【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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112 狙いの理由は!?

 

 

ルイスとソフィアは9と4分の3番線でハリー達の到着を今か今かと待っていた。

 

 

「まだ来てないみたいだね」

「先に空いてるコンパートメントを探しましょうか」

 

 

ソフィアの提案にルイスは頷き、一つ一つの車両を覗き込む。後尾車両に殆ど誰も乗っていない車両を見つけた2人は大きなトランクにこっそり浮遊魔法をかけて詰め込んだ。シェイドは狭い籠の中でも大人しく止まり木を掴み、騒ぐ事なく静かに揺られている。

 

 

「あっ、あれ!ハリーとアーサーさんじゃない?」

「本当だわ!挨拶をしに行きましょう」

「そうしよう!」

 

 

ホームに現れたハリー達を見つけたソフィアとルイスは顔を見合わせると、荷物を置いたままで一度列車の外に出た。

 

 

「アーサーさん!」

「ここ、空いてますよ!」

「ああ、助かるよ!」

 

 

アーサーは手を振る2人に気付き、みんなと共に駆け寄ると車両に沢山のトランクを詰め込んだ。

モリーは荷物を積み終えた子どもたち一人ひとりにキスをし、しっかりと抱きしめた。

ソフィアとルイスも、モリーに抱きしめられ、くすぐったさをおぼえながらも優しく頬にキスを返し、そのモリーの柔らかな体を抱きしめ返す。母を知らない2人にとって、モリーは理想の母であり、ウィーズリー家は理想の家族だった。

 

 

「ハリー、むちゃしないでね、いいこと?」

 

 

最後にハリーを抱きしめたモリーはその目に涙を浮かべ、優しく告げると巨大な手提げ鞄を掴み中から沢山のサンドイッチを取り出した。

 

 

「みんなにサンドイッチを作ってきたわ。…はい、ロン」

「コンビーフじゃないよね?」

 

 

ロンはまた大嫌いなコンビーフかと思い少し顔を顰めながらそれを受け取る。モリーは微笑み、優しく首を振った。

 

 

「ええ、違いますよ。フレッド?フレッドはどこ?…はい、あなたのですよ…」

 

 

子どもたち一人一人に手渡す様子を、ソフィアとルイスは微笑ましく見ていた。

ハリーがアーサーに連れられ柱の影に向かった事に2人は気付いたが、何か伝えたい事があるのだとわかりその後を追うなど無粋な真似はしなかった。

 

 

「さあ、汽車が出発しますよ、早くお乗りなさい」

 

 

モリーに促されウィーズリー家の子供たちがわらわらと入り口に乗り込む、その後に続いてハーマイオニーとソフィア、ルイスが乗り込んだ。モリーはハリーとアーサーの姿が見えない事に気付き辺りを見渡しながら「アーサー!」と叫んだ。

 

 

「アーサー、何してるの?もう出てしまいますよ!」

「モリー!今行くよ!」

 

 

柱から顔だけだしアーサーがそれに応える。

すぐに汽車が汽笛を鳴らす音がホームに響き渡り、駅員たちが次々と扉を閉めた。

 

 

「どうしたんだろう」

 

 

ルイスはまだ来ないのかと窓からハリーとアーサーがいる場所を見て不安そうに呟く。

汽車は煙をもうもうと吐くと、ゆっくり進み出した。途端にハリーが慌てたように扉に向かって走り、ロンがドアを開け一歩下がって飛び乗ったハリーが通れるようにした。

 

ギリギリ間に合ったハリーにルイス達はほっと息を吐き、窓から身を乗り出し、ホームにいるアーサーとモリーに向かって、その姿が見えなくなるまで振り続けた。

 

 

 

「君たちだけに話したい事があるんだ」

 

 

汽車がスピードを上げ始めた時、ハリーが真剣な表情でロンとハーマイオニー、ルイス、ソフィアに向かって囁いた。ロンはちらりとジニーを見下ろし「ジニー、どっか行ってて」と追い払うように手を振った。

 

「あら、ご挨拶ね!」

 

