エヴァンゲリオンAnotherWorld   作:時雨光多

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そろそろ物語の終幕に向けて準備しています。ここまで4年間、大学1年から4年の今日まで執筆してきましたが、もう終わるとなると感慨深いですね。物語のサブタイトルの兼ね合い上、ここからは書き溜めようと思います。次に投稿するまで時間はかかると思いますが、次に投稿した時には、終幕までの手筈が整ったと思ってください。今まで見てくださりうれしい限りですが、もう少し、お待ちください。


第参拾四話 コンマ数秒の奇跡

その瞬間だった。コード4Bの爆散、その光が消えたことをトリガーとして。

静観していた敵の大群が、一斉に動き出した。

L.C.L.の海が激しく波打ち、地上絵の広大な縁に沿って静観していた千体を超えるエヴァ モドキが、巨大な津波のように押し寄せてくる。

 

「嘘……だろ……」

 

シンジが絶句する。彼のモニターの警告アラートが、狂ったように点滅する。

マリの声が冷静に分析する。

 

「Mark.07シリーズ! 見た感じ千体は超えてるねぇ。冬月先生はさっきの手練れと飽和攻撃のセットを使って、私たちの疲弊を狙ってるみたいね。」

 

その千体のMark.07は、一糸乱れぬ隊列で、まるで意思を持つ巨大な壁のように、L.C.L.の海を波のように押し寄せながら襲い掛かる。全ての機体が、まるで頭突きのように、体当たりによる飽和攻撃を仕掛ける態勢を取っている。

シンジは恐怖に体が固まるのを自覚しながら、震えるプラグ内で、リーダーとして声を絞り出した。

 

「やってやろうじゃないか! みんな!目標は中央の構造物! 突破するしかない!全機、防御に徹しながら前進!」

 

五機のエヴァは、人類補完計画の最後の悪意が具現化した、千体の敵へと相対した。

 

「全機、防御に徹しながら前進!絶対に止まるな!」

 

シンジの指示が響くが、その声は千体のMark.07がL.C.L.を切り裂いて迫る轟音にかき消されそうだった。

千体のMark.07は、もはや敵機ではなく、赤い海を這い上ってくる巨大な泥流そのものだった。彼らは一切の戦術を持たず、ただ最も近いエヴァに体当たりを仕掛けるという、最も原始的かつ絶望的な飽和攻撃を仕掛けてきた。

レイが解析を続ける。

 

「彼らはA・T・フィールドを展開していないわ。けれど、機体そのものが高硬度装甲でおおわれている……単なる体当たりでも、こちらの機体を押し潰せるわ。」

 

「こんなの、弾幕じゃなくて壁じゃないのよ!」

 

マリが叫ぶ。

エヴァ五機は、円形陣から楔形に隊列を組み替え、シンジの初号機が先端を担う突破体制へと移行した。

シンジは、この戦闘が殲滅戦ではないことを理解していた。目標は、中央の構造物。

 

「初号機、全速前進!マゴロク・ソード、最大出力!」

 

初号機は、千のMark.07の壁に、自らの機体を鑿のように叩き込んだ。両手に構えたソードは、高周波振動でMark.07の装甲を切り裂くが、その一機を破壊する間に、さらに二機、三機が初号機に体当たりを仕掛けてくる。

ドゴン!バキィッ!

鈍い音と共に、初号機の装甲が悲鳴を上げる。シンジはA・T・フィールドを機体周囲に展開するが、敵の数が多すぎ、フィールドが次々と中和され、貫通していく。

 

「シンジ君、押し込まれている!左翼が崩れる!」

 

カナメが警告する。

シンジは決断した。防御を最小限に抑え、機動性に全てを賭ける。彼は、左側から迫る三体のMark.07に対し、ソードではなく、初号機の巨体そのものをぶつけた。

装甲を犠牲にした回避と反撃。Mark.07は体勢を崩して弾き飛ばされるが、初号機の左肩装甲には深い亀裂が入った。シンジの体にも、激しい反動が伝わる。

 

「アスカ!後続を頼む!」

 

シンジは、突破口を維持し続けることだけに集中し、前へと突き進んだ。

 

「うるさいわね、わかってるわよ、バカシンジ!」

 

アスカは、シンジが身体を張って開けた突破口のすぐ後方に位置取った。両手にもつプログレッシブナイフの振動を最大化させ、まるで巨大なチェーンソーのように展開させた。

彼女の役割は、突破口を塞ごうとする敵を、出現する端から断罪していくこと。

 

