エヴァンゲリオンAnotherWorld   作:時雨光多

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遅れてすみません。1年生の時に書き始めたこの小説も大学三年生になってもまだ八話です汗
時間はかかると思いますが必ず完結させるので応援よろしくお願いします!


第八話 静止した時の中で

「凄い!凄すぎる!失われた海洋生物の永久保存と、赤く染まった海を元に戻すという、まさに神のごとき大実験計画を担う禁断の聖地!その形相の一部だけでも見学できるとは!まさに持つべきものは友達ってカンジ!」

 

そう興奮し、いたるところにカメラを向けるケンスケを先頭にして僕ら一行は潮風の吹き抜ける中日本海洋生態系保存研究機構に降り立った。

 

―日本海洋生態系保存研究機構、ミサトさん曰く「セカンドインパクトによって喪失した海洋生命の保護及び青い世界を取り戻すための組織」。元のアニメでは確かこの組織は登場していなかったので情報がないが、特にネルフと関わりのある組織ではなく、裏表無い国際環境法人の一組織であるらしい。アニメではストーリーに関係がなかったり尺が足りないことが原因で描写されなかったのかは分からないが、ここで行われていることが行われていることなだけに重要な施設なのではないかとつい疑り深くなってしまっている。というのも、第3新東京市の沖合にある施設であるこの場にはネルフ専用の垂直離着陸機で送迎してもらったのだが、この施設の上空からの外観が”セフィロトの樹”に類似した形状だったのだ。思い返せばこの世界に来る直前に見た「Air/まごころを、君に」にて初号機が拘引されたかの儀式において顕現したものと同様の見た目、ミサトさん曰くはやはり裏表無しの国際機関、むしろ人々の希望そのものの組織だが、一方であの紋様に対する言いようのない嫌悪感はぬぐえず疑心に陥っているのだった。

 

「まあ、要観察ってとこかな……」

 

「なあにをぶつくさ言っとるんじゃ、ほれ早く中入ろうや」

 

「なんだよトウジ、そんなに楽しみだったのかよ。」

 

「そりゃこんなんめったに見れるもんちゃうからなぁ」

 

僕の思考が独特の関西弁と肩に回された腕の感触によって現実へと引き戻された。その腕の先をたどればその声の主、ケンスケに負けず劣らずの満足そうな顔をした鈴原トウジがそこにいた。そんなトウジと軽口をたたいたあと、トウジは首だけを回して振り返ると、「シンジ、ホンマ感謝するでぇ」と、今日この場に来れたことへの感謝をつぶやいた。対するシンジは

 

「お礼なら加持さんに行ってよ」

 

と今回の招待者の名を口にした。そう、今回の施設見学は特務機関NERV特殊監査部所属の諜報員でありミサトさんの旧友、そして恋人でもあった加持リョウジがシンジ君に「みんなを誘って来てみるといいさ」とチケットを渡したのが皮きりだった。それに付随して僕らも招待されたわけだが僕、ケンスケ、トウジが参加したのは分かるとして綾波までもが参加したことは少し意外だった。また、さらに意外だったのがアスカの態度で、加持さんの正体なら「加持さん!♡」という態度で有無を言わさずついてくるイメージだったが、今回の誘いに対してしぶしぶという態度を示し、まるで加持は眼中にないというような反応であった。

 そんな加持さんは既に施設内に入構しているようで、構内の窓からゲートの外にいるこちらに手を振っていた。だが、ただこちらを出迎えてくれていた訳では無い様で、一同の注目を前に「ここからがちょいと面倒だけどな」と、これから僕らの身に降りかかるであろう事象に対して、断りを入れた。その加持さんの断りの後すぐに目の前のゲートが開き、僕ら一行の意識がその中に吸い込まれる。その施設内に期待していた男衆はゲートが開いた瞬間にその内部に対する期待感から笑顔になるが、中の無機質な内装を見るや上がっていた口角が元の位置に収まった。一瞬そのギャップに呆然とした一行がそのまま内部に足を進めるとその目線の先に更衣室が見えた。まあ思い返せば窓越しに立っていた加持さんも患者衣のようなものを着てたしそれに着替えるのかな?などと顔を見合わせ各々が入室すると我々の予想に反して衣類の保管場所と脱衣を促す看板、そして奥には「長波放射線照射式滅菌処理室」の文字と謎のカプセルがあった。それを見て冷や汗を流しながら「な、なんや、えらい厳重なんやな……」とこぼすトウジに「それだけ重要なものがあるってことさ、な、碇?」とそんなの当然だろ、というように促すケンスケ。それに「まあ、こんなことになるとは思ったよ……」とこぼすシンジと三者三様な様子だった。ただ、早く入りたいという考えだけは一致していたようで興奮冷めやらならないケンスケを筆頭にそれぞれカプセルに入室していった。僕の番になり部屋の扉を開けると細かな注意点が書かれていた。その通りにして正面を向くと「パシャッ」とフラッシュのようなものがたかれ警告灯が緑に代わり、次いで入室したものとは別の扉のロックが外された。それに誘導されるがままに退室すると今度は別の更衣室での着替えを促された。いやだなあと思いつつ貸出用であろう白い下着を履き、案内掲示板に従って退室すると、既に皆準備が終わったようで今までよりも少し大きめな部屋で待っていた。シンジ君を筆頭にどこかげんなりしている男衆に対してまるで何もなかったかのような綾波とむすっとした表情のアスカ。そのアスカがこちらをチラリと見ると不機嫌そうに顎で次の部屋を示した。顎先をたどるとそこには大きなシャワー室があった。嗚呼、男子勢がげんなりしたのはこれを見た所為か。どこかげんなりする自分の心を抑え、その先へ進むとまたもブザーが鳴り響き、今度は熱湯が僕らの体を打った。皆各々に熱さで身もだえし、「あちゃちゃちゃちゃ」と騒ぎ立てながら耐えること数分、滝の流れるような水温がやんだ後、皆の息切れの音に混ざってブザー音とともに部屋の扉が開いた。「やっとついたかな……?」そう声をこぼしその先に進む僕らの足取りはすでに重くなっていて、ナーバスになりながら進んだ先には「有機物電離分解型浄化浴槽式滅菌処理室LEVEL-01」の文字が。「……あぁ、こういうことね」そう暗いトーンでシンジがこぼすや、部屋の両サイドから水が吹き出し僕らのいる部屋を満たしたのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

