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惣流アスカラングレー、僕の知っている彼女は間違いなく惣流だ。流石にこればかりは間違うはずはない。だが、僕の前に現れたのは“シキナミ”、しかし彼女は紛れもなくアニメで知っている彼女と同じ見た目、同じ声だった。その事実が僕を混乱させた。その素因を探るべくあり得る可能性を可能な限り思索するが、その過程で同時に最悪な可能性も脳裏に浮かんでくる。まず、個人的に一番そうであってほしいのは、父親の姓を名乗っている説だ。アニメではアスカは日本人とドイツ人のクウォーターだった。母であるキョウコツェッペリンが他界し、その後登場していない父親に引き取られその姓がシキナミであればアスカには時に何も変化はないし、何も悪いことはない。いや、それであってほしい、一番可能性がありそうだし、父親が日本人ならシキナミ姓位探せばどこにでもいるだろう。
そして一番あってほしくない説、これはアスカがすでに結婚しているという説だ。……正直これは考えたくもないが大学を出ている彼女にはありえそうな話であるのが本当に怖い。常に最悪を意識する自分にとって、この名字の変化は言いようもない不安感を僕に植え付けた。
(この違い……ミサトさんに報告した方がいいか)
結局ミサトさんの力を借りることになって申し訳ないが、一応調べてもらおう。そう思いつつ二号機の上にたたずむ少女、シキナミアスカラングレーを見上げた。その当の本人は自慢げに僕らを一瞥した後、軽やかな足取りで降りてくると、僕らを透かすように眺めて開口一番
「あれがエコヒイキで選ばれた零号機パイロット?」
といつの間にか興味をなくしたように帰路に就く綾波に対して、嫌味を吐いたのだった。その態度に、うん、僕の知っているアスカと一緒だ。などと一人かってに感心してしまった。またもやアスカが口を開く。「で、」と今度は僕らのほうを気に入らなそうな目で一瞥した。そして4人それぞれを品定めするかのように眺めたあと、
「どれが七光りで選ばれた初号機パイロット?」
とこれまた気に食わなそうにつぶやいた。その態度に気圧されたのか、「あ、あの……」と少し気後れしながらシンジ君が答える。と、その声に反応したアスカがシンジに詰め寄り、シンジを指さし、待ち望んだあの言葉を吐いた。
「あんたバカぁ??肝心な時にいないなんて、何て無自覚!」
そう僕が聞きたかった言葉でシンジを罵倒すると、間髪入れずに足払いをかけた。シンジ君は足をとられると盛大に転び、「うわっ」っと情けない声を出しその場にしりもちをつき、「うう…」と倒れた衝撃に顔をゆがめた。そんな様子にはお構いなしにアスカはシンジに詰め寄ると、腰に手を当てて見下ろし
「おまけに無警戒。エヴァで戦えなかったことを恥とも思わないなんて、所詮、七光りね」
と追い打ちをかけるかのように罵倒した。出会って早々こんなに罵倒されたシンジ君はかわいそうだなと思う。案の定、シンジ君の方に目を向けると助けを求めるような顔でこちらを見上げていた。そんな目くばせをしているシンジ君の目線をたどってきたのか、アスカがもの言いたげな目線で「なによ、なんか文句ある訳?」と今度はこちらに歩みを進めてきた。今のシチュエーションは、名字は異なっていたとはいえ好きな人が不意に近づいてきているわけで……当然のように臆してしまい、少し後ずさる。アスカは僕の行動で自分の優位を確信したのか、片手を腰に当て
「アンタこの七光りの仲間でしょ?何とか言ってやったらどうなのよ」
と、特にいわれのない、半分言いがかりみたいな難癖をつけられた。その問いには、だって僕一般人だしなぁ……僕に言われてもなぁ……としか考えが浮かばなかったが、どうやら顔にでてしまっていたようで、
「なによその不服そうな顔は!文句があるならはっきり言いなさいよ!」
と、さらに追撃されてしまった。