 

ジニーは機嫌を損ね、ツンとそっぽを向き怒りながら離れていった。

 

 

ハリー達は空いたコンパートメントを探した。

乗る前にぐずぐずとしていたせいで既にコンパートメントはどこも人で溢れていたが、最後尾にただ一つ空いているところがあった。

 

しかし、無人かと思われたそのコンパートメントには、人が1人窓側の席で身を縮めぐっすりと眠っている。その達は顔を見合わせ、不思議そうにその人を見つめた。ホグワーツ特急はいつも生徒で貸切になるため、ソフィア達は初めて特急内で販売員以外の大人が乗っているのを見た。

 

 

ここしか空いていない。

5人は顔を見合わせそっとコンパートメントの扉を開きその中に入った。

 

 

「この人誰だと思う?」

 

 

ロンが見窄らしい格好をした人を胡散臭そうに見る。ソフィアはじっとその人を見つめ、そして鞄を見て「あっ!」と小さく声を上げた。

 

 

「この人、リーマス・ルーピン先生よ」

「知り合い?」

「ジャックから後任の先生の事を聞いていたの」

 

 

成程、とロンは頷いた。

ソフィアとルイスは誰からリーマスの事を聞いたか、何故知っているのかはジャックから聞いた、ということにしようと決めていた。何処からボロが出てセブルスの──父の事がバレるかわからない。

 

ロンはくたびれた鞄やフードから僅かに見える顔の青白さを見て果たしてこの人に後任が務まるのかと顔を顰めた。

 

 

「ま、この人がちゃんと教えられるのならいいけどね」

「ジャックからは優秀だって聞いてるよ」

 

 

ルイスがそう告げたが、ロンはあまり信じられなかったのか、そもそもジャックの授業が素晴らし過ぎたのも原因なのだが──胡散臭そうな目でリーマスをじろじろと見た。

 

 

「強力な呪いをかけられたら一発で参っちまうように見えないか?ところで…何の話なんだい?」

 

 

ロンはようやくリーマスから視線を外すとハリーを見た。

ハリーもリーマスを見ていたが、じっと4人を見回すと声を顰めて昨夜聞いたアーサーとモリーの言い争いの事や、先程アーサーから受けた警告の事を話した。

 

ロンは愕然とし、ハーマイオニーは口を手で押さえ、ルイスとソフィアは気難しそうな表情で眉間を寄せていた。

 

 

「シリウス・ブラックが脱獄したのは、あなたを狙うためですって?あぁハリー…ほんとに、本当に気をつけなきゃ。自分からわざわざトラブルに飛び込んで行ったりしないでしょうね?」

「僕、自分から飛び込んでいったりするもんか。…いつもトラブルの方が飛び込んでくるんだ」

 

 

ハーマイオニーは恐々とハリーに懇願するように警告したが、ハリーは苛々と呟く。

ソフィアとルイスは顔を見合わせ、確かに自分達よりもハリーの方がトラブルに恋焦がれているようだと苦笑いを溢す。

 

 

「ハリーを殺そうとしている狂人だぜ?自分からのこのこ会いに行く馬鹿がいるかい?」

「…私なら自分を殺そうと思っている人の事を調べてしまうかもしれないわ」

「ソフィア!」

 

 

ソフィアの静かな呟きに、ハーマイオニーは「なんて事をいうの?」と言うように非難混じりにソフィアの名前を呼ぶが、ソフィアは真面目な顔でハーマイオニーを見た。

 

 

「だって、何故殺されるのかその確かな理由がわからないまま死ぬのなんて嫌だもの」

 

 

ハーマイオニーは何か言いたげな目をしていたが何も言わず顔を蒼白にさせたまま押し黙ってしまった。ハリーは自分から進んでブラックの事を調べる気は無かったが、ソフィアにそう言われて少しだけ思い直した。確かに、何故そんなにもブラックは自分を狙うのだろうか?本当に僕を殺せばヴォルデモートが復活するとでも…馬鹿な事を考えているのだろうか?

