【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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107 ダイアゴン横丁!

 

ソフィアとルイスはハリーと会うために、そして教材を買う為に漏れ鍋へと向かった。

店主にハリーが泊まっている客室は何処かと聞く前に、暖炉から出た瞬間、食事をとる客で混み合っている場所の一角から「ソフィア!ルイス!」と声が掛かった。

 

 

「ハリー!」

「久しぶりね!」

 

 

2人はトーストを手に持ちながら溢れんばかりの笑顔で手を振るハリーに駆け寄るとハリーの前に座る。店主はすぐに2人の側に寄ると「ご注文は?」と聞いた為、本当は何も注文するつもりは無かったのだがーー2人は紅茶を一杯頼んだ。

 

 

「ハリー、急に会えなくなってごめんなさい」

「ううん、でも…どうしたの?」

「囚人が脱獄したのは知ってる?まぁ、その関係で保護者から外出禁止って言われたんだ」

「そうなんだ…凶悪犯だもんね」

 

 

ルイスは運ばれてきたやけに薄い紅茶を顔を顰めながら一口飲み、中にミルクをたっぷり入れ、ハリーの言葉に頷いた。

 

 

「うん、すぐ捕まると良いんだけど」

「ねえハリー?ハリーはもう教材を揃えた?私たちは今日買う予定なの」

「まだだよ、一緒に買いに行こう!」

「ええ、これを飲み終わったら行きましょう!」

 

 

その言葉を待っていたというようにソフィアはにっこりと笑い紅茶を一口飲むと怪訝な顔をして薄い琥珀色を見つめた。

 

 

「ーー飲み終わる前に行きましょうか」

 

 

 

 

 

ソフィア達はリストを見ながら来年度の教材を買って回った。ハリーとルイスは兎も角、ソフィアは全科目受講しているため、その細腕に積み上げられた本の山はなかなか壮観なものだった。ハリーとルイスは持つのを手伝ってやりたい気持ちはあったが、残念ながら2人の両手にも同じようにーー彼女と比べて小さくはあったがーー教科書の山が出来ていた。

 

 

「後は…怪物的な怪物の本ね!…あの檻の中の本かしら…?」

 

 

ソフィアはレジのカウンターに本の山を置き、痺れる手を振りながら本屋のショーウィンドウに飾られている檻の中にある数百冊の本を見た。

その本達は取っ組み合い、ぶん投げ、噛みつき合い、檻の中には千切れたページが舞う。

 

 

「まぁ!ここの店主はこの本の扱い方を知らないのね!」

 

 

ソフィアは在庫整理をしていた店主の側に寄り「あの怪物的な怪物の本ですがーー…」と声をかけた、その瞬間店主はびくりと体を震わせ顔を引き攣らせたがぐっと眉を寄せ勇敢な顔つきになるとシャツの袖をたくし上げ大股で檻に近づいた

 

 

「君たち、どいて」

 

 

店主は檻の前にいたルイスとハリーを押し退けると檻の側にかけられた分厚い手袋をはめ、太いごつごつとした杖を手にしっかりと持ち、檻の入口へと進み出た。

 

 

「何冊、必要かね?」

 

 

まさか、人数分の3冊も一度に買う気じゃ無いだろうなと店主はさっと顔を青くさせた。

 

 

「あっ僕は持ってます」

「2冊、お願いします…」

「2…冊……よし、わかった」

 

 

最悪の結果ではなかったが、それでも2冊この中から取り出さねばならない。店主の手は、厚い手袋越しに何度も噛まれ青い歯型を残していた。流血こそしていないが、内出血はどうしようもなかった。ーーそれほどに強い力で噛むのだ。

 

 

 

「店主さん待って!私がとるわ!」

「君が…?」

 

 

ソフィアは自分の胸を指差して頷くが、店主は疲れたように笑って首を振った。きっと、自分があまりに辛そうにしているから、この少女は変わろうと申し出てくれたのだ。ただこの少女の腕は細く白い、そんな細腕でなにが出来るのか?ーーそもそも、客に怪我をさせてしまうかもしれない、そんな事はーーとてもありがたい申し出だったが断った。

 

 

「その腕が噛みちぎられてしまうよ、…さあ、下がりなさい」

「大丈夫よ!」

 

 

ソフィアは店主の忠告を聞かず、店主の脇をくぐり抜け、檻の入口の前に立った。「危ない!」と店主が慌てて止める前にソフィアはさっと扉を開け、1番近くにいた怪物的な本の表紙を優しく撫でる。すると本はぶるぶると大きく震え大人しくーーただの本のように停止した。

 

 

「はい、ルイス持ってて?」

「わかった」

 

 

ソフィアは大人しくなった本をルイスの手に渡し、もう一冊ーーもう一匹というべきなのだろうか?ーー本を大人しくさせた後、扉を閉めた。驚愕しぽかんと目を開く店主に、ソフィアは悪戯っぽい笑顔で笑う。

 

 

「ね?大丈夫だったでしょう?」

 

 

 

その後店主に怪物的な本の宥め方を教え、それに心から感謝した店主はーー何せあの本はお互いを食い荒らし、商品として売り物にならない程にぼろぼろに引き裂いてしまうーーソフィアの購入する予定だった教科書全てを無料で譲ってくれた。

流石にソフィアが買う本の量はかなりのものだった為断ったのだが、店主はにっこりとーー少々投げやりに笑い、「君が買う本の量以上の本がお互いを食い荒らしたんだ。ーー宥め方を知らなければ入荷した本は一匹を残して駄目になってた」と告げ、渋るソフィアの腕に無理やり本の山を乗せた。

