【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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106 可愛いお願い!

 

 

次の日の朝、ソフィアとルイスは朝日と共に目を覚ましいつものようにおはようのキスを頬にした後そっと父の部屋を訪れた。

昨日とても疲れた様子で夜遅くに帰って来てから、閉ざされた扉は開く事はない。

 

 

「…もう少し、寝かしてあげましょう」

「そうだね。…朝食の準備をしようか」

 

 

いつもなら気にせず扉を破壊せんばかりの勢いで開け、まだベッドの上で寝ているセブルス目がけて飛び掛かり無理矢理起こしていただろうが、流石に今回ばかりはそうする気はなく、セブルスを起こさないようにそっと扉の前から離れリビングへと向かった。

 

 

ルイスが朝食を作っている間、ソフィアは散らかった部屋の片付けや掃除を行った。

机の上に山のように置かれた本を元の場所に戻し、杖を振るい床の埃や塵を一掃する。固く絞られた雑巾が床を磨き上げる中、空気を入れ替える為に開かれた窓から梟がひらりと部屋の中に飛び込んだ。

 

 

「ヘドウィグ!」

 

 

真っ白な梟を見てソフィアは驚いてすぐに駆け寄ると嘴から封筒を受け取った。差出人はハリーからで、ソフィアはすぐに缶の中からビスケットを一つ取るとヘドウィグに「届けてくれてありがとう」と微笑み、ヘドウィグに差し出した。

ヘドウィグは優しくソフィアの指を甘噛みすると、嬉しそうに掌に乗るビスケットを嘴で啄んだ。

 

 

「ルイス!ハリーから手紙が届いたわ!」

「え?!ちょっと今手が離せないんだーー読んで!」

 

 

朝食を作っていたルイスはソフィアの声に大声で返事をすると、フライパンの上にある目玉焼きを見ながらも耳だけはソフィアの方に向けた。

 

 

「えっと…ハリー、今漏れ鍋に居るみたい!…9月1日までは漏れ鍋で過ごすそうよ!会えないかって書いてあるわ」

「なんで漏れ鍋に居るんだろう…?よくハリーの親戚が許可したよね」

 

 

ルイスは首を傾げながらフライパンを大きく振るう。綺麗に焼けた目玉焼き二つがふわりとフライパンから離れ、それぞれトーストの上に着陸した。冷蔵棚を開けーー中から冷たい冷気がひやりと外へ流れ出る。この冷蔵棚は常に5℃程度に保たれている。たまに食材を凍らせてしまう事があるのが難点だーー冷えた牛乳瓶を取り出しすぐに閉めると杖を振るい、目玉焼きトーストが乗った皿とグラス2つを浮遊させソフィアが待つリビングまで運んだ。

 

 

「お待たせ、さぁ食べようか」

「ありがとう。…うーん。まぁ、ハリーの親戚はハリーの事嫌いみたいだし…早く追い出したかったのかしら?」

「ハリーにとっては嬉しい事だろうね」

 

 

トーストを齧りながらソフィアは首を傾げた。納得は出来るがーー確かに、ハリーの親戚は何故今まで夏休みの間にハリーをしっかりと家に置いたのだろう。今回のように夏季休暇中ずっと漏れ鍋に宿泊させれば、ハリーも、そしてハリーの親戚達も幸せに過ごせただろう。嫌がりながらも置いておくのは、保護者としての責任感ゆえだろうか。

 

 

「会いたいね」

「そうね…でも…父様は外出を許してくれるかしら?」

 

 

ルイスは冷えた牛乳を飲みながら「うーん」と唸った。ダイアゴン横丁は人でいつも賑わっている。流石にそんな場所にお尋ね者の囚人は現れないだろうーーノクターン横丁なら、話は別だが。

 

 

「どっちみち…新しい教材を買いに行かなきゃいけないしね…後で聞いてみようか」

「ええ、そうね」

 

 

ソフィアはトーストの耳をポイと口の中に放り込み、目玉焼きの黄身が垂れた指を舐めた。それを見てルイスが眉を寄せ「はしたない」と呟きナプキンを渡した。

 

幼かった2人は身長も伸び、丸みのあった頬は少し大人の顔立ちに近づき始めた。まだ同年代と比べれば小柄な方ではあったが、ソフィアは兎も角、ルイスはこの夏休みで急激に身長が伸びていた。去年までは同じくらいの身長だったが、今はルイスの方が5センチは高いだろう。