 

 

ルイスはブラックの事を恐れ、顔を蒼白にして身を縮ませるロンとハーマイオニーを見ながら顎に手を当て深く思案していた。

成程、何故ディメンターがホグワーツの警備にあたるのかと思っていたが、ハリーが狙われてブラックがホグワーツに来るかもしれないのか。それなら、頷ける。

…そして、この事を父は知っていたがあえて自分達には警告しなかったのはなぜか、少し気になった。

ハリーに自分達が伝えるのを良しとしなかったのだろうか?いや、ハリーは遅かれ早かれその事実を知ることになっただろう。そして、ハリーが1人では抱えきれず自分達に伝えるだろう事も、父なら予想出来たはずだ。

 

 

 

「ブラックがどうやってアズカバンから逃げ出したのか、誰にも分からない。これまで脱獄した者は誰も居ない。しかも、ブラックは1番厳しい監視を受けてたんだ」

「だけど、また捕まるでしょう?だって、マグルまで総動員してブラックを追跡してるじゃない…」

 

 

ハーマイオニーはハリーに襲い掛かるかもしれない恐怖に怯え、早く捕まってほしいと声を震わせながら伝えたが、ロンはその言葉には答えず、辺りを見渡し「何の音だろう」と突然言った。

ロンの言葉にしん、と静まったコンパートメント内に、微かに小さく口笛を吹くような音が響いていたことに5人は気が付き辺りを見渡した。

 

 

「ハリー、君のトランクからだ」

 

 

ロンは音の出どころを突き止めると荷物棚に手を伸ばし、ハリーのローブの隙間からスニースコープを引っ張り出した。それはロンの手のひらで激しく回転し、眩いほどに輝いていた。

 

 

「それ、スニーコスコープ?」

「わぁ、初めて見たわ」

 

 

ハーマイオニーとソフィアは興味津々で立ち上がり身を乗り出して立ち上がりロンの手の上で回転し続けるそれを覗き込んだ。

 

 

「うん、でも…安物だよ。エロールの脚にハリーの手紙をくくりつけようとした時もこうやって回ってたから」

「その時何かしなかったの?怪しい事とか。…変な人は居なかった?」

 

 

ルイスが首を傾げて聞けば、とんでもないとロンは首をふり否定した。

突如耳をつん裂くようなけたたましい音が響き、ソフィア達は顔を顰めながら耳を塞いだ。

 

 

「早くトランクに戻して!じゃないと、この人が目を覚ますよ!」

 

 

ハリーは耳を押さえながらリーマスの方を顎で指しながら言い、ロンはすぐに靴下の中に押し込み音を殺した後でトランクの中に突っ込んだ。

微かにまだ音が聞こえたが、汽車の音と合わさりあまり気にしない程度には軽減され、ソフィア達は恐る恐る耳から手を離しまた座席に座り込んだ。

 

 

「ふー…ホグズミードであれをチェックしてもらえるかも。ダービシュ・アンド・バングズの店で、魔法の機械とか色々売ってるってフレッドとジョージが教えてくれたんだ」

「ホグズミードの事よく知ってるの?イギリスで唯一の完全にマグルなしの村だって本で読んだけど…」

 

 

ホグズミードの言葉にハーマイオニーが反応し、意気込みながらロンを見た。ロンはそれにはあまり関心が無いようで肩をすくめ「ああ、そうだと思うよ」と答える。

 

 

「僕、だからそこに行きたいってわけじゃないよ。ハニーデュークスの店に行ってみたいだけさ!」

「それって何?」

「お菓子屋さんよ」

 

 

ハーマイオニーの疑問にソフィアが答え、ロンは大きく頷きながらうっとりとした目でハニーデュクスの魅力を語った。

 

 

「ソフィアとルイスは行ったことあるの?」

「むかーしね、孤児院に居た時、ジャックが子どもたちみんなを連れて行ってくれたの」

「叫びの屋敷を観光したりしたね、懐かしいなぁ…」

 

 