結局その後、四工程ほどの苦行を経てようやく入館することができた。不思議なもので滅菌が終わった後には今にも寝転びそうなほどにぐったりしていた僕らも、視界が明けて一面に映る水槽の中の景色にそんな意識も吹き飛んだ。いや、正確には僕以外の男子衆が、だった。

なぜなら僕らの目前に映ったのは亀やクジラ、イルカに大小さまざまな魚の群れで、その水槽を見るやカメラを回し走り回るケンスケとテンションが上がるトウジ、初めて見た生き物たちに目を輝かせるシンジと三者三様な喜び方をしている一方、僕は(あんなに検査してただの水族館か……)と久しぶりに水族館に来て少しうれしい一方で少しつり合いが取れていない歯がゆさを感じたからだ。でもせっかくだし久しぶりに見てみようかな、と

 

「ほえー!!生きとる!」

 

「凄いっ!凄過ぎる!」

 

「おっ背中に何か背負ったやつもおるぞっ!」

 

「カメって言うらしいよ!」

 

などの元の世界では小学校低学年まででしか聞けないであろう会話に耳を傾け水槽を見て回る。だが結局水族館は水族館、キリンや象がいるわけでもなくすぐに飽きが回ってしまった。先に出て待ってようかな。そう思い、どの程度の広さがあるのかはわからないが遠くなったトウジ達の叫び声に背を向けて出口を探す。そうあたりを見渡しながらしばらく進むと、見知った人物が座っているのを見つけた。アスカだ。僕ら同様あの苦行を乗り越えてこの場にいるはずなのだが、どういうわけか周りには目もくれずに手持ちの機械に熱中している。

 

「アス……シキナミさん、何してるの?」

 

「ゲームよゲーム、見てわかんないわけ?」

 

途中まで出かけた下の名前呼びには気づかないほど熱中しているようで手持ちのゲームから目を離さずにアスカが答える。これゲームなのか、自分の知っているゲームといえばセガサターンとかロクヨンみたいな据え置き型のゲームだけだ。さすが2015年技術の進歩ってやつか。一応元の世界ではゲームもそれなりに好きだったので未来のゲームには興味がある。いや、とても興味がある。

 

「次さ、やらせてくれない?」

 

「なんであんたにやらせないといけないのよ、あの3バカと一緒にはしゃいで来なさいよ」

 

「ほんっとに、一回だけでいいから!」

 

この押し問答が何回か続き、ようやく折れたのか

 

「……1回だけよ。」

 

と渋々差し出してくれた。これが未来のゲームか……感無量になりながらスタートボタンを押す。が、そこであることに気づいた。少し申し訳なさそうにアスカのほうに顔を向け問いかけた。

 

「……これって、どう操作するの……?」

 

完全にこれは僕が悪い。その言葉に少しきょとんとした後、相対する彼女は額に青筋を受かべ

 

「だ っ た ら な ん で や り た が っ た の よ !」

 

と声を荒らげた。だが、その後に続きそうだった罵倒は特になく、想像と反してはぁと一息をついた。そして自分の座っているベンチを手ではたくと「隣座って、教えたげるから」と僕に促したその反応につままれながらも促されるままに座ると、アスカ先生のレクチャーが始まった。どうやらゲームの仕様としては線をつなげるという単純なものだったが、機械慣れしていないのか未来の技術についていけていないだけなのか、たどたどしい態度でゲームに臨む。その傍らでああでもないこうでもないと声を出すアスカは、いつもの気を張っている時と違い、無邪気に笑う年相応の少女のようだった。

 