 

 

「ソフィア、僕たちはもう数ヶ月後には14歳になるんだから…少しは落ち着いた方がいいよ」

「あら、父様みたいな事をいうのね」

「だって…もう子どもじゃないからね」

 

 

ルイスは少し汚れた口元をナプキンで丁寧に押さえ、ソフィアを嗜める。そろそろ子どもっぽい言動は卒業しなければならない、そうルイスは思いーー数分違いだが、兄としてソフィアに言い聞かせたが、ソフィアは子どもっぽく頬を膨らませる。

 

 

ーーまぁ、ソフィアはそんな子どもっぽい仕草が似合ってるし可愛いんだけど。

 

 

少女と女性との曖昧な境界線の上にいるソフィアは、ふと真剣な表情をしていれば大人っぽく、いつものようにケラケラと笑っていれば子どもっぽく見えた。

どちらもソフィアの魅力をさらに惹き立てている事は確実だろう。

ソフィアに憧れ、好感を持つ者は…実は多い。まだソフィアはそんな男子たちの視線には気付いていないようだが、悪い虫がつく前にある程度の女性としての立ち振る舞いを教えないとならない。

 

 

 

ーーこういう時に母親がいないのは…ちょっと不便だなぁ。

 

 

 

ルイスは何と切り出せば良いのかわからず、冷たい牛乳を無言で飲んだ。来年度が始まったらソフィアの事をハーマイオニーに頼んでみようかな、彼女は賢いから僕が何を望んでいるかーー何を言いたいのか、きっとわかるだろう。

 

 

朝食を終え、2人はソファに座りながら本を読む。どれくらいそうしていただろうか。もう太陽の光は真上近くまで上がっている。

そろそろ、流石に起きてくるだろうか。そうルイスが時計を見ながら思っていると、扉が静かに開き頭を抑えながらセブルスがゆっくり現れた。

 

 

「おはよう父様」

「お寝坊さんね、父様?」

「…あぁ…流石に、寝過ぎたようだ。…ソフィア、紅茶を」

「はーい、待ってて」

 

 

セブルスは寝過ぎて鈍く痛む頭を振り、肘掛け椅子に座る。

顔色と、目の下の隈は少しマシになっているようで、ルイスはほっと胸を撫で下ろし、机の上にあるスコーンの乗った皿をちょっと持ち上げてセブルスを見た。

 

 

「父様、紅茶だけでいいの?何か食べる?…スコーンならあるよ」

「…いや、紅茶だけでいい」

「そう…ねえ父様、新年度の教材を買いに行きたいんだけど…まだ外出しない方がいい?」

 

 

ルイスは皿を置き、セブルスの側に寄ると肘掛けの上に座った。

セブルスはその行儀の悪さを特に注意することなく少し考え込んでいたが机の上に放り出されていたままだったホグワーツの教科書リストを手に取ると頷いた。

ソフィアが必要な教科書はかなり多い、それも全教科選択してしまったからだが、金銭的に問題はない。ーー早く予習をしたいのだろう。

 

 

「必要な物だけを買い、すぐに帰ってくるのならいい。行っていいのはダイアゴン横丁だけだ。…間違ってもノクターン横丁にはいくな」

「わかってるわよ、囚人が逃げ出して潜んでるかもしれないから、でしょう?」

 

 

温かい湯気が立ち上るカップをセブルスに渡しながらソフィアが答える。

流石に知っていたか、とセブルスは苦々しい表情で頷いた。日刊預言者新聞は、ブラックが脱獄してから連日ブラックについて記事にしている。何処かで目にするだろうとは思っていた。

 

 

「ああ、…来年度から、ホグワーツにも警備が入る…」

「やっぱり?…でも、囚人がホグワーツになんて来る?」

「…来てから対処しては間に合わん」

 

 

セブルスは2人にハリーが狙われている可能性が高い事を告げなかった。出来れば今年は特に、2人に大人しく過ごして欲しかった。ーーブラックが万が一、ホグワーツに来てしまったら2人が大人しく出来る未来を想像出来ないのが、何とも悲しい事だ。

 

 

「ジャックに付き添いを頼めたら良かったんだが…アイツも忙しいらしい」

「2人で大丈夫よ。…あ!ねえ父様?私お願いがあるの」

 

 

