【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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108 新しい家族!

ソフィアとルイスは別日に改めて魔法動物ペットショップを訪れた。

 

 

「二頭イモリですって!ああ、この子眠そう…かわいいわ…」

「うーん、やっぱり梟もいいなぁ…」

「みて!火吹きトカゲよ!青い炎が綺麗ね!鱗も黒くて素敵だわ!」

「紫色の猫も可愛いなぁ…」

「まぁ!ガラスヘビだわ!食べたものが見えるわ…凄いわね!」

「鷲もかっこいいなぁ…」

「あっ!金色クワガタよっ!めちゃくちゃ高いのよね…」

「…ソフィア、本気で選んでる?」

 

 

ソフィアが口にする生き物のあまりのセンスにルイスが呆れたようにいえば、ソフィアはきょとんと目を瞬き「勿論本気よ」と頷いた。

 

 

「うーん、やっぱり蛇にしようかしら…」

「…僕…去年のトラウマが…」

 

 

バジリスクと戦った事はまだ記憶に新しい。ルイスは去年のバジリスクの恐ろしさを思い出し身体をぶるりと震わせた。ソフィアは少し残念そうに眉を寄せ──流石に、ルイスが嫌がっている動物を飼う気は無い──他のゲージを一つ一つ見てまわる。どの子が良いだろうか?家族の一員となる、特別な子はどこに居るのだろう?

 

 

 

「───あっ!」

 

 

ソフィアはぱっと一つのゲージの前で足を止め、食い入るようにその先にいる白くてふわふわなモノを見た。

 

 

「ルイス!ねぇ、ちょっと来て!」

「何?タランチュラだったらただじゃおかないから」

 

 

ルイスは目を極限まで細め、もし蜘蛛ならすぐに目を閉じようと用心深く近付いた。ソフィアが今まで選んだ生き物は爬虫類か昆虫だ。その中でも一際興奮し嬉しそうな声を出させる生き物が何なのか、ルイスはかなり不安げにだった。

 

 

「もう!大丈夫よ。…見て、この子はどう?」

「わぁ…!今までソフィアが選んだ中で1番いいと思うよ!」

「決まりね!」

 

 

ソフィアは頬を紅潮させ、ゲージに手を伸ばす。途端にペットショップの店員が慌てて駆け寄りゲージに差し込もうとしていたソフィアの手を掴んだ。

 

 

「危ない!──お嬢さん、コレを飼うつもりですか?」

「ええ、そうです」

 

 

店員は驚愕と嬉しさ──厄介なものが漸くいなくなるという安堵だろう──を滲ませたが、少しだけ声を顰め、真面目な顔でソフィアに囁いた。

 

 

「コイツは…気性が荒く…飼い慣らすのは難しいですよ。どこで生まれたのか…ここだけの話、わからないのです。…何かあっても、…返品は不可です」

「大丈夫です。家族ですもの!返品する気はありません」

「そうですか!わかりました、カウンターに持っていきます。餌はサービスでつけておきますよ」

「まぁ!ありがとうございます!」

 

 

店員はソフィアの決意を聞いてほっと表情を緩めると直ぐにゲージを掴んだ。客の気が変わらないうちにさっさと厄介者を売ってしまいたいのだろう。

 

 

「ルイスはどうする?」

「うーん…──この子にする」

 

 

ルイスは少し先のゲージを指差した。

それを覗きに見たソフィアは、にっこりと笑い頷く。

 

 

 

「素晴らしいと思うわ!」

 

 

 

 

新たな家族を迎え入れたソフィアとルイスはすぐに家に戻った。この後漏れ鍋へ行ってハリーと会っても良かったのだが、それよりも新しい家族との仲を深めたい、そう思っていた。

 

 

「ただいま!」

「父様、いる?」

 

 

ソフィアとルイスは腕に大きな籠を抱え暖炉から飛び出す。一刻も早く、自分が選んだ最高の家族をセブルスに紹介したかった。

しかし、家の中はがらんと静まり返っていて2人の呼びかけに返答は無い。

ルイスは机の上に父からの伝言がある事に気付き──珍しく出掛けている──残念そうにため息をついたがすぐに気持ちを切り替え、籠に被せられていた布を外した。

ソフィアもまた、机の上にそっとゲージを置き、布を外す。

 