結局ゲームは元の世界でもよくやっていたのでコツさえつかめば意外と簡単で、アスカをして「シロートにしてはセンスあるじゃない」と言わしめるほどの出来だった。しかも、「そうだ、これ貸したげるから練習しときなさい」とアスカのワンダースワンを貸してもらえることになった。悪いよといったんは断ったのだが如何やらもう一台あるらしい。それなら、と有難く頂戴し平静を保っていたが内心は心臓音が聞こえるくらい興奮していた。

 

◇ ◇ ◇

 

さて、長い様で短かったゲームタイムも終わり、皆で昼食をとることになった。料理はシンジの手作りで広間にはシンジの料理を初めて食べた人たちの「うまい!!」と言う声が響いた。彼らには悪いが僕はほぼ毎日これを食べてるんだ。どうだうらやましいだろう。と一人にやついてしまう。と、その反応を見たトウジが

 

「うらやましいもんワイらに黙って食いおって!!」

 

と口撃してくる。そのとっかかりに

 

「これがうちの嫁なのだよ、ね。シンジ君!」

 

「なんやと?そないなこと言ったらワシらだって結婚しとるぞ!なあケンスケ?」

 

「なにそれ、俺は聞いてないよ」

 

「……しょーもな、バッカみたい」

 

と、悪乗りで返してみたはいいものの、会話が変な方向に行ってしまった。そんなワイワイガヤガヤ、僕の頭にトウジが拳をぐりぐりと突き立ててみたり、そんな様子をカメラで撮ったりと賑やかな会話を遠巻きに見ている綾波に、多分シンジ君だけが気づいていた。

 

◇ ◇ ◇

 

昼食も終わり、潮風に当たろうと外の手すりに体を預ける。そこからぼーっと見る海は右から左まですべて血のごとき赤色で、まるで劇場版の最終シーンをほうふつとする光景だった。ていうか、本当にこれ……

 

「よ、こんなところでどうしたんだ?酔ったのかい?」

 

ふいにかけられた声に振り変えると、シンジ君と加持さんという珍しいコンビに遭遇した。

 

「いえ、ちょっと考え事を……」

 

「黄昏て考え事か、格好いいねえ」

 

「茶化さないでくださいよ~!」

 

そう茶化す加持さんにおどけて返す。その横で考え事か、あミサトさんが誘い断ったこと?とのんきに尋ねてくるシンジ。いや違くてと返そうにもうまく言葉を紡げない。しかし、シンジ君ののんきな疑問もどうやら何かの核心をついていたようで、「葛城は来ないよ、思い出すからね」と、何か後ろめたい意味のありそうな返答が返ってきた。

 

「思い出すって、何をですか?」

 

とまあ当然出るであろう疑問を口に出すシンジ。その疑問に何を思ったのかはわからないが、何か好ましくない、悲劇に満ちた話が始まるのは、加持さんの表情から即察っせられた。

 

加持さんの口から発せられたのは世界の核心に迫るものだった。

セカンドインパクト、それは南極で発見された光の巨人、第一使徒アダムを卵に戻すためにロンギヌスの槍を用いた結果、世界人口の実に半分が消滅し、地軸が傾くまさに大災害。エヴァンゲリオンにおいてサードインパクトと対をなすそれはざっとそういう事象である……はずだった。

なぜか、そこで加持さんの口にした内容は、僕の知っているそれとはまるで異なる話だったのだ。かつて15年前に起こった地球規模の大災害だったということは同じだ。しかしその実は僕の知識とは程遠く、まるで黙示録の天使のように羽と光の輪をもつ四体の光の巨人とそれに呼応するかのような四本の槍、それが共鳴したことによるものなのか南極を中心にひろがっていく死の赤い世界。それらがどのようなものかは分からない。だがその経験をし、加持さんに話したであろうミサトの経験を、断片的にどう拾い集めても、どう解釈しても僕の知る其れとは似ても似つかないものだった。

 

元の世界とはこの世界に滞在する中でずれが生じていることはたびたびあり、それこそが僕が来てしまったことによる世界の変化だと思い込んでいた。俗にいうバタフライ効果、ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こしうるか?これは環境次第で偶然が重なれば、どれだけ確率が低かろうと起こりうるだろう。しかし今のブラジルの1匹の蝶の羽ばたきが過去のテキサスで竜巻を引き起こしうるか?という問いにはNOがつくだろう。なぜなら時間を超越して過去には戻りえないからだ。

 

この世界で、僕には何もできないのか。

 

僕が来たことなんて関係なく世界の針は進む。

 

意味なんてなかった。

 

僕はうぬぼれていたんだ。ミサトさんに認められて、みんなとつながれて、僕はやれるって、僕が特別だって。

 

僕は――――――

 

 

――――――

 

『次回予告』

 

自分が矮小な存在であると突き付けられたカナメは、自身に絶望して心を閉ざしかける。そんなカナメの様子には構いもせずに世界は次の使徒を遣わせる。

次回、「無価値な選択を」

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