ソフィアとルイスは顔を見合わせ、当時の幸せな気持ちを思い出しくすくすと笑い合った。叫びの屋敷を怖がるソフィアとルイスに、歳上の兄弟達は抱き上げながら慰めてくれたものだ。そのあと飲んだ甘いバタービールはとても美味しかった──。

 

 

「ちょっと学校を離れて、ホグズミードを探検するのも素敵じゃない?」

 

 

楽しそうに笑う2人を見たハーマイオニーは早く自分も行ってみたいと思いながらハリーをに向き合い告げた。きっとハリーなら頷いてくれるだろうと思ったが、ハリーは暗い顔をしてため息をこぼす。

 

 

「だろうね。見てきたら僕に教えてくれなきゃ」

「どう言うこと?」

「まさか、許可証にサインもらえなかったとか?」

 

 

沈んだ声のハリーにロンが首を傾げる。ルイスは思い当たる事があり直ぐに残念そうにハリーを見れば、ハリーは小さく頷いた。

 

 

「そうなんだ。…僕、行けないんだ。ダーズリーおじさんが許可証にサインしてくれなかったし、ファッジ大臣もサインしてくれなかった」

「許可してもらえないって?そりゃないぜ!──マクゴガナルか誰かが許可してくれるよ、それじゃなきゃ…フレッドとジョージに聞けばいい、2人なら城を抜け出す秘密の道を全部知ってる──」

「ロン!ブラックが捕まってないのに、ハリーは学校からこっそり抜け出すべきじゃないわ!」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーは厳しく伝えた。ロンは一瞬たじろぎ、ハリーをちらりと見る。ハリーは力なく微笑み、ハーマイオニーのその言葉に頷いた。──ハリーも、同じことを昨夜考えていたのだ。

 

 

「うん、僕が許可してくださいってお願いしても…マクゴガナル先生はそうおっしゃるだろうな…」

「だけど、僕たちがハリーと一緒に居ればブラックは──」

「馬鹿な事を言わないで!ブラックは雑踏のど真ん中であんなに大勢殺したのよ?私たちがハリーのそばにいれば、ブラックが尻込みすると、本当に思ってるの?──ねえ、ソフィア、ルイス!」

「「え?」」

 

 

いきなり名指して呼ばれたソフィアとルイスはハリー、ロン、ハーマイオニーの三種三様の表情を見ながら曖昧に笑った。

 

 

「まぁ…ハリー、あなたが狙われていると分かった今…抜け出すのは賢い判断では無いでしょうね」

「魔法使いの村とはいえ…危険はあるだろうね」

「そうよね?」

 

 

ハーマイオニーは2人から賛同を得られた事で、生真面目な顔をするとロンをじろりと見つめ、もう二度と馬鹿な考えは言わないで、と無言の圧力をかける。

ロンは面白くなさそうにそっぽを向いたが、ハーマイオニーがクルックシャンクスの入っている籠に手を伸ばしていることに気付くと慌てて叫んだ。

 

 

「そいつを出しちゃ駄目!」

 

 

しかし既に遅く、クルックシャンクスはひらりと籠から出ると大きく身体を伸ばし、欠伸をしながらロンの膝に飛び乗った。

ロンのポケットの膨らみが猫の気配を感じたのかぶるぶると震え、ロンは顔を赤くし怒りながらクルックシャンクスを払い除けた。

 

 

「どけよ!」

「ロン、やめて!」

 

 

ハーマイオニーがクルックシャンクスを抱き上げ、怒ったように叫ぶ。ロンが言い返そうと口を開いたとき、リーマスがもぞもぞと身動ぎをし、ロンとハーマイオニーはぴたりと動きを止めた。

 

しかしリーマスは寝返りを打っただけですぐにまた寝息が響き、5人は顔を見合わせほっとため息をつく。この病人のように顔色の悪い人を寝かし続けた方がいい──そうハリー達は思っていた。

 

 

──そうか、昨夜はたしか満月だった。

 

 

ルイスは顔色の悪いリーマスを見て、そう気が付いたが何も言わなかった。

 

 

 

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