 

 

「それなら…ありがとうございます!」

 

 

相手の好意を拒否し続けるのも悪いか、とソフィアは笑顔でお礼を言い受け取る。残りはハリーとルイスが数多くの本を購入するだけだ、ソフィアは腕に持つ本を抱え直しながらハリーは必要な本を探せただろうかとあたりを見渡した。

 

ハリーは占い学に必要な本を店主に探してもらっていたが、必要なものではない、小さな机に陳列されている本をじっと見ていた。

 

 

「ああ、その本は読まない方がいいですよ。死の前兆があらゆるところに見え始めて、それだけで死ぬ程怖いですから」

 

 

店主はハリーが見つめていた死の前兆に関する本を見ながら身体を震わせた。

そんなに恐ろしいのだろうか、とソフィアはハリーの隣から本を覗き込む。ーーそこには、小熊ほどの巨大な黒い犬の絵が描かれていた。

 

 

「ああ、ヘルハウンドね」

「ソフィア…この犬、知ってるの?」

 

 

ハリーはその目をぎらつかせた黒犬から目を離す事なく、恐々とソフィアに問いかける。ソフィアは足元に本を置き、赤くなった腕を摩りながら頷いた。

 

 

「ええ、死神犬(グリム)とも呼ばれているわ。墓場にいる亡霊犬ね。占い学では不吉の象徴らしいけれど…黒くて大きな犬なんて沢山居るわ。普通の犬を見た人のその後何人かがたまたま死んじゃうとするでしょ?人は…不可解で不合理な死に理由を求めたいものなの。それがグリムの謂れだと私は思うわ」

「…ソフィアは信じてないの?」

 

 

ハリーはようやく黒犬から無理やり視線を外し、不安げにソフィアを見つめる。何故そんな顔をするのか、ソフィアは安心させるように笑い、そして肩をすくめた。

 

 

「ええ、だってそれなら…私たちは毎年グリムを見てなければおかしいわ!」

 

 

この2年間で何度死にそうな目にあったか!と明るく言い飛ばすソフィアに、ハリーはつられるように笑い、胸を撫で下ろした。

 

 

「黒い犬を見たの?」

「うん…また後で話すよ。…先に買い物終わらせよう」

「ええ、そうね…」

 

 

ソフィアは足の間にある本の小山を見下ろし、ため息をついたがすぐに気を引き締め直し自分に喝を入れ、その本の山を抱え持った。

 

 

3人は書店からよろめきながら出ると、この大荷物を持ったまま他の教材を買うのは困難だと判断し、一度漏れ鍋のハリーが宿泊する部屋へと向かった。

 

 

「はぁー!重かったわ!こんな事なら検知不可能拡大呪文を習得すべきだったわ…」

 

 

凝り固まった肩を回しながらソフィアは呟く。何としてでも後数週間の間に覚えようと心に決め、ソフィアはハリーとルイスを振り返った。彼らもまた本の重さで痺れた腕を揉みながらその言葉に賛同するように苦笑していた。

 

 

「ペットショップは…また今度ね」

「そうだね、これ以上持つのは不可能だ」

 

 

ソフィアはため息をつき、ルイスも同じように肩をすくめる。本当なら今日1日でペットも飼いたかったが、また別の機会にしよう。

 

 

「…それで?ハリーはなんで漏れ鍋にいるの?」

「ああ…えっとね…」

 

 

ハリーは買った教材を机の上に置いた後、思い出すようにポツポツとあった事を話した。

ルイスとソフィアは座るところが無かったため、ハリーから許可を得た上でベッドに腰掛け、ハリーは椅子を2人の前に持ってきてそこに腰掛けた。

家に来たマージを膨らませた事から話し、ソフィアとルイスはそれを静かに聞いた。

 

 

「なるほど、ご両親の侮辱は許せないわ」

「そうだねハリー。気にする事ないよ、僕だって同じ事をする」

 

 

亡くなった人への侮辱など、許せるものでは無い、もし母を侮辱されたら間違いなくーールイスは自身が知る最大の呪いをかけ、ソフィアは相手を変身術で虫に変えて踏み潰すだろう。

 

 

「うん…それで、家を飛び出して…その時に、…黒くて大きな犬を見たんだ…」

「え?グリムを?」

 

 

書店での話を知らなかったルイスは少し驚きの声を上げる。途端にハリーはそわそわと不安げに身体を揺らした。

 

 

「うん…やっぱりグリムだったのかなぁ…」

「うーん。…どうだろうね、普通の野良犬じゃない?」

「…そうだよね…うん…」

 

 

ルイスもソフィアと同じで占いを真剣に信じてはいない為懐疑的に考えていたが、あまりにもハリーの顔色が悪く、慰めるようにその肩を叩いた。

 

 

「大丈夫、もしグリムが居るなら僕らは何度も目撃してるはずだよ」

 

 

ソフィアと同じ慰めに、ハリーは少し沈んでいた気持ちを浮上させ微笑んだ。そうだといい、そう何度も思いながら。

 

 

「さ、一休みも出来たし、ダイアゴン横丁へ戻りましょう!私アイスが食べたいわ!」

 

 

ソフィアはぱっと立ち上がると、ハリーとルイスの前に立ち、暗い話は止めて楽しい場所へ向かおうと手を差し出した。

ルイスとハリーは顔を見合わせ、ソフィアのようににっこりと笑うとその手をとり立ち上がった。

 

 

 

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