「なんで僕たちが掃除なんか……」
「そんなこと言ったって仕方ないよ、ミサトさん掃除できないと思うし……」
「まああの惨状を見ればね……。」
「なんか言ったぁ~?」
「あ、おはようございます!」
眠い目をこすりながら起きてきたのは葛城ミサト、この家の家主だ。そしてこき使われてぶー垂れているのがカナメこと僕と初号機パイロットの碇シンジである。引っ越し初日は知っていることとはいえ驚いた。なんせゴミ山状態だったんだから……今でこそ二人掛かりでようやく人の生存できる状態にまで復興したとはいえ本当に大変だった。
「そいじゃ、皆の衆傾注~」
そんな回想も束の間ミサトさんがあるものを差し出してきた。僕らがのぞき込むとそこには『第壱中学校転入届』の文字。ミサトさんの話を要約すると僕らは中学二年生なのだから学校に行くべき、将来はまだ長い、街をよく見て、とのことだった。二つ目に関しては僕の気も知らないで……という感想しか出なかったし、三つ目に関してはシンジ君が戦いづらくなってしまうのではないかと思ったが、許すか。だってこの人、不器用だもん。
「それじゃ、頑張ってね、二人とも!」
「はい」「行ってきます」
僕たちも各々思うことはあったが、取り敢えず学校へ向かってみることにした。通学路はとても新鮮だった。アニメでは省かれていた並木通り、商店街、横断歩道、そのすべてが新鮮だった。
「そういえばなんだけどさ」
「ん?どうしたの?シンジ君」
浮かない顔をしてシンジ君が話しかけてきた。どうしたんだろう悩み事かな。そのようなことを考えてきたら再び、今度は食い気味に指摘してきた。
「それだよそれ、いつも名前呼び捨てにしてただろ?どうしちゃったんだよ」
そうか、この世界の僕はシンジ君と元からの友達だったということになっているんだった。しかし困ったことに僕にその記憶はない。正直に言うか?いや、事態が複雑になるのもよくない。ここはサキエルとの初遭遇の際に破片か何かが頭に当たって軽度な記憶喪失になったってことにしたほうがいいだろう。少し疑われはするだろうけれど、ここから一緒に過ごしていく中でこの世界の僕の振る舞いについてわかるかもしれない。
「少しまじめなことを言うとさ。あのでっかいやつが飛んできたときに破片か何かが当たって少し記憶に靄がかかってるみたいなんだよね。」
「え……」
「ま、まあでもシンジ君のことは覚えてるし、勉強にもたぶん不自由はないと思うから大丈夫だよ!」
軽く言ったつもりが、一目でわかるほどショックを受けているシンジに僕は慌ててフォローをする。意味はそんなにないだろうけれど。でもしないよりはましであろう。
「でもよかった。変によそよそしかったから……」
「ほんとに言い出せなくてごめん!」
なんて会話をしていると同じ服装をした人が増えてきた。多分、第壱中学校が近いのだろう。楽しみだなあ、今度はトウジ達に会えるのかぁ。なんて少し期待しながら足取りがどこか軽くなっていくのを感じる。しばらく進むとついにその建物は姿を現した。第三新東京市立第壱中学校。エヴァンゲリオンのパイロットたちが生徒として過ごす本編の聖地だ。期待とさらに大きな期待を胸に、僕は敷地内へ大きな一歩を踏み入れた。
◇ ◇ ◇
「オノレら仲良うしゃべってるとこ、えらいすまんな」
転校初日のあいさつや僕たちへの質問合戦などもひと段落し、シンジ君の手作り弁当を食べている最中、見知った人物が話しかけてきた。
「なんか用かな?トウジ君」
「あれ、ワシ自己紹介したやろか。まあええわ。昨日のドンパチしてたあれのパイロット、オノレらのどっちかやろ。そっちにちょいと話せなあかんことあるんやが」
自分の名前を呼ばれて少し驚くトウジ、それでもこれから話す内容が大事だからとすぐに切り替え、エヴァのパイロットが僕らのうちのどちらか聞いてきた。彼にとってはそのほうが大事だろう。なぜなら彼の妹があの戦いで負傷しているはずなのだから。
「それなら僕だけど……」
「ほな、ちょいと面貸してもらうで」
と、半ば強引に連れていかれるシンジ。多分あのイベントが起こるのだろう。さてどう止めたものか、そもそもこれは止めたほうがいいのか……?などと思案しているうちに教室から出て行こうとするシンジ達。
