【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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10 優しい人たち!

 

 

ソフィアはすんすんと鼻を啜り、俯きながら静かに席についた。

隣に座っていたハーマイオニーはあまりのソフィアの嘆きと悲しみに、辛そうに眉を寄せそっとソフィアを覗き込む。

 

 

「…大丈夫?」

「…大丈夫に見える?」

 

 

ソフィアは赤く腫れた目でハーマイオニーをチラリと見た、彼女が自分を励まそうとしているのはわかっている、それでも、気丈に振る舞うことは出来なかった。

 

 

「あー…見えないわ、でも、ほら…マクゴナガル先生が言ってらしたでしょう?何時でも会えるわよ」

「…そう…ね」

 

 

ソフィアは少しだけ微笑んだ。もう涙を流していないと分かるとハーマイオニーは安心し、ソフィアの小さな背中を撫でた。

同じ一年生だが、ソフィアは誰よりも小さく幼く見えた、慰めていると、妹が居るとこんな感じだろうかと、とハーマイオニーは苦笑した。

 

 

スリザリン寮の机へと戻ったルイスはドラコの隣でまだ俯いているソフィアをじっと見ていた。

 

 

「…ソフィア…大丈夫か?あんなに、辛そうに…」

 

 

ドラコもまた心配そうな目でソフィアを見る、ソフィアの涙や悲痛な顔を見たのは初めてだった。記憶にある彼女はいつでも大輪の花のような笑顔で笑っている。その彼女からは想像も出来ないほどの悲しみに染まった顔をみて、ドラコは自分の胸がちくりと痛むのを感じた。

 

 

「うーん…まさか、別々になるなんてね、僕も…ソフィアも想定外だったよ」

「ああ…それに、グリフィンドールか…あんなところに選ばれるなんて…」

 

 

ドラコは他のスリザリン生と同じようにグリフィンドールに対して良い印象をかけらも持っていない。そんな所に入れられたソフィアが可哀想でならなかった。

 

 

「…んー…今はまだ混乱してるみたいだけど、ソフィアは強いからね、時間が経てば落ち着くと思うよ」

 

 

ルイスも、ソフィアと離れてしまったのは本当に辛く思っていた、だがそれでも泣き喚く事が無いのは、自分の代わりに全てソフィアが代弁し、泣き叫ぶソフィアを見てなんとか慰めなければならないと思い冷静になったからだ。

きっと、組み分けの順番が逆だったなら、泣いていたのは自分で、慰める事になったのはソフィアだっただろう。

 

一年生全員の組み分けが終わり、ダンブルドアが立ち上がり話初めてもまだルイスはソフィアをじっと見つめる。

 

ルイスがソフィアから目を離したのは、空だった皿の上に数々の料理が並び、ハーマイオニーによって甲斐甲斐しく世話をやかれたソフィアがようやく顔を上げ食事に手を伸ばした後だった。

 

 

 

 

「ソフィア!ほら、ローストビーフ食べるかい?美味しいぜ?」

 

 

ジョージが後ろからソフィアに話しかけ、小さな肩を気遣うように叩いた。ソフィアはぱっと顔あげ、ジョージとその隣にいるフレッドを見て少しだけまた悲しそうに目を揺らせた。

 

 

「ジョージ…フレッド…わたし、ルイスと離れちゃった…」

「あー、残念だったな、でも、ほら!悪戯は辞めないだろ?」

「それは…ええ、勿論よ」

「ルイスはスリザリン生になっただろ?一緒に悪戯をすれば…スネイプは減点しないかもしれないぜ!アイツはスリザリン贔屓だからな!」

 

 

フレッドとジョージはこそこそとソフィアに耳打ちをし、教員席にすわるスリザリン寮の寮長であるセブルスを盗み見た。この数年間何度彼らがセブルスから減点をされ続けたかわからない。もう数えるのが無駄な程だ。

ソフィアはちらりとセブルス──父を見た。父はこちらを見る事はなく隣に座る教師と何が話しているようだった。

 

 

「…そうね、…たしかに…スリザリンとグリフィンドールで悪戯をするのも、悪くないかもしれないわ」

 

 

双子に励まされたソフィアは、少し何時ものような悪戯っぽい目で笑った。その目元は涙の跡がのこり痛々しく白い肌を赤く染めていたが、それでも双子は安心し優しくソフィアの頭を撫でた。