◇ ◇ ◇
結局小一時間程度拘束された僕らは少しやつれながら各々の帰路についた。実際に見たアスカはアニメで見たのと一緒で本当にかわいかったけど、あの性格は面と向かってだと疲れるな。これから一緒に住むのか、うれしいけど複雑だな。なんてことを歩きながら考えていながら歩いていると、ふと疑問がわいた。あれ、待てよ?そういえばこの世界ではアスカが住むはずだった場所に僕が住んでるんだよな。てことは……どうなるんだ?アスカは別のところに住むのだろうか。そんな疑問を抱えて数分。家に帰ると大量の段ボールが答え合わせでもするかのように積まれていた。僕に遅れて帰ってきたシンジ君もその荷物の多さに唖然としたのか「なんだこれ、僕の部屋が……」と呆けた表情で段ボールの山を見つめた。少しの間段ボールについてあれやこれやと二人で議論していると、段ボールの奥から「うっさいわね、私の荷物よ!」と気の強そうな声とともに金髪の少女、アスカラングレーが顔をのぞかせた。一応予想通りの結果に納得してこれからの生活に対し、既に妄想モードに突入している僕とは対照的に、事態を飲み込み切れていないシンジ君は「じゃ僕の……あれ?なんで式波がここにいんの?」と間の抜けた表情でしどろもどろになっている。そんなシンジ君と僕に向かってシッシッと手を払うと
「あんたバカぁ?あんた達は二人そろってお払い箱って事よ。ま、居候と七光りだし当然の結論ね」
「「えっ」」
二人の声が重なった。僕たちが追い出されるのか。確かにミサトさんとアスカの二人暮らし、僕とシンジ君の二人暮らしのほうが健全だしいいとは思う……まあ不満はあるが言っていることは間違いないし仕方ない。でもなんで僕たちが……と彼女の決定に対して不満を顔に出している一方で、渦中の少女は本日付で彼女の部屋となるであろう部屋の戸に手をかけ、「どーして日本の部屋ってこう狭いのかしら。荷物の半分も入り切らなかったわ。」と部屋の狭さに文句をぶー垂れていた。そんなアスカをよそに
「流石に出ていくのは今日直ぐにってわけじゃじゃないよね……?」
と、昼間の押し問答で既に受け身になっているシンジ君は、もう転居する気になり始めていた。さすがに分が悪いか。そんなシンジ君の問いに
「ハァ?なんで私がアンタたちと同じ屋根の下で過ごさないといけないワケ?バッカみたい」
と目の前の傲慢金髪ガールは僕らにホームレス生活を促した。それには僕らも顔を見合わせるしかなかった。さすがに返答に困り僕らが口をつぐむこと数秒、その静寂を割ったのはもう一人の住人であった。
「あら、言ってなかったっけ?シンちゃんとカナ君も一緒に住むのよ」
「えぇえっ!?」
僕らの問答中に帰ってきていたらしいミサトさんがシンジ君の肩越しにそう伝えると、アスカはあからさまに嫌そうな顔をした。僕のこの家への永住権が保障されてほっとしたのと同時に嫌そうな反応をされて少し悲しくなったのはきっと気のせいだろう。そんな僕とは対照的に思うように事が運ばず不満げなアスカが「こんな狭いとこに四人も住めないわよっ!」と声を張る。しかしそんなアスカの様子を意にも介さず。「でもシンちゃんたちに中学生でひとり暮らしさせるわけにもいかないしねぇ」とのんきに言い放つミサトさんは僕らには頼もしく見えた。「それに」とミサトが続けた。
「アスカはまだシンちゃんとコミュニケーション不足でしょ?。同じパイロット同士、同じ釜の飯を食って仲良くしないとね」
ミサトはパイロット二人に向き直り、これからやろうとしていることを説明した。その説明を聞いて場が静まった。ミサトさんの話で遂にアスカも納得したのかな、と僕ら二人で恐る恐る横目でアスカに目をやる。と、ボソッと「で―――」呟いた。どこか震えているような気もする。あ、嫌な予感が……
その予感が的中した。アスカは一気に爆発した。
「七光りは納得したわよッ!!でもなんでこの居候とも一緒に過ごさないといけないのよッ!!」
