【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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122 ちいさなプリンセス!

魔法薬学の授業の後、ソフィアは小さな足を動かし必死に走る。

この後本当なら被っている講義をハーマイオニーと受けるはずだった。しかし、彼女はソフィアを待つことができず──そもそもこの姿で授業を受ける事は出来ないだろう──先に行って…いや、戻ってしまったようだ。

ルイスは幼いソフィアを心配して大広間まで着いてきたがったが、逆転時計を使いいくつも受講している事は他言無用と言われている。

ルイスにも逆転時計の事を伝えていない為「ひとりでだいじょうぶ」と告げ、何とか振り切った。

 

 

ソフィアは玄関ホールへの階段を駆け上がっていると、後ろから荒い呼吸と足音が聞こえ思わず振り向いた。後ろには、誰もいなかったはずだ。

 

 

「ソ、ソフィア…」

「まぁ!おかえりなさい!」

 

 

ソフィアは何故ハーマイオニーが自分の後ろに居るのか理解していた為、不思議に思わず優しく微笑んだが、ハーマイオニーは少し狼狽え申し訳なさそうに眉を下げた。

 

 

「ソフィア、ごめんなさい私もう…戻ったの」

「きにしないで、…このすがたでは、じゅこうできないもの。─でも、さきにふたつ…すませておいてよかったわ」

 

 

足の短いソフィアはハーマイオニーの隣に並びながら自分の小さな手を見つめ苦笑した。

流石にこんな幼い姿で受講してしまっては悪目立ちしすぎてしまうだろう。誰かが同じ時間に別の科目を受けていることに気付いてしまうかもしれない。それだけは避けなければならない。

 

階段を登り切ると、その先には不思議そうに後ろを振り返るロンとハリーがいた。

 

 

「ソフィア、大丈夫?」

「ええ…いま、スネイプせんせいにくすりをちょうごうしてもらってるわ」

 

 

ロンとハリーは小さくなったソフィアの頭の先から爪先までをじろじろと見つめる。流石にそう無遠慮に見られてしまうのは些か居心地が悪く、ソフィアは「な、なによ…」と呟いた。

 

 

「可愛いなって思っただけだよ」

 

 

ハリーはさらりと言うとにっこりと笑った。

実際、ソフィアは中々に可愛かった。愛らしい、とも言えるかもしれない。幼女特有の頬の丸み、四肢の短さ、大きな目に、舌足らずでいつもより高い声。小さいホグワーツの制服に身を包んでいるのも、さながらハロウィンの仮装のように見えた。

 

少し面食らったソフィアはぱちぱちと目を瞬き、頬を少し赤くしながらありがとう、とはにかんだ。

 

 

「そうだ、ハーマイオニー…どうやったんだい?」

「何を?」

 

 

何のことかわからないハーマイオニーは首を傾げたが、ロンは怪訝そうな顔で階段の方を顎で指した。

 

 

「君、ついさっきまでは僕らのすぐ後ろにいたのに、次の瞬間、階段の1番下に行ってた」

「え?」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーは混乱し、視線を泳がした。──ソフィアはきっと、ハーマイオニーは時を何度か戻りすぎて訳がわからなくなっているに違いない、そう思いすぐに助言した。

 

 

「わたしのようすを、みに来てくれたの」

「──ええ、そうなの!…あっ!…あーあ」

 

 

突如何かが裂ける音がしてハーマイオニーのカバンの縫い目が破れ、鞄を見たハーマイオニーはため息をこぼす。中には12冊以上もの教科書がぎゅうぎゅうに詰められており、かなり重そうだ。

実際、ハーマイオニーは鞄を肩にかけていたが、ベルトが食い込み肩が悲鳴を上げていた。

 

 

「どうしてこんなにいっぱい持ち歩いてるんだ?」

「私がどんなに沢山の科目をとっているか、知ってるわよね。─ちょっとこれ持ってくれない?」

「でもさ──今日はこの科目はどれも授業がないよ、闇の魔術に対する防衛術が午後にあるだけだよ」

「ええそうね」

 

 

ハーマイオニーは曖昧な返事をし、鞄の中の本を全て整理し終えると、勢いをつけて肩に鞄をかけ「お昼に美味しいものがあるといいわ、お腹ぺこぺこだもの」というなりソフィアの手を引いて大広間にスタスタと歩いて行ってしまった。

 

残されたロンとハリーは顔を見合わせいつもと様子がおかしいハーマイオニーに首を傾げた。

 

 

 

ソフィアがハーマイオニーに手を繋がれ大広間に入るとなんとなく入り口付近を見ていた生徒達はソフィアを二度見した。

 

「…え?誰?」「子ども…?」「見覚えが…」

 

 

ざわざわとしたざわめきはまだ何も気がついていなかった生徒達に広まり、沢山の目がソフィアの体を射抜く。

 

 

「うっ……」

 

 

いつも明るく、ある程度の視線は気にしないソフィアであっても、流石にこの幼い姿を──縮み薬を愚かにも飲んでしまった姿を──見られるのは恥ずかしく、ハーマイオニーの後ろに隠れるとそっとローブの後ろから顔を少しだけだした。

 

 

「かっ──」

 

 

──可愛い。

 

 

まるで小動物を思い付かせるそのイジらしく愛くるしい動作にハーマイオニーはときめく胸を思わず抑える。思わず叫びそうになったが、そんな注目を浴びることをすればソフィアは更に恥ずかしがってしまうかもしれない、とぐっと耐えた。──しかし。

 

 

「ハーマイオニー…わたし、なにかへんかしら…」

 

 