「ちょっと待って!やっぱり僕も行くよ!」
考える時間が欲しかったがついていくことにしてしまった。焦っていたとはいえこれでシンジ君たちが友達になれなかったら困るな。なんて考えてももう遅い、歯車はすでに動き出してしまったのだから。
しばらく無言で歩いた後、先頭を行くトウジが校舎裏で立ち止まり、少しの間の後
「すまんなぁ、転校生。ワシはお前を殴らないかん。殴っとかな気が済まへんのや」
そう言ってトウジはこぶしを上げると、シンジの頬めがけてこぶしを振り下ろした。
「ゔっ……!」
「カ、カナメッ!?」
が、その拳の衝撃は振り上げた相手とは別の相手、正確に言うと間に割って入った僕の顔面に響いた。ドスッ…と鈍い音がして倒れた後シンジが僕の名前を呼びながら駆け寄ってくる。
「ワ、ワシとこいつの間に入ってくるからじゃっ!」
僕に肩を貸して起こそうとしてくれているシンジを指さしながら声を張るトウジ。と、対照的に「あちゃ~」という顔のケンスケ。殴られたところが熱を帯びたかのように熱く、ズキズキと脈打っている。
「急に殴り掛かってくるお前が悪いだろっ!それにシンジは使徒からこの町を守ったんだ!それなのに!」
「っ……!」
痛みで多少口調が荒くなってしまったが正論だろう。シンジ君に「ありがと、もう大丈夫」と礼を言って立ち上がり、そのまま睨みつけながら後ずさるトウジに詰め寄った。が、その間にケンスケが慌てたように身を挟み弁明してきた。
「悪い、この間の騒ぎで、コイツんの妹さん、怪我しちゃってさ。……ま、そういうことだか「でもっ……シンジはトウジの妹も含めて、守るために戦ったんだよ。乗りたくて乗った訳じゃないのに……」
「カナメ……」
ケンスケが言葉を言い終わらないうちに叫んだ。僕がアニメを見ている時からずっと思ってたことを。あの壱話で半ば強制的に乗せられたこと、親との確執。そう、シンジにだっていろいろあるんだ。それなのに……隣で唇をかみしめているシンジを横目に心のあらましをすべてぶつけた。しばらくの沈黙の後、最初に口を開いたのはトウジだった。
「……すまんかったな、二人とも。ワシは妹がケガして、気持ちの整理がつかへんかったんや。おやじたちは研究所勤めであまり家におらんし、大事な妹傷つけられて黙っとられんかったんじゃ。ホンマに申し訳あらへん……」
「トウジ……」
あの強情なトウジが……と言いたげにケンスケが目をぱちくりさせているのが分かる。僕もこの場で和解できるとは思っていなかった。
「わかってくれたなら嬉しいよ。ね、シンジ君。」
「う、うん……」
いつの間にか戻っていた『シンジ君』呼びにシンジは少し落胆しつつもこの場が丸くおさまったことに安堵しつつも少しの疑問が胸に残った。が
「カナメ、ワシを殴ってくれ!手抜きは無しや、ええから早うせい!せやないと、ワシの気持ちもおさまらん!」
「ええっ!?」
というトウジとカナメの突飛な会話に、その思考もかき消され宙に霧散していった。その後すぐに、ゴッ…という鈍い音が学校中に響き渡り、
「……これで貸し借りチャラや!殴ってすまんかったな。それと、これからよろしゅう頼むで、二人とも」
という右頬をさすりながら放たれた鈴原の言葉とともに、新しい学校生活が始まったのであった。
――――――
『次回予告』
飛来する二体目の使徒、シェルターに避難したカナメたちは、エヴァと使徒の戦いを一目見ようとシェルターを抜け出し、山上を目指す。
そうだよ!さすがにエヴァオタクとしてエヴァの戦いを一目見たい!先の戦闘だって尋問で見れなかったんだから!
次回『きっと鳴るよ、電話』
この次もサービス~サービスぅ~!
多分全部3000字くらいになると思います。理系の大学生なので文才は低いと自負しています。なのでだれか完結したらこの内容で漫画やら校正した小説やら書いてくれると嬉しかったりします。元々、アニメを知っている俺がその世界に入ったらどう立ち回るかをよく想像していたりしたので、それがきれいな小説になってくれればうれしいななんて思ってます。