感情が露わになっている。

「父が…そんなことを…!?」

 

か細い声が震えながら漏れ出た。ミサトさんの顔はみるみるうちに蒼白になり、まるで魂が抜けたかのように呆然と立ち尽くしている。彼女の脳裏には、幼い頃に見た、あの灼熱の光景がフラッシュバックしているに違いない。尊敬し、時に憎んですらいて、そして最後には助けられた父の行動が、こんな形で暴かれるとは。

その隣で、加持さんが冷静さを保ちつつ口を挟んだ。しかし、その声にも隠しきれない動揺が滲んでいた。

 

「あれが大災害ではなく、人為的な物であるとは知っていたさ。だが、それが人類が人類の首を絞めるための儀式で、それの首謀者が葛城の親父さんが首謀者だったとは……」

 

加持さんの言葉は、ミサトさんの絶望に拍車をかけるかのように響いた。彼はゼーレの人間とも深い繋がりを持つ立場であり、その彼が「まったく、まだまだ隠された情報があったとは……」と続けたことは、この計画がいかに深く、そして巧妙に隠蔽されてきたかを物語っている。ミサトさんは、加持さんの言葉を聞きながら、まるで自分自身が嘘にまみれた世界に生きてきたかのように感じているようだった。彼女の目に、一筋の涙が浮かんだ。

カヲル君は、さらに言葉を続けた。ゼーレとゲンドウたちが推し進めてきた人類補完計画の真の目的。それは、サードインパクトで大地を赤く染め上げ、リリンの住めない世界に変えること。しかし、それだけではないという。

 

「魂自体を古の生物である今の肉体を抜け出し、物質化した永遠を生きられる肉体、インフィニティへと変える儀式。それこそが人類補完計画の真の目的です」

 

彼らには、これまで信じてきた世界のすべてが、根底から覆されたような衝撃を受けていた。シンジ君は、ただ茫然とカヲル君を見つめている。

「そんな……馬鹿な!」

ミサトさんが声を荒げた。彼女の顔には、困惑と怒りが入り混じった感情が浮かんでいる。

「そんなことが、許されるはずがない! 人類は、そんな風に勝手に決められるような存在じゃないわ!」

 

が、カヲル君は彼女の言葉に動じることなく、静かに僕たちを見つめた。

 

「ゼーレは、そのために永きにわたり計画を進めてきた。エヴァンゲリオンの建造、そして僕たちパイロットの育成も、全てはシナリオ通りだ。君たちの戦いは、彼らの目的達成のための、単なる駒に過ぎない」

 

カヲル君の言葉は、まるで冷水を浴びせられたかのように僕たちの心を凍らせた。彼らの存在意義、戦いの意味、信じてきた全てが、たった一人の言葉によって粉々に打ち砕かれる。シンジ君は顔を真っ青にして、言葉を失っていた。ミサトさんの怒りの声が、虚しく会議室に響く。

その時、会議室の奥、扉の陰から、ひょっこりと顔を覗かせた者がいた。茶色のツインテールを揺らし、赤いフレームの眼鏡をかけた少女、真希波・マリ・イラストリアスだった。

 

「やっほー、みんな深刻な顔してるねぇ。何のお話かな?」

 

マリは場違いなほど軽い口調でそう言った。その声に、会議室にいた全員の視線が集中する。加持さんは、マリの姿を見ると、小さくため息をついた。

 

「マリか。お前も来てたのか」

 

加持さんの言葉に、マリはにっこりと笑い返した。

 

「そりゃあねぇ、こんな面白い話、聞かない手はないでしょ? 加持さんも、相変わらず美味しいとこ取りだね」

 

マリの視線が、カヲル君へと向けられる。カヲル君は、マリの登場にも動じることなく、静かに彼女を見つめ返していた。

 

「君も来ていたんだね。仕組まれた子供の運命ともいうべきか」

 

カヲル君の声は、どこか訝しげだった。

 

「んー、セカンドインパクトの話あたりからかな? いやぁ、君の説明、分かりやすかったよ。おおむね、私の知ってる話と合ってるしね」

 

マリの言葉に、ミサトさんが大きく目を見開いた。

 

「真希波マリ、だったかしら。あなた……なぜ知っているの!?」

 

ミサトさんの問いかけに、マリは肩をすくめた。

 

「だって、事実だもん。人類補完計画も、インフィニティの話も、冬月研での話とほとんど同じだよ?」

 

その言葉は、皆にとってさらなる衝撃だった。マリが司令と旧知の仲であり、人類補完計画の真の目的を知っていたという事実。それは、彼らがどれほど真実に遠い場所にいたのかを、まざまざと突きつけるものだった。

シンジ君は、マリと碇司令の関係性、そして彼女がこの事実を知っていたことに、混乱を隠せないでいる。ミサトさんは、加持さんだけでなく、マリまでもが自分たちの知らない裏の情報を掴んでいたことに、顔を歪ませた。

 

「碇指令が……あなたに……?」

 

ミサトさんの声は、信じられない、という感情が露わになっていた。マリは、そんなミサトさんの様子を見て、にやりと笑った。

 

「そ。ま、細かいところは違うけどさ。でも、これでみんなも、この世界の本当の姿を知ることができたわけだ」

 

マリの言葉は、皮肉めいて聞こえた。しかし、彼女の瞳の奥には、どこか寂しげな色が宿っているように見えた。僕たちは、マリの言葉の真意を測りかねていた。彼女は、一体何を企んでいるのだろうか。そして、この世界の真実を知って、僕たちはこれからどうすればいいのだろうか。マリの言葉に、僕たちの心はさらに揺さぶられた。碇司令とマリの繋がり、そして彼女が補完計画の真実を知っていたという事実。あまりにも多くの情報が一度に押し寄せ、彼らは頭が追いつかない。その中で、ふと加持さんが口を開いた。