 

「宜しくね。あなたの名前は…ティティよ!」

 

 

ゲージの中には真っ白な毛玉のようなものが居た。ぴょこん、と大きな三角の耳が現れると、それはゆっくりと顔を上げる。

真っ白な体毛だが、顔の部分は柔らかな小麦のような色が混じっていた。瞳は黒く潤み、大きな耳の中は薄桃の色をしている。その2本ある尾の先は僅かに黒かった。

 

 

ティティ、と名付けられたのはフェネックと妖狐の混血の生き物だった。ただのフェネックでは無く、確かな知性を持ち、人の心を読み、化ける事が出来る。ティティはまだ生まれたばかりで自身にどんな力があるのかはわかっていなかった。

ただ、ペットショップの店員が言うように気性は荒く、今までも何人もの魔女や魔法使いがティティを飼ったがその度に返品されていた。

 

 

「さあ、そんな狭い所にいないで…出ておいで?」

 

 

ソフィアはゲージを開けると手を差し伸べる。ティティはぴくぴくと大きな耳を動かしソフィアの手の匂いを嗅ぎ、そしてじっとその眼を見つめゆっくりとゲージから出るとその手に甘えるように頭を擦り付けた。途端にソフィアはぱっと笑顔を浮かべ、思わず抱き締めたい衝動に駆られたがぐっと我慢した。

 

──まだこの子は私に慣れていない、この子から来るまで、我慢我慢…!

 

 

「か、可愛いっ…!」

 

 

しかし、ソフィアは手に触れる柔らかな毛とその生き物の暖かさに思わず小さく悶え、にやつく頬を抑えられなかった。

 

 

 

ルイスは止まり木に静かに立っているワタリガラスを見つめる。

あのペットショップに売っていたワタリガラスの中でも二回りは大きい個体のため、店員は獰猛さを持つかもしれないと忠告したが、ルイスにはそう思えなかった。

騒ぎ鳴くワタリガラス達の中でも一羽だけ気品溢れるその静かな立ち姿に、ルイスは一眼見て気に入った。真っ黒の身体、騒ぐ事のない静かな立ち姿に、誰を思い浮かべたかなど…想像に難くない。

 

 

「君の名前は…そうだね…シェイドだよ。…宜しくね、シェイド」

 

 

籠を開けたが、シェイドと名付けられた鴉は外へは出ない。──警戒しているのだろう。ただ、ルイスが差し出した手を羽で少しだけ撫で、小さく丸い目でルイスを見上げた。

 

それだけで嬉しそうにルイスは微笑み、その絹のように滑らかな羽をそっと撫でる。嫌がられるかと思ったが、シェイドは目を閉じ「クルクル」と鳥が甘えた時に出す鳴き声を上げた。

 

 

「なんて…美しいんだろう…」

 

 

ルイスはその美しさに、感嘆のため息をつく。

ルイスはシェイドをただの大きなワタリガラスだと思っていたのだが、実際はワタリガラスでは無かった。八咫烏と呼ばれる稀有な種族なのだが、ペットショップの店員も、ルイスも、その足が2本しかないのは見ていた為、微塵も八咫烏だとは思わなかった。

八咫烏は3本足の鴉であり、他の鴉より長寿であり、巨大で、さらに知性と魔力を持つ。成長した八咫烏の羽ばたきは竜巻を起こし、太陽の霊鳥である彼の血は全ての呪いを解呪する。

 

しかし、シェイドは生まれてすぐ、まだ力を持たない時に獣に襲われ、一本の足を失っていた。足の数が減ったといえ、八咫烏は八咫烏なのだが。その象徴が無いとなると…他の鴉と見分けるのは難しい。

 

 

真っ白な狐と。

真っ黒な鴉。

 

双子でありながら、どこか正反対の心を持つ2人は偶然にも知性と魔力を備えた動物を、新しい家族に選んでいた。

 

 

 

「ティティ、ずっと仲良くしてね?」

「シェイド、これから宜しくね」

 

 

2人の声に、キツネはキュッと、カラスはクルルと鳴いた。

 

 

 

「なんだか、私たちの言葉がわかってるみたいね?」

「まさか!偶然でしょ?」

 

 

ソフィアとルイスは顔を見合わせ「そうよね」と笑い合ったが、2人の家族となった狐と鴉は意味ありげに、チラリと視線を交わしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…何だ、これは」

