【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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118 魔法生物飼育学!

ハリーは魔法生物飼育学を受ける為に、ハグリッドの小屋へ向かっていた。ハーマイオニーとロンが昼食時に険悪なムードになってしまい、何とも言えないピリピリとした沈黙が落ちる中、ハリーはここにソフィアが居てくれたらきっとこんな雰囲気にはならなかったに違いない、と心の中で呟いた。

 

それに、ハリーは占い学が終わった時にソフィアが言っていた言葉が気になって仕方がなかった。ロンはグリムを恐れハリーを心から心配しているのだとハリー自身もわかっていたのだが、気遣うような視線は嫌だった。ソフィアの意見も聞きたい、そうハリーは強く思った。

 

 

ハリー達は小屋の前に辿り着くと、既にハグリッドは生徒達の到着を今か今かと待っていた。早く初めての授業をしたくてたまらないのだろう。ハリーはこの時初めてスリザリンとの合同授業だと気付き、嫌な予感に顔を顰める。ハグリッドの授業は何としてでも成功させてあげたいが、スリザリン生──ドラコ・マルフォイは果たして大人しく授業を受けてくれるだろうか。

 

集まった生徒たちをぐるりと見渡し、ハグリッドがその大きな手を振って合図を送る。

 

 

「さあ、急げ!早く来いや!今日はみんなにいいもんがあるぞ!すごい授業だぞ、みんな来たか?」

「ハグリッド、ソフィアとルイスがまだ来てないんだ」

 

 

声を張り上げるハグリッドに近づき、ハリーが小声で言えばハグリッドは少し眉を寄せて芝生の向こうを見渡した。

 

すぐに靴音が響き、ソフィアとルイスが顔を真っ赤にさせて芝生の向こうから大慌てでこちらに向かって走るのが見えた。

 

 

「はあっ!──はぁっ!ま、間に合った!?」

「はぁ…つ、疲れた…ハグリッド、ごめん、遅れちゃったかな…?」

 

 

転がるように現れた2人は膝に手をつき呼吸を抑えながら、申し訳なさそうにハグリッドを見上げる。ハグリッドはにっこりと笑い首を振った。

 

 

「大丈夫だ!揃ったな?──よーし、ついてこい!」

 

 

ルイスはソフィアに手を振り、額に張り付いた髪をかき上げながらドラコの元へ向かい、ソフィアは胸を抑え呼吸を落ち着かせながらハリー達の隣に並んだ。

 

 

「大丈夫?」

「ええ…今日は、走りっぱなしだわ…」

 

 

 

ソフィア達はハグリッドの後ろをついて森の脇を5分ほど歩いた。ハリーは一瞬もしかして森で授業をするんじゃないかと心配したが、ハグリッドが連れてきた場所は放牧場のような所だった。しかし、何の魔法生物もそこにはいない。

 

 

「みんな、柵のまわりに集まれ!そーだ、ちゃんと見えるようにしろよ?1番先にやるこたぁ、教科書を開くこった──」

 

 

ハグリッドがみんなに号令をかけると、すぐにドラコが冷ややかな声を上げる。

 

 

「どうやって?」

「あぁ?」

「どうやって教科書を開けばいいんです?」

 

 

ドラコは紐でぐるぐる巻きに縛ってある本を取り出し、それにつられてみんなが本を取り出したが、ベルトで縛っている者や、テープで口を止めている者、ぴっちりとした袋に入れている者が居た。

 

 

「だ、だーれも教科書をまだ開けなんだか?」

 

 

ハグリッドは想像もしない事態に戸惑い、狼狽えたが、ソフィアが胸を逸らして大きく教科書を掲げ──その教科書が開かれている事に気付き「良かった!」と言うように目を輝かせた。

 

 

「私たち、ちゃんと開けられたわよ!この本の中身素晴らしかったわ!」

「僕も開けれたよ。ハリーもだよね?」

「…うん、でも一応ベルトで縛ったけど…」

 

 

ハリーはおずおずと鞄からベルトで止められた本を出した。

 

 

「お前さん達、撫ぜりゃーよかったんだ!」

 

 

ハグリッドはハーマイオニーの教科書を取り上げ、テープを剥がし、すぐに噛みつこうと口を開ける本の背表紙を指で撫でた。すると本はブルリと震え、嘘のようにハグリッドの手の上で大人しくなった。

