ソフィアとルイスは夏休み、何度かハリーとマグル界で遊んで過ごした。
魔法が使えない遊びだとしても、友人と過ごしているだけで十分楽しく、ハリーは毎日公園で2人の姿が現れないかと楽しみにしていた。
2人は毎日来るわけでは無かったが、3日と開けずマグル界を訪れた。ハリーからマグルの世界の話を聞くのはとても楽しくハリーに色々な質問をした。ハリーも優秀な2人が知らない事を教えるのは何処か嬉しく…誇らしかった。マグル界での記憶は辛いものだったが、ソフィアとルイスに話せる事が少しでもあり、2人を喜ばせる事ができ、ほんの少しだけ、辛い記憶の傷が癒された。
「そういえば2人はロンとハーマイオニーに夏休み中会った?」
「ううん、2人とも今イギリスに居ないの。旅行に行ってるみたい」
ソフィアは残念そうに笑い首を振った。ハーマイオニーの家に遊びに行く予定だったが、夏休みが始まってすぐにハーマイオニーから長文で謝罪の手紙が届いたのだ。ハーマイオニーは長い間両親と会っていない、それに数ヶ月間石にされていたのだ。きっと、彼女の両親は心を痛め心配した事だろう。折角の家族でのひと時を過ごしているのだ、ソフィアは手紙を送り過ぎるのも家族の時間の邪魔になるかもしれない、と控えていた。
「ロンも?」
ハリーは少し驚いた。
ウィーズリー家はお世辞でも裕福とは言えない。家族全員で旅行に、それも長い間行く資金があったのかと、純粋に疑問に思ったがすぐにこんな失礼な事を考えてはダメだと首を振る。ハリーの考えがわかってしまったルイスはーー彼も同じ事を思ってしまったのだーーにっこりと笑いながら説明した。
「くじが当たって、そのお金で旅行に行ってるみたいなんだ。素晴らしいよね」
「うん!本当に!会った時に話を聞くのが楽しみだよ!」
ハリーは心の底からそう思った。
ウィーズリー家はとても親切だが、貧しい。彼らがくじに当たった幸運は自分の事のように喜べたし、なにより彼ら以上に当選が相応しい家もないだろうと、ハリーも微笑む。
「多分、次にみんなで会えるのは…来年度の教材を買いに行く時か、9月1日かね」
「僕らは来年度の教科書リストが届いたらすぐに買いに行くつもりだけど、もしみんなが同じ日にダイアゴン横丁に行くなら会いに行くよ」
「僕は…ヘドウィグを使うのが禁止されてるんだ…また、わかったら教えて!必ず行くから!」
一日でも早くみんなで会いたいハリーは強く頷いた。もう1ヶ月近く、ロンとハーマイオニーからは手紙の1通も来ていない。ロンは夏休みが始まって1週間目に2人のように電話をくれたのだがーー悲惨な結果になってしまった。それから全く、ハリー宛の電話は鳴らなかった。それはとても寂しかったが、何とか卑屈にならず耐えられたのはソフィアとルイスがこうして会いにきてくれたからだろう。
いつものように夕暮れまで遊んだ3人は、いつものように別れを惜しみお互いの姿が見えなくなるまで手を振り、家へ帰った。
「ただいまー」
「お腹すいたわ!」
エドワーズ孤児院に一度戻り、ジャックと別れを告げフルーパウダーを使い家に戻った2人はいつものように楽しげに会話をしながらソファで本を読むセブルスの側に駆け寄り、両隣に座った。
セブルスは本を閉じながら2人に「楽しかったか?」と優しく聞き、ソフィアの頭についていた葉を手で払った。
「…頻繁にジャックの元に行くが…何をしているんだ?」
「んー?別に、普通に遊んでるだけだよ」
「そうよ、遊んでるだけだわ。来年の事も聞いているの、ジャックも学生の頃全科目受講したでしょう?」
嘘は言っていない。2人は視線だけで意味ありげに笑う。
ハリーの元に行っていることを、2人はセブルスに秘密にしていた。セブルスはハリーに対して何故か他のグリフィンドール生よりも当たりがきつい。きっと正直に何処に行っているかを告げれば…止めることはないだろうが、嫌な顔をすると思ったのだ。
ジャックに来年の事を聞いている事もまた事実だった。
ソフィアが全科目受講すると聞いたセブルスは、ジャックも同じように学生時代に全科目受講していたと思い出し、上手くこなす為のアドバイスをソフィアに伝えて欲しいと頼んでいた。
ジャックからソフィアへのアドバイスは至ってシンプルなものだ。「適度に手を抜く事。120点取れるテストでも100点で満足する事」ソフィアはその言葉の真意を、聞いた時はまだ理解出来なかった。ーー後々この言葉がどれほど重要な事か、深く理解することになるのだが。
セブルスは去年と違い、頻繁にジャックの元へ行くのを少し不思議には思ったが、学年末にジャックがホグワーツの臨時教師となり、久しぶりに会い、孤児院の子ども達が恋しくなっただけだろうと深く考えなかった。
それに、ジャックの事をセブルスは他人で最も信用している、といえるだろう。そのジャックがそばに居るのであれば、特に問題はない。
「今日の夕食の当番はソフィアだよ、早く作ってね。僕もお腹ぺこぺこだよ…」
「えー?…わかったわ」
面倒臭そうにソフィアはため息をつくと立ち上がる。料理が得意でないソフィアは、得意なルイスや父が作る料理の方が美味しいのだから2人が作ればいいのに、とぶつぶつと文句を毎回言っていたがーーセブルスとルイスは一切手出しはしなかった。料理当番は守らなければならない。それがスネイプ家の密かなルールだった。
ーーーコンコン
ふと3人は小さな音を聞きそちらを振り返った。ルイスはすぐに立ち上がると窓に駆け寄り、羽をばたつかせていた黒い梟を家の中に入れてやった。
梟はセブルスの元へすっと向かうとその嘴に咥えた手紙を手元に落とした。
本来配達される時間ではない手紙はーー良くない知らせの事が多い。セブルスはすぐに封を切り書かれていた内容に目を通した。
途端に深く眉間に皺が刻まれ、深刻な表情になっていくセブルスを見てソフィアとルイスは少し不安そうに顔を見合わせ、父の元に駆け寄った。
「…緊急の連絡だ。…ソフィア、ルイス…少し出かける。…暫く戻れないかもしれん」
セブルスは足早に暖炉へと向かうとフルーパウダーを投げ入れ、不安げに眉を下げる2人の方を振り向いた。
「…私が戻るまで、外出はするな」
只事ではないセブルスの真剣な言葉と表情に、ソフィアとルイスは直ぐに頷き、一度強くセブルスを抱きしめた。
「父様、行ってらっしゃい」
「気をつけてね」
「ああ…」
セブルスは2人の頭を軽く撫でると、直ぐに暖炉の中に飛び込む。緑の炎が小さくなり、いつものような赤い炎に変わってもまだ2人はじっと暖炉を見ていた。
「何があったんだろう…」
「よくない事なのは…確かね。ーーまぁ、でも良いこともあるわ」
「え?…何がいいことなの?」
ソフィアは不安げな表情を消し、悪戯っぽく笑った。
「今日の料理は手抜きでいいわ!」
ルイスは目を見開き、苦笑した。