「…なぜ!……どうしてMark.06が動いているの!」
ミサトの絶叫のその先、画面の奥で暗い巨人が、静かに胎動していた。
司令部の混乱と喧騒の中、ミサトは震える手で、渚司令への緊急通信回線を開いた。彼女の脳裏には、この異常事態が碇ゲンドウによるものであるという確信が浮かんでいた。しかし、カヲルの口から、想像をはるかに超える真実が告げられるとは、彼女自身も予期していなかった。
「……渚指令、聞こえますか!?」
通信が繋がり、スピーカーから静かで落ち着いた声が返ってくる。それは、この阿鼻叫喚の地獄とはあまりにもかけ離れた、穏やかな声だった。
「彼らは焦っているみたいだね。予定とは異なる儀式が始まってしまったみたいだ」
「始まってしまった、ですって……!?」
ミサトは、カヲルの言葉に戦慄する。この状況が、まるで彼の予期していた通りであるかのような口ぶりだったからだ。
「そうさ。シナリオの修正。リリンの言うサードインパクト……老人たちはどうやらこの場所を選んだようだね」
カヲルの言葉は、ミサトの頭に混乱を招いた。彼が何を言っているのか理解できなかった。ミサトが現在の状況を伝えようとすると、カヲルは言葉を継ぐ。
「知っているさ。彼ら……君たちを脅かすものたちは、原罪を持たない浄化された存在、第11番目の使徒だからね」
「使徒……!?」
ミサトは驚愕した。これまでの混乱が使徒によるものだったということに。しかし、彼女の目の前のモニターには、普通の人間が、まるで機械のように動いている姿が映っている。
「…そんなはずは!彼らの波形は、以前パターンオレンジのままです!」
青葉の叫びが、司令室に響く。使徒特有の波形と、それを感知するシステムが、依然沈黙を貫いている。その答えに意味深げにカヲルが口を開く。
「その波形は、確かに彼らを使徒たらしめる記号かもしれない。しかし、君たちは彼らが常に異なる形状、性質を持っていたことを忘れたのかい?もっとも、彼らは通常の使徒とは袂を分かつ存在だけれどね」
続けて淡々と語る。それは、衝撃の事実であった。
「彼らは、碇君の父上が神の理を乱し、儀式のために細工した存在だからね」
カヲルの言葉は、ミサトたちの理解をはるかに超えていた。神の理を乱し、何のためにこのような異形の存在を作り上げたのか。その狙いは人類を絶滅たらしめる補完計画なのか。しかし、なぜそんなことまでして...
「葛城三佐!」
その時、焦りを帯びたオペレーターの声が響いた。ミサトは、カヲルとの通信を保留にし、オペレーターに視線を向ける。
「どうしたの!?」
「兵士たちの動きが…止まりました!まるで、糸が切れた人形のように…!」
モニターに映し出されたのは、数秒前まで猛攻を続けていた「兵士」たちが、その場でピタリと動きを止め、銃を下ろす姿だった。彼らの能面のような表情は変わらないが、その瞳に宿っていた冷徹な輝きは消え、ただ虚ろな光を湛えている。
「おいおいなんだよ。終わったのか!?」
青葉が叫ぶ。しかし、その声には安堵よりも、一層の困惑が滲んでいた。何が起こったのか、誰も理解できていなかった。なぜ、彼らは急に攻撃を止めたのか。
「何かあるわ…情報上げて!!」
ミサトが叫び、オペレーターたちが慌ただしくキーボードを叩く。彼らのモニターには、先ほどまで壮絶な戦闘が繰り広げられていた場所の映像が映し出されていた。そこには、糸が切れた人形のように頭だけを垂れた「兵士」たちの姿があった。
「全セクターで、敵の活動が停止しました!まるで、一斉に電源が落ちたようです!」
「なぜ…!」
リツコが信じられないといった表情で呟く。しかし、彼女の冷静な分析能力が、この異常事態の背後にある、より大きな危険を察知していた。その時、別のオペレーターの叫びが響いた。
「映像に異常!別の角度からの映像に切り替えます!」
広域モニターの映像が切り替わると、そこには、頭を垂れた兵士たちの横顔が映し出されていた。そして、その能面のような顔が、まるで薄い皮が剥がれるように、糸を引いて剥がれ落ちていく。
その瞬間、司令室のコンソールがけたたましい警報音を鳴らした。
「パ、パターン青…!まさか…!」
青葉が信じられないといった表情で叫ぶ。
「やはり、渚司令の言っていたことは本当だったようね…!」
ミサトが唇を噛み締める。剥がれ落ちた顔の下から現れたのは、彼ら一人ひとりの顔だった。しかし、その顔は、どれも同じ、無表情な綾波レイの顔だった。
そのおぞましい光景に、司令室は静まり返った。
「な、なんだ、あれは…!?」
「う、嘘…ファーストチルドレン…なのか…?どうして…」
彼らが、綾波レイの顔を露わにしたその時だった。
兵士たちは、手にしたナイフを、何の躊躇もなく自らの首へと振り下ろした。乾いた音が、静寂に包まれた司令室に響き渡る。
ゴトッ…ゴトッ…と、まるでリンゴが地面に落ちるかのように、彼らの首が次々と地面に転がっていく。血飛沫一つ上げず、まるで最初からそうなることが決まっていたかのように、彼らは静かに死んでいった。
その異常な光景に、司令室は再び静寂に包まれた。
「全信号消滅……し、使徒……完全に沈黙しました……」
オペレーターの震える声が、その静寂を破る。彼のモニターには、先ほどまで表示されていた「パターン青」の波形が、まるで最初から存在しなかったかのように消滅している。
安堵の声と、困惑の声が入り混じる。
「嘘…本当に終わったの!?」
「でも、なんで…?」
そうオペレーターが口々に声に出す。
「これは…戦闘行動の停止ではないわ。彼らの役割が、終わったのよ」
リツコの言葉が、その安堵の声を引き裂いた。その時だった。
「高エネルギー反応…NERV本部地下!ターミナルドグマです!」
日向が、震える声で叫ぶ。
「やはり…!」
ミサトは唇を噛み締める。この一連の出来事が、単なるテロではないこと、そして「兵士」たちの行動が、より大きな何かのための布石に過ぎなかったことを、彼女は悟っていた。この奇妙な終結は、新たな、そしてより大きな絶望の始まりを告げているかのようだった。ミサトの焦燥した声が、司令室に響き渡る。
「サードインパクトが始まる…!何としても食い止めて!」
彼女の声には、怒りと、そして、この世界を終わらせないという強い意志が宿っていた。
――――――
『次回予告』
絶望的な攻防の中、突如として止まった兵士たち。糸が切れたかのように動きを止めた彼らの真実が、残酷なまでに露わになる。それは、ミサトたちの想像を絶する、おぞましい光景だった。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
戦慄する司令部を嘲笑うかのように、ネルフ本部地下、ターミナルドグマの扉が開く。そこで胎動する巨大な影。人類の運命を賭けた儀式が、今、静かに始まろうとしていた。
次回「死に至る病とは絶望である」
認識として(仮説です)
覚醒に必要なもの トリガー 贄
ニアサード シンジレイ 初号機 10使徒
サード シンジレイ 初号機(リリス?) 11使徒
ニアフォース シンジカヲル 13号機 12使徒
フォース アスカカヲル 13号機 9使徒
覚醒自体は一つの魂でもできる
二つの魂がある状態で贄をささげるとトリガーになる
覚醒したからと言ってインパクトになるわけではない
セットでインパクト
リリスが儀式に必要
そう考えるとオリアスさん優しいね。