 

 

「ああ、僕たちって何て愚かだったんだろう!撫でれば良かったんだ!どうして思いつかなかったんだろうねぇ!」

「ドラコ、知らなかったなんて思わなかったわ!…聞いてくれたら教えてあげたわよ?」

 

 

ソフィアはやや冷たくドラコに伝え、ドラコはふんと面白くなさそうにそっぽを向いた。

 

 

「お、俺はこいつらが愉快な奴だと思ったんだが…」

 

 

ハグリッドは小声で自信が無さそうにソフィアに伝えた、ソフィアは慰めるようににっこりと笑う。

 

 

「私はこの本大好きよ!ペットにしたいくらい!」

「正気かいソフィア?僕たちの手を噛み切ろうとする本を持たせるなんて、まったくユーモアたっぷりだ!喜ぶのは君くらいだよ」

「黙れ、マルフォイ」

 

 

ハリーはなるべく怒りを抑えながら静かにドラコに言った。

ハグリッドとソフィアを馬鹿にしたような言い方に、ふつふつとした怒りが心の奥から溢れ出てくる。ハグリッドはドラコの言葉に強く項垂れ一気に自信を無くしたようだった。

 

 

「えーと…そんじゃ」

 

 

ハグリッドは出鼻をくじかれ、何を言うのか忘れたようにうろうろと視線を彷徨わせた。

朝の5時から準備をしていたんだ、何としてでも初めての授業を成功させてあげたい、そうすれば自信に繋がるだろう──ソフィアはそっとハグリッドの大きな腕に手を添え、優しく撫でた。

 

 

「ハグリッド、大丈夫。ゆっくりでいいわ。次はどうするの?」

「あ、ああ…教科書は、ある」

「ええ、ハグリッドが教えてくれたおかげで、私たち本を開けたわ。…次はどうするの?ハグリッド先生?」

 

 

ソフィアの優しい「ハグリッド先生」という甘い響きに、ハグリッドは雷に打たれたようにぶるりと身体を震わせると顔を真っ赤に染めた。

そしてごほんと気を取り直すように咳払いをすると、ゆっくりと生徒達を見回す。その目には再び授業を進めるための教師としての覚悟が込められていた。

 

 

「──よし、魔法生物を連れてくる。ここで待っとれ。──ソフィア、ありがとうな…グリフィンドールに3点だ」

 

 

落ち着きを取り戻したハグリッドは、初めて教師としての加点をソフィアに与えた。ソフィアは嬉しそうに微笑んだが、隣にいたドラコは面白く無さそうにハグリッドを睨み上げた。

 

 

「助言するだけで加点だなんて!素晴らしい先生ですねぇ?」

「──ソフィアは教科書を開けただろう?大人しく待っとれ」

 

 

ハグリッドはドラコのせせら嗤いを気にする事なく軽くいなすと直ぐに森の中へ入って行った。

 

 

「全く、この学校はどうなってるんだろうねぇ。あのウドの大木が教えるなんて、父上に申し上げたら卒倒するだろうなぁ…」

「黙れ、マルフォイ」

「ポッター、気をつけろ。吸魂鬼がお前のすぐ後ろに──」

「わぁあーー!!見て!!」

「──何だ?」

 

 

ドラコは意地悪く顔を歪めながらまたハリーを弄ろうとしたが、その言葉はソフィアの高い歓声により防がれた。

 

ソフィアがキラキラと目を輝かせ、興奮で頬を赤らめながら放牧場の向こうを指差した。ハリーと…そしてドラコはソフィアの生き物に対する趣味の悪さをよく知っていた為、──2人はそれを知れば嫌がっただろうが──同時に心の中できっとまともな魔法生物ではないに違いない。と同じ事を思った。

 

 

 

ハグリッドによって連れてこられた魔法生物は、胴体から後ろは馬であり、前は巨大な鳥のように見えた。鋼色の凶悪な嘴と、鋭く大きなオレンジ色の瞳は鷲にとてもよく似ている。前脚の鉤爪は鋭利に尖り、15センチは有にあるだろう。

 

十数頭の魔法生物──ヒッポグリフはハグリッドにより厚い皮の首輪をつけられ鎖で繋がれながらソフィア達の立っている柵まで近づく。皆はそれを見て一斉に後ずさりをした。

 

