【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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109 日焼けしたその顔!

8月31日。

ソフィアとルイスは朝食を食べ終えるとすぐに漏れ鍋へ向かった。

ソフィアは肩掛け鞄の中にフェネックのティティを入れて連れ歩いたが、ルイスのペットであるシェイドは流石に連れ歩くには大き過ぎた為ダイアゴン横丁の空に放った。

久しぶりに空を自由に舞うシェイドはその大きな翼を広げ悠々と飛び回っていた。

通行人は急に陰った事に訝しげに空を見上げ、その巨大な大鴉に驚き目を丸くしていた。

 

 

「ハリー!課題は終わったかしら?」

「ソフィア!うん、なんとかギリギリね」

 

 

ハリーは昨夜遅くまで課題をしていた為──特に、魔法薬学が鬼門だった──眠そうな、どこかとろんとした目をしていたが、ソフィアとルイスを見ると直ぐに眠気は飛んでいってしまったようで大きく目を開くと嬉しそうに笑った。

 

 

「ロンとハーマイオニーは?」

「ううん、まだ会ってないよ」

「じゃあ探しに行きましょう!」

「そうだね!…あ、ファイアボルトも最後に一眼見て良い?」

 

 

ハリーの言葉にソフィアとルイスは「ファイアボルト?」と同時に聞き返し首を傾げた。まさか2人が知らないとは思わず、ハリーは「新しい箒さ!」と直ぐに2人を高級クィディッチ用品店に案内した。そこはいつも通り人集りが出来ていて皆がファイアボルトを食い入るように見つめていた。ハリー達は人混みを通り抜け陳列棚の前まで並ぶと、その輝くような素晴らしい箒を見た。

 

 

「わぁ…!たしかに、素晴らしい箒ね…時速240キロですって!」

「凄いよね、こんな箒に乗ってプレイ出来たら…最っ高だよね…」

「僕は…うーん、持て余しちゃうかな?」

 

 

クィディッチが好きで飛行術の得意なソフィアとハリーは興奮したように囁き合い頬を赤く染めていたが、ルイスはあまり興味がないのか、素晴らしい箒を見ても特に感動した様子はなく呟く。

 

 

「値段…お問い合わせ下さいって…金貨何枚になるのかしらね…」

「きっと、何百枚だよ…」

「ほらほら2人とも、買えないものを見てても仕方ないよ、僕アイス食べたいな」

 

 

穴が開くほど見つめる2人の背中をルイスはぐいぐいと押し、無理矢理ファイアボルトの前から移動させる、ハリーとソフィアは名残惜しそうに首が千切れそうなほど後ろを向いていたが、ついに首が痛くなり諦めたように前を向いた。

 

 

「まぁ…たしかに買えないものをずっと見てても仕方ないわよね…」

「そうだよね…ああ、でもあの箒があれば…マルフォイのニンバス2001なんて…目じゃないのに…」

「ハリーのニンバス2000も素晴らしい箒よ?」

「うーん…そうだけどさぁ…」

「はいはい、アイス食べに行くよ!」

 

 

まだ諦めきれずにぶつぶつと呟くハリーにルイスは呆れたようにため息をつき、ハリーの手を握ると無理やりフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・パーラーへ連れて行った。

 

 

「ソフィア!ハリー!ルイス!」

 

 

名残惜しそうにちらちらと高級クィディッチ用品店を振り返っていたハリーだったが、遠くから大声で自分達の名前を呼ぶその声に気がつくとぱっと前を向いた。

 

 

目的地のアイスクリーム・パーラーのテラスにハーマイオニーとロンが座っていた、2人の机の前には美味しそうな食べかけのアイスクリームがあり、2人共同じようにこんがりと日焼けをしている顔中に笑顔を浮かべ、3人に向かって千切れんばかりに手を振っていた。

 

 

「やっと会えた!」

「ハーマイオニー!久しぶりね!」

「2人とも良い色になったね?」

 

 

ハリーは笑顔でロンの隣に座り、ソフィアはハーマイオニーに抱き着き再会を喜んだ。ルイスはハリーの隣に座りながら店員に声をかけ、メニューに目を落とした。

 