「どけぇぇぇぇえええ!!!」

 

右手のプログレッシブナイフは、シンジが装甲をへし折ったMark.07の急所であるコアを正確に抉り、左手のプログレッシブナイフは、脇腹から回り込もうとする敵機の頭部を叩き割る。

彼女は、体術を多用した。突っ込んできたMark.07の肩を掴み、その慣性を利用して旋回投げ。投げ飛ばされた敵機は、後続のMark.07を数機巻き込み、一時的な空白地帯を作り出す。

しかし、Mark.07の飽和攻撃は容赦ない。アスカの2号機の足元に、四体が集中して体当たりを仕掛け、2号機の機体が地面に縫い付けられる。

 

「くっそ!数が、多すぎる!」

 

アスカが苦悶の声を上げる。彼女の顔面ディスプレイに、圧迫個所を示すエラーが激しく点滅した。

レイの零号機は、アスカが拘束された状況を冷静に見極めた。

 

「零号機、ライフル、最大チャージ」

 

レイは、改陽電子砲を、アスカに体当たりを続けるMark.07の集団ではなく、そのさらに後方に密集している群れに向けた。

ドォォォン!!

一発のビームが、Mark.07の隊列の中心線を貫通。レイは、一つのコアブを起点とした連鎖破壊を起こし、後方部隊の戦意ではなく存在そのものを削りにかかった。一撃で七体のMark.07が消滅し、煙幕が上がる。

その隙に、レイはライフルを携行したまま、A・T・フィールドを最大展開し、アスカの2号機に向けて突進。自らのフィールドでMark.07の体当たりを遮断しながら、2号機を拘束から解放した。

 

 

「……感謝するわ。...えと…アヤナミ」

 

アスカが短く感謝を述べる。

レイは無言で頷き、再びライフルを構え、突破ルートの側面から迫るMark.07の波を、正確な長距離射撃で掃討し始めた。彼女は敵の数の多さを認識しながらも、冷静に、最も効率の良い破壊を続けていた。

マリの8号機は、隊列の右翼に位置し、主に弾幕による援護を担当していた。

 

「みんな、中央突破に集中!サイドはワタシが全部引き受けるわよ!」

 

マリは、Mark.07の一体一体を狙うことを諦めた。8号機の外付けウェポンラックからは、クラスターミサイルとグレネードランチャーが、L.C.L.の海に飽和的に射出される。

彼女の戦術は、爆発による密度破壊。Mark.07が密集したタイミングでグレネードを打ち込み、その爆発の衝撃で、周辺のMark.07の体勢を崩し、一時的な行動不能に追い込む。

 

「邪魔しちゃぁやあよっと!」

 

さらに、マリは8号機の高速レールガンを掃射モードに切り替え、L.C.L.の海面を切り裂くように、敵の足元を狙って連射。機体のバランスを奪うことで、敵の体当たり攻撃の精度を意図的に落としていた。

ガガガガッ!ドォン!

Mark.07が次々と弾かれ、衝突し、自壊していく。マリは、自身の火力を最大限に活用し、敵の物量を無力化に特化させることで、突破の成功率を高めていた。

カナメの3号機は、シンジとレイの中間に位置し、隊列の中央部を安定させる「防波堤」としての役割を担った。

 

「シンジ君、あと500メートル!隊列を維持して!マリ、左翼の敵、数が多すぎる!レイ、援護!」

 

カナメは、絶え間なく情報を整理し、指示を出す。

彼は、自らの戦闘力を、味方のフォローアップに全振りした。

左翼からシンジに迫るMark.07の群れに対し、カナメは3号機の高振動ブレードを展開。ブレードは、防御に徹するのではなく、Mark.07の突進の間に割り込み、敵機の体勢を崩し、味方の射線へと押し出す役割を果たした。

ガキン!