 

「ヒッポグリフだ!美しかろう、え?」

「ええ、とっても!すごいわ!私、実物は初めてよ!」

 

 

ソフィアは目を輝かせ、怖々ヒッポグリフを見る生徒たちの中から一歩外に出ながらじっとヒッポグリフを熱心に見つめる。

ハリーも、このヒッポグリフという魔法生物は美しいと思った。初めに見た衝撃すら乗り越えれば、ヒッポグリフの輝くような毛並みが羽から毛へと滑らかに変わっていく様は見応えがあり、確かに美しく見えた。

 

 

「そんじゃ、もうちっと…こっちこいや」

 

 

ソフィアの言葉にハグリッドは嬉しそうに頷き、他の生徒たちももっと近づけと促したが、誰も近づこうとはしない。ハリー、ロン、ハーマイオニーだけは、ハグリッドの残念そうな顔を見たくなかったため、恐々と柵に近づいた。──最も、1番近付いていたのはソフィアだったが。

 

 

 

「まず、1番先にヒッポグリフについて知らねばなんねぇことは、こいつらは誇り高い。すぐ怒るぞ…ヒッポグリフは絶対侮辱しちゃなんねぇ。そんな事をしてみろ、それがお前さんたちの最後の言葉になるぞ──必ず、ヒッポグリフの方が先に動くのを待つんだぞ、それが礼儀ってもんだろう」

「ドラコ、侮辱しちゃダメだよ?──聞いてる?」

 

 

ルイスはハグリッドの言葉を聞きすぐに隣でクラッブとゴイルとひそひそと話していたドラコに声をかけたが、ドラコはルイスの方を見ないまま「聞いてるさ」と伝えた。

 

 

「こいつの側まで歩いていく。そんでもって、お辞儀をする。そんで、待つんだ。こいつがお辞儀を返したら触ってもええっちゅうこった。もしお辞儀を返さんかったらすぐ離れろ。──こいつの鉤爪は痛いからな」

 

 

皆は視線を下ろし、ヒッポグリフの鋭利で太い鉤爪を見た。あんなものに引き裂かれたら間違いなく重症を追う、誰もがそう思いさらに一歩後ろに下がった。

 

 

「よーし、誰が一番乗りだ?」

 

 

答えるかわりに生徒たちはますます後ろに下がった。ヒッポグリフは繋がれている事が気に食わないのか、猛々しい首をふりたて逞しい羽をばたつかせている。

 

ソフィアは後ろを振り返り、皆が誰も手を上げないのなら、と手を大きく上に伸ばした──が、丁度ハリーも同じように掲げていた。

ハリーはソフィアの挙げられている手を見て「しまった」という顔をし、ソフィアが手を上げるのなら黙っていれば良かったと苦々しく思った。

 

 

「僕、やるよ」

「私もやりたいわ!」

「よーし、2人とも来い!」

 

 

ハリーとソフィアは放牧場の柵を乗り越えた。

 

 

「よーし、そんじゃハリーはバックビークとやってみよう。ソフィアはクィーンビーグとだ。まずは…ハリー、こっちこい」

 

 

ハリーはどうせならソフィアがやった後が良かったと思ったが、ハグリッドに指名されてしまった。…ハグリッドは友人だ、肩を落とす姿を見たくない。──もう腹を括るしかないか、とハリーはぐっと真剣な目でハグリッドを見て頷く。ソフィアは柵の側まで下がり「頑張って!」と後ろからハリーを応援した。

 

 

「さあ、落ち着けハリー。目を逸らすなよ、なるべくな…ヒッポグリフは目をしょぼしょぼさせるやつを信用せんからな…そーだ、それでええ──ハリー、お辞儀だ…」

 

 

ハグリッドの静かな声に促され、ハリーは軽くお辞儀をすると、様子を見る為にちらりと目を上げた。この凶暴そうなヒッポグリフにずっと首を晒し続けるなんてまね、出来るわけがない。

しかし、ヒッポグリフはまだ気位高くハリーを見据え、お辞儀すること無く、動かない。

 

 

「あー…よーし、さがってハリー。ゆっくりだ」

 

 