 

 

「な!悪いことだけじゃ無いさ!ルイスに協力してもらって…スリザリンの談話室にちょっとした花を添えることだって不可能じゃない!」

 

 

フレッドが楽しげに言うと、ソフィアは目を開き、くすくすと笑った。

 

 

「ありがとう…うん、ちょっとだけ…元気が出たわ」

「良かった!」

「もう君の泣き顔は見たくないな、笑顔が1番だ!」

「ふふっ!…そうね、私らしくなかったわ。本当に、ありがとう」

 

 

ソフィアは立ち上がり、フレッドとジョージをぎゅっと抱き締める、2人は顔を見合わせ、少し照れたように笑った。

 

身体を離したソフィアはジョージが持ってきたローストビーフを受け取り、席に着く。2人もまたリーに呼ばれ席に戻った。

 

ハーマイオニーはその様子を、どこか面白くなさそうに見ていた、私だって慰めたのに、と心の中で呟く。

ソフィアはローストビーフを食べていたが、「あっ」と小さな声をあげると口をもぐもぐと動かし肉を飲み込み、くるりとハーマイオニーを見た。

盗み見ていたのがバレてしまったのかと、少しだけハーマイオニーは視線を彷徨わせる。だがソフィアはにっこりと笑い、隣に座るハーマイオニーを不意にぎゅっと抱きしめた。

驚いたハーマイオニーだったが、振り払う事はなく、少し腕を彷徨かせたあとそっとソフィアの背に回した。

 

 

「ハーマイオニー!さっきは励ましてくれて、ありがとう!私、ちゃんとお礼を言ってなかったわ、ごめんなさい…本当に、ありがとう!」

 

 

ぎゅっと強く抱きしめたソフィアはその白い頬をハーマイオニーの頬にぴったりとくっつけたまま耳元で囁いた。

ハーマイオニーは僅かに頬を染め、くすぐったそうに身を捩る。

 

 

「元気が出たみたいね、良かったわ!…ねぇ、ソフィアは変身術が得意なの?あのカエルチョコの魔法…私に教えてくれる?」

「勿論よ!…私、あの魔法の事でハーマイオニーは怒ってると思ったわ」

 

 

ソフィアは身体を離すとハーマイオニーの表情をちらりと伺い見る、ハーマイオニーは首をすくませ、少しだけ笑った。

 

 

「まぁ、あれは入学前だったし…でも、同じグリフィンドール生になったのだから、規律はちゃんと守るのよ?」

「うーん、それは約束出来ないわ!」

「まぁ!」

 

 

ハーマイオニーはキッパリと言うソフィアに憤慨したが、ソフィアの楽しそうな顔を見て言いたい言葉を飲み込んだ。彼女は笑顔が1番似合う、そうハーマイオニーも思っていた。

 

様々な料理を食べながら自然と話題は家族のことになった。初対面の彼らは自分の事をまず知ってもらおうと、生い立ちを口々に話した。

ハーマイオニーはそれを聞きながら、自然とソフィアに問い掛けた。

 

 

「ソフィアは?ご両親は魔法族なの?…あ、私は両親共にマグルなの!ホグワーツの手紙が来て、とっても驚いていたわ!喜んでくれたけどね」

「あー…私、7歳まで孤児院で育ったの、それからはルイスと暮らしているのよ。たまに色んな人が様子を見に来てくれるけど…」

「まぁ…そうだったの、ごめんなさい…」

 

 

ハーマイオニーはソフィアの言葉を聞き口元を押さえ、申し訳なさそうに眉を下げた。その言葉からきっとソフィアと、そしてルイスは両親と死別しているのだと思った、だからあれほどルイスと離れるのを拒絶していたのかと思うと、納得ができる。

 

ソフィアは気にしないでと言うように首を振る。

先ほどの言葉に嘘は一つもなかったが、かといってハーマイオニーが想像しているだろう間違いを正すつもりは無かった。

 

 

「大丈夫よ!気にしないでね」

「…ええ、…あっ!デザートが、出てきたわ…食べましょう!」

 

 