「冬月研、か……。そういえばマリ、君は、見た目は学生のままだな。冬月先生というなら15年以上前の話になりそうだが?」

 

加持さんの言葉に、マリは眼鏡のブリッジをくいと持ち上げた。

 

「ん? あぁ、そりゃあねぇ、エヴァに乗ってるからさ」

 

マリはあっけらかんと言い放った。その言葉に、僕たちは一斉に息をのんだ。

 

「……え?」

 

シンジ君が、呆然とした声で呟く。マリはそんなシンジ君の反応を見て、にやりと笑う。

 

「『エヴァの呪縛』だよ、シンジ君。エヴァに乗った時の年齢から、見た目が変わらなくなるのさ」

 

マリの言葉は、僕たちの耳には信じられない響きだった。つまり、マリが何十年も前にエヴァに乗っていたとしても、その時から彼女の肉体は成長を止めているということになる。それは、僕たちパイロットにも起こりうる現象なのだろうか。僕たちの胸に、新たな不安がよぎる。

ミサトさんは、眉をひそめてマリに問いかけた。

 

「そんな馬鹿な話があるはずないでしょう!? それが本当なら……」

 

マリは、ミサトさんの言葉を遮るように首を横に振った。

 

「副作用ってやつね。神の力を使ったんだから、代償としては安い話でしょ」

 

 

マリの言葉は、僕たちの心をさらに深く揺さぶった。エヴァに乗ることで肉体の成長が止まる「エヴァの呪縛」。それは、僕たちが背負うことになる、あまりにも重い代償だった。その場に重苦しい沈黙が落ちる中、カヲルが静かに口を開いた。

 

「サードインパクトにはね、リリスと“真のエヴァンゲリオン”が必要なんだ。まがい物のエヴァじゃいけない。本物の神たるMark.06を使わないと、本当のサードインパクトは起こせない」

 

カヲルの言葉に、僕たちの顔には驚愕の色が浮かんだ。ゲンドウ司令やゼーレが、まさにそれを目論んでいる。つまり、いつか彼らがここ、僕たちのいる場所を攻めてくるかもしれないということを意味していた。あまりにも唐突な事実に、僕たちは息を呑む。

この情報は、決して外部に漏らしてはならない。もし公になれば、計り知れない混乱とパニックを招くことは想像に難くない。僕たちは顔を見合わせ、無言で頷き合った。そして、ミサトさんが重い口を開いた。

 

「…この話は、決して外部に漏らさない。そして、ここの警備を最大限に強化するわ。いつ、彼らが現れてもおかしくない」

 

僕たちはその決定に従い、今後の警戒態勢を敷くことになった。エヴァの呪縛という個人的な絶望に加え、サードインパクトという人類の命運をかけた戦いが、すぐそこまで迫っていることを突きつけられたのだ。僕たちの心は、新たな決意と、拭い切れない不安に苛まれていた。

第三新東京市、そしてNERV本部への脅威が現実味を帯びる中、司令部は警備強化を決定した。その具体的な対策は、以下の通りとなる。

1. 市内監視システムの高度化

第三新東京市内の監視カメラシステムを大幅に強化する。特に、顔認証システムの精度と処理速度を飛躍的に向上させ、不審者の早期発見と追跡を可能にする。この高負荷なデータ処理は、NERV本部が独自に開発した第7世代有機スーパーコンピュータシステム「MAGIシステム」に一任される。マギの並列思考を応用することで、市内全域の膨大な映像データから異常を瞬時に検出し、関係各所に警報を発する体制が構築される。

2. NERV本部セキュリティの再構築

NERV本部のセキュリティ体制も、抜本的に見直される。赤木リツコ博士が主導し、以下の多層的な防御策が導入される。

入退室管理の厳格化: 生体認証システム(網膜スキャン、指紋認証など)を多重化し、権限レベルに応じた厳格なアクセス制限を設ける。

内部監視の強化: 主要区画への監視カメラ増設に加え、AIによる異常行動検知システムを導入。不審な動きやアクセスパターンをリアルタイムで分析し、即座に担当者へ通知する。

物理的防御の強化: 外部からの侵入経路となりうる箇所には、より堅固な防護壁やセンサーを設置。地下通路や旧式施設など、死角となりやすい場所の巡回も強化される。

情報セキュリティの徹底: 内部ネットワークへの不正アクセス対策を強化。重要データの暗号化や、アクセスログの厳重な管理を徹底し、情報漏洩のリスクを最小限に抑える。

緊急時の対応プロトコル改定: 外部からの侵入や内部での不測の事態に備え、全職員の役割と行動規範を明確化した緊急対応プロトコルを改定。定期的な訓練を通じて、迅速かつ的確な対応能力を維持する。

これらの対策は、ゲンドウ司令やゼーレがMark.06を用いてサードインパクトを起こそうとする可能性に備えるためのものだ。NERVは、来るべき脅威に対し、これまで以上の警戒と準備をもって臨むことになる。

 

――――――

 

『次回予告』

ガフの守人、それは”神殺しの力”を持つ天界の守護者。曰はく、それはアダムスへの信仰の名残。それを僕らは…

次回「人の創りし箱舟」




ここら辺からは、情報が全くないので手探りで書いていきます。NHGとかどうやって承認得て作れたのかよ!とかなんでこんなめんどくさいもの出したんだよ。とか言いたいことはぐっとこらえて書いていきますので温かい目で見てやってください。
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