ハグリッドは心配そうにゆっくりとハリーに指示をし、ハリーもすぐに下がろうとしたがその時突然ヒッポグリフが鱗に覆われた前脚を折り、どう見てもお辞儀だと思われる格好をした。

 

 

「やったぞハリー!よーし、触ってもええぞ!嘴を撫でてやれ!」

 

 

ハリーは怖々頷き、震える指先でヒッポグリフの嘴をちょん、と一度突き、そしてぴたりと掌全体でひやりとしたその嘴に触れる、何度か嘴を撫でるとヒッポグリフはそれを楽しむかのようにとろんと目を細める。

 

全員が歓声を上げ拍手をし、ハリーを尊敬の眼差しで見たが、ドラコだけはがっかりとしたようにつまらなさそうにそっぽを向いた。

 

 

「よし、ハリーはそのままでいろ。次はソフィアだな!」

「ええ!」

「コイツとやれ…さあ、前に」

 

 

ソフィアは言われた通り褐色のヒッポグリフに近づいた。つぶらな瞳と美しい毛並みにソフィアはなんて美しいのだろうかとうっとりとしながら、しっかりと頭を下げお辞儀をした。

首を曝け出すのは怖くない、ソフィアは長く頭を下げ──ヒッポグリフもそれに答えるように前足を折り、首を垂れた。

 

 

「──よし!上手いったな!さあ、ソフィア撫でてみろ」

「ええ、ありがとう…」

 

 

ソフィアはそっとヒッポグリフの嘴を撫でる、ヒッポグリフは嬉しそうに目を細め、もっと撫でてほしいと言うようにソフィアの手にその大きな頭を擦り付けた。

 

 

「よーし、そんじゃハリー、ソフィア。こいつらはお前さんたちを背中に乗せてくれると思うぞ。翼の付け根んとこから登れ、羽を引っこ抜かねぇように気をつけろ。嫌がるからな…」

 

 

ソフィアとハリーは顔を見合わせる。

ハリーは全くもって嬉しくない提案であり顔を引き攣らせていたが、ソフィアは相変わらずキラキラとその表情を輝かせている。

 

 

「乗りましょうハリー!」

「えぇ……う、うん…」

 

 

ソフィアとハリーはヒッポグリフの翼の付け根に足をかけ、背中に飛び乗った。

ソフィアは優しく褐色の羽を撫で「よろしくね」とヒッポグリフに伝え、ぎゅっとその体に抱きついた。

 

 

「そーれ行け!」

 

 

ハグリッドはぱしんとヒッポグリフの尻を叩いた。その衝撃で何の前触れもなくヒッポグリフ達は翼を広げながら走り強く地面を蹴ると空に飛び上がった。

 

 

ヒッポグリフとの空の散歩は中々に快適だった。箒に乗っている時には味わえない、生き物の背に乗っているのだという高揚感にソフィアは楽しげに歓声を上げた、首元に抱きついていると、ヒッポグリフの鼓動や息遣い、そしてその暖かさをしっかりと感じる事が出来る。

 

 

 

──凄い、私、今ヒッポグリフと空を飛んでるんだわ!!

 

 

 

ソフィアの楽しそうな声は地上まで響き、地上で空を見上げてソフィアを見ていた生徒達はそんなに楽しいのか、と少しヒッポグリフに興味が出てきた。ハリーとソフィアが成功したのだ、難しく考えなければ自分もあのように空を舞えるのだろうか──。

 

 

ヒッポグリフは放牧場を一周すると地上を目指した。ソフィアは地面に降り立った確かな振動と衝撃に一度目を強く閉じたがすぐに開くとヒッポグリフの背からひらりと地面へ飛び降り、沢山の感謝を込めてヒッポグリフを抱きしめた。

 

 

「ありがとう、あなたって本当に素敵よ!素晴らしい空の散歩だったわ!」

 

 

ソフィアに抱きつかれたヒッポグリフは優しく目を細めソフィアの頭を嘴で撫でた。

 

 

 

「よーし!よくできた、ソフィア!ハリー!──他にやってみたい者はおらんか?」

 

 

ソフィアとハリーの成功に勇気づけられた生徒たちは怖々放牧場に入ってきて、2人のようにヒッポグリフに向かい合った。

 

 

ソフィアはハリーと顔を見合わせるとこの授業は成功するに違いない、そう思いにっこりと笑いあった。

 

 

 

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