 

 

ジャックに呼び出されていたセブルスが夕暮れの頃家に戻ると、沢山の羊皮紙が部屋中を舞い、何か白い毛玉が光線のように走り回っていた。そう思えばバサバサと室内にも関わらず風が巻き起こり、数々の本を本棚から落としていた。

 

 

「だめっ!メッ、よ!──ティティ!こらっ!大人しくしなさいっ!」

「シェイド!ティティを捕まえて!」

 

 

ソフィアは大声で懇願するように叫びながらティティの名前を呼んだが、ティティは足を止まらせる事なく部屋中を駆け回る。シェイドは命令通り捕まえようとしたが──彼にこの家は狭すぎたようで、羽ばたきのたびに羊皮紙が舞い羽先を本が掠めていた。

 

セブルスはその惨状に長い溜息を落とし、杖を振るう。

 

 

「──早く捕まえろ」

 

 

停止呪文をかけられたティティは本を撒き散らしながら本棚を駆け上がっていた最中でピタリと動きを止める。セブルスが魔法を使って初めてソフィアとルイスは父が帰ってきた事に気付き、ぱっと表情を輝かせた。

 

 

「あっ!父様お帰りなさい!」

「お帰りなさい!ねぇ、見て!僕のシェイドだよ!カッコいいでしょ?」

「あら!私のティティも…お転婆だけど可愛いわ!」

 

 

ルイスが腕を少し上げれば、ランプに留まっていたシェイドがゆっくりと大きな羽を広げその腕に捕まり、まるで背筋を伸ばしその美しい身を誇るように胸を逸らせた。

 

ソフィアは固まっていたティティを抱きしめると安心させる為に頭を撫でながら、セブルスの側に駆け寄る。

 

 

「…部屋を、片付けなさい」

 

 

静かな怒りが滲むセブルスの声に、ルイスとソフィアは顔を見合わせちらりと後ろを振り返る。整頓されていた本棚はぐちゃぐちゃになり、羊皮紙が舞い、インク壺が中身をぶちまけながら転がっている。部屋のあちこちに黒くかわいい肉球がしっかりとついていた。

鴉の黒い羽と、狐の白銀の毛が舞う中、ルイスとソフィアは「あはは…はーい」と苦笑いしながら素直に頷き、それぞれのペットを籠の中に戻した。

 

 

 

 

残りの夏休みを、ソフィアとルイスは新しく出来た家族のティティとシェイドと過ごした。

 

セブルスはつい先日ホグワーツへ向かった。2人はそれをとても残念に思ったが、ブラックが脱獄し、ホグワーツにディメンターが配置される事になってしまった。

ホグワーツの教師達はその対応と、保護者への説明に奔走しているのだろう。魔法族のものであれば、ディメンターがどれだけ恐ろしいのかを知っている。そんな存在が学舎のすぐ側を蠢いているだなんて、想像するだけで幸福な気持ちが吸い取られてしまいそうだった。

 

一刻も早くブラックが捕まればいい、そうソフィアとルイスは思っていた。

 

 

ルイスのペットであるシェイドは数日訓練し、ワタリガラスとしてフクロウ便ならぬカラス便に登録され、手紙や小包を運ぶことが出来るようになった。

初めてルイスがシェイドを使い手紙を送ったのはドラコに、だった。ワタリガラスをフクロウ便の代わりに使う家庭は少ないが存在している。

しかしこれほど大きな個体を見たのはドラコは初めてであり、いきなり屋敷の窓に現れた大鴉を見た時はあまりの巨大さに顔を引き攣らせた。

 

怖々その鴉が持つ手紙を受け取り、その内容にさっと目を通し、ルイスの新しいペットだと知った時は驚いたが、記念すべき初めての手紙を受け取ったのが自分だと知って、ドラコはこそばゆいような、心がむず痒いような、不思議な気持ちになった。

 

すぐに返事を書き、怖々と大鴉に手紙を持たせれば、大鴉は大きな羽音を立て悠々と浮遊し空の彼方に消えていった。

 

 

「お帰りシェイド!…ドラコからの返事まで持ってきてくれたの?本当に賢いね」

 

 