 

「ソフィアとハリーは何か頼む?僕は…スペシャルパフェにしよっと」

「うーん、私はイチゴサンデーにするわ!」

「僕は…そうだな、チョコとバニラのダブルソフトで!」

 

 

ルイスは店員に3人分まとめて注文すると、再会を喜び嬉しそうなハーマイオニーとロンを見て、思わずつられて微笑んだ。

 

 

「旅行楽しかった?」

「もう最高だったさ!エジプトってすごいよ、ビルが夢中になるのもわかるな…ちょっと日差しはきつかったけどね」

「フランスもよかったわ、料理は美味しいし街並みは綺麗だし…沢山の美術館を回ったの!それに、フランスの魔法史って面白いのよ!」

「私、イギリスから出た事ないのよね…大人になったらいろんな世界を見てみたいわ!」

 

目を輝かせ夏休みの思い出を話すロンとハーマイオニーを見たハリー達は運ばれてきたアイスクリームを食べながら何度も相槌を打ち、楽しげにその話を聞いていた。

ある程度話し終えたロンが、思い出したようにハリーを見るとニヤリと悪戯っぽく笑った。

 

 

「ところでハリー、おばさんを膨らましちゃったって本当?」

「そうよ!本当に膨らましたの?」

 

 

ハーマイオニーは真面目な顔で聞いたが、ロンは一部始終を既にアーサーから聞いていた為、ハリーの含みを持たせた笑い顔を見ると堪えきれないというように吹き出し笑い転げた。

 

 

「そんなつもりじゃなかったんだけど。ただ、僕ちょっと──キレちゃって」

「ロン、笑う事じゃないわ!」

 

 

ゲラゲラと腹を抱えて笑うロンをハーマイオニーは窘めると、心配そうにハリーを見た。

 

 

「まぁ、ハリーがキレるのもわかるけど…ハリーには前科があるからね」

 

 

ルイスはスペシャルサンデーに刺さっていたウエハースを齧りながら苦笑し、ハーマイオニーはそれに同意するように真顔で何度も頷く。

 

 

「ほんとよ!むしろ、ハリーが退学にならなかったのが驚きだわ」

「僕もそう思ってる。退学処分どころじゃない…僕、逮捕されるかと思った」

 

 

ハリーは父が魔法省で働いているロンなら、何故退学にならなかったのか知っているかと思いロンを見た。

 

 

「ファッジがどうして僕を見逃したのか、君のパパ知らないかな?」

「多分、君だからだ、違う?」

 

 

まだ笑いが止まらなかったロンはくすくす笑いをこぼしていたが、ハーマイオニーに強く睨まれ口を抑えながら肩を窄めた。

 

 

「有名なハリー・ポッター。いつものことさ。おばさんを膨らませたのが僕だったら、魔法省が僕に何をするのか、知りたくないよ。もっとも、まず僕を土の中から掘り起こさないといけないだろうな。きっと僕、ママに殺されちゃってるよ!」

「私も疑問だったのよね…去年、ほら…色々あったじゃない?その功績で今までのが白紙になったとかかしら?」

 

 

ソフィアは苺を指で摘み口の中に放り込みながら首を傾げる。ハリー達は顔を見合わせ、たしかにその可能性は高いかもしれないと思った。去年ハリー達は秘密の部屋の継承者──若きヴォルデモートと戦い、見事に勝った。その功績を加味されたとしても、おかしくは無い。

 

 

「今晩パパに直接きいてみたら?僕たちも漏れ鍋に泊まるんだ!だから、明日は僕たちと一緒にキングズ・クロス駅に行ける!ハーマイオニーも一緒だ!」

「パパとママが今朝ここに送ってくれたの。ホグワーツ用の色んなものも、全部一緒にね。ソフィアとルイスは…家に帰らないといけないわよね?」

「うーん…そうだね、荷物とか持ってきてないから…」

「駅で会いましょう!」

 

 