羞恥と不安から頬を染め目を潤ませるソフィアに上目遣いで見られ、尚且つそのふにふにとした白く小さな手はしっかりとローブを握っている。ハーマイオニーは先ほどの我慢は何だったのか、がばっとソフィアに抱きつくとそのぷにぷにとした頬に頬擦りし、叫んだ。

 

 

「ああ!なんて可愛いのっ!!」

「ハ、ハーマイオニー…?」

「こんな可愛い子見たことないわ!ああ、妹にしたいっ…!」

 

 

ハーマイオニーは酷く疲れていた。無意識のうちに癒しを求めていたのだ。

──それも、仕方のない事だろう、彼女は逆転時計を使い既に何科目も授業を受けている。逆転時計を使用している間はかなり神経をすり減らすのだ。それに、かなり空腹だった。

 

 

ソフィアはハーマイオニーに抱きしめられながら少し驚き目を見開いたものの、その温かさに嬉しそうに笑いその短い腕をハーマイオニーの背中に回す。ぎゅっと抱きしめ合う2人の後から大広間に現れたロンとハリーは顔を見合わせた。

 

 

「お二人さん、通行の邪魔ですよ」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーははっとして首を何度か振ると、気を取り直すかのようににっこりと微笑みソフィアの小さな手を握り「お昼ごはん、食べましょうね」と幼児に言い聞かせるように優しく告げグリフィンドールの机へと向かった。

ソフィアはなにも中身まで幼くなったわけだはない。──子供扱いに少々複雑な気持ちだった。

 

 

ソフィアが椅子によじ登り、床に届かない足をぷらぷらとさせているだけで、ハーマイオニーは胸を抑え「かわいい…」と耐えきれず呟いた。

 

 

「ソフィア!大丈夫なの?」

「まぁ…!なんて可愛いの…お姉ちゃん、って呼んでみて?」

 

 

パーバティとラベンダーがそわそわとした様子でソフィアの側に寄る。ソフィアは何だか大きく見える2人を見上げ、小首を傾げながら無垢な笑顔を向けた。

 

 

 

「ラベンダーおねえちゃん、パーバティおねえちゃん、わたし、フルーツサンドがたべたいわ!」

「──っ!す、すぐ持ってくるわ!」

「待ってて!」

 

 

2人は何度も強く頷き、獲物を狙うような目つきで「フルーツサンド!」と叫び、ソフィアが求めるそれを探しに行った。

ソフィアはそれを見送った後、悪戯っぽい笑みを浮かべ隣に座るハーマイオニーをくるりと見ると、甘えるような声を出し上目遣いで「わたし…イチゴがたべたいなぁ…ハーマイオニーおねえちゃん…」と言えば、ハーマイオニーも同じように顔を赤く染め「待ってて!」と直ぐに立ち上がりフルーツが盛られているボウルを取りに行った。

 

 

「…君…中身は元のままなんだよね?」

 

 

ロンが恐る恐るソフィアに聞けば、ソフィアは涼しい顔で頷いた。

 

 

「そうよ?…こうなったらやけよ。このすがたを…たのしむしかないわ!」

 

 

ハリーとロンは楽しげに笑うソフィアのその顔が天使の笑顔なのか、小悪魔の笑顔なのかわからなかった。──間違いなく、後者だが。

 

 

 

気がつけばソフィアの周りは貢物といえる果物やフルーツサンド、そしてプディング等で溢れかえっていた。

ハーマイオニーは「机に届かないでしょう?」と言い、膝にソフィアを乗せ──周りの者は羨ましそうにハーマイオニーを見た──その周りを囲うように沢山の女生徒達が群がる。まるで、沢山の女生徒を侍らせる幼女王のような奇妙な光景が広がっていた。

 

 

「ソフィア!ほら、バナナは?」

「ねぇ、プディング食べない?」

「これ、すっごく甘くて美味しいわよ?」

「ああ…頬にクリームがついているわ!拭いてあげるわね?」

「あらあら、そんなに沢山食べて…頬がリスみたいになってるわ!」

 

「ありがとう、おねえちゃん!」

 

 

目の前で繰り広げられるキャイキャイと楽しげなその空間に、ロンとハリーはスクランブルエッグを食べながら居心地の悪さを感じていた。

 

 

「…羨ましい…」

「…どっちが?」

 

 

ハリーの問いかけに、ロンは答えずベーコンをもそもそと齧った。

 

ハリーも、ロンの気持ちはわかる気がした。

幼くなったソフィアの頬はくすみひとつなく滑らかで柔らかそうで、ハーマイオニーのようにその頬に触れてみたかった。しかし、やはり男子と女子では気軽さが違う。──中身は同じ歳のソフィアなのだ。流石に、その頬に触れる事は出来ないだろう。

 

 

「ソフィア!ちっちゃくなったなぁ!」

「小さなプリンセスだな!」

「フレッド!ジョージ!」

 

 

噂を聞きつけたフレッドとジョージが女生徒をかき分けてソフィアの隣に立つと、むにむにとその白い頬を摘み引っ張った。

 

 

「ちょっと!ソフィアが可哀想でしょ!?」

 

 

ハーマイオニーからの非難の声なんて少しも気にせず、「おお、伸びる伸びる!」とフレッドは楽しげにその頬を堪能する。ジョージはソフィアの小さな手を握り「ちっさ!これで杖とか持てるのかい?」と揶揄いつつ聞いていた。

ソフィアはもみくちゃにされながらも満更では無いようで、楽しげに鈴のような声をあげて笑っていた。

 

 

 

「…羨ましい…」

「…どっちが?」

 

 

今度は、ロンがハリーにそう問う番だったが、ハリーもまた、無言でソーセージを齧った。

 

 

 

 

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