指の先を僕に向け、ビシッと言う効果音が当てはまるようなその格好で、アスカは言い放ったのだった。
そんなこんなで新しい住居人が増え初めての夕食。今日出たのはシンジ君お手製のピーマンの肉詰め。まあ肉といっても九割が人造のいわばほぼエヴァみたいなものだ。この肉は本来食感や栄養素を本物の肉に寄せているだけの食えたものじゃない肉で、僕もこの世界に来て初めて肉を食べた時には食の楽しみを一つ失ったような気になって絶望した。しかしそこはシンジ君の料理スキル、調味料をどう駆使したのかは分からないが、僕のいた世界のものと殆ど同じ家庭の味になっていた。こっちの食事で育ってきたミサトさんも味覚は一緒のようで
「これおいしいわねぇ」
とそさくさと口に運んでいた。そんな一方でアスカはといえば
「七光りの癖にやるじゃない……」
と文句をたらしはしつつもしっかりと平らげ、一足先に部屋に戻ろうと席を立とうとした。そんなアスカを
「ご飯を食べ終わったらみんな揃って”ごちそうさまでした“っていうのよ。」
と口で促した。
「そんなのただの自己満じゃない」
とアスカも反論するが、
「それが日本人の価値観なのよ。命を頂いたら感謝する。食材を作っっている人にも感謝する。私たちはひとりで生きられないんだから、支えあわなくちゃね。」
と、諭した。それには納得したのか、
「ま、子供じゃないしね。こういうの、郷に入っては郷に従えっていうんだったかしら?合わせてあげるわ」
と珍しくアスカが食い下がった。それにあっけにとられて箸が止まった。アスカの顔の方に僕の呆けた顔が向く。そんな僕に対し、
「なによ、なんかおかしいワケ?」
と言いじろりと半目で睨むアスカに、素直に
「いや、なんか珍しく素直だなって思って……」
と思っていたことをそのまま答えると
「うっさいわね。この私が待ってあげてるんだから早く食べなさいよ!」
とまだ仲良くなるには時間のかかりそうな返答が返ってきたのだった。
さて、その事件が起きたのはミサトさんがお風呂から上がり、プシュッと新しい缶を開けた時だった。食事を終え洗い物を二人で分担していると、騒々しい音と「キャーッ!!」という悲鳴が風呂場から聞こえてきた。聞きなれない音に皿洗い中の手を止め顔を見合わせる。と、次いでガラッと勢い良く脱衣所のカーテンが開いた。その音にびくっとして振り返ると同時に固まった。あれ、こんな事前にもあったような……
「なっなな、なんか変な生き物がお風呂にいるーッ!!」
僕の目線の先には叫び声とともに脱衣所を出た全裸のままのアスカと、気にも留めずにその前を通り過ぎるペンペンの姿があった。そんな情景を見て固まっている僕とは対照的に、一部始終に目をくれていなかったシンジは
「ペンギンっていう鳥だよ」
っと先ほどの叫び声に返答し、僕らの同居鳥を紹介しようと振り向いた。そこで、ちょうど彼の名前を出そうとした瞬間に僕が見た光景をシンジ君も見たようで
「名前はペンペ……あっ!?」
と一足遅れて赤面し、僕同様硬直した。そんな僕らの様子をアスカはイブしげに見た後、自分が今どんな姿をしているのかを自覚し、恥ずかしさに彼女真っ赤になっていった。
……その刹那、彼女が視界から消失した。辛うじて追えた目に映った彼女の表情には含羞は無く、唯一怒りのみが存在していた。背中を悪寒が襲う。全神経が警報を鳴らす。無意識に防御態勢をとる。が、間に合わない。それよりも先に視界の端から空気を割いて彼女の高脚が僕の顔面を貫いたのだった。
「あぅっ……」
と蚊の泣くような声が口から洩れた。会心の一撃に沈められ消え入りそうな意識の中、後ずさるシンジ君に対して「ていやーっ」っときれいな回し蹴りが繰り出され、ドサッと言う何か大きいものが倒れる音が聞こえた気がした。
◇ ◇ ◇