ハーマイオニーは無理矢理話を終わらせ、自分の皿に糖蜜パイを置くと、ソフィアの皿にも同じように置いた。ソフィアはハーマイオニーの気遣いに少しだけ…真実を言えないでいる事に胸が痛み心の中でこっそり謝った。

 

 

 

豪勢な食事は生徒全員が満腹になると突如消えた。

ダンブルドアが立ち上がり、いくつかの注意事項を述べる、校内にある森には入らない事、廊下で魔法を使わない事、クィディッチの予選が開始される事、そして、四階の右側の廊下には決して近付かない事。

最後の注意だけが異質であり、死ぬ可能性を示唆していた。ソフィアは不思議そうな顔でダンブルドアを見つめる。このホグワーツにそんな危険な場所があっても良いのだろうか?今年いっぱい、と言う事は去年は普通に使用されていた廊下なのだろう。

痛い死に方をしたくはなかったが、その場所への興味が勝ちチラリとスリザリン寮にいる片割れを見れば、彼もまた何処か企むように目を細めていた。

 

その後、思い思いのメロディで校歌を歌い──教師達は皆小さく呟くか、口を閉ざしていたが──生徒達はそれぞれの寮の監督生に連れられて寮へ移動した。

 

途中でピーブズに邪魔をされたものの、なんとか生徒たちはグリフィンドール寮へたどり着くと眠い目を擦り、重い足を引き摺りながら談話室を通りそれぞれの部屋へ向かった。

 

 

「あ!ソフィア!見て、同じ部屋よ!」

「本当!?やったわ!」

 

 

ハーマイオニーは扉に貼られた紙に書かれている名前を見て喜び手を叩いた。ソフィアもまた、ハーマイオニーと同室なのは嬉しかった。

ソフィアは明るく、その性格から人に可愛がられる事が多い、孤児院では沢山の子ども達に囲まれ、その中では皆の妹として愛されていた。孤児院を出てからはあまり会うことがなくなってしまったが、皆元気だろうか、今度休みの日に会いに行ってみようか。

そう思いソフィアは荷物を片付けていた手を止めいつものようにその言葉を口にした。

 

 

「ねぇルイス、今度──」

 

 

振り返った先に居たのは、少し目を見開いたハーマイオニーだった。

ソフィアはぴたりと言葉を止めると、口を押さえ悲しさが滲む困り顔で肩をすくめた。

 

 

「…ルイスが居ないの、忘れてたわ」

「きっと、いつか慣れるわよ…。でも、多分同じ寮だったとしても…同じ部屋にはなれないと思うわ」

 

 

だって、男子と女子では部屋が違うもの。そうハーマイオニーは言葉を続け、トランクからパジャマを取り出し着替え始めた。

今まで同じ部屋で寝起きするのが当たり前だった、振り返ればいつだってルイスがいた。怖い夢を見て起きた時も、彼のベッドに潜り込んで朝を迎えた。

 

ソフィアは着替えようとしていたパジャマをトランクに押し込むとすぐに扉へと向かう。

 

 

「どこに行くの?」

「ルイスの所よ、おやすみのキスをしてもらってないもの」

「本気だったの!?でも…時間が…早く行ってすぐ帰ってくるのよ?」

「わかってるわ!」

 

 

ハーマイオニーは止めようか一瞬迷ったが、ソフィアに何を言っても無駄だ、きっとどうにかして抜け出すことだろうと考え、ため息をつきながら見送った。

 

 

 

「あれ?もう1人の…あの子はどこに行ったの?」

 

 

遅れて部屋に入ってきたラベンダー・ブラウンとパーバティ・パチルはもう1人のルームメイトが見当たらない事に気付き首を傾げた。

ハーマイオニーはパジャマに着替え終わり、ベッドに腰掛けながらため息混じりに2人に答える。

 

 

「おやすみのキスをしに行くらしいわ!」

「ああ…」

「成程ね…」

 

 

組み分けの儀式での強烈な悲劇を思い出し、2人は納得した。

パーバティも双子であり、片割れのパドマはレイブンクローに組み分けされてしまった。もちろん悲しさや不安はあるが、ソフィアほどではなくーーそれでも、同じ双子として話しが合うかもしれない、今度ゆっくり話してみたい、とパーバティは思った。

 

 

 

 

 




当初はハーマイオニーと2人部屋の予定でしたが、4人部屋に変更しました。
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