ブレードで受け流されたMark.07は、そのままレイの陽電子ライフルの射線に飛び込み、一撃でコアを破壊された。

さらに、敵の体当たりを回避した後、3号機のショルダー部から射出されたアンカーで、敵機を拘束。その敵機を盾として使い、後続のMark.07の攻撃を防ぎながら、隊列を維持した。

カナメは、戦場全体を俯瞰し、常に最適な位置取りで、仲間の戦闘を支える冷静な分析と献身的な防波堤として、この絶望的な総力戦を、「個」の連携戦へと昇華させていた。

 

五機のエヴァは、血の海と化したL.C.L.の中を、Mark.07の残骸を踏みつけながら前進した。突破したMark.07の死骸の山は、一時の壁を作り出し、残りのMark.07の進軍速度をわずかに鈍らせた。

 

「やった……あと少しで突破だ!」

 

シンジが、荒い息の中にも勝利への確信を込めて叫ぶ。

目の前には、巨大な地上絵の中心にある円形構造物が、鮮明に見えていた。その背後には、四体の黒いアダムスの器が、依然として静かに佇んでいる。

 

「構造物の中心まで、距離100!このまま一気に!」

 

カナメの声が緊迫する。

突破成功まで、あとわずか数十メートル。 五機のエヴァがMark.07の残骸が積み重なったラインを越えようとした、その刹那だった。

 

静止していたはずのアダムスの器の一機が、突破してきたMark.07の残骸に紛れるように、ぬらりとその巨体を動かした。

L.C.L.の濁りが生んだ一瞬の死角。アダムスの器は、その巨体からは想像もつかない速度で腕を伸ばし、隊列の中ほどにいたカナメの3号機目掛け、巨大な手が伸びる。

 

「ッ!!危ない!」

 

シンジの警告は、間に合わなかった。

アダムスの器の巨大な手は、3号機の頭部を力強く掴み取った。

ドゴォンッ!

そのまま、3号機は地面に叩きつけられ、周囲のL.C.L.が激しく沸騰する。カナメのプラグ内が、激しい衝撃と警告音で満たされた。

アダムスの器、⁅いや、この世界のことを知っている君たち『観測者』として呼称するなら、Mark.09。⁆それは、3号機を叩きつけたこの一瞬の行動で、こちらの指揮系統を混乱させ、そして、すぐさま次の行動に移った。

Mark.09は、叩きつけた3号機を放すことなく、そのまま機体を背中に担ぎ上げると、L.C.L.の海を垂直に急上昇した!

「連れ去られる!」

 

シンジが絶叫する。

Mark.09は、3号機を人質として連れ去りながら、地上絵の中心にある円形構造物の真上に達し、構造物の背後に消えた。

Mark.09の行動は、残りの三体のMark.10、11、12のための戦術的な一手だった。

Mark.09が3号機を連れ去った直後、Mark.10、Mark.11、Mark.12の三体のアダムスの器が、シンジたちエヴァ四機の前に立ちはだかった。

三体の巨人は、Mark.07シリーズの雪崩のような大群を背に受けながら、一歩も引かず、エヴァ隊の行く手を塞ぐ。

 

「ちっ、足止めが邪魔で進めない!」

 

アスカが叫ぶ。

マリは、目の前に広がる絶望的な戦場を冷静に分析した。

 

「シンジ君、アダムスの器がカナメ君を連れて行ったということは、カナメ君に利用価値があるということ!この三体は、私たちを中央構造物に到達させないための壁よ!Mark.07は囮だとしても、三体のアダムスの器を突破しない限り、カナメ君には会えない!」

 

シンジは、この状況で4対3の戦闘に時間を割くことは、カナメを救う機会を永遠に失うことを意味すると直感した。

 

「みんな、聞いて!この戦闘は足止めが目的だ!」

 

シンジは一瞬、冷静さを取り戻し、最も合理的な判断を下した。

 

「レイ、アスカ、マリ! 悪いけど、三体で突破口を開いてほしい!」

 

アスカが驚きの声を上げる。

 

「はぁ!?あんた、何言ってんのよ!?」

 

「Mark.07が来る前に、3人がアダムスの器を叩き割る!三体のアダムスの器を一時的にでも拘束、あるいは無力化すれば、突破できる一瞬の隙が生まれるはずだ!」

 

シンジは続けた。

そして、初号機は自らの武器を収め、中央構造物を見据えた。

 

「その隙を突いて、僕が単独で突っ込む! カナメを連れ去ったMark.09を追う!」

 

マリが即座に理解した。

 

「了解よ、姫!ワタシは右のをやるわ!」

 

レイは、沈黙の中に強い意志を込めた。

 

「碇君を、守る。」

 

アスカは激しく舌打ちしたが、シンジの決意が本物だと悟った。

 

「わかったわよ!死んだら承知しないわよ、バカシンジ!あたしたちが壁を叩き割ってやる!」

 

レイの零号機は、Mark.10をターゲットとした。

レイの戦術は、防御と再生の抑制。Mark.10はA・T・フィールドを持たないが、全身がコアであるため、装甲を破壊してもすぐに再生してしまう。

 

「目標Mark.10。ゼロ距離射撃」

 

レイは静かに呟いた。

零号機改は、Mark.10の突進を避けることなく、A・T・フィールドを最大展開し、その衝撃を真正面から受け止めた。ギイィン!という凄まじい反発音と共に、Mark.10の体当たりは一瞬止まる。

Mark.10の動きが止まった、その瞬間に、レイは改陽電子砲をMark.10の胸元に押し当て、最大出力のエネルギービームを放った。

ドォォン!!