ハリーはソフィアとルイスも一緒に泊まれたらどれだけ幸せだろうかと思ったが、それでもハーマイオニーとロンと共に夜を過ごし、一緒にキングズ・クロス駅まで行く事が出来るのは喜ばしい事でにっこりと笑った。

 

 

「じゃあ、もう新しい教科書とかは全部買ったの?」

「これ見てくれよ!──ピカピカ新品の杖!33センチ、柳の木、ユニコーンの尻尾の毛が一本入ってる」

「新しい杖を買ったのね!よかったわね、ロン」

「うん、これで失敗せずにマルフォイにナメクジ呪いがかけられるぜ?」

 

 

ロンとハリーは顔を見合わせニヤリと笑ったが、ソフィアとルイスは何とも言えず無言でアイスを食べた。

今年もきっと、ドラコとハリー達は一切仲良くできないだろう。それはもう無理だと2人とも理解していたが、せめてお互い無視し合えば良いのに、とも思っていた。

 

 

「新しい教科書も全部揃えたよ」

 

 

ロンは椅子の下の大きな袋を指差したが、ハリーはそれよりもハーマイオニーの隣の席にあるはち切れそうな3つの袋を見て目を瞬かせた。

 

 

「ハーマイオニー、そんなに沢山どうしたの?」

「ほら、私、貴方達よりも沢山新しい科目をとるでしょう?これ、その教科書よ。数占い、魔法生物飼育学、占い学、古代ルーン文字学、マグル学──」

「そういや、君、なんでマグル学なんて取るんだい?君はマグル出身じゃないか!ソフィアはともかく、マグルの事はとっくに知ってるだろ?」

「だって、マグルのことを魔法的視点から勉強するのってとてもおもしろいと思うわ」

 

 

ハーマイオニーの勤勉さが信じ難く、同じ人間だと思えないロンは呆れたようにため息を吐き、ハリーは「これから一年、食べたり眠ったりする予定はあるの?」と尋ね、それを聞いたロンは愉快そうにくすくすと笑ったがハーマイオニーは両方とも無視し、イチゴサンデーを食べるソフィアをくるりと見た。

 

 

「ソフィア、あなた予習はどこまで済ませたの?」

「ん?…えっとね…とりあえず一通り教科書には目を通したわ、けど…占い学はよくわからなかったわ」

「ああ!そうよね、わかるわ…それに、古代ルーン語の──」

「ちょっとお二人さん?こんな所でお勉強の話は控えて頂けないかな?」

 

 

今にも袋の中から古代ルーン文字学の教科書を引っ張り出そうとしていたハーマイオニーにロンが嫌そうに言えば、ハーマイオニーはムッとしたものの、ハリーとロンの嫌そうな顔、そしてルイスの困ったような笑顔を見て浮かしかけていた腰をもう一度椅子の上に下ろした。

 

 

「あ!そうそう、私まだ10ガリオン持ってるの。私の誕生日、9月なんだけど…自分で一足早くプレゼントを買いなさいって、パパとママがお小遣いをくれたの」

 

 

ハーマイオニーが財布を覗きながらそう良い、ソフィアはスプーンを咥えたまま今年はハーマイオニーにどんな誕生日プレゼントを贈ろうかと少し悩んだ。彼女の好きな本にする予定だったが、今年は教科書以外の本を読む時間なんて彼女にはないかも知れない。

 

 

「素敵なご本はいかが?」

「お気の毒さま。私、とってもフクロウが欲しいの。だってハリーにはヘドウィグがいるし、ロンにはエロールが──」

「僕のじゃない。エロールは家族全員のフクロウなんだ。僕にはスキャバーズだけさ」

 

 

ロンは首を振りながらきっぱりと言う。その言葉を聞いたソフィアはぱっと思い出したように目を輝かせ肩にかけていた鞄を膝の上に置いた。

 

 

「そうそう!私も新しい家族を迎えたの!──ジャジャーン!」

 

 

新しい家族。その言葉にハリーとロンは顔を引き攣らせる。──まさか、蜘蛛だったらどうしよう。

 

 