マルフォイ家はかなりの距離があったはずだが、シェイドはルイスが想像していたよりも早く帰宅し、もっと褒めてほしいと言うように頭をルイスに向けた。

ルイスは手紙を受け取りながらシェイドの頭や身体を愛おしげに撫でる。

 

 

「ねぇシェイド?私の手紙も届けてくれるかしら?」

 

 

ソフィアが手紙を2通見せながら言えば、シェイドは「おまかせあれ」と言うようにソフィアの指を優しく甘噛みすると直ぐに手紙を咥えた。

 

 

「ハーマイオニーと、ロン…ウィーズリー家に持っていってね?ハーマイオニーのお家はマグル界にあるから…あまり人を驚かさないようにね?」

 

 

ソフィアの忠告を静かに聞いていたシェイドは少し頭を下げ「わかった」と頷くとすぐに羽を広げ、再び窓から飛び立った。

 

シェイドを見送ったソフィアとルイスは顔を見合わせる。さっきのタイミングは、どう考えても言葉が通じているように見えた。

 

 

「…まさかね?」

「うん、たまたま…タイミングが良かったんだよ」

 

 

2人はシェイドがただのワタリガラスだと思っている故に、まさか人間の言葉全てを理解しているはずがないか、と苦笑した。

 

 

「ティティ!私は今から勉強をするわ。あなたはゲージに戻りましょう?」

 

 

窓を閉めながらソフィアはソファの上にあるクッションに寝転び腹を見せていたフェネックのティティを見た。

ティティはその言葉を聞くと「嫌だ」と言うように首を振り、そのままクッションの上で毛玉のように丸まった。

 

 

「…ティティも人の言葉がわかってる気がするわ…」

「いやいや…まさか…」

 

 

毛玉になってしまったティティの隣に座ったソフィアはその柔らかな身体を撫でながらしみじみと呟く。ルイスはまたも、苦笑する。

彼らはうっすらと、この2匹は普通では無いのではないか、と思っていたが、だからといって手放すつもりは毛頭もなかった。他とは違うのなら、それはそれで素晴らしい事だと考えていた。

 

 

「ティティ、寝てもいいけど…粗相はしちゃダメよ?トイレはあっちね?」

 

 

ゲージの隅に置かれている猫砂を指差せば、ティティは片目を開け尻尾をゆらりと振った。賢いティティは一度でトイレの場所を覚え、失敗する事は無かった。飼いやすい子で良かった、とソフィアは微笑み優しくティティを撫でる。──フェネックのトイレトレーニングは、本来かなり難しいのだが、ソフィアはそれを知らなかった。もし知っていたらきっとティティがただのフェネックでは無いとわかっていただろう。

 

 

「はぁ…この毛並み…癒されるわ!…よしっ!勉強頑張るっ!」

 

 

ソフィアはうっとりとティティの毛並みを撫でていたが、机の上にある古代ルーン語学に使う『魔法の象形文字と表語文字』を開き、時折辞書を開きながら黙々と読み込んでいた。

ルイスもまたソファに座ると紅茶の入ったカップを片手に持ちながら古代ルーン語の辞書を開く。中々難解だが、謎解きパズルのような不思議な魅力がある。古代ルーン語を深く理解すれば、古の魔術の片鱗を読み解けると言われている。ルイスはいつか忘れられた魔法を使ってみたいと、その赤い辞書を指でなぞりながら思った。

 

 

2人は夏休みの最終日まで外出する事なく、来年度の授業の予習をする為に家の中で過ごした。

ハリーは手紙でそれを知り残念がったが、ハリーもまた夏休みの課題に追いこまれていた。毎日会っていれば心は満たされただろうが──課題の空白部分は満たされなかっただろう。

 

 

 

ハーマイオニーとロンから手紙の返事を受け取ったソフィアは、2人がダイアゴン横丁に夏休みの最終日に行くことを知った。

その日は久しぶりにみんなが集まる日だ。

次の日にはホグワーツ特急で会えるのだが、1日も早くハーマイオニーとロンと会いたかった2人は、その日にダイアゴン横丁へ向かう事に決めた。

 

もう2ヶ月近く会っていない。

ハーマイオニーとロンが聞かせてくれるだろう夏休みの素晴らしい旅行の土産話を想像し、ソフィアとルイスは楽しげに笑った。

 

 

 

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