Mark.10の装甲に巨大な穿孔が開くが、その穴は一瞬にして赤くうねり、即座に修復されていく。レイは、継続的なエネルギー注入こそがMark.XXの再生を一時的にでも遅らせると判断。ライフルをMark.10の胸元に固定し、エネルギービームの放射を続けた。

Mark.10の動きは、エネルギーを浴びせられた箇所から再生が追いつかなくなり、激しく鈍った。

マリの8号機は、Mark.12に狙いを定めた。

 

「速攻でいく!速攻で抑え込む!」

 

マリは、Mark.12の周囲を高速で旋回しながら、全身のウェポンラックから対物量ミサイルと、高速度レールガンを四肢の関節に集中して叩き込む。

マリの戦術は分解と再生の負荷。彼女は破壊するのではなく、細かく分断し、再生にリソースを集中させることを狙った。

 

8号機はMark.12の背後のMark.07の群れにグレネードを打ち込み、爆発の煙で敵の視界を奪う。その隙に、レールガンをMark.12の膝と肘の関節に連射し、装甲を断続的に吹き飛ばしていく。吹き飛んだ装甲は瞬時に赤くうねって再生を始めるが、Mark.12の機動は一時的に破綻した。

 

「 Mark.12、再生に忙しくなったわよ!姫、シンジ君に道を開けて!」

 

マリが叫ぶ。

 

アスカの2号機は、Mark.11と対峙した。

 

「わかったわよ!死んだら承知しないわよ、バカシンジ!あたしたちが壁を叩き割ってやる!」

 

アスカは、二刀流のプログレッシブナイフを、Mark.11の顔面目掛けて突進。彼女の目的は、再生が最も重要な中枢、すなわち頭部の機能の一時的な停止だった。

Mark.11が繰り出した拳を、2号機はあえて受け止め、その反動を利用して、2号機の右腕内蔵ブレードをMark.11の頭部に叩き込み、ブレードの高周波振動を叩き込んだ。

バキィン!

Mark.11の頭部が大きく損壊し、赤黒い肉が露出して激しくうねるが、すぐに修復されていく。しかし、その瞬間、Mark.11は激しい痙攣を起こし、一瞬だけ完全に動きを停止させた。

 

「今よ、シンジ!行ッけェェェーーーッ!!」

 

アスカが、魂の叫びを上げる。

レイがMark.10にエネルギーを固定し、マリがMark.12を分断して再生を強要し、アスカがMark.11の頭部機能を一時停止させた、わずか数秒の、奇跡のような連携。

シンジの初号機は、三機の奮闘の真ん中を、Mark.07の群れの雪崩が来るよりも早く、中央構造物目掛けて単独で突っ込んだ。

 

「必ず、カナメを助け出す!」

 

初号機は、アダムスの器三体とMark.07の群れが作り出す死の戦線を、ただひたすらに前進した。彼の視界には、円形構造物と、その背後に消えたMark.09の影だけが映っていた。

 

――――――

 

『次回予告』

 

「父さんッ!!こんなことやめてよッ!!」

父と子、そして異世界の観測者。三者の絶対的な対峙。

碇ゲンドウが語るカナメの存在。

「君もまた、私と同様理を超えた存在なのだな。」

ゲンドウの冷徹な笑いが、狂気的な歓喜と共に儀式の開始を告げる。

人類最後の希望は、ゲンドウの私的な儀式と、神の降臨という絶望的な現実に、屈服してしまうのか。

 

赤い大地の裏側で、アスカ、レイ、マリが三体の巨人を相手に命を懸けた足止めを続ける中、シンジ達は父と神、二つの絶望を前に、何を掴み取るのか!?

 

次回、「語り得ぬことよりも、むしろ嘘には沈黙せねばならない。」

 

この次も、サービス、サービスぅ!

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