夜も更け各々が寝静まった後、定例会のごとくひっそりとWILLEの会合が始まった。何か話すことがあるのかと聞かれればもちろんある、アスカの名字のことだ。僕の知っているアスカは惣流アスカラングレーであり、シキナミなんて姓は知らない。これはそのことを告げるつもりで開いた定例会。のはずだった。今回先に口を開いたのはいつにもまして真面目な顔のミサトさんだった。
「カナメ君、予定通り空路で二号機を輸送した、ここまではいいわね?」
そう言質をとるような確認にこくりと頷く。するとミサトさんは椅子に置いた鞄から一つの書類を机の上に置いた。目線で促されるままにそれを手に取ると水飲み鳥のようなスケッチが描かれていた。その先端には従来の使徒の仮面とコアのようなものも見られた。
「……これは?」額に嫌な汗が流れる。その問いにミサトさんは「輸送中に確認、殲滅された使徒よ。……やっぱり知らないのね」と答えた。
見せられた見ず知らずの使徒、既出の使徒とは異なる戦闘方法、コアの偽装、ミサトの口にした言葉はどれも知っているどの使徒とも特徴が合わず、その事実が余計に僕を混乱させた。と、同時に一つの仮説も立てられた。
「これって、もしかしてではあるんですけれど……僕が行動を変えさせてしまったから、使徒の性質も変わってしまったんですかね。」
「と、いうと?」
ミサトさんは僕に続きを促した。
「あくまで予想なんですけど、僕の世界では――――」
僕らの世界では最強の拒絶タイプでも初号機にかなわないと知るや精神攻撃系のタイプに使徒が成り代わった。つまり僕らの動きに合わせて発生する使徒の形質が変化するのではないかという結論だ。
「つまり、重大な被害がでそうでない限り、補完計画までの概略の行動は変化させない方がいいかもしれません……」
それは僕がこの世界に来た意味に拘る話だった。今後の使徒の行動が分かっていなくてもミサトさんはそれに伴う犠牲は別としてすべての使徒を殲滅する。結果人類補完計画は起こってしまうが僕が来たとして、今後の行動を変えなければ結局、補完計画は始まってしまう。それに行動変えたとしたところで使徒が変化すれば僕は何も手伝うことができない。視界に暗雲が立ち込めた気がした。ミサトさんは思考停止にも近い僕を見据えると、おもむろに口を開いた。
「カナメ君、今回は空路と海路で変えたことによって使徒の行動範囲を丸々変えてしまった。だから二号機を狙ったであろう使徒の性質も変わったんじゃないかしら?」
僕の推測道理であればそうだ。僕は首を縦に振った。その様子を目で確認し、ミサトは続けた。
「然る後襲来するであろう呼称バルディエル、それもきっと三号機の空路輸送以外で輸送すれば、違った形で使徒が表れるかもしれない。そうよね?」
またもや確認するように目線を僕に向ける。その話にも同意できる。またも僕は首を縦に振った。
「仮称バルディエルは三号機のエントリープラグに寄生した、後ダミーシステムによって握りつぶされる形で殲滅された。つまり、三号機をわざと乗っ取らせ、その後の対処をシンジ君たちに委ねれば既存の形で使徒を殲滅しかつ、三号機も確保できるんじゃないかしら?」
その言葉に僕は顔を上げた。確かにその方法ならいけるかもしれない。
「修正グレーゾーンを狙って行きましょ。トライ&エラーが作戦の基本よ。ま、一応はやれることやっとかないとね、後味悪いでしょ?」
そう口にすると、ミサトさんはこれからの方針を話し始めたのだった。
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『次回予告』
毎日が熱いこの世界において毎日が海水浴日和、さて海行くぞ~……ってなんか水赤いな……水族館行くか……
ってことで!
次回『静止した時の中で』
この次もサービス~サービスぅ~!
自分のやりたいことを詰め込んでますが、僕の校正力のなさと文章力のなさでやり切れてない感があってつらいです……リ○ロとかこの○ばとか書いている人のことを改めて尊敬する今日この頃です。