鞄をあければ、中から白く大きな耳がぴょこんと現れ、もふもふとした毛に覆われたフェネックが不思議そうに顔を出しハリー達を見た。

 

 

「フェネックのティティよ!」

「まぁ!可愛いわね!」

「フェネック?初めてみた」

「キツネみたいだね」

 

 

ハリー達は興味深そうにティティを見つめ、ティティはぴくぴくと耳を動かしながら目から上だけを鞄から出して少々警戒しているようだった。

 

 

「まだ赤ちゃんなの、ねー?ティティ?」

 

 

警戒するティティの頭をソフィアが撫でると、心地よさそうにティティはその目を細め再び鞄の底で丸くなった。

ハリーとロンはソフィアが愛らしい動物を飼った事にかなり意外に思った。彼女なら蜘蛛や蛇を飼いそうだが、良い意味で期待が裏切られた、と言えるだろう。

 

 

「僕も新しい子を買ったんだ!」

「どんなの?今は…居ないかい?」

 

 

ルイスも自慢するように胸を逸らし、ロンはどんなペットを飼ったのか気になりルイスの手元や足元を見たが、何か生き物が入りそうな鞄を持っている様子は無かった。

 

ルイスは立ちあがると空に向かって「シェイド!」と叫んだ。

 

するとすぐに羽音が聞こえ、ハリー達はその羽音からきっとフクロウを飼ったのだと予想した。だが聞こえてきた羽音は徐々に大きくなり、ハリー達がそらを見上げると太陽を覆い隠すほどの大鴉がハリー達の頭上に影を落としながら、上げられたルイスの腕にスッと止まった。

 

 

「ワタリガラスのシェイドだよ。みんなの所に手紙を運んだでしょう?」

「ああ!ママがめちゃくちゃ大きな化けカラスが来たって言ってたの、本当だったんだ!」

「私のママも言ってたわ!本当に大きいわね…ワタリガラスって…もっと小さくなかった?」

 

 

確かにカラスと同じ外見だが、大きさは鷹ほど有る。本当にワタリガラスなのだろうかとハーマイオニーはその巨大さに少々身体をのけぞらせながら聞いた。

 

 

「うん、店員さんはそう言ってたよ。特別大きい個体なんだってさ」

「カラスも賢いって言うものね…うーん、悩むわ…」

 

 

流石にこれほど大きな個体を飼うつもりはないが、フクロウにするべきかカラスにするべきか、ハーマイオニーは真剣に悩み出した。

 

 

「ハーマイオニー、新しい子を飼うなら魔法動物ペットショップがすぐそこにあるわ、実際には見たほうが決めやすいと思うわ!」

「僕、スキャバーズも診てもらいたいんだ。エジプトの水が合わなかったみたいで…」

 

 

ロンはポケットからペットのネズミを引っ張り出した。途端にシェイドの目がキラリと鋭く輝き、羽を大きくばたつかせた。

 

 

「シェイド!だめだよ、あれはロンのペットだ、餌じゃないんだ!」

「や、やめてよ!?」

「わっ!?まって、ティティ!?」

 

 

こんな大きなカラスに突かれたらスキャバーズなんて一撃で死んじゃう!とロンは慌ててスキャバーズを抱きしめたが、慌てたのはロンだけではなく、ソフィアもだった。

ソフィアは鞄から半分身体を出し暴れるフェネックのティティをなんとか抱きしめて抑えていたが、今にも飛び出してしまいそうだった。

 

 

「ロン!スキャバーズをポケットにもどして!」

 

 

ソフィアの悲鳴混じりの声に、ロンはさっと顔を青くしてしっかりと胸ポケットの中に入れた。スキャバーズはぐったりとしたまま大人しくポケットに収まり、小さく震える。

 

 

「ごめんね、ロン…」

「ごめんなさい、ロン…」

「ネズミは、この子達の餌なの」

「でも、ちゃんと食べないように言って聞かせるから…」

 

 

申し訳なさそうに言う2人の言葉に、ロンは唖然と口を開き、巨大なシェイドと白いティティを見つめた。

 

 

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