2人で大丈夫だと良い、ダイアゴン横丁の事を考えたソフィアは思い出したように少し甘えたような声を出し、肘掛け椅子の後ろに周り、背後からセブルスの首元に腕を絡ませた。

 

 

「…何だ?」

 

 

セブルスは柔らかい声でソフィアに問いかけ、自分の顔の横にあるソフィアの頭をゆるく撫でる。それを見て、ルイスはソフィアは父の扱いをよく心得ていると内心で苦笑する。

勿論、セブルスはソフィアだけではなく、ルイスにも優しい。だが多数の父親と同じくーー父親というものは、娘には息子よりも甘く対応してしまうものだ。

 

 

「私ね、ペットが飼いたいの!来年は沢山受講したでしょう?癒しが必要だわ!」

「ペットか…」

「え!いいなぁ、僕も飼いたい!」

 

 

ソフィアのお願いを聞いたルイスは自分も飼いたいと目を輝かせ、肘掛けに座っていた身を乗り出しセブルスの空いている右手を掴んだ。

 

 

「「ねえ、駄目?」」

 

 

2人の甘え声に、セブルスは目を細め口先を僅かに綻ばせる。

 

 

「ああ、良いだろう」

「やったあ!父様大好き!」

「父様ありがとう!大好き!」

 

 

ルイスはセブルスの首元に抱き着き、ソフィアはセブルスの頬にキスを落とした。そしてセブルスにバレないようにちらりと視線を交わし、ほくそ笑む。ーー父様、ちょろい。

 

 

「だが、ソフィア。ルイスの嫌がる生き物は飼ってはならん」

「え!…そんなぁ……駄目?」

「…駄目だ。ルイスが可哀想だろう」

「本当だよソフィア、絶対にやめてね」

 

 

蜘蛛が飼えないと分かるとソフィアはぷくりと頬を膨らませたが、すぐに気持ちを切り替えてどんな新しい家族を受け入れようかと心を踊らせた。

ルイスもまた、折角ならカッコいいペットが良いとまだ見ぬ家族に胸をときめかせた。

 

 

「父様はペットとか、飼った事ないの?」

 

 

ソフィアは椅子の後ろから、ルイスの座る肘掛けとは反対側に座り首を傾げる。

あまり生き物を飼っている姿を想像出来ないが、学生時代に梟くらいは飼っていてもおかしくない。

 

 

「無いな」

 

 

 

セブルスの答えに、ルイスは「へえ?何で?」と何となく聞いた。セブルスはじっとルイスを見て、わからないのかと言うようにゆっくりと、諭すように告げた。

 

 

「魔法薬は調合に時間がかかるものが多い。ペットの世話をする暇など無い。…ルイス、今年も私の個人授業を受けるつもりなら…その辺りをよく考えて選ぶ事だな」

「あー…成程ね。…え、じゃあ今年は結構難しい薬を作るの?」

「ああ、そのつもりだ」

「やった!楽しみだなぁ」

 

 

調合に何日もかけるのなら、きっとそれなりに難しい薬なのだろう。今から新たな楽しみが出来たと嬉しそうに頬を緩めるルイスを見て、ソフィアはまた魔法薬学の話をしてる…と、少し嫌そうな目で2人を見た。ソフィアが2人がする話で唯一楽しめないのは、魔法薬学に関する話だが、あいにく2人はよくその話に花を咲かせていた。

 

 

「魔法薬…私どうして上手く出来ないのかしら…たまに嫌になるわ」

「真剣に取り組めば出来るはずだ。調合中、意識が散布し過ぎている。…それに大雑把すぎる」

「ソフィアはもっと、調合の過程を楽しまなきゃ!」

「ほう…良い表現だ」

 

 

ルイスは褒められた事が嬉しく、照れながらも「良いでしょう」とばかりにソフィアに向かい、にやりと笑う。面白くないソフィアはぷいとそっぽを向きまたも頬を膨らませた。

 

 

「まぁ、来年は大鍋の数を減らさないように頑張るわ」

「そうしてくれ。…ソフィアが大鍋を溶かした為、新たに発注したいと、ダンブルドアに言いに行き…その度に気の毒そうに見られるのは…懲り懲りだ」

「まぁ!」

 

 

ソフィアは頬を赤く染めて少し怒って見せたが、セブルスとルイスは楽しそうに笑った。

 

 

 

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